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ココナと出かける約束
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執務室の扉が開いた。目尻を拭うココナを見て、デリアが小さくため息をつく。
「アンナ様?」
「私は何もしていないわよね?」
「えぇ、アンナリーゼ様は何も」
ハンカチをポケットから出してもう一度目尻拭ってデリアに微笑んだ。「それならいいですけど」とデリアは私を見てから、ワゴンに持ってきたお茶を用意してくれる。ココナが慌てて「私が」と申し出たが、首を横に振るデリア。今の状況としては、私がココナに話を聞いていることになっているので、デリアはそちらを優先するべきだと主張しているのだ。
「デリアにお茶を用意してもらうだなんて……」
「たまにはいいのではなくて?」
「アンナリーゼ様。私たちの憧れはデリアなのです。憧れの存在からお茶をいただけることは名誉です」
「いいわね、デリアには慕ってくれる人がいて」
「アンナ様?」
「どうかして?」
「私は、アンナ様を慕っていますよ?お忘れですか?」
私はハッとして、「ごめんなさい」と謝った。デリアはクスっと笑い、私とココナの前にお茶を出してくれた。お茶菓子にと出してくれたのは、見たことのないお菓子だった。デリアに視線を向けると「キティからの試作品です」とだけ教えてくれる。
「どんなお菓子なのかしら?」
「中にクリームが入っているらしいです。外がパイの生地のような物なので、クリームが出ないように上手に食べてくださいと言っていました」
「……キティがもしかしなくてもコーコナ領に来ていたりするの?」
「はい。新しいお菓子を是非とも食べてほしくて、慌てて来たらしいです」
「……アンバー領より近いとはいえ、無謀じゃない?」
「アンナ様の側でいきいきと自分の道を見つけて働く女性たちは、だいたいアンナ様と同じで、前しか見ていませんから。こうだと思えば、まっしぐらです!猫もビックリですよ」
デリアに指摘されて、思い浮かべた。ナタリー、カレン、デリア、エレーナ……。みな、それぞれが夢や目標を持って、思い思いに邁進している。もちろん、キティは料理人見習いから抜擢もあって、その意思もかなり強い。店に出す前には、私の試食が必要なので、わざわざ私が公都へ帰るのを待たずして、乗り込んできたようだ。
「……向こう見ずな感じは、私と同じか」
ため息をひとつついたあと、切り分けてみると、仲からクリームが出てくる。それを口に運ぶが、どうも食べにく。近くに紙ナプキンがあったので、お菓子をくるんで食べた。
「甘さはちょうどいいわ。とてもおいしい……。あとは食べ方ね?」
「アンナ様のような食べ方でいいのではないですか?キティに伝えて来ますけど」
「確かに、こっちのほうが食べやすいわ。店に出してもいいわと伝えて」
頷くと、デリアがキティに伝えに言ってくれる。私は続きを食べながら、ココナへ向き合う。同じような食べ方をしているココナはおいしいのか頬を緩ませた。
「おいしいでしょ?キティのお菓子は」
「はい、こんなにおいしい物があるだなんて、ビックリしました」
「もし会ったら直接言ってあげるといいわ」
「そうします。それで、新しい町へはいつにしますか?」
「明日はどう?私もそろそろ戻らないと行けないから」
「あとひと月のあいだの予定は決まっていますからね。わかりました」
そう言って、残りのシュークリームを口に入れてお茶を飲んだ。「御馳走さまです」と微笑み、席から立ち上がる。ココナは、少しホッとしたような表情を見る限り、私と座ると言うことに少し抵抗があったようだった。
「アンナ様?」
「私は何もしていないわよね?」
「えぇ、アンナリーゼ様は何も」
ハンカチをポケットから出してもう一度目尻拭ってデリアに微笑んだ。「それならいいですけど」とデリアは私を見てから、ワゴンに持ってきたお茶を用意してくれる。ココナが慌てて「私が」と申し出たが、首を横に振るデリア。今の状況としては、私がココナに話を聞いていることになっているので、デリアはそちらを優先するべきだと主張しているのだ。
「デリアにお茶を用意してもらうだなんて……」
「たまにはいいのではなくて?」
「アンナリーゼ様。私たちの憧れはデリアなのです。憧れの存在からお茶をいただけることは名誉です」
「いいわね、デリアには慕ってくれる人がいて」
「アンナ様?」
「どうかして?」
「私は、アンナ様を慕っていますよ?お忘れですか?」
私はハッとして、「ごめんなさい」と謝った。デリアはクスっと笑い、私とココナの前にお茶を出してくれた。お茶菓子にと出してくれたのは、見たことのないお菓子だった。デリアに視線を向けると「キティからの試作品です」とだけ教えてくれる。
「どんなお菓子なのかしら?」
「中にクリームが入っているらしいです。外がパイの生地のような物なので、クリームが出ないように上手に食べてくださいと言っていました」
「……キティがもしかしなくてもコーコナ領に来ていたりするの?」
「はい。新しいお菓子を是非とも食べてほしくて、慌てて来たらしいです」
「……アンバー領より近いとはいえ、無謀じゃない?」
「アンナ様の側でいきいきと自分の道を見つけて働く女性たちは、だいたいアンナ様と同じで、前しか見ていませんから。こうだと思えば、まっしぐらです!猫もビックリですよ」
デリアに指摘されて、思い浮かべた。ナタリー、カレン、デリア、エレーナ……。みな、それぞれが夢や目標を持って、思い思いに邁進している。もちろん、キティは料理人見習いから抜擢もあって、その意思もかなり強い。店に出す前には、私の試食が必要なので、わざわざ私が公都へ帰るのを待たずして、乗り込んできたようだ。
「……向こう見ずな感じは、私と同じか」
ため息をひとつついたあと、切り分けてみると、仲からクリームが出てくる。それを口に運ぶが、どうも食べにく。近くに紙ナプキンがあったので、お菓子をくるんで食べた。
「甘さはちょうどいいわ。とてもおいしい……。あとは食べ方ね?」
「アンナ様のような食べ方でいいのではないですか?キティに伝えて来ますけど」
「確かに、こっちのほうが食べやすいわ。店に出してもいいわと伝えて」
頷くと、デリアがキティに伝えに言ってくれる。私は続きを食べながら、ココナへ向き合う。同じような食べ方をしているココナはおいしいのか頬を緩ませた。
「おいしいでしょ?キティのお菓子は」
「はい、こんなにおいしい物があるだなんて、ビックリしました」
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「あとひと月のあいだの予定は決まっていますからね。わかりました」
そう言って、残りのシュークリームを口に入れてお茶を飲んだ。「御馳走さまです」と微笑み、席から立ち上がる。ココナは、少しホッとしたような表情を見る限り、私と座ると言うことに少し抵抗があったようだった。
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