上 下
1,158 / 1,480

約10年後を見据えてⅣ

しおりを挟む
「何故、みなさん食事にこないのかと思っていたら……呼びに行った人たちまで……それじゃあ、意味がないではないですか?」


 今は、私の侍女から外れてはいるが、領地で仕切れる侍女はリアンしかいない。あと、私たちが1度話し込むと普通のメイドでは入りにくいらしい。デリアがいれば、問答無用であるが、普通のメイドでは、貴族を無下にはできないようだ。


「ごめんね?リオン」
「アンナリーゼ様、今週はお仕事をせずにお休みいただく予定だっと思いますが?」
「そうよ?今もそうだけど……」


 私のベッドの周りに何人の男性が侍っているのか。数えないほうがいいだろうが、ため息を付きかけたリオンにごめんねとだけ謝った。


「いいですけど、体調不良でお休みいただいているのに、こんなに殿方が詰めかけたら、あらぬ噂もたちますし、お休みになりませんわ。皆様も、自重してくださいませ!」
「リアンさん、ごめんなさい」


 次々と謝る男性陣にわかっていただければいいのです!と頷いた。ただ、みなにも私の休みが通達されていたはずなにに、こんなに詰め寄っていることを不思議に思ったリオンが、聞きやすいアデルに向かって質問をしている。


「なんでも、おもしろい戦術が見つかったとかで、勉強会をしていたんだ。こういうのは、近衛大隊長であるウィル様とか戦術に詳しいセバス様が紐解くんだけど、今後起こりうるかもしれない事案を念頭にどういうふうなことをすればいいのかと……」
「地図を見る限り、公都だと思うのですが……」
「そうよ!」
「今後、起こりうる事案って……そんなに物騒なのでしょうか?」
「そう言うわけじゃないわ!私たち……近衛が公都を守るならを想定して、いろいろと戦術を使って地図の上で試しているの。こんなにうまくいく作戦なんて、滅多にないから、知識として知っておくと、違うからってことよ」
「……私にはそういうことはわかりませんが、インゼロ帝国が何か……」
「まだ、その時期じゃないから、大丈夫。ただの図の上の訓練だから。近衛でも隊長格になれば、こういう訓練をするのよ」
「レオがいるのはどうしてですか?」


 チラリとレオの方を見ているリアン。我が子を心配しない親はいないだろう。こんな大人に囲まれた中で、カイルと二人、難しい話に入っていたかと思うと気が気ではないだろう。


「……未来のためかな?」
「未来の?」
「そう。レオは伯爵の子として、これから社交界にデビューする。だけど……」
「一代限りの爵位……」
「そう、ウィルの爵位は一代限りのもの。他に身を立てていく手段が必要なの。そのためには、必要な勉強よ」
「……近衛に。他の道もあるはずですが」
「そこを選ぶのレオだもの。別に近衛にこだわっているつもりはないのよ。その代わり、将来を狭めることはしたくないから、今は、幅を広げて勉強しているでしょ?」


 リアンはコクと頷く。ウィルにもちゃんと説明するように話はしているはずなのに、うまく伝わっていないのだろう?チロリとウィルを見ると首を横に振る。


「お母様」
「レオ?」
「……僕は、お父様のような近衛になりたいです。強くてカッコいい。いいことばかりじゃないとお父様も教えてくれましたけど、アンナ様と剣を交えているお父様のようになりたいです。誰かを守る人になりたいです!」


 ビックリするほど、ハッキリした意識を持って、近衛になることをリアンに言っている。私が知る限り、ウィルも将来を考えて、剣だけではなく、他の道に進めるようにしているはずだった。それは、ミアも同じで、リアンとも話合っているはずだった。


「わかっているつもりだっただけね。私の覚悟が足りなかったようです。レオは、今、伯爵の子ですもの。きちんと自身の未来と向き合っているのね。こちらこそ、ごめんなさい」


 レオに謝るリアンを見て、未来で何もおこらなければいいのに……と願わずにはいられない。ただ、ハニーローズであるアンジェラがいる限り、レオの未来にもの何かと影を落とすことになる。今、話している内容が、10年後、レオの人生に役立ってくれるといいなと願うだけだ。


「それはそうと……そろそろ、夕食はお取りください。みなさんがこないことで、食堂では心配しているのですから」
「そうね。みんな夕食を食べてきて!私は今日も部屋でとることになるから」


 そう言って、みなを送り出した。護衛であるウィルだけ残って、出ていく。


「今日の勉強会、どうだった?」
「うーん、そうだな。アデルはもう大人だからか、頭が固いけど……レオやカイルは相当な勉強になったと思う。将来、動くとしたら、この二人を中心になると考えれば、成功だな。まぁ、10年後まで覚えているかはべつだけど」
「それね……でも、何回か繰り返し教えるのも良いかもしれないわ。私たちの考察やあの子たちが独自に考えたことを交えて、意見交換をしたい」
「お嬢も交えて……だな。まだ、少し早いから」


 そうねと言うと、あと2、3年もすればと、とても楽しみだとウィルが零した。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

処理中です...