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ほっぺについているわ
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「アンナリーゼの両親か……興味あるわ」
「素敵な方たちでしたよ!」
「ナタリーはどこで出会ったの?」
「私、アンナリーゼ様とは同級生ですので、挨拶させていただきました」
「なるほど。それにしても、卒業式の話を聞くだけでも、アンナリーゼの回りではいろいろとあるのね」
私は、軽く笑って誤魔化しておいたが、ナタリーも笑っている。もちろん、私とは違う種類の笑いであることはわかる。
「アンナリーゼ様の卒業式は、大変でしたね?」
「……まぁ、普通の卒業式とは違ったわよね?」
「何があったの?聞きたいわ!」
興味津々というステイにナタリーも話したくて仕方がないというふうだ。もちろん、後ろでニコライも聞き耳を立てているが、このままではドレス選びどころの話ではない。
「お話をするなら、まずは喫茶の方でしませんか?おいしいお菓子とお茶を用意していますから」
ニコライに目配せするとすぐに二階へ連絡をしてくれる。ステイに提案してみると、それもそうね?と先にお茶にすることになった。
「ここのお菓子はとっても美味しいと聞いているわ」
「この前、持っていったお菓子もここの職人が作っているものですよ!」
「あのハニーパイ?」
「そうです」
「あれは、絶品だったわ!また、食べたいと思っていたの!」
「ステイ殿下も甘党なのですか?」
いつの間にか、ナタリーがステイと普通に話を始めてしまったので、アンジェラがつまらなさそうに私の手を握ってくる。私はその手を握り返し、「おやつは何がいい?」と聞いてやる。二階へ移動する間、アンジェラも考えているようで、きっさに入った瞬間の甘い香りで、アンジェラの心は決まったようだ。
「クレープ!」
「わかったわ!クリームと果物をたっぷり入れてもらいましょう!」
「ママは?」
「そうね、私は季節のケーキにしようかしら?もちろん、追いクリームをして。アンジェラも一口食べる?」
「食べる!」
クスクス笑いあっていると、いつの間にかこちらをステイとナタリーが見ていたようで、母娘のやり取りを微笑ましく見られていた。
「アンナリーゼもそんな表情をするのね?」
「そんな?母親のってことですか?」
「えぇ、そうよ。私の知るアンナリーゼは、どこか男性にも負けないほどの勝気なところがあって、策士だったり領地を思う領主であったり……だけど、お母さんの表情は初めて見たと思って」
「一応、三児の母ですから。と言っても、私はほとんど子育てには参加していませんし、むしろ、私を母として認めてくれているのは、私やジョージア様でもなく、子どもたちだと思います。離れて暮らすことも、屋敷にいることも少ないですし、屋敷にいても執務室にこもりっきりですからね」
「アンナリーゼ様は、お子様たちと少しでも一緒の時間を考えていらっしゃいますよ?」
「それでも、他の『母』と呼ばれる人に比べれば、少ないわ」
「母親からの愛情に限らず、子どもが受ける愛は時間は然程関係ないんじゃない?アンジェラを見ていたら、そう思うわ」
ステイがアンジェラの頭をくしゃくしゃと撫でると少しムッとしたようにステイを睨む。デリアに艶々にしてもらった髪が乱れたことを怒っているようだった。
「ごめんなさいな、ちびちゃん。こんなに小さくても女の子なのね」
ステイが手ぐしでアンジェラの髪をとかしていくと、サラサラになった。満足そうにして「ありがとう」とスカートをつまんでお礼を言っている。その様子を見て、クスっと笑うステイ。
「最近、この挨拶がお気に入りのようで……」
「あら、可愛らしいわ!」
アンジェラのお礼にステイもノリノリで返している。そのあと、こちらにどうぞと席を用意してもらい、私たちは各々席へかける。
私の隣にアンジェラ。ナタリーの隣にステイというふうに分かれ、注文をすると、すぐにお目当てのものが出てくる。アンジェラは言っていた通りクレープ。私は季節のケーキクリームマシマシの追いクリーム乗せ。ナタリーはシンプルにシフォンケーキ。ステイは季節の果物がたくさんのっているタルトを頼んだ。私とアンジェラのお皿を見て、ステイがギョッとしている。ナタリーは見慣れた光景なので、普通に話をしようとして遮られた。
「……母娘で、生クリーム?量、おかしくない?」
「おかしくないですよ?普通ですし、いつもよりすくないわよね?アンジェラ」
「少ない……」
上手にフォークとナイフを使って切り分けクリームを乗っけている。そのまま大きな口を開けてパクっと食べる姿はとても可愛らしい。クリームをつけすぎたようで、ほっぺについてしまっている。
「アンジェラ、ほっぺについているわ」
そっと拭ってやると目を細めてされるがままだ。そのあと、チラリと私のケーキを見ていたので、クスっと笑う。
「一口あげる約束ね?はい、口を開けて」
ケーキを切り分け、クリームを乗せてアンジェラの口へと運ぶ。屋敷では他の子たちの目があるので、こんな甘えたことはしないのだが、今日は一人だからと甘えるらしい。私もついつい可愛くて、口に運んでしまった。
「素敵な方たちでしたよ!」
「ナタリーはどこで出会ったの?」
「私、アンナリーゼ様とは同級生ですので、挨拶させていただきました」
「なるほど。それにしても、卒業式の話を聞くだけでも、アンナリーゼの回りではいろいろとあるのね」
私は、軽く笑って誤魔化しておいたが、ナタリーも笑っている。もちろん、私とは違う種類の笑いであることはわかる。
「アンナリーゼ様の卒業式は、大変でしたね?」
「……まぁ、普通の卒業式とは違ったわよね?」
「何があったの?聞きたいわ!」
興味津々というステイにナタリーも話したくて仕方がないというふうだ。もちろん、後ろでニコライも聞き耳を立てているが、このままではドレス選びどころの話ではない。
「お話をするなら、まずは喫茶の方でしませんか?おいしいお菓子とお茶を用意していますから」
ニコライに目配せするとすぐに二階へ連絡をしてくれる。ステイに提案してみると、それもそうね?と先にお茶にすることになった。
「ここのお菓子はとっても美味しいと聞いているわ」
「この前、持っていったお菓子もここの職人が作っているものですよ!」
「あのハニーパイ?」
「そうです」
「あれは、絶品だったわ!また、食べたいと思っていたの!」
「ステイ殿下も甘党なのですか?」
いつの間にか、ナタリーがステイと普通に話を始めてしまったので、アンジェラがつまらなさそうに私の手を握ってくる。私はその手を握り返し、「おやつは何がいい?」と聞いてやる。二階へ移動する間、アンジェラも考えているようで、きっさに入った瞬間の甘い香りで、アンジェラの心は決まったようだ。
「クレープ!」
「わかったわ!クリームと果物をたっぷり入れてもらいましょう!」
「ママは?」
「そうね、私は季節のケーキにしようかしら?もちろん、追いクリームをして。アンジェラも一口食べる?」
「食べる!」
クスクス笑いあっていると、いつの間にかこちらをステイとナタリーが見ていたようで、母娘のやり取りを微笑ましく見られていた。
「アンナリーゼもそんな表情をするのね?」
「そんな?母親のってことですか?」
「えぇ、そうよ。私の知るアンナリーゼは、どこか男性にも負けないほどの勝気なところがあって、策士だったり領地を思う領主であったり……だけど、お母さんの表情は初めて見たと思って」
「一応、三児の母ですから。と言っても、私はほとんど子育てには参加していませんし、むしろ、私を母として認めてくれているのは、私やジョージア様でもなく、子どもたちだと思います。離れて暮らすことも、屋敷にいることも少ないですし、屋敷にいても執務室にこもりっきりですからね」
「アンナリーゼ様は、お子様たちと少しでも一緒の時間を考えていらっしゃいますよ?」
「それでも、他の『母』と呼ばれる人に比べれば、少ないわ」
「母親からの愛情に限らず、子どもが受ける愛は時間は然程関係ないんじゃない?アンジェラを見ていたら、そう思うわ」
ステイがアンジェラの頭をくしゃくしゃと撫でると少しムッとしたようにステイを睨む。デリアに艶々にしてもらった髪が乱れたことを怒っているようだった。
「ごめんなさいな、ちびちゃん。こんなに小さくても女の子なのね」
ステイが手ぐしでアンジェラの髪をとかしていくと、サラサラになった。満足そうにして「ありがとう」とスカートをつまんでお礼を言っている。その様子を見て、クスっと笑うステイ。
「最近、この挨拶がお気に入りのようで……」
「あら、可愛らしいわ!」
アンジェラのお礼にステイもノリノリで返している。そのあと、こちらにどうぞと席を用意してもらい、私たちは各々席へかける。
私の隣にアンジェラ。ナタリーの隣にステイというふうに分かれ、注文をすると、すぐにお目当てのものが出てくる。アンジェラは言っていた通りクレープ。私は季節のケーキクリームマシマシの追いクリーム乗せ。ナタリーはシンプルにシフォンケーキ。ステイは季節の果物がたくさんのっているタルトを頼んだ。私とアンジェラのお皿を見て、ステイがギョッとしている。ナタリーは見慣れた光景なので、普通に話をしようとして遮られた。
「……母娘で、生クリーム?量、おかしくない?」
「おかしくないですよ?普通ですし、いつもよりすくないわよね?アンジェラ」
「少ない……」
上手にフォークとナイフを使って切り分けクリームを乗っけている。そのまま大きな口を開けてパクっと食べる姿はとても可愛らしい。クリームをつけすぎたようで、ほっぺについてしまっている。
「アンジェラ、ほっぺについているわ」
そっと拭ってやると目を細めてされるがままだ。そのあと、チラリと私のケーキを見ていたので、クスっと笑う。
「一口あげる約束ね?はい、口を開けて」
ケーキを切り分け、クリームを乗せてアンジェラの口へと運ぶ。屋敷では他の子たちの目があるので、こんな甘えたことはしないのだが、今日は一人だからと甘えるらしい。私もついつい可愛くて、口に運んでしまった。
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