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公都への出発前
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公都へ戻る日が決まった。ホッとしているのは、初めての長期視察に来たレオとダリア。アデルも心なしかリアンに会えると喜んでいるのが見て取れた。
「そんなに公都が恋しいの?それとも、それぞれに想い人が恋しいのかしら?」
朝食を食べながら、私は三人を見てため息をつく。正直なところ、慣れない視察に疲れているというのが現状だろう。まだ、公都へと帰らないといけないのだが、それはあまり考えていないようだった。
「そんなことありませんよ。アンナがまだコーコナにいると言えば、付き合いますから」
「……嘘な気がするわ。アデル。もう少し、マシな嘘で応えてくれると嬉しいけど?」
「……嘘ではないんですけどね。任務と言えば、それまででしょうし」
「確かに、仕事と言えば仕事よね」
私は、アデルの言い分に頷き、帰る準備をそれぞれするように伝えた。荷造り自体は、それほどないだろう。遅れて食堂へ入ってきたナタリーにどうするのかと訪ねると残るそうだ。私がアンバー領へ戻るころには、公都へ戻るとだけ教えてくれた。新作ドレスの布地考案がなかなか進んでいないらしい。先日の視察へ向かったときは、いい出来だったように思ったが、ナタリーには、他にも思惑があるようだ。私はナタリーに一任してあるので、決定に不服もなければ不信もない。ハニーアンバー店の売上貢献にナタリーの才能がとても関わっていることをみなが知っている中で、私がとやかくいう必要もないのだ。
「準備が整ったら、出発になるわ。3日ほどで、整えてちょうだい。デリア、ココナは、それぞれの移動準備に取り掛かって」
「かしこまりました。では、ココナにはダリア様の準備を。私はアンナ様の分をします。明日の夜には完了しておくように」
「わかりました。ダリア様、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いね?」
帰る準備はデリアたちに任せておけば、大丈夫だろう。レオの分もデリアが見てくれることになり、朝食を食べ終わった。
私は、残っている資料の整理を進めないといけない。緊急のものは昨日のうちに済ませ、3日前には公都へ帰る手紙も書いてあるので、これ以上は届かないはずだ。
少なくなった手紙とは別に、処理の終えた報告書の山の中からジョージアから届いた手紙を引っ張り出した。そこに書かれていたのは、『早く帰ってきて』の言葉。幼かったころみた『予知夢』では夢にも考えられない言葉に思わず笑みが浮かぶ。
「私、愛されているなぁ……」
整った文字を何度も撫で、「もうすぐ帰りますからね?」と呟く。ジョージアへ届くとは想わなかったが、優しく微笑んで「待っている」と言われたような気配がした。
私たちの縁は不思議なものだ。私の『予知夢』さえなければ、引き合わされることもなかったのだろう。
「神様がいるのなら、私の想いはどこまで叶えてくれますか?」
願うなら、ジョージアを始め家族が平穏であること。
願うなら、侍従たちやその家族の生活が苦しいものにならないこと。
願うなら、領地や領民たちが幸せに暮らせること。
願うなら、私の想う人々が笑ってその一生を終えること。
願うなら、子どもたちの成長を見守り続けたいこと。
心の中で今なお大きくなる想い。私はこんなふうに思うだなんて、あの頃は少しも考えられなかった。それほどに、私にとって大切な人ができたということが、嬉しく思う反面、失うことがとても怖くなった。
「そんなに公都が恋しいの?それとも、それぞれに想い人が恋しいのかしら?」
朝食を食べながら、私は三人を見てため息をつく。正直なところ、慣れない視察に疲れているというのが現状だろう。まだ、公都へと帰らないといけないのだが、それはあまり考えていないようだった。
「そんなことありませんよ。アンナがまだコーコナにいると言えば、付き合いますから」
「……嘘な気がするわ。アデル。もう少し、マシな嘘で応えてくれると嬉しいけど?」
「……嘘ではないんですけどね。任務と言えば、それまででしょうし」
「確かに、仕事と言えば仕事よね」
私は、アデルの言い分に頷き、帰る準備をそれぞれするように伝えた。荷造り自体は、それほどないだろう。遅れて食堂へ入ってきたナタリーにどうするのかと訪ねると残るそうだ。私がアンバー領へ戻るころには、公都へ戻るとだけ教えてくれた。新作ドレスの布地考案がなかなか進んでいないらしい。先日の視察へ向かったときは、いい出来だったように思ったが、ナタリーには、他にも思惑があるようだ。私はナタリーに一任してあるので、決定に不服もなければ不信もない。ハニーアンバー店の売上貢献にナタリーの才能がとても関わっていることをみなが知っている中で、私がとやかくいう必要もないのだ。
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「わかりました。ダリア様、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お願いね?」
帰る準備はデリアたちに任せておけば、大丈夫だろう。レオの分もデリアが見てくれることになり、朝食を食べ終わった。
私は、残っている資料の整理を進めないといけない。緊急のものは昨日のうちに済ませ、3日前には公都へ帰る手紙も書いてあるので、これ以上は届かないはずだ。
少なくなった手紙とは別に、処理の終えた報告書の山の中からジョージアから届いた手紙を引っ張り出した。そこに書かれていたのは、『早く帰ってきて』の言葉。幼かったころみた『予知夢』では夢にも考えられない言葉に思わず笑みが浮かぶ。
「私、愛されているなぁ……」
整った文字を何度も撫で、「もうすぐ帰りますからね?」と呟く。ジョージアへ届くとは想わなかったが、優しく微笑んで「待っている」と言われたような気配がした。
私たちの縁は不思議なものだ。私の『予知夢』さえなければ、引き合わされることもなかったのだろう。
「神様がいるのなら、私の想いはどこまで叶えてくれますか?」
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