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セバスの援護射撃はどうする?Ⅱ
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「さっきウィルとも言ってたんですけど、ウェスティン伯爵……ダリアは、開戦派の軍師なのです。彼女が動かないだけで、結構な痛手になったりするんじゃないかなぁ?って思っていたんですけど」
「確かに、エルドアにとって、痛いところではあるかもしれないけど、決定的なものではないよね?他には?」
「……エレーナの力を借りようかと。クロック侯爵は穏健派だったね。そことの繋がりをちらつかせる?」
「それもありますけど、どちらにもうまみがないと、なかなか……いずれにしても本人を屋敷に呼ぶつもりなので、そこで、決めたいと思っています」
「なるほど……下準備は、出来てるってこと?」
「脅しの材料は、必要ですよね?」
「……アンナらしくない気はするけど」
「戦争をするかしないかっていうときに、私らしいらしくないは関係ないですよ!」
たしかにと呟くジョージアとウィルにエルドアの話をする。手紙でのやり取りなので、どうしても情報が遅くなってしまい、後手後手となっていることを憂いてしまう。
「でも、そればっかりは、仕方ないよね。現地での判断ならまだしも、手紙で数日、刻一刻と変わる対応だし。1日の中でもさ、命令が変わることって、状況によってあるでしょ?」
「もちろん。それは、わかっているつもりだよ」
「ところでさ、演習をしないかって話を持ちかけてきたんだろ?」
「最初はね。今後に備えて話合いをしたいって、エルドアの国王もそのつもりだったと思うんだよね」
「それが、どうして、開戦というか、こっちから、ちょっかいかけてやろうって話になってるんだ?」
「ウィルが南の領地にいるって話が、エルドアでも噂になったらしいのよね」
「……原因は、俺?」
「そう。ウィルが南の領地にいるなら、もっとエルドアのほうへ配置してくれとか言ってきたから、お断りしたんだよ。話合いは行ったほうがいいと判断したから、セバスに行ってもらうことになったの」
「なるほどな。なんで、俺が、南にいるからって、飛躍してそんな話になったんだろうな?演習くらいならとは思うけど」
私は目をぱちくりさせながら、本当に言ってる?と視線を送った。本人も知っているだろうが、自覚は薄いのだろうか?
「ウィルって、ノクトたちとの対峙のときのこと覚えてる?」
「もちろん。俺もセバスについて、乗り込んだんだからな」
「そうよね。あのときは、ビックリしたのよね。その話を聞いて」
「その話が何?なんか、あるわけ?」
私は頷く。ウィルたちの話を知っているローズディアの国民は、ウィルやセバスの功績をたたえることはあるが、遠くで起こった出来事のように捉えてる。国の上層部だって、よくやったくらいにしか思っていないし、実際、あの場で何が起こって、小競り合いが終息したのかも知っている。
「隣国エルドアとは、情報共有がうまくできていないのよ」
「と、いうと?」
「常勝将軍ノクトに戦って勝ったのはウィルというふうに広まっているの」
「実際は、セバスが丸く収めたのに?血を一滴も流さずに」
「そう。セバスは文官だから、そういうふうに見られていなかったようね」
「まぁ、文官に比べて武官は、功績がわかりやすいけど、文官はな」
「与えられた爵位が、ウィルより低かったからっていうのもあるんだろうね」
「……男爵位か。こんなところでも。それにしても、酷い勘違いだな」
「星というのは、それほど重いということ。セバスが今度、エルドアとの話合いを無事解決できれば、星と爵位を得られるだろうが、今は、どうしようもないな」
「……ジョージア様」
セバスの頑張りをそれぞれが目の当たりにしているから、エルドアの過小評価が悔しい。セバス自身は、きっと、謙遜するのだろうが、努力を積み重ねている姿は、領地だけでなく公宮でもみなが知るところだ。
「エルドアってさ、こっちの情報って入って行ってるの?」
「うーん、それほどはって感じかな?トワイスは、祖父がそのあたり国の中枢で警鐘を鳴らしているから隣国やその周辺の情報は得るようにしているわ。ローズディアも情報収拾はしてるけど、それほど、優秀ではないでしょ?」
「姫さんの小鳥のほうが、優秀だよな……あれには、勝てない」
父から誕生日もらった小鳥は、今もあちこちと私のために飛び回っている。両親への情報提供も含まれているのだろうとは思うが、とにかく、優秀だ。
「エルドアは、変な情報収集をしている上に、情報の精査があまりうまくないのかもしれないわね。エレーナにもう少しエルドアについて聞いたほうがいいのかもしれないけど、元引篭もりのクロック侯爵が頑張っても、それほど有益な話は少ないのよね。エレーナがお茶会に出かけて仕入れてくる話はなかなかだけど」
「そういえば、今回の話合いで、公子と王女の政略結婚の話がでていると聞いたんだけど、それは?」
「受けることになるとは思うけど、国の頂点にたつ子に、かなり年上の長子をあてがわれるのはまずいって、今、そっちは、交渉しているみたい。セバスのほうにもその話が降りていってて、しつこいらしいわ」
「なんだか、問題の多い話合いだな?」
「そうね……冬場になる前に、セバスを返してほしいのだけど、もしかしたら、難しいかもしれないわ。エルドアのタヌキどもは、表に出ずに後ろからやいのやいのと言っているみたいだし。国王もそれに乗り始めたのが、本当、手に負えない」
大きなため息をついたら、ウィルが、姫さんが話合いの場に行かなくてよかったという。
真意はなんとなくわかっているので聞かないが、なんだか、ちょいちょいと私をイラつかせる。ウィルとそのやり取りも久々なら悪くはないなと思う私もいた。
「確かに、エルドアにとって、痛いところではあるかもしれないけど、決定的なものではないよね?他には?」
「……エレーナの力を借りようかと。クロック侯爵は穏健派だったね。そことの繋がりをちらつかせる?」
「それもありますけど、どちらにもうまみがないと、なかなか……いずれにしても本人を屋敷に呼ぶつもりなので、そこで、決めたいと思っています」
「なるほど……下準備は、出来てるってこと?」
「脅しの材料は、必要ですよね?」
「……アンナらしくない気はするけど」
「戦争をするかしないかっていうときに、私らしいらしくないは関係ないですよ!」
たしかにと呟くジョージアとウィルにエルドアの話をする。手紙でのやり取りなので、どうしても情報が遅くなってしまい、後手後手となっていることを憂いてしまう。
「でも、そればっかりは、仕方ないよね。現地での判断ならまだしも、手紙で数日、刻一刻と変わる対応だし。1日の中でもさ、命令が変わることって、状況によってあるでしょ?」
「もちろん。それは、わかっているつもりだよ」
「ところでさ、演習をしないかって話を持ちかけてきたんだろ?」
「最初はね。今後に備えて話合いをしたいって、エルドアの国王もそのつもりだったと思うんだよね」
「それが、どうして、開戦というか、こっちから、ちょっかいかけてやろうって話になってるんだ?」
「ウィルが南の領地にいるって話が、エルドアでも噂になったらしいのよね」
「……原因は、俺?」
「そう。ウィルが南の領地にいるなら、もっとエルドアのほうへ配置してくれとか言ってきたから、お断りしたんだよ。話合いは行ったほうがいいと判断したから、セバスに行ってもらうことになったの」
「なるほどな。なんで、俺が、南にいるからって、飛躍してそんな話になったんだろうな?演習くらいならとは思うけど」
私は目をぱちくりさせながら、本当に言ってる?と視線を送った。本人も知っているだろうが、自覚は薄いのだろうか?
「ウィルって、ノクトたちとの対峙のときのこと覚えてる?」
「もちろん。俺もセバスについて、乗り込んだんだからな」
「そうよね。あのときは、ビックリしたのよね。その話を聞いて」
「その話が何?なんか、あるわけ?」
私は頷く。ウィルたちの話を知っているローズディアの国民は、ウィルやセバスの功績をたたえることはあるが、遠くで起こった出来事のように捉えてる。国の上層部だって、よくやったくらいにしか思っていないし、実際、あの場で何が起こって、小競り合いが終息したのかも知っている。
「隣国エルドアとは、情報共有がうまくできていないのよ」
「と、いうと?」
「常勝将軍ノクトに戦って勝ったのはウィルというふうに広まっているの」
「実際は、セバスが丸く収めたのに?血を一滴も流さずに」
「そう。セバスは文官だから、そういうふうに見られていなかったようね」
「まぁ、文官に比べて武官は、功績がわかりやすいけど、文官はな」
「与えられた爵位が、ウィルより低かったからっていうのもあるんだろうね」
「……男爵位か。こんなところでも。それにしても、酷い勘違いだな」
「星というのは、それほど重いということ。セバスが今度、エルドアとの話合いを無事解決できれば、星と爵位を得られるだろうが、今は、どうしようもないな」
「……ジョージア様」
セバスの頑張りをそれぞれが目の当たりにしているから、エルドアの過小評価が悔しい。セバス自身は、きっと、謙遜するのだろうが、努力を積み重ねている姿は、領地だけでなく公宮でもみなが知るところだ。
「エルドアってさ、こっちの情報って入って行ってるの?」
「うーん、それほどはって感じかな?トワイスは、祖父がそのあたり国の中枢で警鐘を鳴らしているから隣国やその周辺の情報は得るようにしているわ。ローズディアも情報収拾はしてるけど、それほど、優秀ではないでしょ?」
「姫さんの小鳥のほうが、優秀だよな……あれには、勝てない」
父から誕生日もらった小鳥は、今もあちこちと私のために飛び回っている。両親への情報提供も含まれているのだろうとは思うが、とにかく、優秀だ。
「エルドアは、変な情報収集をしている上に、情報の精査があまりうまくないのかもしれないわね。エレーナにもう少しエルドアについて聞いたほうがいいのかもしれないけど、元引篭もりのクロック侯爵が頑張っても、それほど有益な話は少ないのよね。エレーナがお茶会に出かけて仕入れてくる話はなかなかだけど」
「そういえば、今回の話合いで、公子と王女の政略結婚の話がでていると聞いたんだけど、それは?」
「受けることになるとは思うけど、国の頂点にたつ子に、かなり年上の長子をあてがわれるのはまずいって、今、そっちは、交渉しているみたい。セバスのほうにもその話が降りていってて、しつこいらしいわ」
「なんだか、問題の多い話合いだな?」
「そうね……冬場になる前に、セバスを返してほしいのだけど、もしかしたら、難しいかもしれないわ。エルドアのタヌキどもは、表に出ずに後ろからやいのやいのと言っているみたいだし。国王もそれに乗り始めたのが、本当、手に負えない」
大きなため息をついたら、ウィルが、姫さんが話合いの場に行かなくてよかったという。
真意はなんとなくわかっているので聞かないが、なんだか、ちょいちょいと私をイラつかせる。ウィルとそのやり取りも久々なら悪くはないなと思う私もいた。
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