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お星を掴んできましたわⅣ
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「……あぁ、悪かった。始めようか。宰相」
ウィルの合図のおかげで、宰相を呼び寄せ勲章を持ってきてくれた。
私もウィルの肩を借りて跪き、頭を垂れる。
あぁ、きっと、公妃はさぞ、愉快な顔をしているのでしょうね?
上を向きたい衝動にかられながらも、グッと我慢をしていると、公に名を呼ばれた。
「アンナリーゼ・トロン・アンバー」
「はいっ!」
「今回の南の領地での病終息に、尽力してくれたこと、民に変わり礼を申す。甚大な厄災となるはずだったと、こちらの試算では情報が出ている。多くの民が苦しんだことに変わりはないが、予想を遥かに下回る終息であったこと、同時に、自身が私の変わりに現地へ赴き指揮を執ってくれたこと、この病に対する医師の派遣や薬の提供なのど、数えきれないほどの国への貢献、民への献身にこの度、勲章を授与する。
国民を国を……近衛を守ってくれて、ありがとう」
私は顔をあげると、公が何とも言えない表情をこちらに向けていた。その顔は、感謝しているというものもあれば、何も出来ずにいたことを悔やむというもの、ローズディアへ未知の病を法を破られて持ち込んでしまったことへの怒り。いろんな感情が籠っているものだ。
ウィルも言っていたけど、国の頂に存在するものとしての自覚のようなものが、今回のことで、より一層、公の心の成長に繋がったのかもしれないわね。
何歳も年上の公に対して、失礼なことを思いながら、微笑んだ。
「もったいないお言葉です。私の知識や財産がこの国のために、国民のために役に立てたのなら、幸いです」
「本当にありがとう」
みなに聞こえないように小声で私に囁いた。さすがに公妃には聞こえたようで、先程までの作り笑いが、崩れている。
「宰相、これに」
星を模した綺麗な勲章を普通はもらうのだが、私は近衛ではない。制服も持っていないし、よそ者であるので、着れない。
どうするのだろう?と少し思っていたのだが、杞憂に終わる。
「勲章をと思ったのだが、近衛ではないアンナリーゼには、これを」
大きめのアメジストで出来た紫薔薇のブローチを私へと手渡してきた。
「公、これは……」
「勲章の代わりだ。最上級のアメジストで出来た紫薔薇のブローチ。みなによくみえるように胸元につくてくれ」
「かしこまりました」
普段は、誰かがつけてくれるのだが、今日は誰もいないので、自分でつけようとした。ウィルが、後ろから、つけようか?と言ってきたが、さすがに公衆の面前で、ドレスに手をかけるのはまずいだろう。
やんわり断ると、公妃がやれやれというふうに近寄ってきて、私の手から紫薔薇を掻っ攫っていく。それを見ていた他の貴族たちが、ザワザワとして騒ぎ始めたのだが、公妃は特に気にもしない様子であった。
何をするのかと見ていれば、殿方たちには出来ませんからねと言って、私の胸元へ紫薔薇のブローチをつけてくれる。
「……ありがとうございます」
「そんな顔はしないでちょうだい。私は、公妃です。国を民を守ってくださった方には、派閥関係なく、これくらいのことはできますわ!」
「よくやってくれた、公妃よ」
「あたりまえです。私は、この国の公妃なのですよ?勲章を授与されるものに対して、礼を尽くすのは、当たり前ではありませんか!」
「……いつもは、しないからな」
小声で公が言った言葉は、ちゃんと公妃にも聞こえていたようで、しれっと足をハイヒールの踵で踏まれていたようだ。痛そうに、少しだけ、涙目になっている。
「なお、褒賞については、後日、アンバー公爵家へ届けることにする。ヨハン教授の勲章および褒賞についても同様とする」
「ありがとうございます」
褒賞については、私は何も聞いていなかったので、何をくれるのだろう?と考えていた。ヨハンの褒賞は、研究費をだしてと言ってあるので、たぶん、それをくれるのだろう。
結構な金額のお金になるので、どうするか考えないといけないが、助手もいることなので、お金については、助手に任せることにした。
……ヨハンに預けるとろくなことがないだろうしね。
「アンナリーゼには、今回の褒賞に1つ、国からの指令がある。心して聞くように」
心あらずで、ヨハンのことを考えていたら、急に話を戻されてしまう。
「はい、かしこまりました」
「この度の件で、国におる医者について、考えることが多くあった。制度にしても、病を診ることに対しても、公都から派遣した医師や町医者とそなたの主治医ヨハンやその助手たちの知識には、大きな差があった」
「そのように報告を受けています」
「そのことで、褒賞とともに、アンバー領を学都と決め、次代の医師の育成をすることを命ずる」
「……医師の育成ですか?」
元々、学都にする計画もあった。ヨハンが医者を育てたいという願望もあった。今回、回った領地で、町医者たちから、学びたいという声もあがった。
まさか、勝手に領地で始めようとしていたことを国の事業として指名されることになるとは、思ってもみなかった。
「……承認してとは言いましたが……、事業ですか?」
「あぁ、国も一部補助金を出す。この国の民が、あらゆる危険から少しでも守られるよう、協力をしてくれ」
「……かしこまりました。よろこんでお受けします」
「事業については、後日、話をしよう!」
そういって、私へ手を差し出してくる。立てというものではなく、握手という意味合いがあるようだ。私は、差し出された公の手を両手でギュっと掴み、握手したのである。
ウィルの合図のおかげで、宰相を呼び寄せ勲章を持ってきてくれた。
私もウィルの肩を借りて跪き、頭を垂れる。
あぁ、きっと、公妃はさぞ、愉快な顔をしているのでしょうね?
上を向きたい衝動にかられながらも、グッと我慢をしていると、公に名を呼ばれた。
「アンナリーゼ・トロン・アンバー」
「はいっ!」
「今回の南の領地での病終息に、尽力してくれたこと、民に変わり礼を申す。甚大な厄災となるはずだったと、こちらの試算では情報が出ている。多くの民が苦しんだことに変わりはないが、予想を遥かに下回る終息であったこと、同時に、自身が私の変わりに現地へ赴き指揮を執ってくれたこと、この病に対する医師の派遣や薬の提供なのど、数えきれないほどの国への貢献、民への献身にこの度、勲章を授与する。
国民を国を……近衛を守ってくれて、ありがとう」
私は顔をあげると、公が何とも言えない表情をこちらに向けていた。その顔は、感謝しているというものもあれば、何も出来ずにいたことを悔やむというもの、ローズディアへ未知の病を法を破られて持ち込んでしまったことへの怒り。いろんな感情が籠っているものだ。
ウィルも言っていたけど、国の頂に存在するものとしての自覚のようなものが、今回のことで、より一層、公の心の成長に繋がったのかもしれないわね。
何歳も年上の公に対して、失礼なことを思いながら、微笑んだ。
「もったいないお言葉です。私の知識や財産がこの国のために、国民のために役に立てたのなら、幸いです」
「本当にありがとう」
みなに聞こえないように小声で私に囁いた。さすがに公妃には聞こえたようで、先程までの作り笑いが、崩れている。
「宰相、これに」
星を模した綺麗な勲章を普通はもらうのだが、私は近衛ではない。制服も持っていないし、よそ者であるので、着れない。
どうするのだろう?と少し思っていたのだが、杞憂に終わる。
「勲章をと思ったのだが、近衛ではないアンナリーゼには、これを」
大きめのアメジストで出来た紫薔薇のブローチを私へと手渡してきた。
「公、これは……」
「勲章の代わりだ。最上級のアメジストで出来た紫薔薇のブローチ。みなによくみえるように胸元につくてくれ」
「かしこまりました」
普段は、誰かがつけてくれるのだが、今日は誰もいないので、自分でつけようとした。ウィルが、後ろから、つけようか?と言ってきたが、さすがに公衆の面前で、ドレスに手をかけるのはまずいだろう。
やんわり断ると、公妃がやれやれというふうに近寄ってきて、私の手から紫薔薇を掻っ攫っていく。それを見ていた他の貴族たちが、ザワザワとして騒ぎ始めたのだが、公妃は特に気にもしない様子であった。
何をするのかと見ていれば、殿方たちには出来ませんからねと言って、私の胸元へ紫薔薇のブローチをつけてくれる。
「……ありがとうございます」
「そんな顔はしないでちょうだい。私は、公妃です。国を民を守ってくださった方には、派閥関係なく、これくらいのことはできますわ!」
「よくやってくれた、公妃よ」
「あたりまえです。私は、この国の公妃なのですよ?勲章を授与されるものに対して、礼を尽くすのは、当たり前ではありませんか!」
「……いつもは、しないからな」
小声で公が言った言葉は、ちゃんと公妃にも聞こえていたようで、しれっと足をハイヒールの踵で踏まれていたようだ。痛そうに、少しだけ、涙目になっている。
「なお、褒賞については、後日、アンバー公爵家へ届けることにする。ヨハン教授の勲章および褒賞についても同様とする」
「ありがとうございます」
褒賞については、私は何も聞いていなかったので、何をくれるのだろう?と考えていた。ヨハンの褒賞は、研究費をだしてと言ってあるので、たぶん、それをくれるのだろう。
結構な金額のお金になるので、どうするか考えないといけないが、助手もいることなので、お金については、助手に任せることにした。
……ヨハンに預けるとろくなことがないだろうしね。
「アンナリーゼには、今回の褒賞に1つ、国からの指令がある。心して聞くように」
心あらずで、ヨハンのことを考えていたら、急に話を戻されてしまう。
「はい、かしこまりました」
「この度の件で、国におる医者について、考えることが多くあった。制度にしても、病を診ることに対しても、公都から派遣した医師や町医者とそなたの主治医ヨハンやその助手たちの知識には、大きな差があった」
「そのように報告を受けています」
「そのことで、褒賞とともに、アンバー領を学都と決め、次代の医師の育成をすることを命ずる」
「……医師の育成ですか?」
元々、学都にする計画もあった。ヨハンが医者を育てたいという願望もあった。今回、回った領地で、町医者たちから、学びたいという声もあがった。
まさか、勝手に領地で始めようとしていたことを国の事業として指名されることになるとは、思ってもみなかった。
「……承認してとは言いましたが……、事業ですか?」
「あぁ、国も一部補助金を出す。この国の民が、あらゆる危険から少しでも守られるよう、協力をしてくれ」
「……かしこまりました。よろこんでお受けします」
「事業については、後日、話をしよう!」
そういって、私へ手を差し出してくる。立てというものではなく、握手という意味合いがあるようだ。私は、差し出された公の手を両手でギュっと掴み、握手したのである。
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