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ふぅー

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 私は気分よく食堂を出た。それは、隣の席の領民の会話を聞けたから。私はたいしたことはしていない。ヨハンがほとんどのことを対応してくれていたわけだし、領民たちもたくさん手伝ってくれていた。
 私のしたことなんてほんの小さなことに過ぎないが、評価をしてくれる人がいることが嬉しかった。


「ご機嫌ですね?」
「まぁねぇ?」


 ふふっと笑いが自然に込み上げてくる。頬は緩み、ニヤニヤとしていると、さすがにアデルは引いている。


「そんな表情しないでよ?私の恋人でしょ?」


 道の真ん中で抗議をすると、少し声が大きかったのか、「夫婦喧嘩は家でやれ!」なんて野次が飛んでくる。その方向を見てニッコリ笑いかけ「いいでしょ?仲がいい証拠だもの!」とアデルの腕に抱きついた。
 慣れっこのアデルははいはいというふうで、もう驚いてくれないのだが、背中には冷たい汗が流れているようだ。


「アンナ?」
「どうかして?」
「ニコニコして誤魔化してもダメだよ?」


 アデルが何か言いたげにしているので、視線の先を見た。そこにはとても綺麗な宝飾品が売っている店があって、どうやら気に入ったものがあったようだ。リアンへの贈り物を考えているようだった。


「じゃあ、あの宝飾店で何か買ってくれる?」


 少し甘えた声を出して寄り添えば、何回も頷いている。一緒に出かけることが多くなってきたおかげか、私はアデルのことを理解出来て来たらしい。アデルのためにというよりかは、リアンの幸せのために小芝居にのってあげることにしたのだ。ダリアは何が起こっているかわからず、困惑しているので、私は元気よく「アデルに贈り物を強請るの!」とダリアの腕をとって宝飾店へ入って行く。
 わけもわからず、連れられて歩くダリアへそっと耳打ちをしたら頷いてくれた。


「アデルは本当に好きなのですね?」
「そうなの。最初こそ年の差とか子どものこととか気にしていたけど、真っすぐな想いに心を開いてくれたようよ?」
「……まだだと思いますけどね?」
「そう?」
「はい。ミア様が成人するまでは……ダメかなって思っていますが、いつまでも待てるので」
「……愛が深いわ」
「アデルって、私より年はうえですよね?」
「えぇ、そうですよ」


 リアンの名は出さずに会話を続ける私たちは宝飾品の店の扉をひらいた。アデルは目当てのもののところへ向かうので私もついていった。そっとどんなものを選んだのかと覗き込むと、リアンにとても似合いそうなネックレスであった。私のために何かを選ぶときはイマイチなのに、リアンに選ぶときはとても似合っているので、さすがの愛だなと呟いた。
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