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計画は慎重かつ大胆に!

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 結局、資金提供をすることになった私は、早速デリアへ手紙を書くことにした。資金事態は、公都にあるので、そちらから送ってもらわないといけない。大層な金額になるので、誰からしらの護衛がつくのだろう。ディルの飼い猫たちがいるので、心配はしていない。


「それで、どういうふうに考えているの?馬車が通れるくらいに広げないといけないよね?」
「そうですね。まずは、そこですけど……道を今ある階段とは反対のところにつけるのはダメですか?」
「いいえ、構わないわ!私は建物を建てたり、道路を作ったりっていうのは専門外だし、出来上がったものを楽しむくらいよ?」
「それなら、いいことを思いついているんですけど?」
「何?」
「螺旋階段はわかりますよね?」


 もちろんよ!というと、構想案を教えてくれる。螺旋階段のように地底湖の周りをゆっくり回るように道を作るそうだ。そうしないと、馬車には坂が急すぎるらしく、馬にも負担がかかるそうだ。傾斜が問題なら、そこの解消をしてもらわないといけない。歩く分には階段で十分だが、箱馬車や荷馬車が通るなら、強度も必要となる。そのための資金なのはわかっていた。


「構想を聞く限りおもしろそうだけど、湖の上に道を作るとなると、大変そうよね?湖の底って、どうなっているのかしら?」
「……底はどうなっているのでしょうね?わかりかねますけど……周りを削って道をつける方法とそこから伸ばす方法を考えてはいます。地底湖に土台を作ってというのは難しそうなので」
「そうなんだ?事故だけは起こらないようにしてくれればいいわ」
「もちろんですよ。私たちの1番大切に考えていることです。工事中も、使用中も、人命が脅かされるようなことがないこと……それが、大切です」
「慎重かつ大胆にね?」


 はいと応えるので、道に関してはリアノに任せれば大丈夫だろう。イチアにも人員についてはお願いをしてあるので、街道整備のほうからも人をよこしてくれるはずだ。


「道の方は早々に進めますが、冬の間と言いうのは難しいかと」
「そうすると、植樹にも間に合わないよね?」
「今日、見てきたけど、農場予定地は、だいぶ整備もされていつでもという感じだった。短期間ですごいな」
「10日くらいですからね……農家さんたちの手助けのおかげとはいえ、ありがたいですね?」
「何か、しないといけませんね?」
「……そうね。今年の誕生日会で、何か考えましょう」
「アンの誕生日?」


 そうよ!と隣で話を聞いていたアンジェラの頭を撫でる。いつの間にかアンバー領では、この日がひとつのお祭りの日になり替わろうとしているのだが、不思議な気分だ。


「最初、お掃除を手伝ってくれた領地のみんなへのご褒美のために誕生日会を始めたんだけど、もう、領地のみんなにとって、特別な日になっているのかしら?」
「あぁ、それですね?普通、領地には領地のお祭りの日があるんですけど、アンバー領はそれどころではなかったですからね。いつの間にか、そういうのもなくなって行きましたし」
「それで、アンジーの誕生日が残ったのか?」
「えぇ、その背景には、アンナリーゼ様を歓迎しているっていう意味もありますし、ハニーローズであるアンジェラ様への期待もあります。なんにしても、アンバー領で、アンナリーゼ様とアンジェラ様は大切な方々で、感謝の気持ちも込められているのですよ。商売上手なものもいるので、そういう機会でもあるのでしょうけどね?」


 この領地で領民やビルたちと長く接する機会も多いイチアが誕生日会のことを教えれくれた。
 私はあちこちと飛び回っているので、常に領地にいるわけではないが、そうやって、期待されたり、感謝されたりするとより一層頑張らないという気持ちにさせられる。
 誕生日会は、よその領地からの商人も受け入れたり、地元の領民が小さな出店をする許可を出しているので、人が集まりやすい。研究者たちにとって、お披露目会も兼ねてはいるので、みなが楽しむ1日としてはいいのかもしれない。


「今年は何か目玉になるようなものがあるんですか?」
「イチアはヨハンとクレアの研究を聞いているかしら?」
「いいえ、何かやらかしているのですか?」


 渋い顔をしているイチア。どうやら、この二人には、手を焼いているようだ。私ですら御せないヨハンだから仕方がないのかもしれないが、クレアも同じだけの情熱があるのだろうか。フレイゼンから来てもらった十名は、たしかに誰も彼もがくせの強い人物ばかりではあったが、そういう意味では、クレアもなのかもしれない。


「夏野菜を冬に食べられる研究をしているのよ!少々経費がかかりすぎるから、今後は、そこが課題らしいんだけど……おもしろいと思わない?」
「それは、また……なぜ、そのような研究を?」
「ヨハンが夏野菜を冬に食べたいらしいのよ」
「たったそれだけのために、研究をしてるんですね?」
「飽くなき研究なんて、所詮はそんなものでしょ?興味があるとか、こんなのあったらいいなとか、好奇心から始まるものなのよ!」
「よくご存じで!」


 リアノが関心しているが、その好奇心の塊がリアノでありノクトであり、私だ。


「その最たるがアンナだと思うけどな?」


 ジョージアの呟きに同意をあらわす深い頷きが私から見える全ての人がしていた。アンジェラも私の血を引き継いでいるのだから、きっと、私と変わらない私以上に好奇心の塊になるだろう。すでに、目が輝いているのがその証拠である。
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