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今日は視察ですか?
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こちらにどうぞと、1軒の家に案内される。養子に入り、この村で暮らすタンザに与えられた家で、二階部分から屋根裏部屋にかけて、蚕を飼っている。
「久しぶりに来たけど……相変わらずね。道には、うにょうにょと散歩か脱走かしているし……」
「えぇ、そうですね……鳥に狙われるので、出歩いて欲しくはないのですけどね……」
この家に着くまでに10匹は大きなカゴに蚕を入れていただろう。
「何処から逃げ出しているの?」
「どこかの隙間から逃げ出しているようですね……どういうわけか、そういう抜け道を見つけるのが得意な子がいるようで……」
「……その話、とても聞き覚えのある話です」
「えっと、そちらは……?」
「アンナリーゼ様の護衛をしていますアデルです。ちなみに、今は夫役なので、名をアンナと呼んでいるので、察してください」
「……それは、大変ですね?ご苦労様です」
「えぇ、本当に」
苦労しているという雰囲気をありありと出すアデルを睨めば、タンザもクスクス笑う。
「私の師匠も似たような方でしたから、その気持ち、とてもよくわかります。気がついたら、いないのですもの……手の空いている助手仲間といつも探し回っていました」
「そうでしたか。それは、それは。うちも似たような感じで……どこから抜け出しているのか、ぜひ、奥様には聞きだしてみたいものですね!」
「……あの、私のことを言っていたの?」
「他に誰かいますか?」
「ヨハンと蚕のことだと思っていたから、全く知らん顔で聞いていたわ」
「……どちらかというと、アンナ以外いないと思いますけど?ジョージア様やウィル様に聞いてみてはいかがですか?」
「……ジョージア様なら、アデルと同じようにいうかもしれないわね?でも、ウィルは、どこにいてもいるもの。私の側に……。同じニオイがしているから、たぶん私の行動なんてお手の物だわ!」
「強敵あらわる?」
コットンが私とアデルの話を聞き、きょとんとしている。
「ウィルはすごいんだよ?」
「……知っています。ウィル様のすごさは、近衛である私は身をもって知っていますから」
「ついでに、私のすごさもわかってほしいものだわ!」
ニコッとアデルに笑いかけると、「十分すぎるほどわかっている」と返事された。
「ところで、今日は視察ですか?」
「そうなの。もう少ししたら、公都へ戻らないと行けないから、いろいろな話をきけたらと思って。あと、こっちに警備隊長ってきてなかった?」
「あぁ、それなら……今、うちにいますよ!」
「本当?あとで、話がしたいわ!」
「では、先にいってきますので、少しだけお待ちください」
案内された部屋から出ていくタンザ。ここには、もう一人住人がいる。コットンの祖父である。
「じぃさんに会うのは……久しぶりだな」
「たまには、顔を出しなさいよ?」
「……そうですね。たまには、そうします」
用意されたティーポットからお茶を入れる。その様子をアデルとコットンが見ていた。
「アンナって、お茶なんて入れられるんですね?」
「当たり前でしょ?淑女たるものこのくらい出来て当たり前よ?」
「ふぇーアンナリーゼ様手ずからお茶を淹れてもらえるなんて!感激です」
「そんなたいしたことじゃないじゃない。アデルもどうぞ」
「……ありがとうございます」
渡したカップをまじまじ見つめながら、緊張した面持ちで口をつけた。
「言っておくけど、入れたのはタンザで、私は注いだだけだからね?」
「それでも、感激ですよ?公爵様が入れてくれたんだから」
「そこまで言われると……あれね。コットン!」
「はい?」
「冬の間は、時間あるかしら?」
「それなりには……何かあるのですか?」
「お茶会をしましょう!公爵家の本気を見せてあげるわ!」
「……い、いえ、そんな、大丈夫ですよ?」
「いいえ、いらっしゃい。私がきちんと、最初から最後までこだわって淹れてあげるから!」
ニッコリ笑いかけると、アデルの方をチラチラ見ているが、諦めろという表情でコットンに頷いている。
「そんなにかしこまったものじゃないわよ。よく学園でしていた秘密のお茶会よ。アデルも来るといいわ!招待状を送ってあげる」
「いえ、結構です。護衛もありますから」
「遠慮はいらないわ!ウィルに聞いたら、懐かしんでくれると思うし……その頃には、セバスも帰ってきているでしょ?」
「何故、ウィル様やセバスチャン様が?」
「上位貴族の令嬢は、お茶会を年に何回か開くって決まりが学園にあってね。ウィルやセバス、ナタリーを中心に呼んで、お茶会を開いていたのよ!」
「へぇーそんなものが……」
「貴族ばかりなのでしょ?」
「そんなことないわよ?私のお茶会には、ニコライやその妻のティアも来ていたもの。とにかくいろいろな情報を集めるお茶会でもあったから、いろいろな人が出入りしていたわ!その中でも、来る人は、こちらで選ばせてもらってはいたけど」
ニコリと笑いかけていると、カップのところまで大きな蚕が近づいてくる。私が初めてタンザに見せてもらったものより、二回りほど大きいそれを指の腹でつついた。
「話はしてきましたので、よってくれるそうです」
不意にタンザが部屋に入って来たので、そちらを見れば、「あぁー!」っといきなり大声を出され驚いた。
「久しぶりに来たけど……相変わらずね。道には、うにょうにょと散歩か脱走かしているし……」
「えぇ、そうですね……鳥に狙われるので、出歩いて欲しくはないのですけどね……」
この家に着くまでに10匹は大きなカゴに蚕を入れていただろう。
「何処から逃げ出しているの?」
「どこかの隙間から逃げ出しているようですね……どういうわけか、そういう抜け道を見つけるのが得意な子がいるようで……」
「……その話、とても聞き覚えのある話です」
「えっと、そちらは……?」
「アンナリーゼ様の護衛をしていますアデルです。ちなみに、今は夫役なので、名をアンナと呼んでいるので、察してください」
「……それは、大変ですね?ご苦労様です」
「えぇ、本当に」
苦労しているという雰囲気をありありと出すアデルを睨めば、タンザもクスクス笑う。
「私の師匠も似たような方でしたから、その気持ち、とてもよくわかります。気がついたら、いないのですもの……手の空いている助手仲間といつも探し回っていました」
「そうでしたか。それは、それは。うちも似たような感じで……どこから抜け出しているのか、ぜひ、奥様には聞きだしてみたいものですね!」
「……あの、私のことを言っていたの?」
「他に誰かいますか?」
「ヨハンと蚕のことだと思っていたから、全く知らん顔で聞いていたわ」
「……どちらかというと、アンナ以外いないと思いますけど?ジョージア様やウィル様に聞いてみてはいかがですか?」
「……ジョージア様なら、アデルと同じようにいうかもしれないわね?でも、ウィルは、どこにいてもいるもの。私の側に……。同じニオイがしているから、たぶん私の行動なんてお手の物だわ!」
「強敵あらわる?」
コットンが私とアデルの話を聞き、きょとんとしている。
「ウィルはすごいんだよ?」
「……知っています。ウィル様のすごさは、近衛である私は身をもって知っていますから」
「ついでに、私のすごさもわかってほしいものだわ!」
ニコッとアデルに笑いかけると、「十分すぎるほどわかっている」と返事された。
「ところで、今日は視察ですか?」
「そうなの。もう少ししたら、公都へ戻らないと行けないから、いろいろな話をきけたらと思って。あと、こっちに警備隊長ってきてなかった?」
「あぁ、それなら……今、うちにいますよ!」
「本当?あとで、話がしたいわ!」
「では、先にいってきますので、少しだけお待ちください」
案内された部屋から出ていくタンザ。ここには、もう一人住人がいる。コットンの祖父である。
「じぃさんに会うのは……久しぶりだな」
「たまには、顔を出しなさいよ?」
「……そうですね。たまには、そうします」
用意されたティーポットからお茶を入れる。その様子をアデルとコットンが見ていた。
「アンナって、お茶なんて入れられるんですね?」
「当たり前でしょ?淑女たるものこのくらい出来て当たり前よ?」
「ふぇーアンナリーゼ様手ずからお茶を淹れてもらえるなんて!感激です」
「そんなたいしたことじゃないじゃない。アデルもどうぞ」
「……ありがとうございます」
渡したカップをまじまじ見つめながら、緊張した面持ちで口をつけた。
「言っておくけど、入れたのはタンザで、私は注いだだけだからね?」
「それでも、感激ですよ?公爵様が入れてくれたんだから」
「そこまで言われると……あれね。コットン!」
「はい?」
「冬の間は、時間あるかしら?」
「それなりには……何かあるのですか?」
「お茶会をしましょう!公爵家の本気を見せてあげるわ!」
「……い、いえ、そんな、大丈夫ですよ?」
「いいえ、いらっしゃい。私がきちんと、最初から最後までこだわって淹れてあげるから!」
ニッコリ笑いかけると、アデルの方をチラチラ見ているが、諦めろという表情でコットンに頷いている。
「そんなにかしこまったものじゃないわよ。よく学園でしていた秘密のお茶会よ。アデルも来るといいわ!招待状を送ってあげる」
「いえ、結構です。護衛もありますから」
「遠慮はいらないわ!ウィルに聞いたら、懐かしんでくれると思うし……その頃には、セバスも帰ってきているでしょ?」
「何故、ウィル様やセバスチャン様が?」
「上位貴族の令嬢は、お茶会を年に何回か開くって決まりが学園にあってね。ウィルやセバス、ナタリーを中心に呼んで、お茶会を開いていたのよ!」
「へぇーそんなものが……」
「貴族ばかりなのでしょ?」
「そんなことないわよ?私のお茶会には、ニコライやその妻のティアも来ていたもの。とにかくいろいろな情報を集めるお茶会でもあったから、いろいろな人が出入りしていたわ!その中でも、来る人は、こちらで選ばせてもらってはいたけど」
ニコリと笑いかけていると、カップのところまで大きな蚕が近づいてくる。私が初めてタンザに見せてもらったものより、二回りほど大きいそれを指の腹でつついた。
「話はしてきましたので、よってくれるそうです」
不意にタンザが部屋に入って来たので、そちらを見れば、「あぁー!」っといきなり大声を出され驚いた。
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