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領地初の大規模お茶会

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 昼食を早めに済ませ、私たちはお茶会の用意に大忙しだった。私ではなく、侍従たちがだ。私の周りはリアンが準備をし、お茶会会場ではデリアの声が響いている。


「デリアが戻ってきてくれてよかったです」
「本当ね……元気な声が、ここまで聞こえてくるわ」


 メイドたちへの的確な指示をしているのが伺える。今日は女性だけのお茶会ではなく領地を見学したい領主夫妻や貴族がこぞってくるらしい。といっても、ある程度は招待客を選んではいるのだが、それでもいつの間にか30人程にはなった。領地でお茶会を開いたこともなかったので、侍従たちのほうが慌ただしい。窓の外からせわしなく動き回るメイドたちを見て「働き蜂のようね?」と呟いた。


「働き蜂といえば……ヒーナも会場に?」
「えぇ、そのつもりで用意しているはずよ。今日はダリアもトライド男爵夫人として初めての茶会だし……」
「ダリア様は特に問題はないかと。どこに出しても恥ずかしくない礼儀作法が備わっていますから」
「それもそうね。少し前まで、爵位も高かったのだもの。宮中で働いていたのだから、できるわね。ヒーナのことを心配しているのなら、無用よ。あの子はあの子で命かかっているから完璧にこなすわ。今日はデリアと一緒に私の侍女らしいわね」
「……あの背中を見せるのですか?」
「それが、ある意味ではヒーナへの罰だからね」


 難しい顔をしているリアンに大丈夫よと伝えた。今日はアンバー領総出でおもてなしをしないといけない。エマとリアンが子どもたちの側にいることになっている。


「不安ならアデルもつけるけど?」
「……アデルより、ノクト様のほうがいいです」
「あらあら……では、ノクトとイチアに行ってもらいましょう。お茶会なんて興味もないでしょうから」


 私はメイドに伝えると、二人の元へ向かってくれた。私の準備も整ったので、会場へと向かう。セバスたちの結婚式のためにきた貴族たちは、そのまま残っていたので、もうそろそろ会場に来るころだろう。


「あとはよろしくね?」
「お任せください」


 リアンに別れをつげ、お茶会会場へと向かう。すでに準備は整っており、あとは漏れがないかとデリアが確認をしているところであった。


「アンナ様!」
「デリアは張り切っているわね?」
「もちろんです。この規模のお茶会は大奥様がされて以来ですから。入念に確認もしましたが……不手際があるかもしれないと思うと少し胃のあたりがキュッとします」
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。お屋敷へくるまでに、十分に相手を驚かせているから。私たちのアンバー領をとことん味わってもらいたいわね!」
「それはもちろんです!そういえば、先日のお誕生日会のときに考案されたお菓子も含め、たくさんご用意が出来ています。お茶葉、どのお菓子ともよく合うアンバー領の最高級茶葉で作られたお茶とトライド男爵領で育てていらっしゃるお茶とコーコナ領の薬草茶をご用意しています」
「薬草茶?」


 よくわからず、聞き返してしまうと、ヨハンに聞いて何種類かを試飲したらしい。その中でも感激したものを題しているそうだ。


「私、その薬草茶を飲んでみたいわ!」
「かしこまりました。すぐお持ちしますので、席で待っていてください」


 そういって、一番奥の席を指さすデリアにありがとうといい席につく。すぐに数種類の薬草茶を持ってきてくれた。


「いい香り。薬草茶っていうからてっきり苦い薬のようなものを想像していたのだけど、杞憂ね。心がほっとするようで安らぐわ」
「何が安らぐって?」
「ジョージア様」
「何を飲んでいるの?」


 紅茶より色が濃いように見えるけど……」
「ジョージア様はさすがですね」
「それほどでもないよ」
「一般的なお茶とは違い、何種類も組み合わせるそうだよ」
「なるほど。だからか……口から飲んでいるはずなのに、香る香りがいろいろとするんだ。おもしろい、これはアンバー領でこのようなお茶があるなんて」
「気に入ってもらえたなら良かったわ!」


 ジョージアに薬草茶の話をし、今日はどんなものを使っているの教える。効能もあると言えば、おもしろそうに聞いてくれた。そうこうしているうちにウィルやナタリー、セバス夫妻が入ってくる。


「すごいな。この規模のお茶会が。アンバー領で開かれるなんて!」


 興奮しているウィルにいいでしょ?と聞くと頷いている。どうやら、私が飲んでいるお茶にも興味があるようだった。


「変わった香りのお茶ですね?」
「えぇ、薬草茶を作ってもらったの。次は、こういったものを栽培するのもいいかもしれないわ」


 セバスにカップを渡し、高い位置からお茶をこぼさないようにつぐと香りがたつ。


「ホッとするような香りがするのだけど……」
「今入れたのは花茶と言って、とてもすてきな香りがするのよ。あと、おもしろいものを持ってこさせますね?お茶会が始まるまでまだ少し時間もあるから、目で見て楽しんで!」


 デリアに例のお茶をというと、透明のポットを持ってきてくれた。その中には何個も素敵な花が、花開くところであった。
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