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二の舞にならないのか?
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私の話を聞いて、みなが口をつぐむ。ダドリー男爵がやろうとしたこと……それは、第三妃擁立を目指したこと。それには、人脈、金、ありとあらゆる手段が必要になって、アンバー領が犠牲になった。記憶に新しいこの国の大きな事件ではあったが、まさか、私が同じようなことを考えていたとは思わなかったのかもしれない。
「妃じゃなくてもいいのよね」
「妃じゃなくても?」
ジョージアは鸚鵡返しをし、私を少々きつい視線で見てくる。辛酸を舐めさせられた身としては、同じ轍を踏むのではないのかと危惧しているのだろう。
「アンナは何が欲しいんだ?」
「私が欲しいのは、王宮の内情。それも、表のではなくて、裏の。あとは、公と綿密に連絡が取れれば、必ずしも妃擁立をする必要はないと思っているの」
「……それって、ダドリー男爵の二の舞にはならないのか?」
「ダドリー男爵は、いろいろとまずかったのよ。爵位が低い、資金提供者がいない、手駒はあれど、人脈に巡り合わせがよくなかった。最大のダメだった点は、私だと思うわ」
ニッコリ笑うと、赤薔薇が真っ赤に咲いた日を思い出す。男爵の笑った顔まで覚えている。
「どうして、今更、公宮を気にする?」
「いろいろ理由があるけど、やっぱりインゼロが動いているっていうところが気になる。エルドアでは実際、王は薬を盛られていたわけだし……あんなに暢気な公なんて、ちょろそうじゃない?」
ねぇ?と聞くと、みなが一斉に視線を逸らした。そう思っているけど、口には出さないと言うことなのだろう。
「インゼロ帝国が気になるなら、ヒーナあたりを城に送り込めばいんじゃないか?」
「ヒーナはダメ。有名人だもん。インゼロ帝国側からしたら、ネコに鈴がついているみたいなものでしょ?」
「ディルの子猫たちではだめなんですか?」
「それも考えた。でも、私に仕えるって感じじゃないでしょ?」
「アンナはどんな人物が欲しいんだ?」
「端的にいえば、私のちゅんちゅんくらいの人物なら最高。だからって、私も他に譲歩y収集が必要だから、使えないし……自身で身も守れて、公との連絡係も出来て、公たちの生活を監視できるくらいの人物が欲しい!」
「育てるしかなくないか?」
「……時間がかかりすぎるでしょ?それに私の陣営だって気付かれない方がいいんだよね?」
そんな都合のいい人物いる?と、半ば諦めながら考えていた。
「灯台下暗しというなら、ルチル・ゴールドとかいいんだけど、ゴールド公爵の何枚も何十枚も劣化品だし」
「アンナ……言い方」
「本人いないからいい……」
「侍女がいいのか?近侍というのもありなんじゃ……」
「……近侍か。一人おもしろそうなのがいると言えばいるんだけどね?」
「誰?」
「新興貴族になるかもしれない人の異母弟。完全に敵対勢力だから、取り込めるのかはわからないし、さらに監視する人物も必要でしょ?できるなら、ゴールド公爵のほうから、公の近侍にしてくれるなら、最高なんだけどなぁ」
誰のことを考えているのかとみなが視線を合わせて考えている。
今、公に張り付いているのは護衛としてエリック、宰相の補佐としてパルマがいるが、もう一人ほしいのだ。公の生活部分で、公を見張ってくれる人。
「第二妃ではだめなのか?そもそも」
「……第二妃が私の味方になってくれるかしら?」
「茶会など、開いていると聞いたことがないなぁ……前公妃を味方につけてみるとか?」
「……ダメだよ。お義母様と仲がいいからね。それに第二妃も人を騙して……とか出来なさそうじゃない?」
「虫も殺さぬような人だな」
ジョージアはあったことがあるらしく、その印象を述べていた。ジョージアがいうような印象のままの人物にこちらから何かをお願いするのは難しいだろう。
「そうすると、アンナがさっき言ってた人物が妥当か?」
「受けてくれるかしらねぇ?まずは、手紙を送ってみようかしら?」
「素性は知っているんだよな?」
「えぇ、調べたは。あったのは1回だけ。人心掌握とかうまそうな人物だからね?公宮とはかけ離れた生活をしてるから、受けてくれるかわからないけど」
「何、してるんだ?」
「ノクトは会ったかしら?南の領地で」
「……南の領地?アンナとは、わりと離れて活動してたからなぁ?」
南の領地では、本当にいろいろあった。おかげで、こちらに取り込めた貴族もいて、少しずつ、ローズディアの勢力図を書き換えつつあるが、未だ、ゴールド公爵の影響力は大きい。筆頭公爵である私なんて、鼻で笑われる程度なのだ。
「アンナってさ、権力は持ってるわりに振りかざさないよね?」
「……振りかざすときがないだけですよ?」
「領地に引きこもりだからか?」
「失礼ね!ノクト。領地にいないと改革が進まないからしかたないの。それに、こちらにいる方が、気分も楽だし」
「おてんばは、いくつになってもおてんばだからなぁ?」
出歩く私のことを意味しているのだろうが、これでも、少しずつ、ほんの少しずつでも貴族の繋がりを作っていっているところなのだ。私はこの国の出自ではないから、味方より敵の方が多い。少しは褒めてくれてもいいのにとノクトをみると、意味ありげに笑った。
「妃じゃなくてもいいのよね」
「妃じゃなくても?」
ジョージアは鸚鵡返しをし、私を少々きつい視線で見てくる。辛酸を舐めさせられた身としては、同じ轍を踏むのではないのかと危惧しているのだろう。
「アンナは何が欲しいんだ?」
「私が欲しいのは、王宮の内情。それも、表のではなくて、裏の。あとは、公と綿密に連絡が取れれば、必ずしも妃擁立をする必要はないと思っているの」
「……それって、ダドリー男爵の二の舞にはならないのか?」
「ダドリー男爵は、いろいろとまずかったのよ。爵位が低い、資金提供者がいない、手駒はあれど、人脈に巡り合わせがよくなかった。最大のダメだった点は、私だと思うわ」
ニッコリ笑うと、赤薔薇が真っ赤に咲いた日を思い出す。男爵の笑った顔まで覚えている。
「どうして、今更、公宮を気にする?」
「いろいろ理由があるけど、やっぱりインゼロが動いているっていうところが気になる。エルドアでは実際、王は薬を盛られていたわけだし……あんなに暢気な公なんて、ちょろそうじゃない?」
ねぇ?と聞くと、みなが一斉に視線を逸らした。そう思っているけど、口には出さないと言うことなのだろう。
「インゼロ帝国が気になるなら、ヒーナあたりを城に送り込めばいんじゃないか?」
「ヒーナはダメ。有名人だもん。インゼロ帝国側からしたら、ネコに鈴がついているみたいなものでしょ?」
「ディルの子猫たちではだめなんですか?」
「それも考えた。でも、私に仕えるって感じじゃないでしょ?」
「アンナはどんな人物が欲しいんだ?」
「端的にいえば、私のちゅんちゅんくらいの人物なら最高。だからって、私も他に譲歩y収集が必要だから、使えないし……自身で身も守れて、公との連絡係も出来て、公たちの生活を監視できるくらいの人物が欲しい!」
「育てるしかなくないか?」
「……時間がかかりすぎるでしょ?それに私の陣営だって気付かれない方がいいんだよね?」
そんな都合のいい人物いる?と、半ば諦めながら考えていた。
「灯台下暗しというなら、ルチル・ゴールドとかいいんだけど、ゴールド公爵の何枚も何十枚も劣化品だし」
「アンナ……言い方」
「本人いないからいい……」
「侍女がいいのか?近侍というのもありなんじゃ……」
「……近侍か。一人おもしろそうなのがいると言えばいるんだけどね?」
「誰?」
「新興貴族になるかもしれない人の異母弟。完全に敵対勢力だから、取り込めるのかはわからないし、さらに監視する人物も必要でしょ?できるなら、ゴールド公爵のほうから、公の近侍にしてくれるなら、最高なんだけどなぁ」
誰のことを考えているのかとみなが視線を合わせて考えている。
今、公に張り付いているのは護衛としてエリック、宰相の補佐としてパルマがいるが、もう一人ほしいのだ。公の生活部分で、公を見張ってくれる人。
「第二妃ではだめなのか?そもそも」
「……第二妃が私の味方になってくれるかしら?」
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「……ダメだよ。お義母様と仲がいいからね。それに第二妃も人を騙して……とか出来なさそうじゃない?」
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ジョージアはあったことがあるらしく、その印象を述べていた。ジョージアがいうような印象のままの人物にこちらから何かをお願いするのは難しいだろう。
「そうすると、アンナがさっき言ってた人物が妥当か?」
「受けてくれるかしらねぇ?まずは、手紙を送ってみようかしら?」
「素性は知っているんだよな?」
「えぇ、調べたは。あったのは1回だけ。人心掌握とかうまそうな人物だからね?公宮とはかけ離れた生活をしてるから、受けてくれるかわからないけど」
「何、してるんだ?」
「ノクトは会ったかしら?南の領地で」
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