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オリーブオイルを作るにはと、研究員ルーイⅡ
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ルーイの隣に並ぶダリアに視線が向かう。混乱しているルーイに私たちを紹介してくれるのだろう。
「ルーイ、これが王太子殿下からの手紙よ。ローズディア公国のアンバー公を案内するようにというもの」
「公爵がこんなしがないオリーブ農園を回るのか?そんな貴族の話なんて、聞いたこともない!」
「ほら、姫さん、言われてるぞ?」
「ウィル、ちょっと、黙ってくれていてもいいわよ?」
当然反応をしているルーイにウィルがきちんとほらほらと割って入ってくる。
めんどくさそうにウィルをあしらうと、友人たちは苦笑いをしダリアとルーイは戸惑っている。
「えっと……話を続けてください」
「ふふっ、わかりましたわ。アンナリーゼ様。では、さっそく……。今、お話をされたのが、ローズディア公国アンバー公爵アンナリーゼ・トロン・アンバー様です」
「えっ?本当に、このお嬢さんが?」
私の方をみて、明らかに驚いている。ルーイからみて、身なりが綺麗な私たちを貴族の一行だというのは感じただろう。
ダリアに気兼ねせず話しているのも、気になってはいたらしい。
「嬉しいわ!お嬢さんだなんて」
「いや、あの……申し訳ありません。言葉がすぎました」
「いいのよ。気にすることなんてないわ。ここは、貴族たちが集まる社交場ではないもの」
「そういうわけには……」
「いいの。領地でもそんな感じだから、気にしないわ。それより、初めまして」
握手を求めると、どうしたら?とダリアの方を向いて対応を教えてくれというふうである。コクンと頷くダリアを見てズボンの綺麗な場所で、手を擦って擦って擦ってから私の手をとった。
よろしくねというと、とんでもないと恐縮する。
そのあと、私の隣にいるウィル、ナタリー、ヒーナの準備紹介をしていく。それぞれに恐縮しきりで、ルーイは挨拶をしていく。
「最後に、セバスチャン・トライド様です」
「えっ?あの……」
重い空気が流れる。今までと違い、ルーイが怒りを露わにして、セバスを睨んでいる。止めようと動こうとしたとき、先にウィルに私がとめられる。これは、どう考えてもセバスの試練だろうと言っているようで、私も引っ込んだ。
……セバス、頑張って!
ダリアと結婚を決意してくれたのだから、きっと乗り越えられると心の中で応援をしておく。
「……あんたが、ダリア様と結婚する相手か?そっちの人みたいな方だったら、何も言わずにいられたけど、こんなひょろっちぃのでは、到底、ダリア様を任せられない!」
「ルーイ!何を言っているの?トライド様に失礼ですよ?」
「いいんだ、ダリア様。ルーイのいうとおり、僕は見ての通り、ウィルのように誰かを体を使って守るということには、向いていないと自分でも思っているよ」
「それじゃあ、なんで?そんなひ弱な体で、ダリア様を守れるのか?これから、国を追放されて、どんな苦労をするか!爵位をなくしたダリア様が、男爵ごときにいいようにされてたまるか!」
ビックリするくらいの剣幕で捲し立てるルーイに怯むことなく真っすぐ目を見ているセバス。学生のころなら、きっと、逃げていただろうが、今は、こんなことでは逃げない。
石の町のちょっと荒々しい者たちにも怯えることなく対応できるようになったのだから、大丈夫だ。むしろ、ダリアの方が、私に助けを求めるように視線をあちこちに彷徨わせ、ルーイの腕を引っ張っている。その様子に私は微笑むだけだ。
「僕は、どちらかというと、体を動かしたりすることが苦手で、荒事になったら、むしろ守ってもらう側なんだ。弱い人間と言われればそうだ。ただね、そんな僕にも強みはある。ルーイが、オリーブを研究してよりよい実の収穫をと考えるように、僕は、アンバー領を領民が住みやすい場所に変えることが、僕の使命だって、思っているんだ。ルーイは、アンバー公爵領のことは、知らないかもしれないけど……僕はね、アンナリーゼ様が見ている未来をより良いものにしたいって、そればかりだ。ダリア様に苦労させることがあるとすれば、そういうところかもしれない」
「どのみち苦労させることには、かわりはないんだな?それなら、こんな結婚、やめてしま……」
「それ以上言うことは、私が許しません。私の過ちは、この国を戦禍に巻き込もうとしたこと。それを知った上で受け入れてくれ、なおかつ、私の知恵を借りたいと、両国の平和ためにと言ってくださった方です。そんな方が、弱い人であるはずがありません。見た目の強さが必要だと言うのなら、セバスチャン様は見劣りしてしまいます。でも、目に見えない強さというものが、私はあると知りました。だから、私は、この結婚に何の不安もありません。セバスチャン様が、領地のためにというのなら、私もそれを支えます。それが、私ののぞみですから」
ルーイを睨み上げ、ダリアは胸の内を明かした。たった数刻一緒にいただけの相手ではあるが、人の心や人となりを見抜く力は、さすがであった。
ダリアに賞賛をと思うが、今は、口を挟まない。ダリアの隣にそっと並んで、ダリアと手を繋ぐセバス。
「認めてほしいとは言わないよ。僕がダリア様を幸せにするから、ルーイに渡したりもしない。政略結婚だって言われても、僕の知っている人は、その政略結婚をわざわざ画策してまで決めた人を知っているし、とても仲のいい夫婦を知っているからね。僕もダリア様とは、そんな関係になりたいって思っているから、邪魔はしないでほしい」
ルーイに比べれば二回りほど小さいセバスではあるが、後ろから見ているセバスは、とても大きく見えた。悔しそうにしているルーイから、1発お見舞いされるかもしれないと、こちらの四人はハラハラしていたのは、黙っておこう。
「ルーイ、これが王太子殿下からの手紙よ。ローズディア公国のアンバー公を案内するようにというもの」
「公爵がこんなしがないオリーブ農園を回るのか?そんな貴族の話なんて、聞いたこともない!」
「ほら、姫さん、言われてるぞ?」
「ウィル、ちょっと、黙ってくれていてもいいわよ?」
当然反応をしているルーイにウィルがきちんとほらほらと割って入ってくる。
めんどくさそうにウィルをあしらうと、友人たちは苦笑いをしダリアとルーイは戸惑っている。
「えっと……話を続けてください」
「ふふっ、わかりましたわ。アンナリーゼ様。では、さっそく……。今、お話をされたのが、ローズディア公国アンバー公爵アンナリーゼ・トロン・アンバー様です」
「えっ?本当に、このお嬢さんが?」
私の方をみて、明らかに驚いている。ルーイからみて、身なりが綺麗な私たちを貴族の一行だというのは感じただろう。
ダリアに気兼ねせず話しているのも、気になってはいたらしい。
「嬉しいわ!お嬢さんだなんて」
「いや、あの……申し訳ありません。言葉がすぎました」
「いいのよ。気にすることなんてないわ。ここは、貴族たちが集まる社交場ではないもの」
「そういうわけには……」
「いいの。領地でもそんな感じだから、気にしないわ。それより、初めまして」
握手を求めると、どうしたら?とダリアの方を向いて対応を教えてくれというふうである。コクンと頷くダリアを見てズボンの綺麗な場所で、手を擦って擦って擦ってから私の手をとった。
よろしくねというと、とんでもないと恐縮する。
そのあと、私の隣にいるウィル、ナタリー、ヒーナの準備紹介をしていく。それぞれに恐縮しきりで、ルーイは挨拶をしていく。
「最後に、セバスチャン・トライド様です」
「えっ?あの……」
重い空気が流れる。今までと違い、ルーイが怒りを露わにして、セバスを睨んでいる。止めようと動こうとしたとき、先にウィルに私がとめられる。これは、どう考えてもセバスの試練だろうと言っているようで、私も引っ込んだ。
……セバス、頑張って!
ダリアと結婚を決意してくれたのだから、きっと乗り越えられると心の中で応援をしておく。
「……あんたが、ダリア様と結婚する相手か?そっちの人みたいな方だったら、何も言わずにいられたけど、こんなひょろっちぃのでは、到底、ダリア様を任せられない!」
「ルーイ!何を言っているの?トライド様に失礼ですよ?」
「いいんだ、ダリア様。ルーイのいうとおり、僕は見ての通り、ウィルのように誰かを体を使って守るということには、向いていないと自分でも思っているよ」
「それじゃあ、なんで?そんなひ弱な体で、ダリア様を守れるのか?これから、国を追放されて、どんな苦労をするか!爵位をなくしたダリア様が、男爵ごときにいいようにされてたまるか!」
ビックリするくらいの剣幕で捲し立てるルーイに怯むことなく真っすぐ目を見ているセバス。学生のころなら、きっと、逃げていただろうが、今は、こんなことでは逃げない。
石の町のちょっと荒々しい者たちにも怯えることなく対応できるようになったのだから、大丈夫だ。むしろ、ダリアの方が、私に助けを求めるように視線をあちこちに彷徨わせ、ルーイの腕を引っ張っている。その様子に私は微笑むだけだ。
「僕は、どちらかというと、体を動かしたりすることが苦手で、荒事になったら、むしろ守ってもらう側なんだ。弱い人間と言われればそうだ。ただね、そんな僕にも強みはある。ルーイが、オリーブを研究してよりよい実の収穫をと考えるように、僕は、アンバー領を領民が住みやすい場所に変えることが、僕の使命だって、思っているんだ。ルーイは、アンバー公爵領のことは、知らないかもしれないけど……僕はね、アンナリーゼ様が見ている未来をより良いものにしたいって、そればかりだ。ダリア様に苦労させることがあるとすれば、そういうところかもしれない」
「どのみち苦労させることには、かわりはないんだな?それなら、こんな結婚、やめてしま……」
「それ以上言うことは、私が許しません。私の過ちは、この国を戦禍に巻き込もうとしたこと。それを知った上で受け入れてくれ、なおかつ、私の知恵を借りたいと、両国の平和ためにと言ってくださった方です。そんな方が、弱い人であるはずがありません。見た目の強さが必要だと言うのなら、セバスチャン様は見劣りしてしまいます。でも、目に見えない強さというものが、私はあると知りました。だから、私は、この結婚に何の不安もありません。セバスチャン様が、領地のためにというのなら、私もそれを支えます。それが、私ののぞみですから」
ルーイを睨み上げ、ダリアは胸の内を明かした。たった数刻一緒にいただけの相手ではあるが、人の心や人となりを見抜く力は、さすがであった。
ダリアに賞賛をと思うが、今は、口を挟まない。ダリアの隣にそっと並んで、ダリアと手を繋ぐセバス。
「認めてほしいとは言わないよ。僕がダリア様を幸せにするから、ルーイに渡したりもしない。政略結婚だって言われても、僕の知っている人は、その政略結婚をわざわざ画策してまで決めた人を知っているし、とても仲のいい夫婦を知っているからね。僕もダリア様とは、そんな関係になりたいって思っているから、邪魔はしないでほしい」
ルーイに比べれば二回りほど小さいセバスではあるが、後ろから見ているセバスは、とても大きく見えた。悔しそうにしているルーイから、1発お見舞いされるかもしれないと、こちらの四人はハラハラしていたのは、黙っておこう。
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