1,187 / 1,480
春に向けての準備
しおりを挟む
今年の春は、行事がたくさんある。毎年行われているアンジェラたちの誕生日、突発的に決まったお茶会、この春1番の大事になるだろうセバスとダリアの結婚式。他にも麦の種まきやオリーブの苗木の植樹などなど、目白押しであった。冬のあいだは準備に追われて忙しかった。
「オリーブの植樹がもうすぐだってね?」
「そうみたいですね?まだ、イチアが戻ってきていないので、いけそうにありませんが」
「そういうと思った。そろそろ届くはずだよ?」
そういって、ジョージアは私を窓際へ手招きする。町を作るためにノクトたちが滞在していたのだが、どうやら、帰ってきたらしい。アルカもここにいるということは、どうやら向こうのでの水質調査は終わったのだろう。何人かの農夫と話をしているノクトの隣に少し疲れている苗木が見えた。
「あれって……」
「オリーブの苗木だよ。領地の特産にするのなら、屋敷に1本くらいあってもいいかと思って、ノクトに連絡をしたんだ」
「それで、苗木なんですね?」
「そう。オリーブの花言葉は平和と知恵。アンナの目指す平和を願って、領地の英知だと思うセバスの新しい門出を祝って」
「それって……こじつけ?」
「そういうわけじゃないよ。何かの記念になったら……そういう想いもあるんだけど」
「確かに、いいですね!私やみんなが目指す平和か」
運ばれてきたオリーブの苗を見つめながら、どこに植えるのかなぁ?と考えていた。すると、ジョージアが私の手を取る。
「俺らも行こうか。せっかく、領地の屋敷の敷地に植えるのだから」
「えぇ、そうですね。子どもたちにも見せたいので、一緒に」
子ども部屋へ向かい、中で勉強をしていた九人の子どもたちを呼び寄せた。アンジェラが私に駆け寄れば、みなもどうようだ。ジョージアのところに誰も向かわないので、羨ましそうに私を見ている。
「今からオリーブの苗の植樹にいくのよ。一緒にどうかしら?」
「いいんですか?」
1番に興味があったのはダンであった。植物に興味があるんだろう。私は頭をクシャッとすると、嬉しそうにしている。興味のあることは、どんどん関わらせてあげたい。好きなことは好きなだけ勉強することは、私で実証済みだから。もちろん、他の勉強も疎かになっては困るけど、好きなことというのは、誰しも必要なことだろう。
「ダンは、植物が好きなの?」
「はい!何ヶ月か前にイチア様から、お話を聞いて興味を持ちました。オリーブは、実を油に変えるのですよね?」
「えぇ、そうよ。体にもいいらしいの。従来の油ももちろんいいのだけど、新しいことにも目を向けていかないといけないからね」
「アンバー領の特産品ですね?いいものを長く売る。客に飽きられないよう常に目新しいものを見つける。情報ひとつで次の商売に繋がる」
ん?これって……植物を純粋に好きと言うよりかは、私たちと同じ土俵にたって考えていないかしら?もしかしなくても、ニコライの商売魂がダンにも乗り移っていやしないだろうか?
ジッと観察してみると、そうではなさそうだ。
「もう、ダンったら!」
独自で視野を広げる努力をしているようだ。食べ物の話になって、シシリーはダンに言い聞かせている。
「シシリーいいのよ?今、ダンが言っていたことも、商売の心得みたいなものだし。より実践的に覚えているってことだから」
やや納得しない表情のシシリーではあるが、私があいだに入ったので、それ以上は言ってこない。きちんと教育されているのだが、少々物足りない気がする。
「それにしたって……ぞろぞろと」
先にウィルが来ていたので、後ろについてきた子どもたちに驚いている。レオやミアも一緒にいたので、手招きしていた。
「これがオリーブの木ですか?」
「えぇ、そうよ。思っていたより、小さいですね?」
「苗木だからね。これが大きく成長するのよ。オリーブは長寿の木でもあるし夫婦の木でもあるから、この春にぴったりのものだわ」
「じゃあ、植えますので、アンナリーゼ様が土をかけられますか?」
農夫が話しかけてくるので、私はその手にあるスコップをかりる。ここに土をと言われたがまま、苗木に土を被せていく。
「せっかくですから、ジョージア様や子どもたちもいかがですか?」
「そうね。みんな、植樹やってみたい?」
引率の先生にでもなったかのようで、持っていたスコップを手近にいるレオに渡していく。大きなスコップなので、レオにはすこし重いようだが、すでに大丈夫だとウィルの手を払いのけている。その様子を見ていると、レオの成長を垣間見れた気がした。
順番にスコップを回す。子どもたちは嬉しそうにししながら、周りの子らに助け合いながら、バケツを片付けた。
騒ぎを聞き、駆けつけたセバスも輪の中にいた。植樹をしてくれるらしい。その隣にはダリアが、セバスの握るスコップにそっと手を添えている様子をジッとみつめた。
「オリーブの植樹がもうすぐだってね?」
「そうみたいですね?まだ、イチアが戻ってきていないので、いけそうにありませんが」
「そういうと思った。そろそろ届くはずだよ?」
そういって、ジョージアは私を窓際へ手招きする。町を作るためにノクトたちが滞在していたのだが、どうやら、帰ってきたらしい。アルカもここにいるということは、どうやら向こうのでの水質調査は終わったのだろう。何人かの農夫と話をしているノクトの隣に少し疲れている苗木が見えた。
「あれって……」
「オリーブの苗木だよ。領地の特産にするのなら、屋敷に1本くらいあってもいいかと思って、ノクトに連絡をしたんだ」
「それで、苗木なんですね?」
「そう。オリーブの花言葉は平和と知恵。アンナの目指す平和を願って、領地の英知だと思うセバスの新しい門出を祝って」
「それって……こじつけ?」
「そういうわけじゃないよ。何かの記念になったら……そういう想いもあるんだけど」
「確かに、いいですね!私やみんなが目指す平和か」
運ばれてきたオリーブの苗を見つめながら、どこに植えるのかなぁ?と考えていた。すると、ジョージアが私の手を取る。
「俺らも行こうか。せっかく、領地の屋敷の敷地に植えるのだから」
「えぇ、そうですね。子どもたちにも見せたいので、一緒に」
子ども部屋へ向かい、中で勉強をしていた九人の子どもたちを呼び寄せた。アンジェラが私に駆け寄れば、みなもどうようだ。ジョージアのところに誰も向かわないので、羨ましそうに私を見ている。
「今からオリーブの苗の植樹にいくのよ。一緒にどうかしら?」
「いいんですか?」
1番に興味があったのはダンであった。植物に興味があるんだろう。私は頭をクシャッとすると、嬉しそうにしている。興味のあることは、どんどん関わらせてあげたい。好きなことは好きなだけ勉強することは、私で実証済みだから。もちろん、他の勉強も疎かになっては困るけど、好きなことというのは、誰しも必要なことだろう。
「ダンは、植物が好きなの?」
「はい!何ヶ月か前にイチア様から、お話を聞いて興味を持ちました。オリーブは、実を油に変えるのですよね?」
「えぇ、そうよ。体にもいいらしいの。従来の油ももちろんいいのだけど、新しいことにも目を向けていかないといけないからね」
「アンバー領の特産品ですね?いいものを長く売る。客に飽きられないよう常に目新しいものを見つける。情報ひとつで次の商売に繋がる」
ん?これって……植物を純粋に好きと言うよりかは、私たちと同じ土俵にたって考えていないかしら?もしかしなくても、ニコライの商売魂がダンにも乗り移っていやしないだろうか?
ジッと観察してみると、そうではなさそうだ。
「もう、ダンったら!」
独自で視野を広げる努力をしているようだ。食べ物の話になって、シシリーはダンに言い聞かせている。
「シシリーいいのよ?今、ダンが言っていたことも、商売の心得みたいなものだし。より実践的に覚えているってことだから」
やや納得しない表情のシシリーではあるが、私があいだに入ったので、それ以上は言ってこない。きちんと教育されているのだが、少々物足りない気がする。
「それにしたって……ぞろぞろと」
先にウィルが来ていたので、後ろについてきた子どもたちに驚いている。レオやミアも一緒にいたので、手招きしていた。
「これがオリーブの木ですか?」
「えぇ、そうよ。思っていたより、小さいですね?」
「苗木だからね。これが大きく成長するのよ。オリーブは長寿の木でもあるし夫婦の木でもあるから、この春にぴったりのものだわ」
「じゃあ、植えますので、アンナリーゼ様が土をかけられますか?」
農夫が話しかけてくるので、私はその手にあるスコップをかりる。ここに土をと言われたがまま、苗木に土を被せていく。
「せっかくですから、ジョージア様や子どもたちもいかがですか?」
「そうね。みんな、植樹やってみたい?」
引率の先生にでもなったかのようで、持っていたスコップを手近にいるレオに渡していく。大きなスコップなので、レオにはすこし重いようだが、すでに大丈夫だとウィルの手を払いのけている。その様子を見ていると、レオの成長を垣間見れた気がした。
順番にスコップを回す。子どもたちは嬉しそうにししながら、周りの子らに助け合いながら、バケツを片付けた。
騒ぎを聞き、駆けつけたセバスも輪の中にいた。植樹をしてくれるらしい。その隣にはダリアが、セバスの握るスコップにそっと手を添えている様子をジッとみつめた。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる