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今日は何をするんだい?
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次の日の朝、私は日課となる運動を中庭でしていると、エマを連れてアンジェラが歩いてきた。今はヒーナがジョージとネイトの面倒をみているようだ。
「ママ、おはよう」
「おはよう、アンジェラ、エマ」
「おはようございます、アンナリーゼ様」
駆け寄ってくるアンジェラを抱きとめると、嬉しそうに笑っている。何が嬉しいのだろう?と思えば、視線の先に私の模擬剣を見つけたようだ。
「アンもしたい!」
模擬剣を差し私に訴えかけてくるので、わかったわと頷いた。それにしても、大人用の模擬剣しかないのだけど、どうしようかと思っていたら、どうやらエマが用意してきてくれていたようだ。用意周到……デリアに似て優秀なようだった。私は自分の模擬剣を持ってきて、地べたに座る。男装しているので特に問題はない。アンジェラも運動を目的としていたようで、動きやすい格好をしていた。明らかに、私に稽古を頼むつもりで来たのだろう。エマのメイド服の膨らみもきっとそのたぐいのものだ。
「その前に、体を動かしておくわよ。ケガをしたらダメだからね」
同じように地べたに座りストレッチををする。ぐぅーっと言いながら、伸ばしていくアンジェラとエマ。なんだか、やりやすいようで、私もマネしてみた。それにしても、二人とも体がとても柔らかい。アンジェラは特に小さい頃から転んでもケガをしないなぁと思っていたんだけど、どうやら体が柔らかく上手に力を逃がしているようだ。
十分にあちこち伸ばしたあと、私は自分の模擬剣を持つ。アンジェラも私の両親から贈られた子ども用の模擬剣を持つ。まだ、少し大きいようで持った瞬間にはフラフラとしていたが、私をマネて構えれば、しっかりとこちらに剣先を向けてきた。
「様になっているわ。すごいわね?」
「アンジェラ様はアンナリーゼ様のマネがすごく好きなので、この構えは素晴らしいですよ」
「じゃあ、型をしましょうか。基本的なね。よく見ていて」
前に立って、ゆっくり見せるように模擬剣を振っていく。ジッと見られている視線を背中に感じながら、型を終わらせる。難しいことはない。私が母から1番最初に教えてもらったものだ。
「わかった?」
「……もう一回」
「わかったわ。エマ、真後ろじゃなくて、少し斜めから見てちょうだい」
「かしこまりました。アンジェラ様こちらに……」
斜め後ろに移動したアンジェラとエマを確認してから、私はもう一度同じ型をして見せる。今度はちゃんと見えたようで頷いている。やってみて、違うところを教えて、見せてを繰り返す。私より飛びぬけて才能があるようで、数回剣を振るだけで形にはなっていた。
「アンジェラ、もう少し腰を落としてみようか?」
私の言ったことがわからないようで、エマに隣に立ってもらい、立って剣を振るのと少し腰を落とした状態にする違いを見せる。軽く膝をまげ、いつでも一歩を踏み出せる状況を見てやってみている。さっきの棒立ちより断然動きやすかったようで、前に前に進んでいってしまった。
「できた?」
「できているわ!今日はこの型の練習ね?」
何度も何度も体に覚え込ませるように剣を振るうアンジェラに時々剣で邪魔をしながら、見ていた。比べ物にならないほど、綺麗な型にさすがだな……と苦笑いをする。
……私でも2ヶ月はかかったのに。こんなに早く習得出来るなんてね。エマも少し出来ているわね。ナイフや短剣だから少し合わせ方が違うから、教えてあげなきゃ。
エマと声をかけ、持っている短剣を借りて型を見せる。こんな感じでして見てと言えば、こちらも才能があるようで、見てわかるほど見違えた。
そんな様子をジョージアが見ていたらしい。眠そうにしながら、おはようと声をかけてくる。
「ジョージア様、おはよう」
「朝からすごいものを見た気がするよ。アンジーもエマも俺より剣の扱いがうまいだなんて……」
「教え方がいいんだと思いますよ」
ニコッと笑うと、そうだろうねと私を見て笑う。アンジェラの近くに行き抱き上げる。
「アンナは、今日は何をするの?」
「公に呼ばれているので城へ行きますよ。夜会の前にと呼ばれているので」
「そっか。俺はお呼びではない?」
「ジョージア様も一緒に行きますか?」
「いや、いい。俺は呼ばれていないんだってこと、わかっているから。じゃあ、朝ごはんへ行こう」
「拗ねてます?」
「なんで?」
クスクス笑うジョージアではあるが、おもしろくなさそうではあった。私はもう1度誘おうかと思って口を開けると、ディルが急いでこちらにやってきた。何事?と思って声を掛ければ、何やら騒がしそうな雰囲気が玄関から漂ってくる。
「……公は、大人しく待つということが出来ない人なのですかね?」
「屋敷に来たんだ?」
「そうみたいですね。ディルのあの表情を見れば、なんだか申し訳ない気持ちになりますよ」
「なんで?」
「……いつも突然ですからね。本当、もう少し考えてほしいものですよね?」
全く!と口を尖らせていると、ジョージアがクスクス笑う。私はそちらを見上げれば、アンジェラも不思議そうにジョージアを見ていた。
「どうかしましたか?」
「アンナが、それを言うんだと思うと、おかしくて」
「どういうことですか?」
「大人しく待つということが出来ないのはアンナも一緒だろ?」
指摘され違います!と言い返したところで、ディルの少し後ろからついてきている公が見えた。どうやら、私が思っている以上に、公は焦っているようであった。
「ママ、おはよう」
「おはよう、アンジェラ、エマ」
「おはようございます、アンナリーゼ様」
駆け寄ってくるアンジェラを抱きとめると、嬉しそうに笑っている。何が嬉しいのだろう?と思えば、視線の先に私の模擬剣を見つけたようだ。
「アンもしたい!」
模擬剣を差し私に訴えかけてくるので、わかったわと頷いた。それにしても、大人用の模擬剣しかないのだけど、どうしようかと思っていたら、どうやらエマが用意してきてくれていたようだ。用意周到……デリアに似て優秀なようだった。私は自分の模擬剣を持ってきて、地べたに座る。男装しているので特に問題はない。アンジェラも運動を目的としていたようで、動きやすい格好をしていた。明らかに、私に稽古を頼むつもりで来たのだろう。エマのメイド服の膨らみもきっとそのたぐいのものだ。
「その前に、体を動かしておくわよ。ケガをしたらダメだからね」
同じように地べたに座りストレッチををする。ぐぅーっと言いながら、伸ばしていくアンジェラとエマ。なんだか、やりやすいようで、私もマネしてみた。それにしても、二人とも体がとても柔らかい。アンジェラは特に小さい頃から転んでもケガをしないなぁと思っていたんだけど、どうやら体が柔らかく上手に力を逃がしているようだ。
十分にあちこち伸ばしたあと、私は自分の模擬剣を持つ。アンジェラも私の両親から贈られた子ども用の模擬剣を持つ。まだ、少し大きいようで持った瞬間にはフラフラとしていたが、私をマネて構えれば、しっかりとこちらに剣先を向けてきた。
「様になっているわ。すごいわね?」
「アンジェラ様はアンナリーゼ様のマネがすごく好きなので、この構えは素晴らしいですよ」
「じゃあ、型をしましょうか。基本的なね。よく見ていて」
前に立って、ゆっくり見せるように模擬剣を振っていく。ジッと見られている視線を背中に感じながら、型を終わらせる。難しいことはない。私が母から1番最初に教えてもらったものだ。
「わかった?」
「……もう一回」
「わかったわ。エマ、真後ろじゃなくて、少し斜めから見てちょうだい」
「かしこまりました。アンジェラ様こちらに……」
斜め後ろに移動したアンジェラとエマを確認してから、私はもう一度同じ型をして見せる。今度はちゃんと見えたようで頷いている。やってみて、違うところを教えて、見せてを繰り返す。私より飛びぬけて才能があるようで、数回剣を振るだけで形にはなっていた。
「アンジェラ、もう少し腰を落としてみようか?」
私の言ったことがわからないようで、エマに隣に立ってもらい、立って剣を振るのと少し腰を落とした状態にする違いを見せる。軽く膝をまげ、いつでも一歩を踏み出せる状況を見てやってみている。さっきの棒立ちより断然動きやすかったようで、前に前に進んでいってしまった。
「できた?」
「できているわ!今日はこの型の練習ね?」
何度も何度も体に覚え込ませるように剣を振るうアンジェラに時々剣で邪魔をしながら、見ていた。比べ物にならないほど、綺麗な型にさすがだな……と苦笑いをする。
……私でも2ヶ月はかかったのに。こんなに早く習得出来るなんてね。エマも少し出来ているわね。ナイフや短剣だから少し合わせ方が違うから、教えてあげなきゃ。
エマと声をかけ、持っている短剣を借りて型を見せる。こんな感じでして見てと言えば、こちらも才能があるようで、見てわかるほど見違えた。
そんな様子をジョージアが見ていたらしい。眠そうにしながら、おはようと声をかけてくる。
「ジョージア様、おはよう」
「朝からすごいものを見た気がするよ。アンジーもエマも俺より剣の扱いがうまいだなんて……」
「教え方がいいんだと思いますよ」
ニコッと笑うと、そうだろうねと私を見て笑う。アンジェラの近くに行き抱き上げる。
「アンナは、今日は何をするの?」
「公に呼ばれているので城へ行きますよ。夜会の前にと呼ばれているので」
「そっか。俺はお呼びではない?」
「ジョージア様も一緒に行きますか?」
「いや、いい。俺は呼ばれていないんだってこと、わかっているから。じゃあ、朝ごはんへ行こう」
「拗ねてます?」
「なんで?」
クスクス笑うジョージアではあるが、おもしろくなさそうではあった。私はもう1度誘おうかと思って口を開けると、ディルが急いでこちらにやってきた。何事?と思って声を掛ければ、何やら騒がしそうな雰囲気が玄関から漂ってくる。
「……公は、大人しく待つということが出来ない人なのですかね?」
「屋敷に来たんだ?」
「そうみたいですね。ディルのあの表情を見れば、なんだか申し訳ない気持ちになりますよ」
「なんで?」
「……いつも突然ですからね。本当、もう少し考えてほしいものですよね?」
全く!と口を尖らせていると、ジョージアがクスクス笑う。私はそちらを見上げれば、アンジェラも不思議そうにジョージアを見ていた。
「どうかしましたか?」
「アンナが、それを言うんだと思うと、おかしくて」
「どういうことですか?」
「大人しく待つということが出来ないのはアンナも一緒だろ?」
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