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まだまだ、宣伝は必要なのね?
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私が自信満々にアンバー領の麦の話をすれば、冷たい感じだ。エルドアは、他国の情報が入りにくいのか、どうやら、ローズディアの中で起こっていることは知らないようだ。
「……エルドアまでは、アンバー領のことは知らないのね?」
「知らないも何も、領主に見捨てられた領地のことだろう?遠く離れた王都でも、その話を知らないものはいないさ。俺だったら、そんな領地から、とっとと出ていくね。まともな領主がいる土地で、生きていくほうがずっといい」
胸をはって言われる言葉は、アンバー領の領主としてなら、言い返すこともできないほど、心に深く刺さった。
今の領地なら、他と肩を並べるくらいには、発展してきていると思うのだけど……
私の知る領地を思い浮かべる。今は一面麦畑が黄金に輝く季節まで、あと少しというところだろう。葡萄酒を作るための葡萄の収穫がそろそろ始まるころだ。真夏の太陽と、山からの熱風を浴びて、砂糖の収穫をしているところだ。
これだけ思い浮かべても柱になる産業が育った。葡萄酒や蒸留酒、果実酒なのどの酒類を造れる人材が育っている。紅茶も国で自慢できるほどおいしいものが作れるようになった。
……まだまだ、宣伝は必要なのね?全然、アンバー領の魅力が、他国にまで広まっていないわ!
残念に思う気持ちもあったが、俄然やる気になった。
ふと、奥の方を覗くと、見慣れた瓶がある。珍しい裸体のお姉さんがそこにはいたのだ。
「ねぇ、店主さん」
「ん?麦はいいのか?」
「そうだね。麦は、これを買うことにするけど、もう少しまけてくれる?この値段で、この品質だと、正直ぼったくりもいいところだと思うの」
「……なんていう、言いがかりだ!」
「これを見ればわかるわ」
国を出るときに、麦を持ってきていたので、店主に見せる。粉雪のような粒の小さいサラサラとした粉を見た瞬間、商人だと思った。目つきや纏っている空気が変わっていく。
「商人ってわかりやすくていいよね。ものを見た瞬間に目つきがかわったわね?」
「お嬢さん、これをどこで手に入れた?」
「ふふっ、教えない。私の取引先の麦だもの。これ以上のものは、ここにはないと判断してもいいかしら?」
小首を傾げて、店主の方をみると、悔しそうに唇を噛みしめている。よほどの出来であることは、ニコライたちからもお墨付きなので、この商人の悔しい顔をしているのは納得だ。
「……悔しいが、ここには、それ以上のものはない。どこで手に入れたか教えてはくれないのか。取引さえできれば……」
「取引ね?したいの?」
「あぁ、できることなら……どこで、手に入れた?」
「内緒。まだ、生産量が十分ではないからね。たまになら、売らなくはないと思うけど、定期的に売ることはできないと思うわ」
残念そうにしている店主に、にこりと笑いかけた。
「それより、ひとつ教えてくれるかしら?」
「なんだ?答えられることなら……」
「その返答しだいで、いいことを教えてあげるわ」
「いいことなぁ……まぁいい。なんだ?お嬢さんが知りたいことは」
私は、まっすぐ、目的のものに指をさした。そこにあるのは、私がよく知るガラス瓶。ガラス職人のラズベリーが作った裸体のお姉さんだった。
「なんだ?……手の先の……」
視線で追った先にあるものを見て、あぁと零す店主。
「あれは、去年、ローズディアへ仕入れに行ったとき、たまたま見つけたものだ。すごいだろう?あのガラス瓶で出来た女体像。生きてきた中で、あれほど精緻なガラス瓶は見たことない。瓶ではなく、一種の芸術品だな」
はぁ……とため息をつく店主に、思わず満足してしまう。ラズの技術を他国に見せつけたいと思っていたのだ。それが、国を越えて、まさに、芸術品だと言ってくれる人がいる。その言葉だけでも、私の頬は緩んでしまう。
「あれは、お嬢さんが欲しいと言っても、絶対やらないからな?」
「もちろんよ!欲しいとは言わないわ。ただ……」
「ただ?」
「もっと、あのガラス瓶を褒めて欲しいの。ガラス職人が腕によりをかけて作った品だもの。同じ形でも、ひとつひとつ表情が違うのよね。微笑んでいるもの、笑っているもの、怒っているもの、悲しんでいるもの。とても、素敵な作りになっているから」
「あぁ、もちろん、それは認める。あの中に入っていた酒も一口飲んだときから、はまったんだ。なかなか、出回らないしろものだと聞いている」
「たしかに、そうね。『赤い涙』があの瓶には入っていたはずよ」
よく知っているなと関心されたが、アンバー領で作るものに関して、私の目を通らないものはないのだから、知っていて当たりまえ。目の前の店主は、私が、まさかアンバー領の領主だと知らないだけで、自身が手を取っていいものだったという目利きはさすがだ。
「あれは、アンバー領で、作られた酒だときいていたが……そう考えると、アンバー領もなかなかいい領地なのかもしれないな?」
「なかなかというか、いい領地だよ。時間があれば、領地へ遊びに行ってほしいものだわ!」
「汚い人の住めるような場所じゃないって聞いたぞ?」
「人のうわさなんて、あてにならないわよ。アンバー領は、見違えるほど、素敵な領地へと変貌しているわ!」
店主と話し込んでしまったので、名残惜しそうにされるが、持っていた麦を買い取ってもらい、この店の麦を売ってもらうことにした。おつりだと返してくれたのは、なかなかのお金で、受取れないと押し問答する羽目になったのである。
「……エルドアまでは、アンバー領のことは知らないのね?」
「知らないも何も、領主に見捨てられた領地のことだろう?遠く離れた王都でも、その話を知らないものはいないさ。俺だったら、そんな領地から、とっとと出ていくね。まともな領主がいる土地で、生きていくほうがずっといい」
胸をはって言われる言葉は、アンバー領の領主としてなら、言い返すこともできないほど、心に深く刺さった。
今の領地なら、他と肩を並べるくらいには、発展してきていると思うのだけど……
私の知る領地を思い浮かべる。今は一面麦畑が黄金に輝く季節まで、あと少しというところだろう。葡萄酒を作るための葡萄の収穫がそろそろ始まるころだ。真夏の太陽と、山からの熱風を浴びて、砂糖の収穫をしているところだ。
これだけ思い浮かべても柱になる産業が育った。葡萄酒や蒸留酒、果実酒なのどの酒類を造れる人材が育っている。紅茶も国で自慢できるほどおいしいものが作れるようになった。
……まだまだ、宣伝は必要なのね?全然、アンバー領の魅力が、他国にまで広まっていないわ!
残念に思う気持ちもあったが、俄然やる気になった。
ふと、奥の方を覗くと、見慣れた瓶がある。珍しい裸体のお姉さんがそこにはいたのだ。
「ねぇ、店主さん」
「ん?麦はいいのか?」
「そうだね。麦は、これを買うことにするけど、もう少しまけてくれる?この値段で、この品質だと、正直ぼったくりもいいところだと思うの」
「……なんていう、言いがかりだ!」
「これを見ればわかるわ」
国を出るときに、麦を持ってきていたので、店主に見せる。粉雪のような粒の小さいサラサラとした粉を見た瞬間、商人だと思った。目つきや纏っている空気が変わっていく。
「商人ってわかりやすくていいよね。ものを見た瞬間に目つきがかわったわね?」
「お嬢さん、これをどこで手に入れた?」
「ふふっ、教えない。私の取引先の麦だもの。これ以上のものは、ここにはないと判断してもいいかしら?」
小首を傾げて、店主の方をみると、悔しそうに唇を噛みしめている。よほどの出来であることは、ニコライたちからもお墨付きなので、この商人の悔しい顔をしているのは納得だ。
「……悔しいが、ここには、それ以上のものはない。どこで手に入れたか教えてはくれないのか。取引さえできれば……」
「取引ね?したいの?」
「あぁ、できることなら……どこで、手に入れた?」
「内緒。まだ、生産量が十分ではないからね。たまになら、売らなくはないと思うけど、定期的に売ることはできないと思うわ」
残念そうにしている店主に、にこりと笑いかけた。
「それより、ひとつ教えてくれるかしら?」
「なんだ?答えられることなら……」
「その返答しだいで、いいことを教えてあげるわ」
「いいことなぁ……まぁいい。なんだ?お嬢さんが知りたいことは」
私は、まっすぐ、目的のものに指をさした。そこにあるのは、私がよく知るガラス瓶。ガラス職人のラズベリーが作った裸体のお姉さんだった。
「なんだ?……手の先の……」
視線で追った先にあるものを見て、あぁと零す店主。
「あれは、去年、ローズディアへ仕入れに行ったとき、たまたま見つけたものだ。すごいだろう?あのガラス瓶で出来た女体像。生きてきた中で、あれほど精緻なガラス瓶は見たことない。瓶ではなく、一種の芸術品だな」
はぁ……とため息をつく店主に、思わず満足してしまう。ラズの技術を他国に見せつけたいと思っていたのだ。それが、国を越えて、まさに、芸術品だと言ってくれる人がいる。その言葉だけでも、私の頬は緩んでしまう。
「あれは、お嬢さんが欲しいと言っても、絶対やらないからな?」
「もちろんよ!欲しいとは言わないわ。ただ……」
「ただ?」
「もっと、あのガラス瓶を褒めて欲しいの。ガラス職人が腕によりをかけて作った品だもの。同じ形でも、ひとつひとつ表情が違うのよね。微笑んでいるもの、笑っているもの、怒っているもの、悲しんでいるもの。とても、素敵な作りになっているから」
「あぁ、もちろん、それは認める。あの中に入っていた酒も一口飲んだときから、はまったんだ。なかなか、出回らないしろものだと聞いている」
「たしかに、そうね。『赤い涙』があの瓶には入っていたはずよ」
よく知っているなと関心されたが、アンバー領で作るものに関して、私の目を通らないものはないのだから、知っていて当たりまえ。目の前の店主は、私が、まさかアンバー領の領主だと知らないだけで、自身が手を取っていいものだったという目利きはさすがだ。
「あれは、アンバー領で、作られた酒だときいていたが……そう考えると、アンバー領もなかなかいい領地なのかもしれないな?」
「なかなかというか、いい領地だよ。時間があれば、領地へ遊びに行ってほしいものだわ!」
「汚い人の住めるような場所じゃないって聞いたぞ?」
「人のうわさなんて、あてにならないわよ。アンバー領は、見違えるほど、素敵な領地へと変貌しているわ!」
店主と話し込んでしまったので、名残惜しそうにされるが、持っていた麦を買い取ってもらい、この店の麦を売ってもらうことにした。おつりだと返してくれたのは、なかなかのお金で、受取れないと押し問答する羽目になったのである。
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