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お誕生日会の目玉
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農家からの一報が来れば、春の種まきの季節になる。今年は少し早い時期に麦を蒔くことになったと連絡がきた。
「何かあるのかしら?」
私はその一報を読みながら、知らせを持ってきてくれたリリーに尋ねる。リリーもオリーブの町を作るのに忙しいはずなのに、こちらへの定期連絡にも足しげく通ってくれている。
「何って、アンジェラお嬢様の誕生日会とセバスチャンさんの結婚式があるじゃないですか?」
「えっ?でも……」
「アンジェラお嬢様の誕生日会はどの地域でもお祭りですからね。みんな気合を入れて準備しています」
「いつもそうだよね。領地のみんなに祝われて幸せだよね」
「一部商魂たくましいものもいますけどね?」
私の方を見て苦笑いしているので、私のことを指しているのだろう。領地は1つのお店なのだから、売上に貢献してもらいたい。他の領地から来るものには多少の場所代も多く貰っていることをリリーは知っているのだろう。
「領地が潤えばいいのよ。お祭りには、そういう打算も必要なの」
「確かに。お祝いだからと領主様ばかりの負担では領地が傾きますからね!」
「……ほとんど、私のポケットから出てたけどね?領主主催のぶんについては」
「なるほど……守銭奴のように取り立てないと割に合わないですね?」
ニコニコとお互い笑顔をぶつけて笑いあった。
「今年は何か目玉になるものをするのですか?」
「そうね。セバスの結婚式もあるから、貴族が来る予定なのよ。あえて誕生日会は領民が娘を祝ってくれるものだからと通達はしてあるけど……」
「何かあっては困るということですね?」
「そう。近衛の制服を着てウィルには歩いてもらう予定だけど、警備隊のほうもお願いしたいわ」
「わかりました。少し多めに検討するよう声をかけておきます」
「ありがとう。そうそう、目玉にするものはね……甘いものの食べ比べをしようかと思っているの!」
「甘いものですか?」
「えぇ。うちにはキティというお菓子職人がいるのだけど、他にデリアとリアンが出してくれる予定になっているのよ!」
「……アデルが張り切りそうですね?」
「あっ、わかる?」
当日のアデル様子をそれぞれが想像してクスクス笑ったり呆れたりしている。
「そういえば、デリアというと……アンナ様の専属侍女ですか?」
「そうよ!育児で休んでいたんだけど復帰したわ」
「復帰早々、大任ですね?その……どうですか?首尾は」
「ふふっ、これを食べてみて!」
差し出したお菓子を口に入れるリリー。甘いのは苦手だったはずだと記憶していたので、控えた焼き菓子をおくと、少し困った表情をしたのち、パッとはじけたような表情をする。
「どう?おいしいでしょ?」
「本当ですね。甘すぎず……ちょうどいい。これは、旦那様向けのお菓子ですか?」
「そうね。うちのこたちは甘すぎるくらいのほうが好きだから……」
「確かに、少し大人な味がします。それにしても、見事なものですね……。侍女ってお菓子も焼けるのですか?」
「デリアが特殊なだけだと思うわ。リアンもある意味特殊ね」
「……アンナ様の周りには、普通の人がいないのですか?私みたいな」
「……リリーも十分特殊だと思うよ?」
心外です!とでも言いたげな表情にニコッと笑いかけ、思い出してごらん?というと、何も思い足りませんとピシャリと言われてしまった。
「……リリーは、人に好かれるでしょ?気難しそうな人でもすぐに打ち解ける。それも才能だし、なんでも器用にこなせるところとか素敵だと思うわ!」
「ただの器用貧乏です」
「ただのじゃないから特殊なのよ。なんたって、私が認める以上、特殊な人間なのよ」
複雑そうな表情をするリリーを睨むとと、そういうことにしておきますと不服そうに言っている。本当のことなのだから、自覚してくれてもいいだろう。
「デリアは今後専属侍女として復帰するけど、私の周りが少しばかり変わっていることもあるから、その都度、教えを乞うこともあると思うの。よろしくお願いできるかしら?」
「そんなこと、頼まれなくてもですけど、私なんて頼ってくるとは思いませんよ?」
「そんなことないわよ。リアンがいなくなって、私には専属侍女がいなくなったおかげで、ルールも変わっているみたいなの。今はそれを勉強し直しているって感じらしいわ」
「それじゃあ、いつも侍る形になるのですか?」
「そうね、そうなるわ。私にとってはいつもの光景。でも、新しく領地からも拾い上げているから、そのあたりは難しそうね」
「なるほど……ところで、デリアはどこに?」
「今はお菓子を作っているわ。さっきも言ったでしょ?誕生日会の目玉に甘いものの食べ比べように厨房に籠っているわ」
「なるほど……もう、すぐですもんね」
リリーは納得したと頷き、私は手前にあるお菓子をハンカチに包んだ。不思議そうに見ていたのだが、リリーに手を出すようにいい、手の上におく。とても驚いていた。
「少ないけど……みんなで食べて!味は保証するから」
「さっきいただきましたから大丈夫ですよ!」
報告をしに来てくれたリリーはハンカチにくるんだ焼き菓子を持って執務室から出ていく。チラリと見えたが少し口角があがっていたので、焼き菓子を気に入ってくれたのだろう。嬉しそうに持って帰ったリリーを見送った。
「何かあるのかしら?」
私はその一報を読みながら、知らせを持ってきてくれたリリーに尋ねる。リリーもオリーブの町を作るのに忙しいはずなのに、こちらへの定期連絡にも足しげく通ってくれている。
「何って、アンジェラお嬢様の誕生日会とセバスチャンさんの結婚式があるじゃないですか?」
「えっ?でも……」
「アンジェラお嬢様の誕生日会はどの地域でもお祭りですからね。みんな気合を入れて準備しています」
「いつもそうだよね。領地のみんなに祝われて幸せだよね」
「一部商魂たくましいものもいますけどね?」
私の方を見て苦笑いしているので、私のことを指しているのだろう。領地は1つのお店なのだから、売上に貢献してもらいたい。他の領地から来るものには多少の場所代も多く貰っていることをリリーは知っているのだろう。
「領地が潤えばいいのよ。お祭りには、そういう打算も必要なの」
「確かに。お祝いだからと領主様ばかりの負担では領地が傾きますからね!」
「……ほとんど、私のポケットから出てたけどね?領主主催のぶんについては」
「なるほど……守銭奴のように取り立てないと割に合わないですね?」
ニコニコとお互い笑顔をぶつけて笑いあった。
「今年は何か目玉になるものをするのですか?」
「そうね。セバスの結婚式もあるから、貴族が来る予定なのよ。あえて誕生日会は領民が娘を祝ってくれるものだからと通達はしてあるけど……」
「何かあっては困るということですね?」
「そう。近衛の制服を着てウィルには歩いてもらう予定だけど、警備隊のほうもお願いしたいわ」
「わかりました。少し多めに検討するよう声をかけておきます」
「ありがとう。そうそう、目玉にするものはね……甘いものの食べ比べをしようかと思っているの!」
「甘いものですか?」
「えぇ。うちにはキティというお菓子職人がいるのだけど、他にデリアとリアンが出してくれる予定になっているのよ!」
「……アデルが張り切りそうですね?」
「あっ、わかる?」
当日のアデル様子をそれぞれが想像してクスクス笑ったり呆れたりしている。
「そういえば、デリアというと……アンナ様の専属侍女ですか?」
「そうよ!育児で休んでいたんだけど復帰したわ」
「復帰早々、大任ですね?その……どうですか?首尾は」
「ふふっ、これを食べてみて!」
差し出したお菓子を口に入れるリリー。甘いのは苦手だったはずだと記憶していたので、控えた焼き菓子をおくと、少し困った表情をしたのち、パッとはじけたような表情をする。
「どう?おいしいでしょ?」
「本当ですね。甘すぎず……ちょうどいい。これは、旦那様向けのお菓子ですか?」
「そうね。うちのこたちは甘すぎるくらいのほうが好きだから……」
「確かに、少し大人な味がします。それにしても、見事なものですね……。侍女ってお菓子も焼けるのですか?」
「デリアが特殊なだけだと思うわ。リアンもある意味特殊ね」
「……アンナ様の周りには、普通の人がいないのですか?私みたいな」
「……リリーも十分特殊だと思うよ?」
心外です!とでも言いたげな表情にニコッと笑いかけ、思い出してごらん?というと、何も思い足りませんとピシャリと言われてしまった。
「……リリーは、人に好かれるでしょ?気難しそうな人でもすぐに打ち解ける。それも才能だし、なんでも器用にこなせるところとか素敵だと思うわ!」
「ただの器用貧乏です」
「ただのじゃないから特殊なのよ。なんたって、私が認める以上、特殊な人間なのよ」
複雑そうな表情をするリリーを睨むとと、そういうことにしておきますと不服そうに言っている。本当のことなのだから、自覚してくれてもいいだろう。
「デリアは今後専属侍女として復帰するけど、私の周りが少しばかり変わっていることもあるから、その都度、教えを乞うこともあると思うの。よろしくお願いできるかしら?」
「そんなこと、頼まれなくてもですけど、私なんて頼ってくるとは思いませんよ?」
「そんなことないわよ。リアンがいなくなって、私には専属侍女がいなくなったおかげで、ルールも変わっているみたいなの。今はそれを勉強し直しているって感じらしいわ」
「それじゃあ、いつも侍る形になるのですか?」
「そうね、そうなるわ。私にとってはいつもの光景。でも、新しく領地からも拾い上げているから、そのあたりは難しそうね」
「なるほど……ところで、デリアはどこに?」
「今はお菓子を作っているわ。さっきも言ったでしょ?誕生日会の目玉に甘いものの食べ比べように厨房に籠っているわ」
「なるほど……もう、すぐですもんね」
リリーは納得したと頷き、私は手前にあるお菓子をハンカチに包んだ。不思議そうに見ていたのだが、リリーに手を出すようにいい、手の上におく。とても驚いていた。
「少ないけど……みんなで食べて!味は保証するから」
「さっきいただきましたから大丈夫ですよ!」
報告をしに来てくれたリリーはハンカチにくるんだ焼き菓子を持って執務室から出ていく。チラリと見えたが少し口角があがっていたので、焼き菓子を気に入ってくれたのだろう。嬉しそうに持って帰ったリリーを見送った。
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