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誕生日会の目玉Ⅲ
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「ママ?」
「どうかした?」
剣術の話にひと段落ついたとき、ふいに私の方を向くアンジェラ。何かワクワクしているような視線を感じてはいるのだが、何のことだろう?と微笑むだけにした。
「アンとジョーのお誕生日会、お菓子いっぱい作る?」
不意に出てきた話題に驚きながらも、きっと誰かが話したのかもしれない。ウィルに視線を送ると左右に首を振っている。子どもたちにはまだ話していないことだったので、ジョージアが話したのだろうか?
「誰から聞いたの?」
「うーん、夢?」
「夢?」
「うん、いーっぱいのお菓子をたくさん食べた夢をみたの!ママが誕生日だから特別って言ってたから……」
「誕生日だから特別……夢……」
私が『予知夢』を常日頃から見ていたのに、最近記憶に残る『予知夢』をみなくなった。それとは反対に、『紫の花』……トリカブトをエルドア国に滞在中、アンジェラからの手紙で知ることになった。私の力が弱まってきているとは思っていたが……やはり、こうもはっきりしているなら、私から能力が移動していっている……確証が持てなかった部分もあったのに、これでもう誤魔化せない。
「……姫さん」
「大丈夫よ、ウィル。エマはいる?」
「ここに。ジョージア様に夕食後お話がありますと伝えてきてくれる?そのあと、アンジェラだけを私の部屋に」
「かしこまりました。旦那様の元へ行ってまいります」
アンジェラたちは、エマを不思議そうに見送っている。私はウィルにも視線を送れば、「ちょっと席を外すよ?」と立ち上がった。
「父様?」
「何もないよ?セバスに用事があったのを思い出しただけだから、すぐに帰ってくる。それまで、姫さんのいうことを聞いてな?」
ミアの頭を撫でて、出入り口へと向かって歩いていく。私は見送り、この場をなんとかしないとと小さくため息をついた。
「アンジェラの言ったことは本当よ。誕生日だから、特別にたくさんのお菓子を用意してもらうことにしたの。ハニーアンバー店のキティとデリア、あとは……リアンね!」
「お母様のお菓子ですか?」
「何?レオ」
「いえ……久しぶりだったので、食べられると思うと嬉しくて」
「よかったわ!この三人が美味しいお菓子を何種類も作ってくれるのよ」
「お菓子は甘いの?」
「アンジェラは甘くて生クリームがいっぱいのお菓子が好みよね?」
うん!と頷くアンジェラ。私の夕食の給仕のために料理を持ってきたデリアがニッコリ笑っている。
「それはアンナ様もですわね?甘くてフワフワで生クリームがたっぷりのお菓子が大好きなのは」
「デリア」
「本当のことです。ちゃんと、お二人に喜んでもらえるよう、追い生クリームもご用意したケーキをご用意いたしますから、楽しみにしていてくださいね?」
「デリアが作るの?」
「デリアも作るのです。アンジェラ様。とってもおいしいケーキですから、きっと気に入ってくれると思いますよ?」
生クリーム大好きなアンジェラは両頬に手をあてうっとりしながらジタバタと足をばたつかせ、まるで恋でもしているかのように頬を紅潮させている。その姿を見れば……私もきっとこんな感じの幼少期だったのだろうと苦笑いをした。ちなみにフレイゼン侯爵家は、私と兄が周りが胸やけをおこすほどの見た目の生クリームに追い生クリームをするほど、生クリームが好きであった。両親はそうでもなかったので、兄妹だけ特殊だったのだろう。それを受け継いだのが、アンジェラと兄の息子フランだった。エリザベスがフランの生クリーム好きには苦労していると聞いたことがあるが、そのぶん体を動かすきっかけとなっているようなので、それほど咎めてはいないらしい。
「ケーキ以外にもご用意しているものがありますから、それも楽しみにしていただけると嬉しいです」
「デリアの味覚は王宮で培ったものですからね!アンジェラ、楽しみにしましょう」
「キティやリアンが作るお菓子もありますから、そちらも絶品ですからね!」
「もう食べたの?」
「試食いたしましたから。みなさまのお口に入るもの。美味しいものをご用意したい侍従の気持ちです」
デリアが私の前に給仕してくれる夕食に手を付けていると、ウィルが戻ってくる。
「なんだか、胸やけしそうな話してなかった?」
「私は胸やけするような話ではなかったけど?」
「……父様、私も生クリームたっぷりのケーキ食べてみたい!」
「……胸やけ案件じゃん!」
私を睨むが、私もアンジェラも何ともないのでツーンとしておく。
「……ミア、それは食べてもいいけど……父様は手伝ってやれないからな?」
「手伝って……?」
「姫さんの量なんて見ただけで、胸やけする。生クリームは少し……姫さんが今持っている小さなスプーン1杯分ならなんとか食べられるけど、それ以上は無理だから!」
「大丈夫よ!ミアが食べられなかったら、私が生クリームだけ食べてあげるから。一度試してみなさい。案外、ミアもペロッと食べてしまうかもしれないわよ?」
「……姫さんの生クリームの量を舐めちゃダメだぞ?普通にしておきなさい。食べるとしても」
わかりましたとウィルの言うことをよく聞くミアは、どうやらこちら側には引き込めなかったらしい。残念であった。
「どうかした?」
剣術の話にひと段落ついたとき、ふいに私の方を向くアンジェラ。何かワクワクしているような視線を感じてはいるのだが、何のことだろう?と微笑むだけにした。
「アンとジョーのお誕生日会、お菓子いっぱい作る?」
不意に出てきた話題に驚きながらも、きっと誰かが話したのかもしれない。ウィルに視線を送ると左右に首を振っている。子どもたちにはまだ話していないことだったので、ジョージアが話したのだろうか?
「誰から聞いたの?」
「うーん、夢?」
「夢?」
「うん、いーっぱいのお菓子をたくさん食べた夢をみたの!ママが誕生日だから特別って言ってたから……」
「誕生日だから特別……夢……」
私が『予知夢』を常日頃から見ていたのに、最近記憶に残る『予知夢』をみなくなった。それとは反対に、『紫の花』……トリカブトをエルドア国に滞在中、アンジェラからの手紙で知ることになった。私の力が弱まってきているとは思っていたが……やはり、こうもはっきりしているなら、私から能力が移動していっている……確証が持てなかった部分もあったのに、これでもう誤魔化せない。
「……姫さん」
「大丈夫よ、ウィル。エマはいる?」
「ここに。ジョージア様に夕食後お話がありますと伝えてきてくれる?そのあと、アンジェラだけを私の部屋に」
「かしこまりました。旦那様の元へ行ってまいります」
アンジェラたちは、エマを不思議そうに見送っている。私はウィルにも視線を送れば、「ちょっと席を外すよ?」と立ち上がった。
「父様?」
「何もないよ?セバスに用事があったのを思い出しただけだから、すぐに帰ってくる。それまで、姫さんのいうことを聞いてな?」
ミアの頭を撫でて、出入り口へと向かって歩いていく。私は見送り、この場をなんとかしないとと小さくため息をついた。
「アンジェラの言ったことは本当よ。誕生日だから、特別にたくさんのお菓子を用意してもらうことにしたの。ハニーアンバー店のキティとデリア、あとは……リアンね!」
「お母様のお菓子ですか?」
「何?レオ」
「いえ……久しぶりだったので、食べられると思うと嬉しくて」
「よかったわ!この三人が美味しいお菓子を何種類も作ってくれるのよ」
「お菓子は甘いの?」
「アンジェラは甘くて生クリームがいっぱいのお菓子が好みよね?」
うん!と頷くアンジェラ。私の夕食の給仕のために料理を持ってきたデリアがニッコリ笑っている。
「それはアンナ様もですわね?甘くてフワフワで生クリームがたっぷりのお菓子が大好きなのは」
「デリア」
「本当のことです。ちゃんと、お二人に喜んでもらえるよう、追い生クリームもご用意したケーキをご用意いたしますから、楽しみにしていてくださいね?」
「デリアが作るの?」
「デリアも作るのです。アンジェラ様。とってもおいしいケーキですから、きっと気に入ってくれると思いますよ?」
生クリーム大好きなアンジェラは両頬に手をあてうっとりしながらジタバタと足をばたつかせ、まるで恋でもしているかのように頬を紅潮させている。その姿を見れば……私もきっとこんな感じの幼少期だったのだろうと苦笑いをした。ちなみにフレイゼン侯爵家は、私と兄が周りが胸やけをおこすほどの見た目の生クリームに追い生クリームをするほど、生クリームが好きであった。両親はそうでもなかったので、兄妹だけ特殊だったのだろう。それを受け継いだのが、アンジェラと兄の息子フランだった。エリザベスがフランの生クリーム好きには苦労していると聞いたことがあるが、そのぶん体を動かすきっかけとなっているようなので、それほど咎めてはいないらしい。
「ケーキ以外にもご用意しているものがありますから、それも楽しみにしていただけると嬉しいです」
「デリアの味覚は王宮で培ったものですからね!アンジェラ、楽しみにしましょう」
「キティやリアンが作るお菓子もありますから、そちらも絶品ですからね!」
「もう食べたの?」
「試食いたしましたから。みなさまのお口に入るもの。美味しいものをご用意したい侍従の気持ちです」
デリアが私の前に給仕してくれる夕食に手を付けていると、ウィルが戻ってくる。
「なんだか、胸やけしそうな話してなかった?」
「私は胸やけするような話ではなかったけど?」
「……父様、私も生クリームたっぷりのケーキ食べてみたい!」
「……胸やけ案件じゃん!」
私を睨むが、私もアンジェラも何ともないのでツーンとしておく。
「……ミア、それは食べてもいいけど……父様は手伝ってやれないからな?」
「手伝って……?」
「姫さんの量なんて見ただけで、胸やけする。生クリームは少し……姫さんが今持っている小さなスプーン1杯分ならなんとか食べられるけど、それ以上は無理だから!」
「大丈夫よ!ミアが食べられなかったら、私が生クリームだけ食べてあげるから。一度試してみなさい。案外、ミアもペロッと食べてしまうかもしれないわよ?」
「……姫さんの生クリームの量を舐めちゃダメだぞ?普通にしておきなさい。食べるとしても」
わかりましたとウィルの言うことをよく聞くミアは、どうやらこちら側には引き込めなかったらしい。残念であった。
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