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お星を掴んできましたわ
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何があるのか、知らされているのだろう。夜会で行われることは、正直なところ、この国始まって、初めてのことだと思われる。
「今日、終わりの夜会にて、今回、南の領地を中心に広がった病の終息に尽力を尽くしてくれた者たちへ勲章を授与することにした。
事の発端は、隣国インゼロ帝国からの人身売買による裏取引によるもの。そのうちの一人が病に侵されていた。我が国では、人身売買は国の法で禁止となっているにも関わらず、このようなことが起こったこと、真に遺憾であり、処罰することにする。今回の件に関わったものは、それ相応の罰があると考えてくれ」
公にしては、強い言葉を使いながら、説明をしている。少し前のコーコナでもあった人身売買のことが頭によぎったが、国内で禁止していても、裏取引として……ではなくとも、人が商品として売られる実情が横行していると暗に言っているのだ。
「この国の中では、普通にあるのですね……」
「アンバー領では、なかったからね。貧しすぎるがゆえに、人も少ない。最低限の中でも、さらに最低の生活をしていたから、人は食べるために必要だった。やせ細った畑でも、食べ物を作るには人がいるから。その人を少ない食べ物で雇って力を合わせながら生活していたんだ。豊かにならない領地のことを見て見ぬふりをしていた俺がいうべきではないのかもしれないが」
「そんなことはありません。ジョージア様もお義父様も、領地をよくするために頑張っていらしたこと、私は知っています。今、実を結んでいるではありませんか?」
「あぁ、アンナがいてくれたからだ」
背中をぽんぽんと叩くと、苦笑いをするジョージア。本来なら、自身の手で、どうにかしたかっただろう。それができるほどの能力はあるのだから。邪魔さえなければ、できたはずだし、私に対する気持ちも少し違ったのではないだろうか。
愛しているの奥に、いつもすまないという気持ちが見え隠れしているのは、気付いていらっしゃいますか?
寄り添うように腕に手を絡めると、優しい微笑みを見せてくれた。
「ジョージア様、私は、ジョージア様がいてくれたから、ここにいられるのです。私が、誰に恋をして、アンバーに嫁いできたのか……忘れないでください」
少し驚いたように目を見開いたが、そうだなと呟く。
「アンナのその恋のおかげで、俺もここにいられるんだな。もし、アンナが選んでくれなかったら、俺は、きっと、この国一の暴君と呼ばれていたかもしれない」
「優しいジョージア様がそんなはずありませんよ。少し、私の信者を増やして参ります」
「アンナ教のか?」
「えぇ、そうです。いつの間にか宗教のように言われるのは、不本意ですが……ピンク髪の聖女とか女神とか言われるのは、存外悪い気はしないんです。恥ずかしいですけど」
クスクス笑っていると、後ろからも呟きが聞こえてくる。
「また、ライバルが増えますの?」
「それ、違うんじゃないか?姫さんの……」
「違いませんわ!みなさん、アンナリーゼ様の寵愛を一人占め」
「ナタリー、アンナの寵愛は、俺だけのものだよ?」
「ジョージア様、それはわかりませんよ!」
「だから、二人とも……宗教で言うところの信奉者だろ?だいたい、姫さんを女神だって崇める時点で、ヤバイ宗教だぞ?」
「「それは、確かに」」
「……声、揃ってる!」
ゴホンっ!と咳払いをすると、階下を睨む公と目が合った。私たちが、話しているのが気になったようで、ニコリと笑って手を振っておく。
「まずは、ここに、南の領地を中心に広がった病の終息宣言をする!」
「おぉ!やっと、終わりましたか!」
「これで、自由にできる日々が来ますな!」
貴族たちは、ここ数ヶ月の経済の停滞や領地内でしか移動ができない領民たちからの不満など、たくさん苦労もあったようで、終息宣言を手を取り合って、喜び合う。
「今回の件には、功労者がいる。この国へ迷い込んだ病魔に対し、公爵という身でありながら、私の代わりに先頭に立ち指揮を取ってくれたものがいる。いち早く、病魔のことを知らせ、国全体に広がらないよう対策をしてくれたうえに、自領で独自開発をしていた薬も大量に提供を申し出てくれた。近衛への感染を防ぎ、あらゆる国外への病の流出を抑えることができた。おかげで、他国への賠償問題に発展することなく、救われた。
公爵お抱えの研究者が、1番の功労者である。インゼロ帝国にある既存の薬ではなく、新しい薬の開発、研究を進めてくれたおかげで、多くの国民が助かった」
ひと呼吸を入れ、伏目がちに公は大きなため息と落胆をあらわすように、肩を落とす。その様子に悠然と座っていた公妃が慌てて駆け寄っている。
その姿をみれば、それらしい夫婦に見えなくもないなと、見上げていた。
きっと、公妃は、私を褒めている公に苛立ちや私への嫉妬もあるのでしょうね。根は公を大切にしているように見えるわ。
「私が派遣をした医師団は欲に目がくらみ、ろくな仕事はせずに、貴族の屋敷で大量の薬とともに患者である民を見捨てた。多くの民が死に、子を亡くした親や親を亡くした子らが多くいる。そんな事態を少しでも軽減できるようにと送ったはずだった。そんな人材しか、派遣ができなかった私は、自身の判断を悔やんでならない!」
公が自身の気持ちを吐露することは、ない。今回の犠牲者は、力及ばず助けられなかったものがとても多いと聞いている。私たちが回って、手を貸せた地域もあれば、手遅れだった最も南の領地でのことは、手紙でウィルから状況を聞いていた。
「今日、終わりの夜会にて、今回、南の領地を中心に広がった病の終息に尽力を尽くしてくれた者たちへ勲章を授与することにした。
事の発端は、隣国インゼロ帝国からの人身売買による裏取引によるもの。そのうちの一人が病に侵されていた。我が国では、人身売買は国の法で禁止となっているにも関わらず、このようなことが起こったこと、真に遺憾であり、処罰することにする。今回の件に関わったものは、それ相応の罰があると考えてくれ」
公にしては、強い言葉を使いながら、説明をしている。少し前のコーコナでもあった人身売買のことが頭によぎったが、国内で禁止していても、裏取引として……ではなくとも、人が商品として売られる実情が横行していると暗に言っているのだ。
「この国の中では、普通にあるのですね……」
「アンバー領では、なかったからね。貧しすぎるがゆえに、人も少ない。最低限の中でも、さらに最低の生活をしていたから、人は食べるために必要だった。やせ細った畑でも、食べ物を作るには人がいるから。その人を少ない食べ物で雇って力を合わせながら生活していたんだ。豊かにならない領地のことを見て見ぬふりをしていた俺がいうべきではないのかもしれないが」
「そんなことはありません。ジョージア様もお義父様も、領地をよくするために頑張っていらしたこと、私は知っています。今、実を結んでいるではありませんか?」
「あぁ、アンナがいてくれたからだ」
背中をぽんぽんと叩くと、苦笑いをするジョージア。本来なら、自身の手で、どうにかしたかっただろう。それができるほどの能力はあるのだから。邪魔さえなければ、できたはずだし、私に対する気持ちも少し違ったのではないだろうか。
愛しているの奥に、いつもすまないという気持ちが見え隠れしているのは、気付いていらっしゃいますか?
寄り添うように腕に手を絡めると、優しい微笑みを見せてくれた。
「ジョージア様、私は、ジョージア様がいてくれたから、ここにいられるのです。私が、誰に恋をして、アンバーに嫁いできたのか……忘れないでください」
少し驚いたように目を見開いたが、そうだなと呟く。
「アンナのその恋のおかげで、俺もここにいられるんだな。もし、アンナが選んでくれなかったら、俺は、きっと、この国一の暴君と呼ばれていたかもしれない」
「優しいジョージア様がそんなはずありませんよ。少し、私の信者を増やして参ります」
「アンナ教のか?」
「えぇ、そうです。いつの間にか宗教のように言われるのは、不本意ですが……ピンク髪の聖女とか女神とか言われるのは、存外悪い気はしないんです。恥ずかしいですけど」
クスクス笑っていると、後ろからも呟きが聞こえてくる。
「また、ライバルが増えますの?」
「それ、違うんじゃないか?姫さんの……」
「違いませんわ!みなさん、アンナリーゼ様の寵愛を一人占め」
「ナタリー、アンナの寵愛は、俺だけのものだよ?」
「ジョージア様、それはわかりませんよ!」
「だから、二人とも……宗教で言うところの信奉者だろ?だいたい、姫さんを女神だって崇める時点で、ヤバイ宗教だぞ?」
「「それは、確かに」」
「……声、揃ってる!」
ゴホンっ!と咳払いをすると、階下を睨む公と目が合った。私たちが、話しているのが気になったようで、ニコリと笑って手を振っておく。
「まずは、ここに、南の領地を中心に広がった病の終息宣言をする!」
「おぉ!やっと、終わりましたか!」
「これで、自由にできる日々が来ますな!」
貴族たちは、ここ数ヶ月の経済の停滞や領地内でしか移動ができない領民たちからの不満など、たくさん苦労もあったようで、終息宣言を手を取り合って、喜び合う。
「今回の件には、功労者がいる。この国へ迷い込んだ病魔に対し、公爵という身でありながら、私の代わりに先頭に立ち指揮を取ってくれたものがいる。いち早く、病魔のことを知らせ、国全体に広がらないよう対策をしてくれたうえに、自領で独自開発をしていた薬も大量に提供を申し出てくれた。近衛への感染を防ぎ、あらゆる国外への病の流出を抑えることができた。おかげで、他国への賠償問題に発展することなく、救われた。
公爵お抱えの研究者が、1番の功労者である。インゼロ帝国にある既存の薬ではなく、新しい薬の開発、研究を進めてくれたおかげで、多くの国民が助かった」
ひと呼吸を入れ、伏目がちに公は大きなため息と落胆をあらわすように、肩を落とす。その様子に悠然と座っていた公妃が慌てて駆け寄っている。
その姿をみれば、それらしい夫婦に見えなくもないなと、見上げていた。
きっと、公妃は、私を褒めている公に苛立ちや私への嫉妬もあるのでしょうね。根は公を大切にしているように見えるわ。
「私が派遣をした医師団は欲に目がくらみ、ろくな仕事はせずに、貴族の屋敷で大量の薬とともに患者である民を見捨てた。多くの民が死に、子を亡くした親や親を亡くした子らが多くいる。そんな事態を少しでも軽減できるようにと送ったはずだった。そんな人材しか、派遣ができなかった私は、自身の判断を悔やんでならない!」
公が自身の気持ちを吐露することは、ない。今回の犠牲者は、力及ばず助けられなかったものがとても多いと聞いている。私たちが回って、手を貸せた地域もあれば、手遅れだった最も南の領地でのことは、手紙でウィルから状況を聞いていた。
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