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変わっていくことへの期待

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 アデルが大きな紙袋を抱え戻ってきた。量が多かったことに驚いているダリアが、「そんなに食べるのですか?」と聞いている。他のみなも思ったようだが、答えは簡単だ。食べ歩きをするためにみんなの分も買ってきてくれたのだろう。


「食べないのですか?」
「えっ?食べるって……えっ?」


 戸惑う一同にアデルも困ってこちらを向いた。私は苦笑いをしながら、アデルの抱えている紙袋に手を入れ、商品を出した。丸い形のパンで、私なら1つまるまる食べてしまえそうな大きさだった。それを半分に割って、レオとダリアへ渡す。レオは素直に受取ったが、ダリアは手渡す私の手をジッと見て、どうしたら?という表情をしている。


「ダリア、戸惑うのはわかるけど、あなた分だから、とりあえず、取ってもらえるかしら?」
「……はい、すみません」


 私の手からパンを受取ると、どうしていいのかわからないという表情をむけたまま、固まっていた。


「デリアとココナ。チャコとシークも」


 次々と袋の中からパンを取り出しては割っていき、手渡していく。レオとデリアとアデル以外、貴族である私がそんなことをするわけがないという表情でみながこちらを見てくるが、城下町のガキ大将であった私にとって、町での食べ歩きは日常的なできごとだ。戸惑う理由がわからず、最後の1個をアデルと分け合った。アデルが一応先に食べるのだが、デリアもそれにならって口にいれた。


「問題はありませんからどうぞ」
「わかったわ!じゃあ、いただきましょう」


 私が多くな口をあけてパンにかぶりつくと、口をあんぐり開けている。「どうしたの?」と口の中での幸せを噛みしめながら聞くと、おそるおそるチャコが聞いてきた。


「貴族って、食べ歩きなんてするのですか?」
「貴族は食べ歩きしちゃダメなの?そんな人生損しているような考えは必要ないと思うのだけど。身分上、毒味は必要ではあるけど、毒耐性ならヨハンの次くらいにあるから、むしろ、アデルが毒に侵されないか心配だわ」
「おかまいなく。毒が回れば、そこまでの人生だってことですから」
「心配しなくて、何かあれば万能解毒薬を使うから、死ぬことはないわよ」


 アデルの肩をぽんぽんと二回叩くと、「お願いします」と苦笑いをしている。優秀な解毒薬はあるので、「いつでも任せておいて」とニッコリ笑いかける。
 そんな二人のやり取りと半分に割られたパンを見比べて、小さなため息をそれぞれついたあと、意を決したように口に運んだり、ちぎって口に入れたりと、各々食べ始めた。
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