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馬をパカパカと歩かせると
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「アンナ様、お久しぶりです!」
レオも誘って散歩に出かけようという話になったので、呼びに来たのだが、今日は、どうやら、一人で勉強をしていたらしい。よくよく見れば、セバスの課題だろう。
「レオは勉強中だったのね?今から出かけるけど、一緒にどうかしら?」
「ついて行ってもいいのですか?」
「馬に乗る練習よ。最近、ポニーから馬に変わったのでしょ?」
そうなんです!と嬉しそうにするレオ。ひとつずつ、ウィルの課題もこなしているようで、ポニーを卒業出来たらしい。とはいえ、ポニーに比べ体の大きな馬に乗るときは、誰か一緒にいるときでなければダメだと言われているらしい。ウィルらしい約束事である。
先に馬房へ向かっていたジョージアやアデルたちと合流する。すでに、馬の背に乗っているアンジェラはご満悦で、ジョージはまだまだ怖そうだ。
レオの馬をアデルが引いてきて、レナンテを馬房のおじいさんが引いてきてくれる。今日は出かけられると素直に出てきたレナンテ。どうやら、じゃじゃ馬二人と一頭は出かけられることに夢中だ。
「レオ、自分で乗れるのかしら?」
「いえ、台がないと……」
「じゃあ、はい、乗って!」
私が手で足場を作ると、驚いた表情をしているが、早く!と促せば、すぐに私の元へ来て、手に足をかけた。
「……よかったんでしょうか?」
「なんで?これくらい私でもできるわ!まぁ、成人男性は無理だけど、子どもならなんとでも」
馬に跨ったレオは手綱をしっかり握る。明らかに馬の方が大きいので、気を緩めないようにと注意だけして、私はレナンテのほうへ駆けて行く。アデルもジョージアもそれぞれの馬に跨った。ジョージアの馬にアンジェラが、アデルの馬にジョージがちょこんと乗っている。
「今日は一人乗り?」
「いいんじゃない?レオの隣を歩いておいて」
「わかったわ。レオを気にしながら歩けばいいのね」
私たちは、屋敷から出発をする。毎日通えるくらいの距離なので、遠くはない。馬の扱いになれてきているレオは、少し話をするくらいの余裕はあった。
「そういえば、学校の方はどうなんだい?」
「順調らしいですよ?医師を育てる講義が始まっているそうですけど、実習も兼ねたり、座学だけではないので、とても好評だとか。ヨハンの知識を使って教科書を作ったそうで、興味深いものがあります。お時間があるなら、応急処置の講義を受けられてはいかがですか?」
「そんな講義をしているのですか?」
「えぇ、近衛でも習うと思うんだけど……」
「……恥ずかしながら、習っていません。ウィル様は講習を受けていたかもしれませんが、受ける受けないは自由なので」
「そうなの?応急処置は、覚えておいて損はないと思うの。全3回くらいでしていたと思うから、受けてみたらどうかしら?」
「じゃあ、アデルが行く日に俺も行くよ」
アデルに提案すれば、ジョージアもその気になったらしい。応急処置は知っているか知らないかで、助かる命もある。学ぶ意欲があるなら、学んでおいたほうがいい。子育て中にも、必要になる場合もあるので、デリアはヨハン直々に教えてもらっていたし、ディルも改めて勉強をし直したと聞いている。子猫たちも聞いているそうだ。実は、応急処置を習うには別途お金が必要になるのだが、そのぶん、誰でも受けられる講義として人気であった。
「アンナ様、僕もダメですか?」
「もちろんいいわ。今晩ウィルに聞いてみて、アデルが行く日に一緒に受けなさい」
嬉しそうにするレオ。ウィルに似たのか、元々がそうなのか、とても勉強熱心だ。頭もそうとうキレるらしく、勉強家のダドリー男爵の血筋だと頷ける。
話をしていれば、あっという間につく。元々領主の館であった場所なので、懐かしく思えた。
「では、私はアルカの助手に手紙を渡してくるので……」
馬房に馬を預け、目的の場所まで向かった。子どもたちは、ジョージアたちとダンスホールへ向かうらしい。用事が終わったら、1曲ジョージアと踊ることになっていた。それまでの間、デビュタントのことも考え、ジョージアがレオに指導するとかで、少し張り切っていた。
用意されている研究室へ入って行くと、若い男性が私に会釈する。アルカの助手はあまり見たことがなかったが、どうかされましたか?とにこやかに話しかけられたので、手紙を渡してくれるよう頼む。そのあと、リアノたちにも声をかけて、一度領地の屋敷へ来てほしいと伝言をする。かしこまりましたとメモをとり、丁寧に執務机においている。
「アルカって、帰ってきているの?」
「いえ、まだですが……今晩は帰ってくるかと。予定では、そのようになっていますが」
「そう、来るのが1日早かったのね……ありがとう」
あの!と話しかけられ、どうかして?と振り向く。どうやら、私のことを知らないらしく、どちらさまでしょうか?と聞かれた。
「私はアンバー公アンナリーゼよ?」
「えっ?」
「驚いたかしら?私は、こうやって出歩いているから、また、どこかで出会うかもしれないわね。じゃあよろしくね?」
そう言って、アルカの執務室から出て、ジョージアたちがまつダンスホールへと足をむけたのである。
レオも誘って散歩に出かけようという話になったので、呼びに来たのだが、今日は、どうやら、一人で勉強をしていたらしい。よくよく見れば、セバスの課題だろう。
「レオは勉強中だったのね?今から出かけるけど、一緒にどうかしら?」
「ついて行ってもいいのですか?」
「馬に乗る練習よ。最近、ポニーから馬に変わったのでしょ?」
そうなんです!と嬉しそうにするレオ。ひとつずつ、ウィルの課題もこなしているようで、ポニーを卒業出来たらしい。とはいえ、ポニーに比べ体の大きな馬に乗るときは、誰か一緒にいるときでなければダメだと言われているらしい。ウィルらしい約束事である。
先に馬房へ向かっていたジョージアやアデルたちと合流する。すでに、馬の背に乗っているアンジェラはご満悦で、ジョージはまだまだ怖そうだ。
レオの馬をアデルが引いてきて、レナンテを馬房のおじいさんが引いてきてくれる。今日は出かけられると素直に出てきたレナンテ。どうやら、じゃじゃ馬二人と一頭は出かけられることに夢中だ。
「レオ、自分で乗れるのかしら?」
「いえ、台がないと……」
「じゃあ、はい、乗って!」
私が手で足場を作ると、驚いた表情をしているが、早く!と促せば、すぐに私の元へ来て、手に足をかけた。
「……よかったんでしょうか?」
「なんで?これくらい私でもできるわ!まぁ、成人男性は無理だけど、子どもならなんとでも」
馬に跨ったレオは手綱をしっかり握る。明らかに馬の方が大きいので、気を緩めないようにと注意だけして、私はレナンテのほうへ駆けて行く。アデルもジョージアもそれぞれの馬に跨った。ジョージアの馬にアンジェラが、アデルの馬にジョージがちょこんと乗っている。
「今日は一人乗り?」
「いいんじゃない?レオの隣を歩いておいて」
「わかったわ。レオを気にしながら歩けばいいのね」
私たちは、屋敷から出発をする。毎日通えるくらいの距離なので、遠くはない。馬の扱いになれてきているレオは、少し話をするくらいの余裕はあった。
「そういえば、学校の方はどうなんだい?」
「順調らしいですよ?医師を育てる講義が始まっているそうですけど、実習も兼ねたり、座学だけではないので、とても好評だとか。ヨハンの知識を使って教科書を作ったそうで、興味深いものがあります。お時間があるなら、応急処置の講義を受けられてはいかがですか?」
「そんな講義をしているのですか?」
「えぇ、近衛でも習うと思うんだけど……」
「……恥ずかしながら、習っていません。ウィル様は講習を受けていたかもしれませんが、受ける受けないは自由なので」
「そうなの?応急処置は、覚えておいて損はないと思うの。全3回くらいでしていたと思うから、受けてみたらどうかしら?」
「じゃあ、アデルが行く日に俺も行くよ」
アデルに提案すれば、ジョージアもその気になったらしい。応急処置は知っているか知らないかで、助かる命もある。学ぶ意欲があるなら、学んでおいたほうがいい。子育て中にも、必要になる場合もあるので、デリアはヨハン直々に教えてもらっていたし、ディルも改めて勉強をし直したと聞いている。子猫たちも聞いているそうだ。実は、応急処置を習うには別途お金が必要になるのだが、そのぶん、誰でも受けられる講義として人気であった。
「アンナ様、僕もダメですか?」
「もちろんいいわ。今晩ウィルに聞いてみて、アデルが行く日に一緒に受けなさい」
嬉しそうにするレオ。ウィルに似たのか、元々がそうなのか、とても勉強熱心だ。頭もそうとうキレるらしく、勉強家のダドリー男爵の血筋だと頷ける。
話をしていれば、あっという間につく。元々領主の館であった場所なので、懐かしく思えた。
「では、私はアルカの助手に手紙を渡してくるので……」
馬房に馬を預け、目的の場所まで向かった。子どもたちは、ジョージアたちとダンスホールへ向かうらしい。用事が終わったら、1曲ジョージアと踊ることになっていた。それまでの間、デビュタントのことも考え、ジョージアがレオに指導するとかで、少し張り切っていた。
用意されている研究室へ入って行くと、若い男性が私に会釈する。アルカの助手はあまり見たことがなかったが、どうかされましたか?とにこやかに話しかけられたので、手紙を渡してくれるよう頼む。そのあと、リアノたちにも声をかけて、一度領地の屋敷へ来てほしいと伝言をする。かしこまりましたとメモをとり、丁寧に執務机においている。
「アルカって、帰ってきているの?」
「いえ、まだですが……今晩は帰ってくるかと。予定では、そのようになっていますが」
「そう、来るのが1日早かったのね……ありがとう」
あの!と話しかけられ、どうかして?と振り向く。どうやら、私のことを知らないらしく、どちらさまでしょうか?と聞かれた。
「私はアンバー公アンナリーゼよ?」
「えっ?」
「驚いたかしら?私は、こうやって出歩いているから、また、どこかで出会うかもしれないわね。じゃあよろしくね?」
そう言って、アルカの執務室から出て、ジョージアたちがまつダンスホールへと足をむけたのである。
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