1,317 / 1,480
夜会を楽しみに
しおりを挟む
「そういえば、あの方……ステイ様?はどちらの方なのですか?」
さっきまで一緒にいたステイたちの方を見ながら、ニコリと笑っている。紹介してという意味なのか……とカレンを窺う。
「そんなに警戒しないで?私たちの仲ではないですか?」
「……そんなに笑顔で言われると、断れないわ。誰かと教えるのは構わないの。今年の始まりの夜会には出てくれることになっているから」
「というと、ローズディアの方と言うことですね?私はこちらの出身ですし、知らない人がいるとは思いませんが……あんなに美人な方を忘れるわけありませんし」
ジッとステイの方を見ては誰かしら?と考えている。私が知る限りでは、カレンが社交界デビューした頃は男性として参加していたと聞いている。当時のことは知らないが、相当美人なステイを思いおこすことはできるのかと、カレンを見つめた。
「……わかりませんわ。一人、それらしい人を思い浮かべたのですけど、男性ですから……あれほど、ドレスを着こなされては女性として自信をなくしそうですもの」
カレンは、誰か一人、思い当たる人がいるらしい。私は、その人が誰なのか、興味がわいた。
……カレンのことですもの。核心に近いところを攻めてくるのではなくて?
悔しそうにしながら、まだ、ステイを見つめている。「あの方ではないですわよね?」とブツブツ言っているのが聞こえてくるので、聞き出すことにした。どのみち、カレンんは答えを要求してくるのだ。思い当たる人が正解かどうか、私も知りたい。
「カレンはどう思っているのか聞かせてくれるかしら?」
「あら、答えはお預けなのですね?」
「えぇ、聞きたいわ!」
「そうですね……私が思い浮かべている方と同一人物なら、あの女性にしては高身長なところが頷けます。当時はもっと硬い感じがありましたが」
「硬い?」
「筋肉質というか、がっしりしていたような気がします。そこで、実は迷っているのです。お化粧もされていますが、私の知る方の面影もどことなしにあるんですよ」
「ズバリ、その方のお名前は?」
「名前もステイ様と言いますわ。公の異母弟であるステイ殿下ではないかと推測したのですが、美しすぎて……霞んでしまいますわ!」
「カレンは大丈夫。どんな美人がきても霞むどころか、霞ませる方だから。ステイ様と並んでも申し分ないと思うよ?」
私が褒めると嬉しそうに頬に手をあてがっている。その姿だけで絵になるのだから。正直、私も羨まうその美貌と微笑み返しておく。
「それで、正解はどうですか?」
「カレンの想像通りの方ですよ」
「ステイ殿下なのですか?でも、私の知る……」
「ずっと、離宮に閉じこもっていたそうよ。やっと、出てきてくれる気になったらしいの。それで、夜会用にドレスを見に来たのよ」
「……ステイ殿下ですか。私も一時期憧れていましたの。公と違って誠実だと聞いておりますし、優しいうえにあの美しさ。年を重ねてその美しさが失われることなく、むしろ、今こそが最上とばかり、輝いていますわ」
ため息をつくカレン。旦那様以外にそんな表情をするのか……と少し驚いた。どうやら、カレンが憧れていたというのは本当のようだ。
「私たちの世代で、ステイ殿下に憧れを持たない令嬢はいなかったですわ!私もそのうちの一人でしたが、いつの間にか表舞台には出られることがなくなったので……どうされているか、心配はしていたのです」
「旦那様以外に少女のように焦がれるのね?」
「もちろんです!ずっと、憧れはありましたから。旦那様とは別の愛ですわ。社交界にぱたりと出なくなってしまったのは、何故ですか?」
「前公に止められていたらしいわ。本当は今もこれからもなんだけど、公が代替わりしたから、もういいのではないかって。ステイ様に公を脅かすような存在ではないことは聞いているから」
「社交界に戻ってこられるなら、始まりの夜会は倒れる方がたくさんいるかもしれませんね」
カレンは嬉しそうに笑い、楽しみだと呟いた。それと同時にドレスなのが気になるようだ。
「お母様とお姉様を思うと、ドレスに身を包んでいたいそうよ。私は素敵だからいいと思うのだけど、カレンはどう思う?」
「もちろん素敵ですわ。あのドレスを着こなすのは難しいはず……ご自身に合うドレスをしっかり研究なさっていますわね。負けていられませんわ!」
カレンは流行らしい流行を追わない。自身にあったドレスこそが1番なのだからという持論がある。ナタリーはそのあたりもきちんと聞き取り、カレンに合ったドレスを提供しているので、売上にも貢献してくれている。
「ステイ殿下にご挨拶したいけど……」
「いきましょうか」
「えっ?あちらに向かうのですか?」
「もちろんよ!ご挨拶だけでもしましょう!カレンなら、きっと気に入ってくれるはずだから」
私はカレンの手を取り、ステイやナタリーの元へと急ぐ。カレンの気が変わらないうちに、顔なじみになっておくのは必要だと、二人に近づき「ステイ様」と呼びかけると「なんだい?」と微笑んだ。
さっきまで一緒にいたステイたちの方を見ながら、ニコリと笑っている。紹介してという意味なのか……とカレンを窺う。
「そんなに警戒しないで?私たちの仲ではないですか?」
「……そんなに笑顔で言われると、断れないわ。誰かと教えるのは構わないの。今年の始まりの夜会には出てくれることになっているから」
「というと、ローズディアの方と言うことですね?私はこちらの出身ですし、知らない人がいるとは思いませんが……あんなに美人な方を忘れるわけありませんし」
ジッとステイの方を見ては誰かしら?と考えている。私が知る限りでは、カレンが社交界デビューした頃は男性として参加していたと聞いている。当時のことは知らないが、相当美人なステイを思いおこすことはできるのかと、カレンを見つめた。
「……わかりませんわ。一人、それらしい人を思い浮かべたのですけど、男性ですから……あれほど、ドレスを着こなされては女性として自信をなくしそうですもの」
カレンは、誰か一人、思い当たる人がいるらしい。私は、その人が誰なのか、興味がわいた。
……カレンのことですもの。核心に近いところを攻めてくるのではなくて?
悔しそうにしながら、まだ、ステイを見つめている。「あの方ではないですわよね?」とブツブツ言っているのが聞こえてくるので、聞き出すことにした。どのみち、カレンんは答えを要求してくるのだ。思い当たる人が正解かどうか、私も知りたい。
「カレンはどう思っているのか聞かせてくれるかしら?」
「あら、答えはお預けなのですね?」
「えぇ、聞きたいわ!」
「そうですね……私が思い浮かべている方と同一人物なら、あの女性にしては高身長なところが頷けます。当時はもっと硬い感じがありましたが」
「硬い?」
「筋肉質というか、がっしりしていたような気がします。そこで、実は迷っているのです。お化粧もされていますが、私の知る方の面影もどことなしにあるんですよ」
「ズバリ、その方のお名前は?」
「名前もステイ様と言いますわ。公の異母弟であるステイ殿下ではないかと推測したのですが、美しすぎて……霞んでしまいますわ!」
「カレンは大丈夫。どんな美人がきても霞むどころか、霞ませる方だから。ステイ様と並んでも申し分ないと思うよ?」
私が褒めると嬉しそうに頬に手をあてがっている。その姿だけで絵になるのだから。正直、私も羨まうその美貌と微笑み返しておく。
「それで、正解はどうですか?」
「カレンの想像通りの方ですよ」
「ステイ殿下なのですか?でも、私の知る……」
「ずっと、離宮に閉じこもっていたそうよ。やっと、出てきてくれる気になったらしいの。それで、夜会用にドレスを見に来たのよ」
「……ステイ殿下ですか。私も一時期憧れていましたの。公と違って誠実だと聞いておりますし、優しいうえにあの美しさ。年を重ねてその美しさが失われることなく、むしろ、今こそが最上とばかり、輝いていますわ」
ため息をつくカレン。旦那様以外にそんな表情をするのか……と少し驚いた。どうやら、カレンが憧れていたというのは本当のようだ。
「私たちの世代で、ステイ殿下に憧れを持たない令嬢はいなかったですわ!私もそのうちの一人でしたが、いつの間にか表舞台には出られることがなくなったので……どうされているか、心配はしていたのです」
「旦那様以外に少女のように焦がれるのね?」
「もちろんです!ずっと、憧れはありましたから。旦那様とは別の愛ですわ。社交界にぱたりと出なくなってしまったのは、何故ですか?」
「前公に止められていたらしいわ。本当は今もこれからもなんだけど、公が代替わりしたから、もういいのではないかって。ステイ様に公を脅かすような存在ではないことは聞いているから」
「社交界に戻ってこられるなら、始まりの夜会は倒れる方がたくさんいるかもしれませんね」
カレンは嬉しそうに笑い、楽しみだと呟いた。それと同時にドレスなのが気になるようだ。
「お母様とお姉様を思うと、ドレスに身を包んでいたいそうよ。私は素敵だからいいと思うのだけど、カレンはどう思う?」
「もちろん素敵ですわ。あのドレスを着こなすのは難しいはず……ご自身に合うドレスをしっかり研究なさっていますわね。負けていられませんわ!」
カレンは流行らしい流行を追わない。自身にあったドレスこそが1番なのだからという持論がある。ナタリーはそのあたりもきちんと聞き取り、カレンに合ったドレスを提供しているので、売上にも貢献してくれている。
「ステイ殿下にご挨拶したいけど……」
「いきましょうか」
「えっ?あちらに向かうのですか?」
「もちろんよ!ご挨拶だけでもしましょう!カレンなら、きっと気に入ってくれるはずだから」
私はカレンの手を取り、ステイやナタリーの元へと急ぐ。カレンの気が変わらないうちに、顔なじみになっておくのは必要だと、二人に近づき「ステイ様」と呼びかけると「なんだい?」と微笑んだ。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる