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約10年後を見据えて
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朝起きたときには、ジョージアはすでに机の上で昨日の地図を広げていた。珍しく早く目が覚めたらしく、私が起き上がったので、声をかけてくる。
「よく寝てたね?」
「はい、よく寝れました」
もうひと眠りできそうなくらい、おおきなあくびをしてしまう。慌てて隠したが、ジョージアは見ていたようで、クスクスと笑っている。
「まだ、早いから、もう少し眠ったら?」
「そうですね……」
そう言いながらも、ジョージアの方を見ていると、ベッドへ近づいてきて、一緒に布団へと潜り込んだ。
私が眠らないのは、ジョージアが起きているからだと思ったらしい。
頭を撫でて一緒にベッドへ寝転ぶ。
「アンナは寝起きだから温かいね?」
「ジョージア様は、結構な時間、起きていたのですか?冷たいですよ?」
ギュっと抱きしめると、ジョージアの冷えた体に体温が吸い取られていくようだった。ブルブルっと震えながらもジョージアにしがみつく。ゆっくり私から体温が流れていったのか、少しずつ温かくなってきた。
「まだ、少しいいかな?」
「えぇ、いいですよ」
微睡みながらジョージアの声を聞き、質問に答えていく。内容は昨日の地図の話で、だんだんふわふわと聞いて、ふにゃふにゃと答えていたようだ。
最後におやすみというジョージアの声が聞こえたところで、また、夢の中へ入っていった。
余程、ジョージアに抱きついて眠るのがよかったのだろう。目をあけると、ぴったりくっついて離れないぞと主張している私に驚いた。メイドが朝の支度のために部屋に入ってきていたが、私の目が覚めるまで、寝かせておいてと言ってくれたのか、寝坊をしてしまう。
「……おはようございます」
「おはよう。よく寝ていたね。やっぱり、疲れていたようだ」
頭を撫でてくれるので、目を細めた。まるで、アンジェラにでもなったかのようで、少し恥ずかしい。
「アンジーも頭を撫でられるのが好きなようだけど、母娘だな」
「気付いていたのですか?」
「まぁ、一応、アンナの夫ですから?知らないわけはないかなぁ?と」
「……でも、私……」
「見ていれば、わかるよ?たまに、アンジーの頭を撫でていると羨ましそうな表情でこちらを見てるから。お義父さんやサシャが、アンナの頭を撫でていそうだよね?」
「……そうですね?お父様にもお兄様にもいっぱい撫でてもらっていましたよ。お兄様は、どう思っていたか知りませんけど」
当時のことを思い出す。小さかったころは、寝静まったころ、兄の部屋に行き、ベッドに潜り込んだ。怖い夢を見ていたから、私を慰めてくれていたのだ。その名残か、大人になったあとでも、兄は子どものように頭を撫でてくる。たとえば、いいことをしたときとかに。大きくなった兄の手で頭をわしゃわしゃと撫でられるのは好きだった。ジョージアは優しく撫でるようであるが、兄はもっと雑だ。懐かしくて笑ってしまう。
「さて、朝食を食べようか。そのあと、また、昨日の地図を見て話をするんだろう?」
「そうですね。基本的にはウィルしか空いていないので、ウィルと話合うことになると思いますが」
「それなら、俺も入ろう。昨日の話の続きを聞きたい」
私は頷き、今日も緩い服に着替える。いつでも、昼寝できるようにと準備されているものだ。
朝食を食べ終わったころ、部屋の扉がノックされる。そこにはウィルとレオ、アデルがついてきていた。
「お邪魔します」
「おはよう!」
みなに挨拶すれば、応えてくれる。今日はジョージアも一緒にこの図上訓練をすると言えば、ウィルがレオとカイルを一緒に勉強させたいと連れてきている。
アデルは、カイルの付き添いだと言っているが、自分も混ざりたいと言うのは目に見えていた。
「じゃあ、昨日の続きからと言いたいけど、アデルも途中からだったし、ジョージア様も最初の頃は聞いていなかったですよね?」
「あぁ、途中からだった」
「最初から話ましょう。姫さんと二人で、最初はこの戦術書を元に話合っていたのですから。地図に書き込んであるメモだけ見てもわかりづらいだろうし」
ウィルが初めから説明を始めた。アデルでさえ、図上訓練は初めてだったらしく、わかりにくかったらしい。なので、子どもたちなら、戦術のせの字も知らないのだからと、懇切丁寧に事細かく話していく。わかりにくい場所は、私が補足していけば、なんとか、最年少であるレオも頷いている。
「レオもアデルもカイルも。わからないことがあれば、いつでも言ってちょうだい」
「アンナ様、ここはどのような攻め方をすれば、こうなるのでしょう?たとえば、数で押し切ってくるとしたら……味方が負けてしまいます」
「所詮は机上の話だから、そのときそのときの状況判断で、変わっていくと思うわ。でもね?この戦術は、クーデターが起こったときのことを想定して話をしているから、物量で押してくることは、まずないと思っているの」
なるほどと頷きはしているが、アデルは納得まではいっていないようだ。所詮、机の上で、作戦を練っているだけに過ぎない。だけど、それを実際の戦場でどうなのかというのは、そのときになってみないとわからない。こういう戦い方があるからね?という注意喚起くらいに考えるようにアデルに伝えた。
私とウィルは10年後を見据えて話はしているが、他のみなは、その部分を知らないので、戦争になったときの城の守りかただと考えているようだった。
「よく寝てたね?」
「はい、よく寝れました」
もうひと眠りできそうなくらい、おおきなあくびをしてしまう。慌てて隠したが、ジョージアは見ていたようで、クスクスと笑っている。
「まだ、早いから、もう少し眠ったら?」
「そうですね……」
そう言いながらも、ジョージアの方を見ていると、ベッドへ近づいてきて、一緒に布団へと潜り込んだ。
私が眠らないのは、ジョージアが起きているからだと思ったらしい。
頭を撫でて一緒にベッドへ寝転ぶ。
「アンナは寝起きだから温かいね?」
「ジョージア様は、結構な時間、起きていたのですか?冷たいですよ?」
ギュっと抱きしめると、ジョージアの冷えた体に体温が吸い取られていくようだった。ブルブルっと震えながらもジョージアにしがみつく。ゆっくり私から体温が流れていったのか、少しずつ温かくなってきた。
「まだ、少しいいかな?」
「えぇ、いいですよ」
微睡みながらジョージアの声を聞き、質問に答えていく。内容は昨日の地図の話で、だんだんふわふわと聞いて、ふにゃふにゃと答えていたようだ。
最後におやすみというジョージアの声が聞こえたところで、また、夢の中へ入っていった。
余程、ジョージアに抱きついて眠るのがよかったのだろう。目をあけると、ぴったりくっついて離れないぞと主張している私に驚いた。メイドが朝の支度のために部屋に入ってきていたが、私の目が覚めるまで、寝かせておいてと言ってくれたのか、寝坊をしてしまう。
「……おはようございます」
「おはよう。よく寝ていたね。やっぱり、疲れていたようだ」
頭を撫でてくれるので、目を細めた。まるで、アンジェラにでもなったかのようで、少し恥ずかしい。
「アンジーも頭を撫でられるのが好きなようだけど、母娘だな」
「気付いていたのですか?」
「まぁ、一応、アンナの夫ですから?知らないわけはないかなぁ?と」
「……でも、私……」
「見ていれば、わかるよ?たまに、アンジーの頭を撫でていると羨ましそうな表情でこちらを見てるから。お義父さんやサシャが、アンナの頭を撫でていそうだよね?」
「……そうですね?お父様にもお兄様にもいっぱい撫でてもらっていましたよ。お兄様は、どう思っていたか知りませんけど」
当時のことを思い出す。小さかったころは、寝静まったころ、兄の部屋に行き、ベッドに潜り込んだ。怖い夢を見ていたから、私を慰めてくれていたのだ。その名残か、大人になったあとでも、兄は子どものように頭を撫でてくる。たとえば、いいことをしたときとかに。大きくなった兄の手で頭をわしゃわしゃと撫でられるのは好きだった。ジョージアは優しく撫でるようであるが、兄はもっと雑だ。懐かしくて笑ってしまう。
「さて、朝食を食べようか。そのあと、また、昨日の地図を見て話をするんだろう?」
「そうですね。基本的にはウィルしか空いていないので、ウィルと話合うことになると思いますが」
「それなら、俺も入ろう。昨日の話の続きを聞きたい」
私は頷き、今日も緩い服に着替える。いつでも、昼寝できるようにと準備されているものだ。
朝食を食べ終わったころ、部屋の扉がノックされる。そこにはウィルとレオ、アデルがついてきていた。
「お邪魔します」
「おはよう!」
みなに挨拶すれば、応えてくれる。今日はジョージアも一緒にこの図上訓練をすると言えば、ウィルがレオとカイルを一緒に勉強させたいと連れてきている。
アデルは、カイルの付き添いだと言っているが、自分も混ざりたいと言うのは目に見えていた。
「じゃあ、昨日の続きからと言いたいけど、アデルも途中からだったし、ジョージア様も最初の頃は聞いていなかったですよね?」
「あぁ、途中からだった」
「最初から話ましょう。姫さんと二人で、最初はこの戦術書を元に話合っていたのですから。地図に書き込んであるメモだけ見てもわかりづらいだろうし」
ウィルが初めから説明を始めた。アデルでさえ、図上訓練は初めてだったらしく、わかりにくかったらしい。なので、子どもたちなら、戦術のせの字も知らないのだからと、懇切丁寧に事細かく話していく。わかりにくい場所は、私が補足していけば、なんとか、最年少であるレオも頷いている。
「レオもアデルもカイルも。わからないことがあれば、いつでも言ってちょうだい」
「アンナ様、ここはどのような攻め方をすれば、こうなるのでしょう?たとえば、数で押し切ってくるとしたら……味方が負けてしまいます」
「所詮は机上の話だから、そのときそのときの状況判断で、変わっていくと思うわ。でもね?この戦術は、クーデターが起こったときのことを想定して話をしているから、物量で押してくることは、まずないと思っているの」
なるほどと頷きはしているが、アデルは納得まではいっていないようだ。所詮、机の上で、作戦を練っているだけに過ぎない。だけど、それを実際の戦場でどうなのかというのは、そのときになってみないとわからない。こういう戦い方があるからね?という注意喚起くらいに考えるようにアデルに伝えた。
私とウィルは10年後を見据えて話はしているが、他のみなは、その部分を知らないので、戦争になったときの城の守りかただと考えているようだった。
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