1,175 / 1,480
ダンスホールを覗くと
しおりを挟む
元々、住んでいた領地の館。ダンスホールへと向かうと、アンジェラの楽しそうな声が聞こえてくる。そっと扉をあけて覗き込んでみると、レオとアンジェラが踊っているところだった。とはいえ、アンジェラはまだ、4歳にもなっていない。おぼつかない足取りで、レオのダンスについていっている。
「アンジー笑ってないで、もう少しレオにくっついて」
「レオはダンス上手ですね?」
「……アンナが教えているからね。レオも、もう少しアンジェラをリードしているように踊らないと、子どもに振り回されているだけのかっこ悪いパートナーだぞ?」
「はいっ!ジョージア様。アン、もう少し、ゆっくり踊るから……」
コクと頷いて、レオにぴったりとついていく。さっきと違って、アンジェラとレオの息があったようだ。ぴったりと寄り添いながら踊れている。
扉の隙間からその様子を見ていたら、アデルが私に気が付いたようで、近寄ってくる。
「アンナ様、こんなところで見てないで、どうぞ」
「みつかっちゃったわね?」
「もう、用事はいいのですか?」
「リアノもアルカもいないから、お手紙を渡してきただけよ」
「そうでしたか」
「それにしても、ジョージア様は、教えるのも上手よね。さっきまでバラバラだったのに、もうぴったり息があっていて」
「レオにもセンスがあるんだと思いますよ。一度言われたからといって、あそこまでは……」
驚いているというよりかは感心しているアデル。アデルも近衛であったので、ダンスの心得はあるはずなのだがとチラリと見た。
「アデルも踊ってみる?」
「えっ?」
「そんなに驚かなくても。近衛だったのだから、踊れるでしょ?」
「……アンナ様は、嫌なところばかり言ってくるから困ります」
「もしかして、不得意な感じだった?」
返事の代わりに視線を逸らす。アンジェラとレオを見てひと段落したようで、ジョージアの方へ駆けていく。
「ホールもあいたことだし、一曲いかがですか?」
私が手を差し伸べると、ジッと見つめている。そんな様子をジョージアもみており、子どもたちも何事かが始まると期待しているようだった。
「アデル、女性からの誘いを断るのは失礼なことだよ?」
「……ジョージア様」
「心配しなくても、アンナは多少の失敗で怒ったりしなよ。なんたって、運動音痴のサシャの相手をしていたくらいだから、そうとう足を踏まれていると思うし」
「よくわかりましたね?ジョージア様。お兄様って、本当にどんくさいのですよ?」
「……貴族と一緒にしないでください。本当に苦手で」
「大丈夫。ここはアンバー領の元領主の館。ここにいるのは、ジョージア様とアンジェラ、ジョージとレオだけだから、失敗しても誰も咎めないわ!ほら、手を」
そう言って差し出した手を恐々取るので、私はギュっと握る。
「カウントの取り方は大丈夫?」
「……はい、たぶん」
「じゃあ、リードはしてくれるかしら?それとも私が?」
「……自信がないのでお任せします」
わかったわ!と返事をしたあと、ホールの真ん中に立つ。戸惑っているアデルの手を取り、私の背中へと誘導する。握った手を進行方向へ向け、カウントを取り始める。1,2,3,1,2,3と。まるで、初めてレオにダンスを教えたときのようで、笑ってしまいそうになる。
「もう少し早くしてもいいかしら?」
「……お任せします」
男性リードが普通な中、私がアデルをリードしているのを見て、ジョージアにレオが質問をしている。
「アンナ様は、リードもできるのですか?」
聞こえてきた言葉に、アデルは眉尻を下げてなんだか悲しそうだ。
「1曲くらい踊れるようにしておいたほうがいいわよ?このままじゃ、レオに置いて行かれるわよ?」
「レオ様は、いずれ、ウィル様同様爵位を授与されるほどの功績をあげるでしょ?」
「どうしてそう思うの?」
「見ていれば、わかります。きちんとウィル様の教育もセバス様の教養もナタリー様のマナーさえ身に着けていますから。デビュタントに向け、着々と努力を積み重ねているのは知っていますよ」
「……ウィルみたいに若干軽いのよね?私に対しては、そうじゃないけど」
見て?とアンジェラと一緒にいる姿を見ていると、敬語ではなくため口で、話している。本来は叱るところであるだろうが、そういう気安い存在が側にいることはアンジェラにとってもいいので、何も言わない。ウィルにも言われたことがあるが、未来のレオは、アンジェラにとって、なくてはならない存在なのだから、少しくらい大目に見てもいいだろう。大きくなったとき、お互いにどうするのが正しいのか、二人なら決められるだろうから。
「……それにしても、アンナ様は本当にお上手ですね?とてもうまくなったと、錯覚してしまいそうです」
「そう?それならよかったわ!じゃあ、そろそろ交替しましょう。アデル、練習あるのみよ?」
ニッコリ笑いかけ、今度はつまらなさそうにしていたジョージの名を呼んだ。まさか呼ばれると思っていなかったようで、驚いていたが、いらっしゃいと言えば、素直にこちらへ駆けてきた。
まだ、数回しかダンスの練習をしたことがなかったが、今日は少しだけ練習をすることにする。ジョージも嬉しそうにしているので、本当は一緒に練習がしたかったのかもしれない。アデルと同じくカウントをとって、ゆっくりと踊り始めた。
「アンジー笑ってないで、もう少しレオにくっついて」
「レオはダンス上手ですね?」
「……アンナが教えているからね。レオも、もう少しアンジェラをリードしているように踊らないと、子どもに振り回されているだけのかっこ悪いパートナーだぞ?」
「はいっ!ジョージア様。アン、もう少し、ゆっくり踊るから……」
コクと頷いて、レオにぴったりとついていく。さっきと違って、アンジェラとレオの息があったようだ。ぴったりと寄り添いながら踊れている。
扉の隙間からその様子を見ていたら、アデルが私に気が付いたようで、近寄ってくる。
「アンナ様、こんなところで見てないで、どうぞ」
「みつかっちゃったわね?」
「もう、用事はいいのですか?」
「リアノもアルカもいないから、お手紙を渡してきただけよ」
「そうでしたか」
「それにしても、ジョージア様は、教えるのも上手よね。さっきまでバラバラだったのに、もうぴったり息があっていて」
「レオにもセンスがあるんだと思いますよ。一度言われたからといって、あそこまでは……」
驚いているというよりかは感心しているアデル。アデルも近衛であったので、ダンスの心得はあるはずなのだがとチラリと見た。
「アデルも踊ってみる?」
「えっ?」
「そんなに驚かなくても。近衛だったのだから、踊れるでしょ?」
「……アンナ様は、嫌なところばかり言ってくるから困ります」
「もしかして、不得意な感じだった?」
返事の代わりに視線を逸らす。アンジェラとレオを見てひと段落したようで、ジョージアの方へ駆けていく。
「ホールもあいたことだし、一曲いかがですか?」
私が手を差し伸べると、ジッと見つめている。そんな様子をジョージアもみており、子どもたちも何事かが始まると期待しているようだった。
「アデル、女性からの誘いを断るのは失礼なことだよ?」
「……ジョージア様」
「心配しなくても、アンナは多少の失敗で怒ったりしなよ。なんたって、運動音痴のサシャの相手をしていたくらいだから、そうとう足を踏まれていると思うし」
「よくわかりましたね?ジョージア様。お兄様って、本当にどんくさいのですよ?」
「……貴族と一緒にしないでください。本当に苦手で」
「大丈夫。ここはアンバー領の元領主の館。ここにいるのは、ジョージア様とアンジェラ、ジョージとレオだけだから、失敗しても誰も咎めないわ!ほら、手を」
そう言って差し出した手を恐々取るので、私はギュっと握る。
「カウントの取り方は大丈夫?」
「……はい、たぶん」
「じゃあ、リードはしてくれるかしら?それとも私が?」
「……自信がないのでお任せします」
わかったわ!と返事をしたあと、ホールの真ん中に立つ。戸惑っているアデルの手を取り、私の背中へと誘導する。握った手を進行方向へ向け、カウントを取り始める。1,2,3,1,2,3と。まるで、初めてレオにダンスを教えたときのようで、笑ってしまいそうになる。
「もう少し早くしてもいいかしら?」
「……お任せします」
男性リードが普通な中、私がアデルをリードしているのを見て、ジョージアにレオが質問をしている。
「アンナ様は、リードもできるのですか?」
聞こえてきた言葉に、アデルは眉尻を下げてなんだか悲しそうだ。
「1曲くらい踊れるようにしておいたほうがいいわよ?このままじゃ、レオに置いて行かれるわよ?」
「レオ様は、いずれ、ウィル様同様爵位を授与されるほどの功績をあげるでしょ?」
「どうしてそう思うの?」
「見ていれば、わかります。きちんとウィル様の教育もセバス様の教養もナタリー様のマナーさえ身に着けていますから。デビュタントに向け、着々と努力を積み重ねているのは知っていますよ」
「……ウィルみたいに若干軽いのよね?私に対しては、そうじゃないけど」
見て?とアンジェラと一緒にいる姿を見ていると、敬語ではなくため口で、話している。本来は叱るところであるだろうが、そういう気安い存在が側にいることはアンジェラにとってもいいので、何も言わない。ウィルにも言われたことがあるが、未来のレオは、アンジェラにとって、なくてはならない存在なのだから、少しくらい大目に見てもいいだろう。大きくなったとき、お互いにどうするのが正しいのか、二人なら決められるだろうから。
「……それにしても、アンナ様は本当にお上手ですね?とてもうまくなったと、錯覚してしまいそうです」
「そう?それならよかったわ!じゃあ、そろそろ交替しましょう。アデル、練習あるのみよ?」
ニッコリ笑いかけ、今度はつまらなさそうにしていたジョージの名を呼んだ。まさか呼ばれると思っていなかったようで、驚いていたが、いらっしゃいと言えば、素直にこちらへ駆けてきた。
まだ、数回しかダンスの練習をしたことがなかったが、今日は少しだけ練習をすることにする。ジョージも嬉しそうにしているので、本当は一緒に練習がしたかったのかもしれない。アデルと同じくカウントをとって、ゆっくりと踊り始めた。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
異世界八険伝
AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ!
突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる