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円卓外の内緒話
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王太子が座るようにいうので、私はソファにかけた。後ろにウィルが立ち、侯爵が、スツールにかけた。
私を値踏みするように見てくる王太子。嫌な顔ひとつせず、微笑み続ける。後ろには、こちらと同じように護衛が立っていた。
「それで、今日は何かあったのかな?」
「……特にはと言えば、忙しい殿下をお呼びだてしておいてなんですが、少し、話をしてみたかったのです」
ほうっと目を細める殿下は、何を考えているのだろう。さすがに、甘ちゃんな公とはものが違うということは、この少しの会話だけでもわかる。
「そなた、確か、ローズディアでは、公と仲が良いと聞いたが」
思わず笑ってしまった。公と仲が良いということは、どういうことを意味して言っているのか、私が考えているそれかどうか気になった。私が笑ったことで、王太子の方も少し眉を顰めている。
「殿下がどういう意味で、仲が良いとおっしゃっているのかはわかりませんが……、そうですね。後ろ盾という立場ですわ。今は、まだ、対抗勢力に比べれば、小さな集まりですけど」
「なるほど。噂通りというわけではないのか」
「それは、どういう噂ですか?」
「本人に聞かせていいものではない。言わないでおこう」
「そうですか。なら、社交好きの友人に聞かせてもらいますわ」
呆気にとられたように、口を開いて驚いている。私が、こんな好戦的であることは、知らなかったようで、固まってしまった。
「どうかされましたか?」
窺うように王太子を見れば、いや、何でもないと首を振る。どうやら、いろいろな私の噂に振り回されているようだった。
はぁ……と大きなため息をつく王太子。よほど疲れているのか、客人の前だということを忘れているようだった。
扉がノックされ、ヒーナがお茶を持ってくる。王太子と私、侯爵の前にお茶をおくと、私の後ろへ下がった。
「アンバー公爵領でとれる最高級茶葉で淹れたものです。ご賞味ください」
ニコッと笑いかけ、一口飲んだ。ヒーナに言って、万能解毒剤を入れてもらったので、お茶を飲んだことで、少しだけ元気になってくれれば、いいだろう。
「ほう、これは香りがいいな。久しくこんな香りのものは飲んだことがない」
「ぜひ、飲んでみてください。体の中から、休まりますよ」
そうしようと、一口、二口と飲んでいく。ヒーナに目配せをして、二杯目の用意をしてもらう。
カップを置いたときには、もう空である。余程気に入ったのだろう。
「これは、いい。アンバー公が言ったとおり、体の中から休まるようだ」
「それはよかったです。私の農園で作られた茶葉は、ローズディアでもトワイスでも、とても人気なのですよ」
「それは頷けるな」
ヒーナが二杯目を入れると、すぐに口を持っていく。ほうっと一息入れたところで、噂の真相を聞くことにした。
「殿下、噂とはなんですか?」
「……いや、言いにくいのだが、公と仲良く……」
「あぁ、公と仲良くですね。それは、公爵として、領地運営をするためのものであって、個人的には、公との関わりはありません。殿下もわかると思いますが、公は、国の頂にいる方です。手足のように動く貴族が必要な場合は、私が動いているにすぎませんよ!」
「……悪かった。言い方というものもあっただろうが」
もうひとつと聞きにくそうにしているので、なんなりとと答えると、子どもたちのことを聞かれた。
何を意味しているのだろうと、よくよく聞いていくと、私と公の間に生まれた子だという噂があるそうで、どこからそんなでたらめが出たのか、不思議で仕方がない。
「おもしろい噂ですね?私も、たくさんの噂話をされる側なので、少々のことでは驚きませんが、ビックリしました」
「……そう、であろうな?」
「えぇ、そうです。私の子は二人とも、ジョージア様の子ですよ」
「その証拠はあるのか?」
「証拠ですか?ローズディアでは有名な話ではありますが……」
アンジェラとネイトの顔を思い浮かべる。今頃、領地に向かっている最中で、レオやミアと騒いでいるのではないだろうか?思わず、クスっと笑ってしまう。
「私の子は、アンバー公爵家の血をついでいないと現れない特徴があるのです」
「特徴?」
「はい。アンバー公爵家の子は、瞳が蜂蜜色なのです。全ての子がそうというわけではありませんが、嫡子であるアンジェラは、蜂蜜色の瞳をしていますし、二子のネイトは、大部分が私と同じアメジストのような瞳ですが、それを囲うように蜂蜜色が現れています」
「……公爵家にしか生まれない子。元を正せば、公も同じではないのか?」
「確かに、それを言われると、そうですね。ただ、どういうわけか、アンバー公爵家にしか、生まれません。だから、私がというのはありえないですし、公と私では釣り合いません」
「公爵なら、釣り合うと思うが」
「公爵と言っても、私は仮初ですから。一代限りの公爵になんの価値がありますか?」
「そう言われれば、そうかもしれん」
「なにより……」
満面の笑みで、惚気てやる。私のそんな噂を信じた王太子には、少々気の毒な気もするが。
「私、学園に通っていたときより、ジョージア様のことが大好きで、前公にジョージア様との政略結婚をさせてほしいと直談判までした女ですよ?わざわざ、愛しいジョージア様意外と共寝をするなど、片腹痛くて仕方がありませんわ!」
チラリと、ウィルの方を見る。うんうんと相槌を打ってくれているので、信憑性も高いだろう。
それより、そんな話を聞かされた侯爵や護衛、ヒーナが微妙な表情をしているのは、気にしないことにした。
私を値踏みするように見てくる王太子。嫌な顔ひとつせず、微笑み続ける。後ろには、こちらと同じように護衛が立っていた。
「それで、今日は何かあったのかな?」
「……特にはと言えば、忙しい殿下をお呼びだてしておいてなんですが、少し、話をしてみたかったのです」
ほうっと目を細める殿下は、何を考えているのだろう。さすがに、甘ちゃんな公とはものが違うということは、この少しの会話だけでもわかる。
「そなた、確か、ローズディアでは、公と仲が良いと聞いたが」
思わず笑ってしまった。公と仲が良いということは、どういうことを意味して言っているのか、私が考えているそれかどうか気になった。私が笑ったことで、王太子の方も少し眉を顰めている。
「殿下がどういう意味で、仲が良いとおっしゃっているのかはわかりませんが……、そうですね。後ろ盾という立場ですわ。今は、まだ、対抗勢力に比べれば、小さな集まりですけど」
「なるほど。噂通りというわけではないのか」
「それは、どういう噂ですか?」
「本人に聞かせていいものではない。言わないでおこう」
「そうですか。なら、社交好きの友人に聞かせてもらいますわ」
呆気にとられたように、口を開いて驚いている。私が、こんな好戦的であることは、知らなかったようで、固まってしまった。
「どうかされましたか?」
窺うように王太子を見れば、いや、何でもないと首を振る。どうやら、いろいろな私の噂に振り回されているようだった。
はぁ……と大きなため息をつく王太子。よほど疲れているのか、客人の前だということを忘れているようだった。
扉がノックされ、ヒーナがお茶を持ってくる。王太子と私、侯爵の前にお茶をおくと、私の後ろへ下がった。
「アンバー公爵領でとれる最高級茶葉で淹れたものです。ご賞味ください」
ニコッと笑いかけ、一口飲んだ。ヒーナに言って、万能解毒剤を入れてもらったので、お茶を飲んだことで、少しだけ元気になってくれれば、いいだろう。
「ほう、これは香りがいいな。久しくこんな香りのものは飲んだことがない」
「ぜひ、飲んでみてください。体の中から、休まりますよ」
そうしようと、一口、二口と飲んでいく。ヒーナに目配せをして、二杯目の用意をしてもらう。
カップを置いたときには、もう空である。余程気に入ったのだろう。
「これは、いい。アンバー公が言ったとおり、体の中から休まるようだ」
「それはよかったです。私の農園で作られた茶葉は、ローズディアでもトワイスでも、とても人気なのですよ」
「それは頷けるな」
ヒーナが二杯目を入れると、すぐに口を持っていく。ほうっと一息入れたところで、噂の真相を聞くことにした。
「殿下、噂とはなんですか?」
「……いや、言いにくいのだが、公と仲良く……」
「あぁ、公と仲良くですね。それは、公爵として、領地運営をするためのものであって、個人的には、公との関わりはありません。殿下もわかると思いますが、公は、国の頂にいる方です。手足のように動く貴族が必要な場合は、私が動いているにすぎませんよ!」
「……悪かった。言い方というものもあっただろうが」
もうひとつと聞きにくそうにしているので、なんなりとと答えると、子どもたちのことを聞かれた。
何を意味しているのだろうと、よくよく聞いていくと、私と公の間に生まれた子だという噂があるそうで、どこからそんなでたらめが出たのか、不思議で仕方がない。
「おもしろい噂ですね?私も、たくさんの噂話をされる側なので、少々のことでは驚きませんが、ビックリしました」
「……そう、であろうな?」
「えぇ、そうです。私の子は二人とも、ジョージア様の子ですよ」
「その証拠はあるのか?」
「証拠ですか?ローズディアでは有名な話ではありますが……」
アンジェラとネイトの顔を思い浮かべる。今頃、領地に向かっている最中で、レオやミアと騒いでいるのではないだろうか?思わず、クスっと笑ってしまう。
「私の子は、アンバー公爵家の血をついでいないと現れない特徴があるのです」
「特徴?」
「はい。アンバー公爵家の子は、瞳が蜂蜜色なのです。全ての子がそうというわけではありませんが、嫡子であるアンジェラは、蜂蜜色の瞳をしていますし、二子のネイトは、大部分が私と同じアメジストのような瞳ですが、それを囲うように蜂蜜色が現れています」
「……公爵家にしか生まれない子。元を正せば、公も同じではないのか?」
「確かに、それを言われると、そうですね。ただ、どういうわけか、アンバー公爵家にしか、生まれません。だから、私がというのはありえないですし、公と私では釣り合いません」
「公爵なら、釣り合うと思うが」
「公爵と言っても、私は仮初ですから。一代限りの公爵になんの価値がありますか?」
「そう言われれば、そうかもしれん」
「なにより……」
満面の笑みで、惚気てやる。私のそんな噂を信じた王太子には、少々気の毒な気もするが。
「私、学園に通っていたときより、ジョージア様のことが大好きで、前公にジョージア様との政略結婚をさせてほしいと直談判までした女ですよ?わざわざ、愛しいジョージア様意外と共寝をするなど、片腹痛くて仕方がありませんわ!」
チラリと、ウィルの方を見る。うんうんと相槌を打ってくれているので、信憑性も高いだろう。
それより、そんな話を聞かされた侯爵や護衛、ヒーナが微妙な表情をしているのは、気にしないことにした。
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