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公宮へ行ってまいります!

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 リアンに公宮へ行くために整えてもらっていると、ジョージアが部屋に入ってきた。慌てた様子にどうしたのですか?と問えば、公から公宮へ来るよう招待状が届いたようだ。ジョージアのほうは、今、まさに書いている途中だったので、さっそく、公から招待状に目を通す。


「こちらの動きを見ていたかのようですね?」
「そうだな。ウィルへは、連絡をしておいた。まだ、屋敷へはついていないだろう」
「30分もあれば、つきませんか?制服に着替えているところですよ、きっと」
「待ち合わせは、公宮の玄関にしておいたから」


 わかりましたと言えば、ジョージアは部屋を出ていった。他に送る手紙を書いてくれるのだろう。こういうとき、役目を果たしてくれるのはとても助かる。


「もう、出れるかしら?」
「大丈夫です。馬車の手配も済んでますから」


 リアンに誘導され、慌ただしく馬車に乗った。城まで5分とかからないが、公からの呼び出しなので、少しだけ急いできたというふうにみえるよう向かった。


「昨日もきたのに、今日もだなんて……私、いつも慌ただしいわ」


 正面玄関で小言をいうと、しかたないんじゃない?と後ろから声が聞こえてきた。ジョージアからの伝言が届いたようで、慌てて駆けつけてくれたようだった。


「俺も昨日来たけどな……」
「ウィルは、一応、ここが職場でしょ?」
「今は、アンバー公爵領が俺の職場。まぁ、あっちこっち行ってるから、そうとは限らないし、名目上はハニーローズの護衛とはなっているからなぁ……最近、お嬢の護衛、全然してないけど」


 行きますかと腕を出してくれたので、私をエスコートしてくれるのだろう。公宮で、私を狙う輩は、そうそういない。近衛の大会で優勝していることもあって、誰も手出ししてこないというのが、本当のところだ。


「公も姫さんがいる間に、相談したいことがいっぱいあるんだろうな」
「相談される方は、たまったもんじゃないけどね。学都のことは、やりたいって夢をかたっただけで、具体的なことまでは、そこまで決めていないじゃない?イチアに手紙を書いて、準備を進めてくれてもらっているのよ」
「イチアに任せておけば、安心だよな」
「確かに……ヨハンの研究費ももらったから、それも、少し、投入することになると思うわ」


 文官が迎えに来てくれたので、私たちはついていくことにした。目立つので、わかりやすかったのだろう。迷いなく、声をかけてくれたおかげで、そうそうに公の執務室へと入ることができた。
 相変わらず、公と宰相、エリックしかいないこの部屋には、書類が山のようにつまれるようになったのは、1年ほど前だったので、見慣れた光景だ。
 部屋に入るなり、もう少しだけ待ってくれと公に言われたので、宰相のすすめで、ソファにかける。ウィルは私の後ろに陣取り、立っていた。


「ウィルもつれてきたのか?」
「えぇ、何か問題でも?」
「ないが……今日呼んだのは他でもない。エルドアの件だ。公子との婚約については、今宰相たちと話をしているところだが、やはり、セバスが押されているようだ。そこで、どうしたものかと」
「それを私も話にきました」
「……いい話か?」
「どうでしょ?私が話すこと全てが私にとって都合がいいだけで、公にとって、都合がいいのかは、また、別の話でしょ?」


 にこっと笑うと、引きつった顔が可哀想に見えてくる。でも、本当のことだからしかたがない。


「こちらから提案をしてもいいが、アンナリーゼからの話を聞いたほうが、手っ取り早いきがする」
「いえ、どうするか、聞かせてください。公に意見があるなら、聞きますよ?」


 宰相と顔を見合わせ、どうする?と視線で会話をしているようだった。この期に及んで、どうするもないだろう。
 私の予測は……腹がたちそうな意見なので、もし、言ってきた場合は、即座に却下をするつもりだった。


「……セバスチャン・トライドを帰国させようかと思っている。よくやってくれたと思っているが、さすがに、もう……」
「宰相が変わりに向かわれるのですか?」
「……そうではない。が、他のものをだな」
「セバス以上にできる人が、この公宮にいるのですか?なら、私は、その方を見てみたい。そういう人材がいるなら、私はセバスに帰国するよう手紙を書きますし、私がエルドアに向かう必要もなくなる」
「エルドアに向かう……?」
「えぇ、秘密裏に行ってもいいかと許可を取りに来たのです」


 宰相と再度、目配せする公に、ハッキリしないなと苛立ちを感じた。公も外交をすることがあまりなかったので、判断に困っているのだろう。


「……セバスチャンの帰国命令を出したのち、引継ぎを行う。そのまま、そのものがその場を仕切るように」
「わかりました。では、そのようになさってください。私は、セバスが帰国命令を出されるのであれば、この件に関わりません」
「なっ、それは、どうしてだ?同じ文官」
「同じ文官?それは、違います。セバスは私にとって、大事な友人です。それと、今、どのように考えいるかしりませんが、クロック侯爵への協力も、撤回させていただきます。国のほうで、そちらの手続きもなさってください」
「……ま、待て!それは、向こうへ行っているものたちの宿泊場が無くなるということか?」
「そうです。クロック侯爵は私の友人であって、公の友人ではありません。セバスは私の友人ですから、交渉の間、落ち着ける場所の提供を頼んだにすぎませんから」


 それだけなら、帰りますね?と席を立つ。ウィルもそれに倣って私の後ろについた。


「どこへ行くのだ?」
「もちろん、帰るのですよ!私の領地、アンバー領へ。忙しいのです。学都にむけてのあれこれが」


 ではと礼をとり、執務室を出た。リアンに整えてもらった時間のほうが、公の前にいるより長く、ため息をついた。
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