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さて、お迎えにいきますか?
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クロック侯爵家に戻ってきたら、エレーナが心配して迎えに来てくれる。ナタリーは、その後ろから、大丈夫ですよと宥めながら迎えに来てくれた。
「おかえりなさいませ」
二人に迎えられ、ニコリと微笑むと、私たちの時間が有意義なものだったということが、伝わったようだった。
「こちらでの憂い事は、終わりましたか?」
「えぇ、なんとか」
「では、セバスを迎えに行かれますか?」
「そうね。こちらでしないといけないことは、終わったわ。明日、侯爵たちさえよければ、移動したいのだけど?」
「構いませんよ!私たちは、アンナ様のおもてなしのためにいるので」
ありがとうとお礼をいい、ナタリーやエレーナに、今日の話を聞かせるために応接間へと集まった。エレーナは驚いているが、ナタリーはさすがですねと微笑んでいる。
そういえばと、思い出した。
「侯爵、午後からはお時間がありますか?」
「えぇ、何かありましたか?」
お願いしたいことがあるのというと頷き、どのようなことでしょうと聞いてくれる。私より年上で引きこもりだった侯爵も先日とここ数日のビックリ箱のような私の扱いをわかってきたようだ。
「ヒーナ、部屋からあの箱を持ってきてほしいのだけど?」
「あれですね。少々お待ちください」
ヒーナは心得たと応接室から出ていった。その後ろ姿を見ながら、侯爵とエレーナは何か?と言う表情だ。
「午後から、もう一度、王太子の元へ行ってきてほしいの」
「何かあるのですか?」
「万能解毒剤を渡しておこうと思って。王太子に5滴ほど毎日飲んでおいて欲しいって伝えてほしいわ」
「……もしかして、命を狙われるということですか?」
「えぇ、そうよ。あなたたちも例外ではないわ」
困惑したようにお互いの顔を見合わせているが、本当に狙われる可能性は王太子の次に高いのだ。いくら、信用のおける侍従たちであったとしても、それはわからない。
私は、心配しないでと微笑む。
「王太子と同じように、毎朝飲んでくれれば大丈夫。もしものときようだから、何もないかもしれないけど、何かあってからでは遅いから。二人には、これからもアンバー領と末永く付き合ってほしいのよ」
わかりましたと先程まで戸惑っていた二人の表情が変わった。
ヒーナが部屋に戻り、抱えていた箱を机の上に置く。それを開くと、試験管に入った液体が揺れていた。
「これを王太子殿下に渡せばいいのですね?」
「えぇ、管理はご自身でしてくださいと。毒が混ざったとしても、解毒してしまうから、毒入りを飲んでも何ともないわ」
「本当ですか?」
「それは、私で実験済みだから、安心して!」
「……それは、安心ですけど、そんな危ないことをなさって?」
「エレーナは知らなかったかもしれないけど、幼いころから毒を飲んでいたから大丈夫よ?」
はたして大丈夫と言っていいのか、微妙な表情をしているが、私が進んでしていたことは知らない人が多い。
「では、こちらは預かります」
「はぁい。侯爵たちの分は、あとでエレーナに渡しておくわ!」
「いえ、こちらでご用意します!」
「そういうと思ったけど、この万能解毒剤は、どこにも売っていないわよ?だから、もらってちょうだい。お題は、こちらに店舗が出来たとき、手伝ってくれたら嬉しいわ!」
「それは、もちろんです!私たちの心配までしていただき、ありがとうございます」
じゃあ、セバスの元へ行く話を詰めることになり、昼食を食べながらすることになった。私たちをもてなすために、高い食材を使ってくれていることは、街を散策してわかったので、感謝を述べてからいただくことにした。エルドアの現状を把握しきれていなかったとはいえ、こんなにもてなしてもらうのは申し訳ないと伝えれば、私たちがしたいのですと言ってくれる。ただ、向こうの屋敷にいたローズディアの文官武官たちは知らないだろうと思う。公に手紙を書いて送り、私からもいくばくかの食糧の提供を申出る。
「実は、セバス様がそのあたりを上手に切り盛りしてくださったおかげで、損はしていないのです。盗賊退治を近衛の方がしてくれるおかげで、その費用は浮きましたし、文官方で、手があいた方々も、領地のことを少々手伝ってくれたりとしていまして。お疲れではあると思うのですけど、とても助かっています」
「そんなことがあったのですか?」
「はい。物価が高騰していることを世間話程度にしただけでしたのに、食べさせてもらう分くらいはと……」
「セバスらしいな、それ」
「姫さんの余ってる戦力は余すところなく使うっていうのが、染みついているよね?」
「あぁ、確かに。私もそうかもしれませんし」
ウィルとナタリーがクスクス笑い始めた。思い当たるふしは、あると言えばあるが、いいことに発揮されているなら、申し分ない。
さすがだと、私も褒める。
「明日には、出発しましょう!セバスのこの何ヶ月もの働きは、直接褒めたいわ!」
「それがいい」
久しぶり会えるセバスに私もウィルもナタリーも喜び合う。円卓では厳しい話も多いことだろうが、きちんと他にも目を向けられるようになっていることが誇らしかった。
「おかえりなさいませ」
二人に迎えられ、ニコリと微笑むと、私たちの時間が有意義なものだったということが、伝わったようだった。
「こちらでの憂い事は、終わりましたか?」
「えぇ、なんとか」
「では、セバスを迎えに行かれますか?」
「そうね。こちらでしないといけないことは、終わったわ。明日、侯爵たちさえよければ、移動したいのだけど?」
「構いませんよ!私たちは、アンナ様のおもてなしのためにいるので」
ありがとうとお礼をいい、ナタリーやエレーナに、今日の話を聞かせるために応接間へと集まった。エレーナは驚いているが、ナタリーはさすがですねと微笑んでいる。
そういえばと、思い出した。
「侯爵、午後からはお時間がありますか?」
「えぇ、何かありましたか?」
お願いしたいことがあるのというと頷き、どのようなことでしょうと聞いてくれる。私より年上で引きこもりだった侯爵も先日とここ数日のビックリ箱のような私の扱いをわかってきたようだ。
「ヒーナ、部屋からあの箱を持ってきてほしいのだけど?」
「あれですね。少々お待ちください」
ヒーナは心得たと応接室から出ていった。その後ろ姿を見ながら、侯爵とエレーナは何か?と言う表情だ。
「午後から、もう一度、王太子の元へ行ってきてほしいの」
「何かあるのですか?」
「万能解毒剤を渡しておこうと思って。王太子に5滴ほど毎日飲んでおいて欲しいって伝えてほしいわ」
「……もしかして、命を狙われるということですか?」
「えぇ、そうよ。あなたたちも例外ではないわ」
困惑したようにお互いの顔を見合わせているが、本当に狙われる可能性は王太子の次に高いのだ。いくら、信用のおける侍従たちであったとしても、それはわからない。
私は、心配しないでと微笑む。
「王太子と同じように、毎朝飲んでくれれば大丈夫。もしものときようだから、何もないかもしれないけど、何かあってからでは遅いから。二人には、これからもアンバー領と末永く付き合ってほしいのよ」
わかりましたと先程まで戸惑っていた二人の表情が変わった。
ヒーナが部屋に戻り、抱えていた箱を机の上に置く。それを開くと、試験管に入った液体が揺れていた。
「これを王太子殿下に渡せばいいのですね?」
「えぇ、管理はご自身でしてくださいと。毒が混ざったとしても、解毒してしまうから、毒入りを飲んでも何ともないわ」
「本当ですか?」
「それは、私で実験済みだから、安心して!」
「……それは、安心ですけど、そんな危ないことをなさって?」
「エレーナは知らなかったかもしれないけど、幼いころから毒を飲んでいたから大丈夫よ?」
はたして大丈夫と言っていいのか、微妙な表情をしているが、私が進んでしていたことは知らない人が多い。
「では、こちらは預かります」
「はぁい。侯爵たちの分は、あとでエレーナに渡しておくわ!」
「いえ、こちらでご用意します!」
「そういうと思ったけど、この万能解毒剤は、どこにも売っていないわよ?だから、もらってちょうだい。お題は、こちらに店舗が出来たとき、手伝ってくれたら嬉しいわ!」
「それは、もちろんです!私たちの心配までしていただき、ありがとうございます」
じゃあ、セバスの元へ行く話を詰めることになり、昼食を食べながらすることになった。私たちをもてなすために、高い食材を使ってくれていることは、街を散策してわかったので、感謝を述べてからいただくことにした。エルドアの現状を把握しきれていなかったとはいえ、こんなにもてなしてもらうのは申し訳ないと伝えれば、私たちがしたいのですと言ってくれる。ただ、向こうの屋敷にいたローズディアの文官武官たちは知らないだろうと思う。公に手紙を書いて送り、私からもいくばくかの食糧の提供を申出る。
「実は、セバス様がそのあたりを上手に切り盛りしてくださったおかげで、損はしていないのです。盗賊退治を近衛の方がしてくれるおかげで、その費用は浮きましたし、文官方で、手があいた方々も、領地のことを少々手伝ってくれたりとしていまして。お疲れではあると思うのですけど、とても助かっています」
「そんなことがあったのですか?」
「はい。物価が高騰していることを世間話程度にしただけでしたのに、食べさせてもらう分くらいはと……」
「セバスらしいな、それ」
「姫さんの余ってる戦力は余すところなく使うっていうのが、染みついているよね?」
「あぁ、確かに。私もそうかもしれませんし」
ウィルとナタリーがクスクス笑い始めた。思い当たるふしは、あると言えばあるが、いいことに発揮されているなら、申し分ない。
さすがだと、私も褒める。
「明日には、出発しましょう!セバスのこの何ヶ月もの働きは、直接褒めたいわ!」
「それがいい」
久しぶり会えるセバスに私もウィルもナタリーも喜び合う。円卓では厳しい話も多いことだろうが、きちんと他にも目を向けられるようになっていることが誇らしかった。
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