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春に向けての準備Ⅷ
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執務室でノーラから報告書の説明を受けていた。そこに馬車が止まる音がする。
「誰かしら?」
「どうかされましたか?」
ノーラは気が付かなかったようで、馬車が来たみたいというとノーラが窓際に近づいていく。この場合、私は近寄ってはダメなので、逆に部屋の真ん中へ移動する。
「アンバー公爵家の紋章があります」
「じゃあ、イチアが戻ってきたのかしら?」
今回の視察は馬で行くことにしていたのだが、バニッシュ領へ向かうときは正式訪問となるので公爵家の紋章入り馬車を用意した。正装等もそのときに一緒に送ったのだが、どうやら、帰りは馬車に乗って帰ってきたらしい。
玄関が騒がしくなってきたので、私も顔を出すことにした。
「ノーラも行きましょう。イチアたちが戻ってきたみたいだがら」
「はい。あの……」
「イチアは知っているでしょ?私たち貴族組が公都へ行っているあいだは、ほとんどの仕事を任せているのよ」
私は執務室から出て行き、後を追うようにノーラが続いた。
「イチア、アデル、ビル!」
「アンナリーゼ様!」
私に気が付いたイチアが階段の上にいる私にただいま戻りましたと挨拶をしてくれる。階段を急いでおり、ご苦労様と労いの言葉をかけた。
「まずは無事に帰ってきてくれたことが嬉しいわ!」
「道中は特に変わったこともなく、賊に襲われるようなこともありませんでした。領地を回ってみて、盗賊に出くわさないということは、アンバー領が自力をつけ、領民にも多少の余力ができた……そんな気持ちにさせてくれました」
「その言葉は、何より嬉しいわ!民が少しでも生活がしやすくなってくれているなら……私のしている事業が間違っていないということよね?」
「そうだと信じています」
疲れた様子も特に見せず、イチアは微笑んだ。アデルも挨拶をしたいと待っている。
「三人とも、領地周遊とバニッシュ領への使い、ありがとう。報告については、少し休んでからのほうがいいと思うから、明日の朝から始めましょう。今日は休んでちょうだい」
「ありがとうございます。それでは、先にバニッシュ夫人よりお預かりしたお手紙だけお渡しします」
「ありがとう、ゆっくりしてね?」
私はイチアから手紙を預かり、執務室へと戻る。ノーラは戸惑いながらも私についてきた。
「あの、アンナリーゼ様」
「どうかして?」
「報告を聞かなくてもよかったのですか?」
「えぇ、明日でも大丈夫でしょう。バニッシュ領については、ここに手紙がありますし、彼らも長旅で疲れているから、報告は急がないわ。明日は一日報告会になるでしょうし、今日、仕上げておかないといけないものは、こちらも終わらせておかないといけないから」
「……そうなのですね?」
「報告をする側もされる側も準備が必要なのよ。特に今回のように長期で周遊してきたことで、感じたことを聞くには、ジックリ時間をとらないと……見落としてしまったらこの旅自体が無駄になってしまうのよ」
執務室に戻り、先程の続きをノーラに促すときちんと報告が出来た。思わず子どもたちを褒めるように褒めてしまったが、特に気にしていないようだ。ホクホクとしたノーラの表情がそれを語っている。
「悪いのだけど、セバスに時間が出来たら執務室へ来てくれるよう伝言をお願いできるかしら?」
「もちろんです」
ノーラが出ていってからしばらくしてセバスが執務室へ入ってきた。ホッとしたような表情を見れば、イチアが戻ってきたことは耳にしたのだろう。
「アンナリーゼ様の方の執務は順調ですか?」
「えぇ、もちろんよ!」
「……僕より多いはずなのに、本当に驚かされることばかりだ」
「そんなことないわよ!私の元にあるものより、セバスのところにあるほうがずっと難しい案件が多いわ」
「……そんなことはないと思うけど」
苦笑いののち、少し休憩をしても?と聞いてくるので、私も休憩をすることにした。暖炉の近くで温められたお湯を注いで紅茶を飲むことにした。
「そういえば、アンナリーゼ様、イチアが戻ってきたのですよね?」
「えぇ、今しがた。それで、セバスを呼んだの」
「僕を?報告会は明日にするってイチアがさっき話してたので知っていますが」
「うん、そうね。報告会は明日すると伝えてあるわ。ここにね?」
そういって1つの封筒を見せる。そこにはバニッシュの紋章が書かれている。先程、イチアから預かったものだ。
「封をきるのですか?」
「えぇ、そのつもり。エールからではなく……」
「ミネルバ様からのお手紙なのですね?お茶会の招待状でしたか?」
「セバスの結婚式も含めて招待させてもらったわ!せっかく、この領地での結婚式だもの。みなが注目しているんだよ」
「そう言われると、少し分厚いように感じますね?」
ミネルバの手紙はセバスの言うとおり、普通のものより分厚く重みを感じる。中はすでにイチアが検閲済みである。字を見れば、リンとした雰囲気からミネルバが伝わってくる。
「まずは、セバスの結婚式の招待状の返事ね」
「ありがとうございます。どうですか?」
「二人とも楽しみにしているって書かれているわ!」
「よかった。おもてなしできるよう準備は整いつつありますから」
セバスも楽しみなようで、その表情を見ればわかる。嬉しいという感情をあまりあらわさないセバスでも滲み出てくるものだと見つめていた。
「誰かしら?」
「どうかされましたか?」
ノーラは気が付かなかったようで、馬車が来たみたいというとノーラが窓際に近づいていく。この場合、私は近寄ってはダメなので、逆に部屋の真ん中へ移動する。
「アンバー公爵家の紋章があります」
「じゃあ、イチアが戻ってきたのかしら?」
今回の視察は馬で行くことにしていたのだが、バニッシュ領へ向かうときは正式訪問となるので公爵家の紋章入り馬車を用意した。正装等もそのときに一緒に送ったのだが、どうやら、帰りは馬車に乗って帰ってきたらしい。
玄関が騒がしくなってきたので、私も顔を出すことにした。
「ノーラも行きましょう。イチアたちが戻ってきたみたいだがら」
「はい。あの……」
「イチアは知っているでしょ?私たち貴族組が公都へ行っているあいだは、ほとんどの仕事を任せているのよ」
私は執務室から出て行き、後を追うようにノーラが続いた。
「イチア、アデル、ビル!」
「アンナリーゼ様!」
私に気が付いたイチアが階段の上にいる私にただいま戻りましたと挨拶をしてくれる。階段を急いでおり、ご苦労様と労いの言葉をかけた。
「まずは無事に帰ってきてくれたことが嬉しいわ!」
「道中は特に変わったこともなく、賊に襲われるようなこともありませんでした。領地を回ってみて、盗賊に出くわさないということは、アンバー領が自力をつけ、領民にも多少の余力ができた……そんな気持ちにさせてくれました」
「その言葉は、何より嬉しいわ!民が少しでも生活がしやすくなってくれているなら……私のしている事業が間違っていないということよね?」
「そうだと信じています」
疲れた様子も特に見せず、イチアは微笑んだ。アデルも挨拶をしたいと待っている。
「三人とも、領地周遊とバニッシュ領への使い、ありがとう。報告については、少し休んでからのほうがいいと思うから、明日の朝から始めましょう。今日は休んでちょうだい」
「ありがとうございます。それでは、先にバニッシュ夫人よりお預かりしたお手紙だけお渡しします」
「ありがとう、ゆっくりしてね?」
私はイチアから手紙を預かり、執務室へと戻る。ノーラは戸惑いながらも私についてきた。
「あの、アンナリーゼ様」
「どうかして?」
「報告を聞かなくてもよかったのですか?」
「えぇ、明日でも大丈夫でしょう。バニッシュ領については、ここに手紙がありますし、彼らも長旅で疲れているから、報告は急がないわ。明日は一日報告会になるでしょうし、今日、仕上げておかないといけないものは、こちらも終わらせておかないといけないから」
「……そうなのですね?」
「報告をする側もされる側も準備が必要なのよ。特に今回のように長期で周遊してきたことで、感じたことを聞くには、ジックリ時間をとらないと……見落としてしまったらこの旅自体が無駄になってしまうのよ」
執務室に戻り、先程の続きをノーラに促すときちんと報告が出来た。思わず子どもたちを褒めるように褒めてしまったが、特に気にしていないようだ。ホクホクとしたノーラの表情がそれを語っている。
「悪いのだけど、セバスに時間が出来たら執務室へ来てくれるよう伝言をお願いできるかしら?」
「もちろんです」
ノーラが出ていってからしばらくしてセバスが執務室へ入ってきた。ホッとしたような表情を見れば、イチアが戻ってきたことは耳にしたのだろう。
「アンナリーゼ様の方の執務は順調ですか?」
「えぇ、もちろんよ!」
「……僕より多いはずなのに、本当に驚かされることばかりだ」
「そんなことないわよ!私の元にあるものより、セバスのところにあるほうがずっと難しい案件が多いわ」
「……そんなことはないと思うけど」
苦笑いののち、少し休憩をしても?と聞いてくるので、私も休憩をすることにした。暖炉の近くで温められたお湯を注いで紅茶を飲むことにした。
「そういえば、アンナリーゼ様、イチアが戻ってきたのですよね?」
「えぇ、今しがた。それで、セバスを呼んだの」
「僕を?報告会は明日にするってイチアがさっき話してたので知っていますが」
「うん、そうね。報告会は明日すると伝えてあるわ。ここにね?」
そういって1つの封筒を見せる。そこにはバニッシュの紋章が書かれている。先程、イチアから預かったものだ。
「封をきるのですか?」
「えぇ、そのつもり。エールからではなく……」
「ミネルバ様からのお手紙なのですね?お茶会の招待状でしたか?」
「セバスの結婚式も含めて招待させてもらったわ!せっかく、この領地での結婚式だもの。みなが注目しているんだよ」
「そう言われると、少し分厚いように感じますね?」
ミネルバの手紙はセバスの言うとおり、普通のものより分厚く重みを感じる。中はすでにイチアが検閲済みである。字を見れば、リンとした雰囲気からミネルバが伝わってくる。
「まずは、セバスの結婚式の招待状の返事ね」
「ありがとうございます。どうですか?」
「二人とも楽しみにしているって書かれているわ!」
「よかった。おもてなしできるよう準備は整いつつありますから」
セバスも楽しみなようで、その表情を見ればわかる。嬉しいという感情をあまりあらわさないセバスでも滲み出てくるものだと見つめていた。
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