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イチアの報告Ⅵ
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「方々をまわりましたが、やはり穀倉地というだけあって、麦畑が全体的に多くなってきましたね?」
「そうよね。副産物てきにいもにも手を出しているけど、まだ、いうほどの需要がないのよ」
「腐りにくいうえに、二度もとれるなんて、貯蔵食物としてはいいと思うんですけどね……」
「対外的には、なかなか売れないわね?」
「今度の春は、いもをメインに売る方向にしてはいかがですか?畑も増えてきているようですし」
領地の方々を見て回ったのだからわかるだろう。麦を中心に、葡萄、いも、砂糖、紅茶がこの領地を代表する農作物だ。麦は他領にも売り込みが終わり、少しずつではあるが、外からお金が入ってくるように今年からなる予定だ。中には、すでに取引をしているところもあるが、領地の底上げを考えるなら、領地内だけのお金の流通では難しい。ハニーアンバー店を通して外のお金が入ってきているが、今後は麦を中心に資金調達が出来ることを嬉しく思う。
「ハニーアンバー店の喫茶で、いもを使ったおかしなどできないのでしょうか?」
「そうすれば、売れるかしら?」
「必ず。流行の発信源はハニーアンバー店ですからね。できれば、今度のお茶会にもいもの使ったおかしをお願いできますでしょうか?」
「……わかった。聞いておくわ!」
イチアからの提案で、いもについても今後売れる方法を考えることになった。私なら、自身が楽しむだけで終わりそうなのにと感心する。
「おかしだけじゃなくてもいいわね?それこそ、セバスの結婚式の料理として何品か入れさせてもらってもいいかしら?」
「もちろんだよ。アンバー領やコーコナ領で次発信したいものがあれば、上手に混ぜてくれるといいよ」
「……セバスの結婚式なのに」
「結婚式だからじゃない?アンナリーゼ様の結婚式のあと、あのウェディングドレスが流行ったって知っていますか?」
「そうだったの?」
セバスがこくんと頷く。当時次期公爵夫人として注目を集めていた私のドレスは、とても注目されていたらしい。同時期に結婚式をした花嫁たちは、私のウェディングドレスを真似る女性が多かったというのを聞いて嬉しくなる。
「効果的な宣伝の場があるなら、使うべきだよ」
「犠牲になっているとは思わないのですか?」
「アデルはどうしてそう思うんだい?僕とウィルは確かにアンナリーゼ様からお給金をもらっていないけど、領地のためになるなら貢献したいと思っているよ」
「……アンナ様への忠誠心は素晴らしいですね」
「忠誠心か。まぁ、ちょっと違うけど……似たようなものだな」
「アデルが思っているようなことはないよ。いいように利用されているなんて思ったことないし。アンナリーゼ様はどんどん新しいことへ挑戦していっている。その全てがいい結果を残しているかといえばそうではないから、僕らもこうして、次の手を打つための模索をずっとしているんだよ」
「……さすがというべきか」とイチアが呟いた。領地を回って見て、感じたことも多いことだろう。イチアを見つめると口を開いた。
「アデルは領地を回ってみて、どう感じた?」
「……いつもアンナ様と回っていますが、平和な領地だなといつも思っています。盗賊がでることもないし、山賊もいない。そういうところは評価するべきところですよね?」
「確かに。いいところに目がいったね?さすが、元近衛。じゃあ、どうしてそういう盗賊たちがいないと思う?」
「……警備兵ですか?今は近衛も土木工事には参加してますが……」
「近衛が領地にいるってだけで、確かに抑止力になるね」
「他にもあるって表情ですね?」
イチアを見ながらアデルは考えているようだ。
「……生活が潤っているから?」
「大雑把に言えばそう。アンバー領は国の中でも優秀な領地になっているんだ。学都を目指すとアンナリーゼ様がおっしゃった通り、読み書きができる人が9割以上出来る。領地のどこか必ずあるはずの貧民街がこの領地にはないというのが、領地が発展していっている証拠だよ」
「言われてみれば、ないな?姫さん、アンバーには元々なかったわけ?」
「あったわよ?普通の領地なら、1つ2つは抱えているものなの。私が来たときのアンバー領は横並びで底にいたから、変わっていく領地には必要ないでしょ?」
「掃除と一緒にとっぱらったのか。貧民街との境界線を」
ウィルの言葉に頷いた。アンバー領は広大である。そのひとつひとつを回り、ゴミを集め、綺麗にした経緯がある。そのときに、整理したのだ。そういう意識を植えさせることなく、領民が手を取り合って仕事をする。領地全体をひとつの店として働いて貰っているので、職種は多く業務も多岐に渡る。そのたびに領民が手伝ってくれるのだ。雇う側としては、多少の採用不採用は必要なので、軽い試験をしている。
「さすがです。アンナリーゼ様」
最悪の領地から抜け出せた安心感のおかげで、今、みなが協力してくれているだと、改めて胸にしまう。
私にできることは、領地に明るい知らせを話すだけ
「そうよね。副産物てきにいもにも手を出しているけど、まだ、いうほどの需要がないのよ」
「腐りにくいうえに、二度もとれるなんて、貯蔵食物としてはいいと思うんですけどね……」
「対外的には、なかなか売れないわね?」
「今度の春は、いもをメインに売る方向にしてはいかがですか?畑も増えてきているようですし」
領地の方々を見て回ったのだからわかるだろう。麦を中心に、葡萄、いも、砂糖、紅茶がこの領地を代表する農作物だ。麦は他領にも売り込みが終わり、少しずつではあるが、外からお金が入ってくるように今年からなる予定だ。中には、すでに取引をしているところもあるが、領地の底上げを考えるなら、領地内だけのお金の流通では難しい。ハニーアンバー店を通して外のお金が入ってきているが、今後は麦を中心に資金調達が出来ることを嬉しく思う。
「ハニーアンバー店の喫茶で、いもを使ったおかしなどできないのでしょうか?」
「そうすれば、売れるかしら?」
「必ず。流行の発信源はハニーアンバー店ですからね。できれば、今度のお茶会にもいもの使ったおかしをお願いできますでしょうか?」
「……わかった。聞いておくわ!」
イチアからの提案で、いもについても今後売れる方法を考えることになった。私なら、自身が楽しむだけで終わりそうなのにと感心する。
「おかしだけじゃなくてもいいわね?それこそ、セバスの結婚式の料理として何品か入れさせてもらってもいいかしら?」
「もちろんだよ。アンバー領やコーコナ領で次発信したいものがあれば、上手に混ぜてくれるといいよ」
「……セバスの結婚式なのに」
「結婚式だからじゃない?アンナリーゼ様の結婚式のあと、あのウェディングドレスが流行ったって知っていますか?」
「そうだったの?」
セバスがこくんと頷く。当時次期公爵夫人として注目を集めていた私のドレスは、とても注目されていたらしい。同時期に結婚式をした花嫁たちは、私のウェディングドレスを真似る女性が多かったというのを聞いて嬉しくなる。
「効果的な宣伝の場があるなら、使うべきだよ」
「犠牲になっているとは思わないのですか?」
「アデルはどうしてそう思うんだい?僕とウィルは確かにアンナリーゼ様からお給金をもらっていないけど、領地のためになるなら貢献したいと思っているよ」
「……アンナ様への忠誠心は素晴らしいですね」
「忠誠心か。まぁ、ちょっと違うけど……似たようなものだな」
「アデルが思っているようなことはないよ。いいように利用されているなんて思ったことないし。アンナリーゼ様はどんどん新しいことへ挑戦していっている。その全てがいい結果を残しているかといえばそうではないから、僕らもこうして、次の手を打つための模索をずっとしているんだよ」
「……さすがというべきか」とイチアが呟いた。領地を回って見て、感じたことも多いことだろう。イチアを見つめると口を開いた。
「アデルは領地を回ってみて、どう感じた?」
「……いつもアンナ様と回っていますが、平和な領地だなといつも思っています。盗賊がでることもないし、山賊もいない。そういうところは評価するべきところですよね?」
「確かに。いいところに目がいったね?さすが、元近衛。じゃあ、どうしてそういう盗賊たちがいないと思う?」
「……警備兵ですか?今は近衛も土木工事には参加してますが……」
「近衛が領地にいるってだけで、確かに抑止力になるね」
「他にもあるって表情ですね?」
イチアを見ながらアデルは考えているようだ。
「……生活が潤っているから?」
「大雑把に言えばそう。アンバー領は国の中でも優秀な領地になっているんだ。学都を目指すとアンナリーゼ様がおっしゃった通り、読み書きができる人が9割以上出来る。領地のどこか必ずあるはずの貧民街がこの領地にはないというのが、領地が発展していっている証拠だよ」
「言われてみれば、ないな?姫さん、アンバーには元々なかったわけ?」
「あったわよ?普通の領地なら、1つ2つは抱えているものなの。私が来たときのアンバー領は横並びで底にいたから、変わっていく領地には必要ないでしょ?」
「掃除と一緒にとっぱらったのか。貧民街との境界線を」
ウィルの言葉に頷いた。アンバー領は広大である。そのひとつひとつを回り、ゴミを集め、綺麗にした経緯がある。そのときに、整理したのだ。そういう意識を植えさせることなく、領民が手を取り合って仕事をする。領地全体をひとつの店として働いて貰っているので、職種は多く業務も多岐に渡る。そのたびに領民が手伝ってくれるのだ。雇う側としては、多少の採用不採用は必要なので、軽い試験をしている。
「さすがです。アンナリーゼ様」
最悪の領地から抜け出せた安心感のおかげで、今、みなが協力してくれているだと、改めて胸にしまう。
私にできることは、領地に明るい知らせを話すだけ
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