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あぜ道を歩く
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食事も済ませ、コットンからの要望も聞いた今、用事は済んだ。後は、私の自由時間となるので、それならばとしたいことをする。
「コットンからの要望は少し時間をもらうことになりそうよ。大丈夫?」
「えぇ、収穫までになんとかしていただければ……」
「鍛冶師も一緒に呼ぶから、まずは、その鍛冶師に在庫含めて持ってきてもらいましょう。整備や新しいものを作るときから、その青年に頼めばいいでしょ?」
コットンは頷いたので、次は私の要望を伝えることにした。私からの要望は、畑のあぜ道を歩いて、今の綿花農家の状況を聞くことだ。現地の人からの声を聞くことは大事だと思っているので、そのまま案内をしてもらううことにした。
「コットン、少し歩きたいのだけど?」
「畑をですか?」
「えぇ、ダメかしら?」
「いいですけど、ステイ殿下はどうされますか?」
私たちの会話を聞いていたステイが自分に話を振られたのかと少し驚いている。私が畑を歩きたいと言っているのをぼんやり聞いていたようだ。
「そうね。アンナリーゼが行くのなら、私も」
「虫は大丈夫ですか?」
「えぇ、虫は大丈夫。蛇は少し苦手かしら?」
「まだ、この時期だと蛇はそれほど活発ではありませんから、見かけないと思いますよ?」
「それなら、ついて行くわ!」
私たちは立ち上がり、私はアデルを、ステイは護衛たちを呼んでいる。後片付けを始めたデリアは話の内容を聞いていたので、次のお茶の用意をして待っていてくれるだろう。
「アンナ様、今からどこかへ向かうのですか?」
「えぇ、そうよ。少し、綿花畑を案内してもらおうと思うの」
「綿花畑をですか?アンナ様、昨年、でしたか?綿花摘みに参加していませんでしたか?」
「してた!でも、その頃と少し品種も違うのよ」
「……どれも同じにしか見えませんけど」
「そう?より高級感が出る綿花に改良が出来たから、それをね」
「ちなみに、高級感と言いますと、どのようなものがあるんでしょうか?」
そうねぇ?と考えながら私のドレスの白い部分、柔らかい生地を触らせる。何事が始まったのかとアデルはギョッとした。
「あ、あ、あ、あ、アンナ様?」
「この質感わかる?」
「はへ?」
「この質感。何を考えていたの?顔が赤いわ!」
「……何も。質感ですね。質感」
「そう。それと、アデルのシャツの質感を比べてみて……」
「あっ!アンナ様の方がツルっとしているようで、でもしっかり折り込んであるのがわかります。私のシャツは貴族用とはいえ……少しざらついていますね?」
「そうなの。男女問わず、お肌が弱い方がいるから、なんとか出来ないかって、開発したのがこの綿花。生糸の織物も私はとても好きだけど、こっちの方が肌に馴染むきがするのよね」
空笑いをしているアデルを見上げ、私は首を傾げた。「アンナリーゼ」とステイに呼ばれたので、私はアデルを伴いステイの元へと向かう。
「護衛には話をしたから、行きましょう」
「ステイ様、さっきよりなんだかワクワクしていませんか?」
「しているに決まっているわ。こんなところを歩くのも初めてですもの」
張り切っているステイとハラハラしているコットンに挟まれながら、私たちは綿花畑を歩いていく。
「まだ、花には早いですが、綿花が咲くころ、綿が出来るころはとても綺麗ですよ!」
「本当?そんな時期に来たかったわね。いつ頃がいいかしら?」
「そうですね。夏くらいがいいですかね?」
「夏には綿が出来てますよ?花の見ごろは、あと2,3ヶ月先くらいでしょうか?」
「なるほど。その時期に来れるよう、視察の調整をしましょう!今まで、一面花の景色なんて、見たことがないですから」
うっとりしているステイ。離宮にも花園はあるが、それ以上のものは見たことがないようだ。見たいというので、その時期ならまだ、この領地滞在しているはずだというと、案内を頼まれた。コットンは忙しい時期に入って行くので、案内は無理だろうから、私が引き受けることになった。
「そういえば、ここは、綿花畑なのよね?」
「えぇ、そうです」
「綿花を加工する場所もあるのかしら?」
「ありますよ!領地の産業なので、もちろん、領地内にあります。私の領地では、多くの女性が活躍していますが、特に綿の加工工場は多くの女性が働いています」
「そうなの?働くというのは、男性の印象だけど……」
「そうですよね。一般的にはそういう印象があると思いますが、服を作ったり、色味を合わせたり……女性の感性が必要な場面も多いので、コーコナ領では特に女性が活躍している職場が多くあります」
「見てみたいわ!」
「もちろん、ご案内しますよ!私の領地については、包み隠さず案内させていただきます」
「それは嬉しいわ!」と笑いながら、あぜ道をテンポよく歩いていく。デコボコとした道ではあるのに、何事もなかったかのように歩くステイをコットンは驚いていた。
「ステイ様って、何か武術はされているのですか?」
「どうして?」
「あぜ道は歩きにくいと思うのですが、難なく歩いているように見えるので」
「そうね。護身用程度には鍛えているわよ?これでも、護衛を付けないといけない程度には、いろいろとあるから」
ふふっと笑うステイに重い影はなく、ただただ、「素敵な景色」と感激する声だけが聞こえて来た。
「コットンからの要望は少し時間をもらうことになりそうよ。大丈夫?」
「えぇ、収穫までになんとかしていただければ……」
「鍛冶師も一緒に呼ぶから、まずは、その鍛冶師に在庫含めて持ってきてもらいましょう。整備や新しいものを作るときから、その青年に頼めばいいでしょ?」
コットンは頷いたので、次は私の要望を伝えることにした。私からの要望は、畑のあぜ道を歩いて、今の綿花農家の状況を聞くことだ。現地の人からの声を聞くことは大事だと思っているので、そのまま案内をしてもらううことにした。
「コットン、少し歩きたいのだけど?」
「畑をですか?」
「えぇ、ダメかしら?」
「いいですけど、ステイ殿下はどうされますか?」
私たちの会話を聞いていたステイが自分に話を振られたのかと少し驚いている。私が畑を歩きたいと言っているのをぼんやり聞いていたようだ。
「そうね。アンナリーゼが行くのなら、私も」
「虫は大丈夫ですか?」
「えぇ、虫は大丈夫。蛇は少し苦手かしら?」
「まだ、この時期だと蛇はそれほど活発ではありませんから、見かけないと思いますよ?」
「それなら、ついて行くわ!」
私たちは立ち上がり、私はアデルを、ステイは護衛たちを呼んでいる。後片付けを始めたデリアは話の内容を聞いていたので、次のお茶の用意をして待っていてくれるだろう。
「アンナ様、今からどこかへ向かうのですか?」
「えぇ、そうよ。少し、綿花畑を案内してもらおうと思うの」
「綿花畑をですか?アンナ様、昨年、でしたか?綿花摘みに参加していませんでしたか?」
「してた!でも、その頃と少し品種も違うのよ」
「……どれも同じにしか見えませんけど」
「そう?より高級感が出る綿花に改良が出来たから、それをね」
「ちなみに、高級感と言いますと、どのようなものがあるんでしょうか?」
そうねぇ?と考えながら私のドレスの白い部分、柔らかい生地を触らせる。何事が始まったのかとアデルはギョッとした。
「あ、あ、あ、あ、アンナ様?」
「この質感わかる?」
「はへ?」
「この質感。何を考えていたの?顔が赤いわ!」
「……何も。質感ですね。質感」
「そう。それと、アデルのシャツの質感を比べてみて……」
「あっ!アンナ様の方がツルっとしているようで、でもしっかり折り込んであるのがわかります。私のシャツは貴族用とはいえ……少しざらついていますね?」
「そうなの。男女問わず、お肌が弱い方がいるから、なんとか出来ないかって、開発したのがこの綿花。生糸の織物も私はとても好きだけど、こっちの方が肌に馴染むきがするのよね」
空笑いをしているアデルを見上げ、私は首を傾げた。「アンナリーゼ」とステイに呼ばれたので、私はアデルを伴いステイの元へと向かう。
「護衛には話をしたから、行きましょう」
「ステイ様、さっきよりなんだかワクワクしていませんか?」
「しているに決まっているわ。こんなところを歩くのも初めてですもの」
張り切っているステイとハラハラしているコットンに挟まれながら、私たちは綿花畑を歩いていく。
「まだ、花には早いですが、綿花が咲くころ、綿が出来るころはとても綺麗ですよ!」
「本当?そんな時期に来たかったわね。いつ頃がいいかしら?」
「そうですね。夏くらいがいいですかね?」
「夏には綿が出来てますよ?花の見ごろは、あと2,3ヶ月先くらいでしょうか?」
「なるほど。その時期に来れるよう、視察の調整をしましょう!今まで、一面花の景色なんて、見たことがないですから」
うっとりしているステイ。離宮にも花園はあるが、それ以上のものは見たことがないようだ。見たいというので、その時期ならまだ、この領地滞在しているはずだというと、案内を頼まれた。コットンは忙しい時期に入って行くので、案内は無理だろうから、私が引き受けることになった。
「そういえば、ここは、綿花畑なのよね?」
「えぇ、そうです」
「綿花を加工する場所もあるのかしら?」
「ありますよ!領地の産業なので、もちろん、領地内にあります。私の領地では、多くの女性が活躍していますが、特に綿の加工工場は多くの女性が働いています」
「そうなの?働くというのは、男性の印象だけど……」
「そうですよね。一般的にはそういう印象があると思いますが、服を作ったり、色味を合わせたり……女性の感性が必要な場面も多いので、コーコナ領では特に女性が活躍している職場が多くあります」
「見てみたいわ!」
「もちろん、ご案内しますよ!私の領地については、包み隠さず案内させていただきます」
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