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オリーブオイルを作るにはと、研究員ルーイⅢ
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「そこまでいうなら、信じてみますよ?ただ、ダリア様が涙することがあれば、そのときは……」
「……そうだね。アンバー領は、よく泣かされる領地だからなぁ……いろいろな意味で。でも、悲しみで涙するっていうことには、ほぼほぼ無縁の領地だと思うから、任せて!」
頼もしく答えるセバスに、私たちだけでなく、ルーイも吊り上げていた目を戻した。ホッとしたような、少しプレッシャーも感じるようなセバス以上にこちらの方が、ソワソワとしてしまいそうで、ナタリーが背中をポンと叩いてくれた。
「私たちに命預けてというときは、それほど緊張もされてなかったでしょうに……」
「信頼度がね?私にとって、それくらい三人は特別なの」
「それは、光栄なはなしだな。天下のアンバー公がねぇ?」
茶化すようにウィルがチラリとこちらをみてくるので、頼りにしているわと言っておく。
「そういえば、オリーブのことを聞きに来たんだったな?」
「そうなの。それでね?」
ルーイとダリアが本題を話始めるので、私も混ざろうとする。急に入って来た私に驚きながらも、ルーイは私とも話をすることにしたらしい。汚いところだけどと自宅に案内され、ついていく。
「それで、オリーブの苗木が必要だってこと?」
「そう。そうなんだけど……アンナリーゼ様、オリーブの苗木を持って帰ったとして、植える場所はありますか?」
「場所はあるけど……整えていない場所なの。苗木も植える時期っていうのがあると思うんだけど……」
「オリーブは年明けてから少しして、春になる前くらいの植樹がいいな。それ以外だと……枯れる可能性が高い」
「じゃあ、今はダメだね?」
「今の時期だと、オリーブの植樹をしたい畑なんかを整えるのにちょうどいいんじゃないか?今からだったら、これでもギリギリかもしれないけど」
指折り考えながら、少し唸っている。植えたからといって、すぐになるわけではないので、様子を見ながらになるとしても……新しく何かをするには、人もいる。
「今からなら、来年の植樹には間に合うのよね?」
「ギリギリって感じだけど、大丈夫だと思いますよ。ただ、土の状態も見てみないと……」
「あのね?ルーイ」
ダリアがいいにくそうにルーイに向き合うと、なんですか?と聞き返している。
「私は、アンナリーゼ様が滞在する日までしか、エルドアにはいられないの。だから、次の交渉にはこれないから、今、いうわね?」
「何かあるのです?」
「えぇ。私、あなたに、アンバー領でオリーブ関係の農業を手伝って欲しいと思っているの。ダメかしら?」
「……この農園を手放してということですか?」
「いいえ、そういうことではなくて……」
よくわからないというふうにダリアを見るルーイの変わりにセバスが口を挟んだ。勘のいいものなら、ダリアの話も通じるだろうが、どうもわかってもらえなかったようだ。
「ここの農場は、そのままでいいんだ。オリーブを収穫するには、僕らには知識も無ければ、技術もない。だから、年単位で、ルーイと契約をしたうえで、僕らへの先生として、数年、アンバー領へ来てほしいいんだ。向こうでオリーブ農家を作るために」
「なるほど、そういうことなら。ここは、両親がしているし、他にも手伝ってくれる人もいるから、俺が一人抜けたくらいでは、たいしたことはない。オリーブのことで、来いっていうなら、ついていくぜ?」
「本当?嬉しいわ!」
私が思うに、ダリアも相当な人誑しなんじゃないかと見ていた。貴族たちが、ダリアの話に耳を傾けれる、ルーイが手を貸してくれるというのは、ダリアという人物こそにそれだけの魅力もあり、頼まれたらしてあげたいと心から思ってしまうのだろう。
「あぁ、ダリア様に頼まれたら、いかないわけにはな?ところで、オリーブの実を作るだけじゃダメなんだろう?」
「えぇ、そうなの!加工品を作らないと、意味がないわ!」
「実がなるまで、約3年。それなりのものを持っていくとして、その間に加工場を作るってことでいいんですか?」
「そう!そのつもりなの。それにしたって、何がいるとか、どんなものができるとか、知らないといけないから、そっちの技術者も必要なのよね」
「それなら、俺の幼馴染がちょうどいいんじゃないかぁ?アイツは、兄貴がいるから、別の場所にしばらく出てもたいしてこまらないだろう。精油の技術はお墨付きだ」
「申し分ないね!交渉しなくっちゃ!」
姫さん、落ち着いて!とドレスを引っ張られ、私は浮いたお尻を元の椅子に戻す。細かい話は、そちらの交渉が成立したあとで決めようということにまとまり、ルーイが呼んできてくれることになった。
私たちは、よかったねと言い合っていると、いきなり扉が開き、咽び泣く男が入ってくる。
「ルーイ、ルーイ!僕、また、振られちゃったよ!どうして、僕はこんなに振られてばかりなんだろう?可愛いあの子は、僕に興味がない!って、平手まで……」
グスングスンと、大粒の涙を零しながら入って来た青年。呆れたというふうにため息をついているルーイ。
「これで、アンバー領行きは、確実になりましたよ!」
どういうこと?とみなで顔を見合わせている。知っているのルーイだけなので、そちらへ視線を向ける。
「もう、こんな土地になんていたくない!どっか遠くへ行ってやる!」
「あぁ、それがいいぞ?隣国のアンバー領なんてどうだ?ドールの力が必要だそうだ!」
そこでハタと泣いていたドールという青年の涙がピタリと止まり、困惑顔の私たちをみて目を瞬かせていた。
「……そうだね。アンバー領は、よく泣かされる領地だからなぁ……いろいろな意味で。でも、悲しみで涙するっていうことには、ほぼほぼ無縁の領地だと思うから、任せて!」
頼もしく答えるセバスに、私たちだけでなく、ルーイも吊り上げていた目を戻した。ホッとしたような、少しプレッシャーも感じるようなセバス以上にこちらの方が、ソワソワとしてしまいそうで、ナタリーが背中をポンと叩いてくれた。
「私たちに命預けてというときは、それほど緊張もされてなかったでしょうに……」
「信頼度がね?私にとって、それくらい三人は特別なの」
「それは、光栄なはなしだな。天下のアンバー公がねぇ?」
茶化すようにウィルがチラリとこちらをみてくるので、頼りにしているわと言っておく。
「そういえば、オリーブのことを聞きに来たんだったな?」
「そうなの。それでね?」
ルーイとダリアが本題を話始めるので、私も混ざろうとする。急に入って来た私に驚きながらも、ルーイは私とも話をすることにしたらしい。汚いところだけどと自宅に案内され、ついていく。
「それで、オリーブの苗木が必要だってこと?」
「そう。そうなんだけど……アンナリーゼ様、オリーブの苗木を持って帰ったとして、植える場所はありますか?」
「場所はあるけど……整えていない場所なの。苗木も植える時期っていうのがあると思うんだけど……」
「オリーブは年明けてから少しして、春になる前くらいの植樹がいいな。それ以外だと……枯れる可能性が高い」
「じゃあ、今はダメだね?」
「今の時期だと、オリーブの植樹をしたい畑なんかを整えるのにちょうどいいんじゃないか?今からだったら、これでもギリギリかもしれないけど」
指折り考えながら、少し唸っている。植えたからといって、すぐになるわけではないので、様子を見ながらになるとしても……新しく何かをするには、人もいる。
「今からなら、来年の植樹には間に合うのよね?」
「ギリギリって感じだけど、大丈夫だと思いますよ。ただ、土の状態も見てみないと……」
「あのね?ルーイ」
ダリアがいいにくそうにルーイに向き合うと、なんですか?と聞き返している。
「私は、アンナリーゼ様が滞在する日までしか、エルドアにはいられないの。だから、次の交渉にはこれないから、今、いうわね?」
「何かあるのです?」
「えぇ。私、あなたに、アンバー領でオリーブ関係の農業を手伝って欲しいと思っているの。ダメかしら?」
「……この農園を手放してということですか?」
「いいえ、そういうことではなくて……」
よくわからないというふうにダリアを見るルーイの変わりにセバスが口を挟んだ。勘のいいものなら、ダリアの話も通じるだろうが、どうもわかってもらえなかったようだ。
「ここの農場は、そのままでいいんだ。オリーブを収穫するには、僕らには知識も無ければ、技術もない。だから、年単位で、ルーイと契約をしたうえで、僕らへの先生として、数年、アンバー領へ来てほしいいんだ。向こうでオリーブ農家を作るために」
「なるほど、そういうことなら。ここは、両親がしているし、他にも手伝ってくれる人もいるから、俺が一人抜けたくらいでは、たいしたことはない。オリーブのことで、来いっていうなら、ついていくぜ?」
「本当?嬉しいわ!」
私が思うに、ダリアも相当な人誑しなんじゃないかと見ていた。貴族たちが、ダリアの話に耳を傾けれる、ルーイが手を貸してくれるというのは、ダリアという人物こそにそれだけの魅力もあり、頼まれたらしてあげたいと心から思ってしまうのだろう。
「あぁ、ダリア様に頼まれたら、いかないわけにはな?ところで、オリーブの実を作るだけじゃダメなんだろう?」
「えぇ、そうなの!加工品を作らないと、意味がないわ!」
「実がなるまで、約3年。それなりのものを持っていくとして、その間に加工場を作るってことでいいんですか?」
「そう!そのつもりなの。それにしたって、何がいるとか、どんなものができるとか、知らないといけないから、そっちの技術者も必要なのよね」
「それなら、俺の幼馴染がちょうどいいんじゃないかぁ?アイツは、兄貴がいるから、別の場所にしばらく出てもたいしてこまらないだろう。精油の技術はお墨付きだ」
「申し分ないね!交渉しなくっちゃ!」
姫さん、落ち着いて!とドレスを引っ張られ、私は浮いたお尻を元の椅子に戻す。細かい話は、そちらの交渉が成立したあとで決めようということにまとまり、ルーイが呼んできてくれることになった。
私たちは、よかったねと言い合っていると、いきなり扉が開き、咽び泣く男が入ってくる。
「ルーイ、ルーイ!僕、また、振られちゃったよ!どうして、僕はこんなに振られてばかりなんだろう?可愛いあの子は、僕に興味がない!って、平手まで……」
グスングスンと、大粒の涙を零しながら入って来た青年。呆れたというふうにため息をついているルーイ。
「これで、アンバー領行きは、確実になりましたよ!」
どういうこと?とみなで顔を見合わせている。知っているのルーイだけなので、そちらへ視線を向ける。
「もう、こんな土地になんていたくない!どっか遠くへ行ってやる!」
「あぁ、それがいいぞ?隣国のアンバー領なんてどうだ?ドールの力が必要だそうだ!」
そこでハタと泣いていたドールという青年の涙がピタリと止まり、困惑顔の私たちをみて目を瞬かせていた。
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