1,206 / 1,479
いろいろなお菓子の話は
しおりを挟む
「お菓子については、キティに一任するわね?」
「ありがとうございます!リアンさんと考えて美味しいもの用意します!」
「よろしくね?あっ、そうそう、デリアがこちらに向かっているの」
「デリアがですか?」
リアンがこちらを不思議そうに見つめてきたので頷いた。私たちは、誕生日会や結婚式、お茶会が終われば公都に戻る。出産してからしばらく、公都で育児をしていたデリアが、この時期に領地へ来ることに驚いたようだ。
「デリアはアンナリーゼ様が向こうへ戻ってからの復職になるのだとばかり思っていたので驚きました」
「私もよ?もう少し、子どもとの時間をと思っていたのだけど……いてもたってもいられなかったようね。通常の春であれば向こうにいたと思うけど」
「今年は少々違いますからね?」
「セバスの結婚式とお茶会。アンナリーゼ様の専属侍女であるデリアが現場復帰をしないといけない事態といえば、そうですね?」
現状人手が足りないというのはもちろんだが、屋敷内をうまく回せる人がいないことも問題となっていた。私やジョージアが屋敷にいるので、まだ、動いているが、領地運営のことから、屋敷の中の情報収集までとなると、手が回っていないこともある。リアンもこちらに戻すことも検討していたのだが、孤児たちを見てもらうほうを優先させているため、侍従たちがてんやわんやしている。
「デリアがこれば、姫さんの負担も減るんじゃないか?」
「そう簡単な話ではありませんけどね?」
「どうして?」
「アンナリーゼ様が把握している現場のことと、現場で起こっていることの差異はもちろんありますし、それを職場復帰早々で片付けないといけないことは、大変な苦労だと思います」
「デリアは優秀だから、そのあたりはそつなくこなせると思うけど、従事から少し空いているし、新しい侍従も増えているからね」
「さらに、デリアは年若いですからね」
あぁと納得している一同だが、正直なところ、私はデリア復帰について、何も心配はしていない。従事していない期間もあったのは事実ではあるが、夫でありアンバー公爵家筆頭執事でもあるディルが逐一情報共有されていると聞いている。それなら、ガツンと職場である私の側で、存在感を示せばいいだけだ。デリアはアンバー公爵家に入った以降はメイドからのたたき上げ。専属侍女になるために積み上げたものが、他の侍従たちとは違うのだ。過信していると言われるかもしれないが、デリアほど努力の塊を私は知らない。
「何はともあれ、デリアがこちらに来てくれれば何も心配はいらないわ」
「デリアへの信頼は今も厚いのですね?」
「もちろんよ?ナタリーも知っているでしょ?私たち主従は難局を乗り切ってきたことを」
「もちろんですわ。デリアは私の盟友。アンナリーゼ様への愛に関していえば、私に引けを取りませんから」
「アンナリーゼ教の総帥が言うのであれば、確かだよな?セバス」
「僕に振らないでよ、ウィル」
「なんだか、懐かしいわね。デリアが私の側を離れたのはほんの1年くらいなのに」
「それだけ濃い1年を過ごしたってことだろ?姫さん、死地に行ってたわけだし?」
確かにと声を揃えるみなに、苦笑いをする。つい最近病を治めたとばかり思っていたのだが、そうではないらしい。バタバタと過ぎて行ったこの1年。1日1日、誰かの死と隣り合わせだったことを思い出すと背中に冷たいものが流れる。
「本当にいろいろあったわね?」
「こうして慶事もあるわけだし、悪いことばかりではなかったと思うよ」
「アンバー領の学都計画もだいぶ進んでいるしね?」
「特に医療分野はヨハン教授を含め、相当勉強する内容が練られていると聞いていますよ」
「今までみたいに聞きかじっただけではなく、きちんとした勉学を元に医術を学ぶということは、すごいことですよね。なんとなくの民間療法とか合わない薬を飲まされたりということがなくなるのでしょ?」
「格段に救える命が増えるということだろうな。勉強は無茶苦茶大変だって聞いたことはあるけど」
「そうだ、ウィル」
私は思い出したかのようにウィルを呼ぶと、何?と眉を寄せる。私がこんなときに呼ぶのはだいたいいいことではないので、そんな表情なのだろう。
「近衛の中に衛生兵っているの?」
「もちろんいるけど、そこまで熟練しているわけじゃないよ。戦えないものがそちらに回されているって感じだから」
「それなら、衛生兵も育ててみてはどうかしら?せっかく、アンバー領にいるのだから」
「なるほど、それはいいかもしれない。俺自身は衛生兵ではないけど……、応急処置をもう少しできるようにしたいし、姫さんがあのヨハン教授に言ってくれるなら、勉強したいな。領地の警備隊にももちろん勉強させておいたほうがいいな」
ウィルの提案に頷き、それを実行するべく、あとでヨハンに手紙を書くことになった。ウィルが少し悩んでいるところで、おもいついたとニコリと笑う。
「ろくでもないことを思い浮かべてそう」
「そんなことないわよ?レオもそこに入ればと思っただけだし」
「それいいな。本人のやる気次第だけど。リアンも反対はしない?」
「もちろんです、近衛になると意気込んでいたのですから」
リアンは笑うが、気にならないわけはない。でも、応急処置などを覚え、レオが少しでも戦いにおける生存率がたくなるならとウィルもリアンも承諾した。
「ありがとうございます!リアンさんと考えて美味しいもの用意します!」
「よろしくね?あっ、そうそう、デリアがこちらに向かっているの」
「デリアがですか?」
リアンがこちらを不思議そうに見つめてきたので頷いた。私たちは、誕生日会や結婚式、お茶会が終われば公都に戻る。出産してからしばらく、公都で育児をしていたデリアが、この時期に領地へ来ることに驚いたようだ。
「デリアはアンナリーゼ様が向こうへ戻ってからの復職になるのだとばかり思っていたので驚きました」
「私もよ?もう少し、子どもとの時間をと思っていたのだけど……いてもたってもいられなかったようね。通常の春であれば向こうにいたと思うけど」
「今年は少々違いますからね?」
「セバスの結婚式とお茶会。アンナリーゼ様の専属侍女であるデリアが現場復帰をしないといけない事態といえば、そうですね?」
現状人手が足りないというのはもちろんだが、屋敷内をうまく回せる人がいないことも問題となっていた。私やジョージアが屋敷にいるので、まだ、動いているが、領地運営のことから、屋敷の中の情報収集までとなると、手が回っていないこともある。リアンもこちらに戻すことも検討していたのだが、孤児たちを見てもらうほうを優先させているため、侍従たちがてんやわんやしている。
「デリアがこれば、姫さんの負担も減るんじゃないか?」
「そう簡単な話ではありませんけどね?」
「どうして?」
「アンナリーゼ様が把握している現場のことと、現場で起こっていることの差異はもちろんありますし、それを職場復帰早々で片付けないといけないことは、大変な苦労だと思います」
「デリアは優秀だから、そのあたりはそつなくこなせると思うけど、従事から少し空いているし、新しい侍従も増えているからね」
「さらに、デリアは年若いですからね」
あぁと納得している一同だが、正直なところ、私はデリア復帰について、何も心配はしていない。従事していない期間もあったのは事実ではあるが、夫でありアンバー公爵家筆頭執事でもあるディルが逐一情報共有されていると聞いている。それなら、ガツンと職場である私の側で、存在感を示せばいいだけだ。デリアはアンバー公爵家に入った以降はメイドからのたたき上げ。専属侍女になるために積み上げたものが、他の侍従たちとは違うのだ。過信していると言われるかもしれないが、デリアほど努力の塊を私は知らない。
「何はともあれ、デリアがこちらに来てくれれば何も心配はいらないわ」
「デリアへの信頼は今も厚いのですね?」
「もちろんよ?ナタリーも知っているでしょ?私たち主従は難局を乗り切ってきたことを」
「もちろんですわ。デリアは私の盟友。アンナリーゼ様への愛に関していえば、私に引けを取りませんから」
「アンナリーゼ教の総帥が言うのであれば、確かだよな?セバス」
「僕に振らないでよ、ウィル」
「なんだか、懐かしいわね。デリアが私の側を離れたのはほんの1年くらいなのに」
「それだけ濃い1年を過ごしたってことだろ?姫さん、死地に行ってたわけだし?」
確かにと声を揃えるみなに、苦笑いをする。つい最近病を治めたとばかり思っていたのだが、そうではないらしい。バタバタと過ぎて行ったこの1年。1日1日、誰かの死と隣り合わせだったことを思い出すと背中に冷たいものが流れる。
「本当にいろいろあったわね?」
「こうして慶事もあるわけだし、悪いことばかりではなかったと思うよ」
「アンバー領の学都計画もだいぶ進んでいるしね?」
「特に医療分野はヨハン教授を含め、相当勉強する内容が練られていると聞いていますよ」
「今までみたいに聞きかじっただけではなく、きちんとした勉学を元に医術を学ぶということは、すごいことですよね。なんとなくの民間療法とか合わない薬を飲まされたりということがなくなるのでしょ?」
「格段に救える命が増えるということだろうな。勉強は無茶苦茶大変だって聞いたことはあるけど」
「そうだ、ウィル」
私は思い出したかのようにウィルを呼ぶと、何?と眉を寄せる。私がこんなときに呼ぶのはだいたいいいことではないので、そんな表情なのだろう。
「近衛の中に衛生兵っているの?」
「もちろんいるけど、そこまで熟練しているわけじゃないよ。戦えないものがそちらに回されているって感じだから」
「それなら、衛生兵も育ててみてはどうかしら?せっかく、アンバー領にいるのだから」
「なるほど、それはいいかもしれない。俺自身は衛生兵ではないけど……、応急処置をもう少しできるようにしたいし、姫さんがあのヨハン教授に言ってくれるなら、勉強したいな。領地の警備隊にももちろん勉強させておいたほうがいいな」
ウィルの提案に頷き、それを実行するべく、あとでヨハンに手紙を書くことになった。ウィルが少し悩んでいるところで、おもいついたとニコリと笑う。
「ろくでもないことを思い浮かべてそう」
「そんなことないわよ?レオもそこに入ればと思っただけだし」
「それいいな。本人のやる気次第だけど。リアンも反対はしない?」
「もちろんです、近衛になると意気込んでいたのですから」
リアンは笑うが、気にならないわけはない。でも、応急処置などを覚え、レオが少しでも戦いにおける生存率がたくなるならとウィルもリアンも承諾した。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
悲恋を気取った侯爵夫人の末路
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵夫人のプリシアは、貴族令嬢と騎士の悲恋を描いた有名なロマンス小説のモデルとして持て囃されていた。
順風満帆だった彼女の人生は、ある日突然に終わりを告げる。
悲恋のヒロインを気取っていた彼女が犯した過ちとは──?
カクヨムにも公開してます。
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる