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セバスたちの結婚式の構想

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 私たちは、ナタリーが描くウエディングドレスの草案を見ていく。確かに、どれもこれも素敵なもので、私まで悩ましい。


「好きなものを選んでください。一生に一度だと思えば、セバスは特別なものをダリア様に贈ると思うので!」
「……いいのですか?」
「もちろんだよ。僕、これでも、アンナリーゼ様のおかげで小金持ちではあるから。ダリアがいいと思うものを選んで」
「ありがとうございます」


 ニコリと笑いかけるダリアに少々しまりのないセバスの顔にナタリーと視線を合わせてクスっと笑いあった。
 どうやら、セバスにとって、ダリアこそが、運命の女性だったようだ。聡明なうえに、気配り上手であるダリアは、この貴族社会ではなかなかいない女性ではある。強い女性というなら、ナタリーやカレンのような人ではあるが、どちらとも違う。


「セバスが結婚しないでいたのは、もしかすると、ダリアとこうなる運命だったのかもしれないわね?」
「本当に、そう思いますわ!仲睦まじくて、羨ましい。バツのついた私と違って、幸せになってもらいたいものです」


 二人が寄り添って、ドレスを見ている。こっちもあっちもというので、2着用意したらどうかと提案した。


「それはいいですね?結婚式は、基本的に1着が主流ですが、アンナリーゼ様のときはお色のものも着られましたものね。例えばですが、ダリア様の好きな色に染め上げることはできますよ?もちろん、最初からその糸で作ることも可能ですが」
「そうだったんだ。アンナリーゼ様の結婚式は色のドレスも着られたんだね?」
「うん、ジョージア様が選んでくださったわ!セバスたちもそうしたら?きっと、ダリアも喜ぶでしょ?」
「……それは、結構な金額になるのではないですか?」
「うーん、そうね。ドレス2着となると……それなりにするわね。でも、覚えていて?」
「何でしょうか?」


 ほらっと笑いかけながらドレスをつまむ。すると、思い出したようで、ハッとした顔になった。


「私のエルドアで着ていたドレスをご提供するという話でしたか?」
「そう。全部買い取らせてもらうわ。それと、1着のドレス、あと青いものの用意はするわね?」
「いいのですか?着古したものですのに……」
「いいのよ。ナタリーの研究のための犠牲ですから。新品を解体することもあるのだから、その方がいいわ。そう思うでしょ?」
「えぇ、もちろんです。新品は値が張りますからね……お古を大量にいただけるなら、そのぶん、研究費が浮きます。ニコライもそれでいいかしら?」
「はい、もちろんです。ナタリー様の研究費の分を、ダリア様のドレスに回すということですよね?店としては、かまいません」


 私たちは合意したので、その方向で取引をすることにした。セバスが、ドレスの草案を持って、んーと唸っているのを見ると、変な感じがする。興味のかけらもないのかと思っていたが、そうではなくて、贈る相手がいなかったからという理由につきるのかとによによとしてしまった。


「セバス」
「どうかされましたか?」
「白いドレスとベールは用意してくれるのでしょ?」
「もちろんだよ!宝飾品も全部ね。あぁ、そうだ。さっき言ってた青いものって何?」
「花嫁が持つといいとされるものよ。青いもの、新しいもの、古いもの、借りたもの。青いものは、私たちが見繕うわ。いいでしょ?」
「もちろん!あとは、新しいもの、古いもの、借りたものだよね?」
「えぇ、そうね。私はベールを新しく作ってもらったの。古いものは母から、借りたものはエリザベスから手袋を借りたわ」
「なるほど……結婚式と一言に言ってもいろいろ準備が必要なんだね?ドレスって、どれくらいでできるものなの?」


 ナタリーにセバスが聞くと、指折り数え始める。春だと、社交の季節ものあるので、私のドレスの作成もあるがと聞いたようだ。


「セバスが春に結婚式を予定するなら、そこまでには合わせるわ。アンナリーゼ様のドレスを気にしているのなら、もう、だいたいの構図は出来上がっていて、今、作り始めているところだから、気にする必要はないの」
「さすがナタリーだね。じゃあ、ダリアはいつがいいかなぁ?できれば、来年の春にある始まりの夜会までにはと思っているんだけど……急すぎるかな?」
「いいえ、それでかまいません」
「じゃあ、決まりだね。アンジェラ様たちのお誕生日前後でお願いしてもいいかい?」
「後の方がいいかもしれないわね?屋敷中が忙しいから」
「そうだね。誕生日会が終わったあと……」


 ナタリーとセバスは当たり前のようにアンジェラたちの誕生日会の話を進めているのだが、今年も予定があるようだ。私は話に割り込んでいく。


「今年も誕生日会はするつもり?」
「もちろんだよ!アンジェラ様たちの誕生日会は、僕らが楽しみでもあり、領民みんながアンジェラ様の成長を喜んでいるんだから!」
「アンナリーゼ様とアンジェラ様は、アンバー領にとって、それだけ大切なお方々なのですよ。たぶん、今年も領民の方から、そんな声が上がっていると思います」
「そうですね。僕も含め、職人や商売人は稼ぎどきでもありますからね」
「出店料も今年もしっかり取りますからね!見ていてください。アンナリーゼ様」


 すっかり、誕生日会の話に変わりそうな雰囲気だが、ダリアがオロオロとしている。とにかく、今は結婚式の話をするべきだと、暴走した三人を止めるのであった。
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