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お待たせしました

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 馬車からデリアとココナが降りてきた。二人の手には大きなバスケットが2つずつ。あの中には、私のお願いが入っているのだろう。
 私を見つけ、デリアが近寄ってくる。「こっちよ」と手招きすると、急いで来てくれる。


「お待たせしました」
「うぅん、大丈夫よ。そうだ、昼食の前に飲み物の用意をしてくれる?」
「かしこまりました」


 デリアとココナ以外にももう一人メイドが来ていたようで、先に場所の準備をするために小高い場所まで向かっている。


「新しい子?」
「はい、そうです。コーコナ領で雇うことにしたのですが……ダメでしょうか?」
「うぅん、いいわよ?ココナがいいと思った子なのでしょ?」
「はい、よく働く子で、とても助かっています」
「なら、私に言うことは何もないわ。デリア!」


 デリアを呼ぶと頷いている。何を意味して読んだのか、ちゃんと理解してくれているようだ。疑わしいところはないか調べてもらうことになる。それは、私の専属侍女であるデリアの仕事でもあった。ディルの目が届かない場合、デリアが判断することもある。そのうえで、私に決断を求めることもあるのだが、今のところ、デリアの目に狂いはない。もちろん、私も独自にちゅんちゅんが調べてくれるので、デリアと答え合わせをするだけだ。


「お茶の準備だけでしたら、それほど時間はかかりませんから、もう少しだけお待ちください」


 デリアとココナが連携よく準備をしていく。その中で、デリアはココナを挟んでメイドに仕事を振っている。それが、あまりにも自然で、調べていますというのがわからない。コーコナ領にはあまり重要な案件は例の森の奥以外はないので、ココナの裁量に任せている。
 テキパキと進むお茶の準備を見ているとあっという間に終わってしまう。
 デリアから視線がくるので、私はステイに声をかける。


「ステイ様、お茶の用意が出来ましたので、少し休憩しましょうか?」
「えぇ、いいわね。コットンも一緒にいいかしら?」
「もちろんですよ。いいわよね?コットン」
「……いいのですか?私のような者が一緒でも」
「何故?一緒でいいじゃない?」


 ステイが不思議そうにしている。一応、コットンは私たちと同じ机につくということに抵抗があったようだ。
 私の方を見て確認をしてくるので頷いた。


「ステイ様が同じ机でいいと言っているのだから、一緒で大丈夫」
「アンナリーゼ?」
「ステイ様、身分を明かすとこれが普通の反応です。貴族と同じ席に着くということに抵抗を示します。ステイ様がいいと言っているので、コットンも同じ席に座らせますが、そうでない場合は、強要はダメですよ?」
「そういうものなのね。覚えておくわ。コットン、ごめんなさい」
「いえ、少し驚いてしまって……こちらこそ、すみませんでした」


「いいのよ」と笑いかけるステイにコットンは頷いて席に着いた。アデルは後ろで少しソワソワしていた。護衛ではあるが、領地では普通に私と同じ席に座ってご飯を食べているから。私を貴族だってすっかり忘れているようなアデルは、何かを思い出したように焦っているのだろう。


「お茶をお淹れしてもよろしいでしょうか?」
「お願い」


 デリアにお茶を淹れてもらい私の前へまず置いた。その後、ステイ、コットンの順番に置いて行く。私がまず最初に手を付ける。毒見という意味があるので、コクコクと飲めば、それをステイが見つめる。
 ただ、私は毒が入っていたとしても……効かないのだ。多少味が変だな?くらいには感じるが、黙っていればわからない。それは、口にしないことにした。
 もちろん、デリアの淹れたお茶に毒など入っていない。むしろ、無味無臭の万能解毒剤が入っている。外でお茶を淹れる場合は、必ず入れるようにしている。何が混ざるかわからないからこその準備ではある。


「あら、このお茶、美味しいわ!」
「それは良かった。アンバー領のものですよ。今度、お渡ししましょうか?」
「えぇ、この前買ったものとは、少し違うのね」
「そうですね。領地にある農園では、数種類のお茶の作り方を試しているので、味が変わります」


「なるほど」と頷いている。ステイもお茶には詳しいので、興味があるのだろう。


「お待たせいたしました」


 デリアが声をかけてくるのは、昼食の用意が出来たのだろう。お茶を飲んで一息入れたところで、ちょうどいいタイミングであった。
 そういったところも考えられているのだろう。


「準備が出来たようね。お配りして。そのあと、あちらの護衛の方々にも。護衛の方には……」
「アデルに申し付けています。あと、お茶も用意させていただきました」
「わかったわ。よろしくね?」
「……あの、私もよろしかったのですか?」
「えぇ、もちろん!コットンも食べてみて。簡単なものだから」


 紙包みを渡され、これはなんだろう?と首を傾げている。私は包みから中を半分だけ出す。食べ方がわからないというふうだったので、「見ててください」と二人に声をかけた。
 手を洗ったあとでも、手で食べるのは気になるかと思って、紙包みを持って食べればいいような食べ方を料理長にお願いしたのだ。


「変わった食べ方ね?でも、手が汚れないし、パンの中に挟んであるものが落ちなくて……これは、いい発想ね。素晴らしいわ!」


 パンに齧りつくステイは絶賛のあと、パクパクと食べてしまった。1つでは足りないのか、机の真ん中に置かれているものに手を伸ばしていた。


「コットンもそれで足りなかったら、食べていいからね?」


 どうやらコットンも1つでは足りなかったようで、2つも持っていった。護衛の方も人気のようで、あっという間になくなったようだった。
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