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何もできない1週間Ⅴ

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 地図の上は書かれたメモで真っ黒になった。戦術という戦術が目新しいものばかりではないにしろ、いままで使っていた戦術の新しい活用方法などがあった。私たちは、黙々ともし、ローズディアの公都でクーデターが起こったらを想定しながら意見を出しあっていた。


「ふぅ……すごいわね?王配って……同じ戦術でも全く違う使い方で、撃退することができるなんて……」
「これは、机上の空論なんだろうけどね?」
「それにしたって、ここまで実践的な書き物は、見たことがない」
「私もよ。精々が趣味で作っている程度の人が作った机上の空論みたいな穴だらけのものばかりだわ」
「同じ空論でも、これほど練り上げてあるのは、珍しいですよね……」


 ベッドに三人が腰掛け、うんうんと唸る。今、公都を想定しているのは、私の『予知夢』で、その状況がありえることがわかっているからだ。見事に穴らしいところを全て潰してしまうその方法に舌を巻いた。


「もし、この戦法をして国を守るとしたら、信頼出来る兵の確保も必要だな」
「公の元には、エリックがいるわね?」
「俺は、正面を守るとして……他にも東西南北の門を守るやつがいるな。それが最低限だ。指揮を採れる人材の成長が急務だな」
「確かに……領地も守る人がいるから、その場合は、アデルを中心にリリーを補佐として纏めるのがいいわね?」
「確かに。でも、公都となると、今は、まだ、アンバー公爵の傘下で目ぼしい人材はいないぞ?」
「わかっているわ。トップにエリックがいるだけじゃ、全然足りないものね」
「ゆくゆくは、キースも引き抜くんだっけ?」


 私はコクンと頷くと、さらに人材がいないと嘆くことになった。私の手元にいる人材で、その最低限の守りを任せられる人がいるかと言えば、否だ。


「地道に育てるしかないな。俺は、レオを」
「私は、カイルたちをかしら?」
「あぁ、なるほど。例えば、姫さんが鍛えに鍛えて、領地の警備隊でありながらも目を引く警備隊員となれば……」
「ボンクラな隊長に取って代われることもあるわね?」
「レオとカイルを育てることが急務だね。例えば、二人の知識を詰め込んで、どんな場面でも冷静に判断できるようにしないと」
「それには、セバスの講義も必要よ?他にも警備隊で、目ぼしい子がいれば、声をかけるわ」
「近衛にも気骨のあるやつはいるにはいるけど……」
「セシリアとか?」
「……ありすぎるな」


 ウィルは笑う。今、大隊長であるウィルの代わりに、指揮を取っているのは、セシリアだ。訓練だけなら出来ると、任されているのだが、男所帯に女性というので、相当な努力を積み重ねていることはわかる。


「あとは、これを誰に学ばせるかかな?」
「……イチアとダリアには、この本を見せないでおきましょう。信用していないわけではありませんが、この先のアンナリーゼ様の『予知夢』は不安定ですから」
「そうね。言っていないのに、こんな訓練させられても……って気分になるわ」
「確かに。じゃあ、これは、姫さんかお嬢と末っ子に教えておいてくれ」
「ジョージア様はダメかなぁ?」
「ジョージア様?戦場になったら、出ないだろう?」
「……そう思う?でも、ジョージア様も公爵なの。国の一大事は、逃げるのではなく、戦わないと行けない人だから。もしかすると、市街地で戦うようなことにはならないかも知れないけど、知っておいてそんはないと思うの」


 二人が頷くので、了承を得られたと考えていいだろう。今度の休みにジョージアにこの地図を使って、公都防衛の話をしようと考えていた。二人がいる方が、多角的に見れてもっといいのだが、私一人でも大丈夫だろう。
 そう考えていたとき、扉が開く。ベッドの上で、地図を広げて唸っている私たちを見て、ジョージアが驚いていた。


「三人で、何をしているの?」


 訝しげに覗くと、公都の地図だとすぐにわかっただろう。アンバー公爵家と公宮を中心に戦術が書かれているのだから。


「……これは、何?すごい書き込んであるけど」
「王配が後世に残してくれた、宝物みたいなものです」
「すごいな。これは、公都を考えて作ってあるの?」
「トワイス国の王都ですね」
「……それで、想定がローズディア?みんなすごい頭脳の持ち主だな……」


 さすがというべきだと関心しているので、ジョージア様もですよと応えた。ゆくゆくは、これをジョージアにも覚えて貰わないといけない。
 なので、今日はいい機会だと、私たちが今まで話をしていた机上の空論のことを話始める。休むようにと言われてなかったけ?と私を見た後、ジョージアも同じように没頭していった。夕飯の時間を知らせに来てくれたらしいのだが、一向に動こうとしない私たちを今度はアデルが迎えに来てくれる。また、アデルが地図を見て目を追っていると、さらに、時間を費やして、みなで頭を捻りながら、公都防衛線の話を延々としつずけた。
 最後には、リアンが夕食の時間だと呼びに来てくれ、みなで遅れて行くことになって、叱られたのである。
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