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三人娘は公都でも有名なおてんばか?
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馬車に揺られ、私、ナタリー、ダリアの声は弾んでいく。久しぶりの公都に高揚しているというのもあるだろう。
「懐かしいですわ。半年ほど前にアンナ様とチェスを夜会で対したこと……覚えていらっしゃいますか?」
「もちろんよ!とんでもなく強いからビックリしてしまったわ!」
「それでもアンナリーゼ様がサラっと勝ってしまわれましたわよね?」
「そんなに簡単じゃないわよ?」
ナタリーが私を崇めるようにサラっとなんていうので窘める。実際、ダリアはエルドアで軍師をしていただけはあり、チェスはとても強い。戦場での実経験が少ないところを補えば、セバスやイチアにも肩を並べるほどになるに違いない。
「そんなことないです。アンナ様はとても強かった。公とも話をしましたが、チェスで勝ったことがないとか……。公族の方々は昔から戦略を叩き込まれているはずなのにですよ?とても素晴らしいです」
「そんなことないわよ。私は幼いころから訓練されているからできるだけで……後宮から出て軍師となったダリアには遠く及ばないわ」
ニッコリ笑い褒めると、ナタリーが褒め合いも程々にしてくださいませと少し膨れている。ナタリーも嗜む程度には出来るのだが、セバスはもちろんのこと、ウィルにさえ勝てないと嘆いているのだから。
ウィルも近衛大隊長だから、一定の教養として軍を動かす兵法は知っている。チェスが出来ないわけはない。
「……ごめんね」
「いいですよ。私が最弱ですから。でも、それでいいと思っています」
「どうしてですの?」
「だって、アンナリーゼ様やセバスが戦略で、ウィルが剣で守ってくれるでしょ?私は何も出来ないけど、みなの無事をいつも祈っているわ」
「なるほど。そういうこともありますね?この国で何かあれば、セバス様も現地へ向かわれることもありますから……」
「馬に乗れないから、正直なところ足手まといになりそうだから、セバスは公宮できっと缶詰よ!」
「ナタリー!」
「本当のことですよ。そのほうが全体を指揮しやすいですからね。予備兵や兵糧の管理まで、全部こなしてしまいそうですもの」
確かにと笑うと、ダリアも想像したようでクスクス笑った。エルドアから追放されて、もっと落ち込むのではないかと思っていたが、意外と今の生活を楽しんでいるようだ。
「何よりは、何もないことですけどね。セバスもウィルも私の大切な友人ですから。危ない場所へ行ってほしくはないわ!」
「同感ね!小競り合いもなくなればいいのにっていつも思っているの」
「……エルドアは数年に1度、忘れたころに小競り合いの話を聞くことがありますが、ローズディアはどうなのですか?」
うーんとナタリーは思い出しているようだ。ここ数年の出来事を。
「そうね……あまり大きな事件はなさそうですよね?」
「えぇ、今のところは。どちらも昨年の疫病で立て直しているところだから、それどころではないのよね」
「なるほど。昨年は本当に大変でしたからね。まだ、公都では後処理が?」
「そうみたいね。パルマからの報告を読む限り南の方の回復がやっぱり遅いようね。人の投入もしているけど……たくさん人が亡くなったことで、立ち行かない人も多いって」
「そういう方たちはどうされるのですか?」
「国が補償出来るものは多くはないわ。お金にも物資にも限りがあるからね。アンバー領からも相当な支援物資は出しているけど……うちもけして楽な領地ではないから、他領からの収入を得ることも大切なのよね」
「幸い豊作が続きましたからね。麦や芋類の主食となるものが売れるので助かるとセバスが言っていましたわ」
「そうね、エルドアにも輸出するし……外貨の取得も出来るわ。価値が多少低いから、今は貯める一方になるだろうけど……」
「いろいろと考えているのですね?」
「領主だからね?遊んでばかりではいられないし、守りたい人がたくさんいるもの」
ニコリと笑えば、ダリアは感心してくれる。他人事のようなダリアに、私の領民はダリアも含まれるよ?というと驚いている。当たり前だろう。セバスはアンバー領を拠点と決めたのだがら、ダリアも一員だ。
「ダリアは公都のような賑やかなほうがいい?」
「それも素敵ですけど、私はアンバー領の騒がしさは好きですよ。子どもたちの笑い声が聞こえてきたり、気さくに町の人が挨拶してくれたり……エルドアではそういうことはなかったので、私はアンバー領の温かさに憧れます」
「よかった!やっぱり公都がいいって言われると……辛いもの」
「それぞれの良さがありますよ。私はアンバー領をとても気に入っただけです」
ダリアの本心なのだろう。優しい微笑みに私もホッとした。アンバー領に屋敷を建てる予定もあるのだが、それも楽しみにしてくれているらしい。
「そう言ってくれると嬉しいわ!でも、まずは……せっかく公都に来たのだから、楽しみましょう!」
「私たち……お茶会荒らしって呼ばれているのを知っていましたか?」
「私たちって……私も含まれるの?」
「もちろんです。アンナリーゼ様とカレンと私。今年はダリアも含まれますね!」
ナタリーから思わぬ情報が入ってきた。私はお茶会自体にあまり行っていないはずなのに、いつの間にか、公都でも有名なおてんばに認定されてしまったようだ。自国では有名過ぎる話ではあるのだが、こちらでもかと思うと自重するべき?と考えたが、それこそ、今更だろうと計画をネリネリ始めた。
「懐かしいですわ。半年ほど前にアンナ様とチェスを夜会で対したこと……覚えていらっしゃいますか?」
「もちろんよ!とんでもなく強いからビックリしてしまったわ!」
「それでもアンナリーゼ様がサラっと勝ってしまわれましたわよね?」
「そんなに簡単じゃないわよ?」
ナタリーが私を崇めるようにサラっとなんていうので窘める。実際、ダリアはエルドアで軍師をしていただけはあり、チェスはとても強い。戦場での実経験が少ないところを補えば、セバスやイチアにも肩を並べるほどになるに違いない。
「そんなことないです。アンナ様はとても強かった。公とも話をしましたが、チェスで勝ったことがないとか……。公族の方々は昔から戦略を叩き込まれているはずなのにですよ?とても素晴らしいです」
「そんなことないわよ。私は幼いころから訓練されているからできるだけで……後宮から出て軍師となったダリアには遠く及ばないわ」
ニッコリ笑い褒めると、ナタリーが褒め合いも程々にしてくださいませと少し膨れている。ナタリーも嗜む程度には出来るのだが、セバスはもちろんのこと、ウィルにさえ勝てないと嘆いているのだから。
ウィルも近衛大隊長だから、一定の教養として軍を動かす兵法は知っている。チェスが出来ないわけはない。
「……ごめんね」
「いいですよ。私が最弱ですから。でも、それでいいと思っています」
「どうしてですの?」
「だって、アンナリーゼ様やセバスが戦略で、ウィルが剣で守ってくれるでしょ?私は何も出来ないけど、みなの無事をいつも祈っているわ」
「なるほど。そういうこともありますね?この国で何かあれば、セバス様も現地へ向かわれることもありますから……」
「馬に乗れないから、正直なところ足手まといになりそうだから、セバスは公宮できっと缶詰よ!」
「ナタリー!」
「本当のことですよ。そのほうが全体を指揮しやすいですからね。予備兵や兵糧の管理まで、全部こなしてしまいそうですもの」
確かにと笑うと、ダリアも想像したようでクスクス笑った。エルドアから追放されて、もっと落ち込むのではないかと思っていたが、意外と今の生活を楽しんでいるようだ。
「何よりは、何もないことですけどね。セバスもウィルも私の大切な友人ですから。危ない場所へ行ってほしくはないわ!」
「同感ね!小競り合いもなくなればいいのにっていつも思っているの」
「……エルドアは数年に1度、忘れたころに小競り合いの話を聞くことがありますが、ローズディアはどうなのですか?」
うーんとナタリーは思い出しているようだ。ここ数年の出来事を。
「そうね……あまり大きな事件はなさそうですよね?」
「えぇ、今のところは。どちらも昨年の疫病で立て直しているところだから、それどころではないのよね」
「なるほど。昨年は本当に大変でしたからね。まだ、公都では後処理が?」
「そうみたいね。パルマからの報告を読む限り南の方の回復がやっぱり遅いようね。人の投入もしているけど……たくさん人が亡くなったことで、立ち行かない人も多いって」
「そういう方たちはどうされるのですか?」
「国が補償出来るものは多くはないわ。お金にも物資にも限りがあるからね。アンバー領からも相当な支援物資は出しているけど……うちもけして楽な領地ではないから、他領からの収入を得ることも大切なのよね」
「幸い豊作が続きましたからね。麦や芋類の主食となるものが売れるので助かるとセバスが言っていましたわ」
「そうね、エルドアにも輸出するし……外貨の取得も出来るわ。価値が多少低いから、今は貯める一方になるだろうけど……」
「いろいろと考えているのですね?」
「領主だからね?遊んでばかりではいられないし、守りたい人がたくさんいるもの」
ニコリと笑えば、ダリアは感心してくれる。他人事のようなダリアに、私の領民はダリアも含まれるよ?というと驚いている。当たり前だろう。セバスはアンバー領を拠点と決めたのだがら、ダリアも一員だ。
「ダリアは公都のような賑やかなほうがいい?」
「それも素敵ですけど、私はアンバー領の騒がしさは好きですよ。子どもたちの笑い声が聞こえてきたり、気さくに町の人が挨拶してくれたり……エルドアではそういうことはなかったので、私はアンバー領の温かさに憧れます」
「よかった!やっぱり公都がいいって言われると……辛いもの」
「それぞれの良さがありますよ。私はアンバー領をとても気に入っただけです」
ダリアの本心なのだろう。優しい微笑みに私もホッとした。アンバー領に屋敷を建てる予定もあるのだが、それも楽しみにしてくれているらしい。
「そう言ってくれると嬉しいわ!でも、まずは……せっかく公都に来たのだから、楽しみましょう!」
「私たち……お茶会荒らしって呼ばれているのを知っていましたか?」
「私たちって……私も含まれるの?」
「もちろんです。アンナリーゼ様とカレンと私。今年はダリアも含まれますね!」
ナタリーから思わぬ情報が入ってきた。私はお茶会自体にあまり行っていないはずなのに、いつの間にか、公都でも有名なおてんばに認定されてしまったようだ。自国では有名過ぎる話ではあるのだが、こちらでもかと思うと自重するべき?と考えたが、それこそ、今更だろうと計画をネリネリ始めた。
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