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春に向けての準備

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 今年の春は、行事がたくさんある。毎年行われているアンジェラたちの誕生日、突発的に決まったお茶会、この春1番の大事になるだろうセバスとダリアの結婚式。他にも麦の種まきやオリーブの苗木の植樹などなど、目白押しであった。冬のあいだは準備に追われて忙しかった。


「オリーブの植樹がもうすぐだってね?」
「そうみたいですね?まだ、イチアが戻ってきていないので、いけそうにありませんが」
「そういうと思った。そろそろ届くはずだよ?」


 そういって、ジョージアは私を窓際へ手招きする。町を作るためにノクトたちが滞在していたのだが、どうやら、帰ってきたらしい。アルカもここにいるということは、どうやら向こうのでの水質調査は終わったのだろう。何人かの農夫と話をしているノクトの隣に少し疲れている苗木が見えた。


「あれって……」
「オリーブの苗木だよ。領地の特産にするのなら、屋敷に1本くらいあってもいいかと思って、ノクトに連絡をしたんだ」
「それで、苗木なんですね?」
「そう。オリーブの花言葉は平和と知恵。アンナの目指す平和を願って、領地の英知だと思うセバスの新しい門出を祝って」
「それって……こじつけ?」
「そういうわけじゃないよ。何かの記念になったら……そういう想いもあるんだけど」
「確かに、いいですね!私やみんなが目指す平和か」


 運ばれてきたオリーブの苗を見つめながら、どこに植えるのかなぁ?と考えていた。すると、ジョージアが私の手を取る。


「俺らも行こうか。せっかく、領地の屋敷の敷地に植えるのだから」
「えぇ、そうですね。子どもたちにも見せたいので、一緒に」


 子ども部屋へ向かい、中で勉強をしていた九人の子どもたちを呼び寄せた。アンジェラが私に駆け寄れば、みなもどうようだ。ジョージアのところに誰も向かわないので、羨ましそうに私を見ている。


「今からオリーブの苗の植樹にいくのよ。一緒にどうかしら?」
「いいんですか?」


 1番に興味があったのはダンであった。植物に興味があるんだろう。私は頭をクシャッとすると、嬉しそうにしている。興味のあることは、どんどん関わらせてあげたい。好きなことは好きなだけ勉強することは、私で実証済みだから。もちろん、他の勉強も疎かになっては困るけど、好きなことというのは、誰しも必要なことだろう。


「ダンは、植物が好きなの?」
「はい!何ヶ月か前にイチア様から、お話を聞いて興味を持ちました。オリーブは、実を油に変えるのですよね?」
「えぇ、そうよ。体にもいいらしいの。従来の油ももちろんいいのだけど、新しいことにも目を向けていかないといけないからね」
「アンバー領の特産品ですね?いいものを長く売る。客に飽きられないよう常に目新しいものを見つける。情報ひとつで次の商売に繋がる」


 ん?これって……植物を純粋に好きと言うよりかは、私たちと同じ土俵にたって考えていないかしら?もしかしなくても、ニコライの商売魂がダンにも乗り移っていやしないだろうか?


 ジッと観察してみると、そうではなさそうだ。


「もう、ダンったら!」


 独自で視野を広げる努力をしているようだ。食べ物の話になって、シシリーはダンに言い聞かせている。


「シシリーいいのよ?今、ダンが言っていたことも、商売の心得みたいなものだし。より実践的に覚えているってことだから」


 やや納得しない表情のシシリーではあるが、私があいだに入ったので、それ以上は言ってこない。きちんと教育されているのだが、少々物足りない気がする。



「それにしたって……ぞろぞろと」


 先にウィルが来ていたので、後ろについてきた子どもたちに驚いている。レオやミアも一緒にいたので、手招きしていた。


「これがオリーブの木ですか?」
「えぇ、そうよ。思っていたより、小さいですね?」
「苗木だからね。これが大きく成長するのよ。オリーブは長寿の木でもあるし夫婦の木でもあるから、この春にぴったりのものだわ」
「じゃあ、植えますので、アンナリーゼ様が土をかけられますか?」


 農夫が話しかけてくるので、私はその手にあるスコップをかりる。ここに土をと言われたがまま、苗木に土を被せていく。


「せっかくですから、ジョージア様や子どもたちもいかがですか?」
「そうね。みんな、植樹やってみたい?」


 引率の先生にでもなったかのようで、持っていたスコップを手近にいるレオに渡していく。大きなスコップなので、レオにはすこし重いようだが、すでに大丈夫だとウィルの手を払いのけている。その様子を見ていると、レオの成長を垣間見れた気がした。

 順番にスコップを回す。子どもたちは嬉しそうにししながら、周りの子らに助け合いながら、バケツを片付けた。

 騒ぎを聞き、駆けつけたセバスも輪の中にいた。植樹をしてくれるらしい。その隣にはダリアが、セバスの握るスコップにそっと手を添えている様子をジッとみつめた。
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