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私への報告はないのだけど?
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スピアに連れられ、他の副隊長がいるという部屋へ案内してもらった。
「こちらです……」
「おぅ、戻ったか?」
「……その後ろの人、だぁれぇ?」
いかつい青年と、少々だらけた格好の青年が、スピアを迎え、その後ろにいる私たちに目を向けた。
「こちらは、アンバー公爵です」
「アンバー公爵って、男じゃないのか?」
「……そうだっけ?去年、隊員を貸し出したとき、なんか言ってなかった?」
「そうだったか?」
一応、貴族の前ではあるのだが、あけすけな言葉になんとも言えない気持ちになった。
……アンバー領も結構だな?って思っていたけど、どこも領地の警備ってこんな人材が多いのかしら?
首を傾げながら、二人の副隊長をみていた。
「それで、何人か連れていったよね?他のやつらは?」
「……全員、訓練場で伸びてます」
「伸びてるって、なんで?」
「領主に刃を向けたのです。それ相応の罰を受けてもらいました」
「って言っても、スピアちゃんじゃ何にもできないよね?」
小馬鹿にしたような口調でスピアを嘲る。後ろに立っているので、表情は見えないが少しだけ肩が揺れたのが見えた。
「はい、領主様自ら、手を加えていただきました。何か、問題でもありますか?」
「領主様がなら、俺らには、何も言えないわな」
ケラケラ笑う二人と温度差のあるスピア。私は、スピアの隣に並び立った。
「何でもいいんだけど?領主が来ているんだから、それなりの挨拶ってできないのかしら?」
何で俺らが?という表情をしたので、ツカツカと近寄っていく。一人は椅子を斜めにしていたので、簡単にひっくり返すことができた。ガタイのいい青年は、椅子ごと床に倒れることになり、背中を打ち付けたようだ。
「椅子は、そうやって座るものじゃないわよ?正しく座らないから、そういうことになるの。うちの3歳の子どもでも知っていることだわ!」
「くっそ女!」
「くそ女じゃありませんけどね?痛い目みる?」
もう一人の方を見ると、睨むばかりで私に何かをしてくることはなかった。歯向かったくらいで首を切り落としたりはしないのにななんて思いながら、どうするか観察する。そうすると、何故か怯えた表情になり、膝をついて私へ頭を垂れる。
「クビにしちゃう?」
スピアに問うと、とんでもない!と慌てていた。この二人、態度は悪いが、うでもいいらしい。地方へ視察へ行ったりすると、若い女性たちに特に人気もあるらしく、天狗になっているようだ。
「確認したいことがあったんだけど?」
「……何でございましょう?」
「スピアのこと、私、雇うって報告、受けていないのだけど?」
「えっ?それは、隊長が忘れていたのだと思います。私たちには、人事権がないので」
「そう。それなら、それで、スピアはこちらで雇うからと隊長に伝えておいて。返してほしかったら、屋敷に来てと言ってくれればいいわ」
「スピアを連れていかれるのですか?」
「不都合でも?私、欲しいのだけど……問題でも?」
貴族特有の少々圧力をかけてみると、二人とも焦っていた。
「……あ、あの。俺らにはなんの権限もないんで直接言ってくれません?」
「んーいいけど……」
ほっとしたような表情をしたので、追い打ちをかけてみた。
「私が隊長に報告をするのよね?私、一応領主なのだけど?」
「……そうですけど?何か問題でも?」
「あ、あ、あの!」
「何かしら?スピア」
「報告は、自身でしますので、どうか、二人の罷免だけは……」
「腕がたつのでしょ?この田舎では。私に勝てる人なら、罷免はありえないけど……そうじゃないなら、ただの給料泥棒でしょ?」
「そんなことは……ありません!」
「私、昨年の災害に対して警備隊も工事へ参加するように言っていたはずなのですけどね?相当な日数、私も現場にはいたけど、そこの二人は見ていないわ!」
「……それは!」
「雨の中、泥だらけになっての作業も、土砂崩れの中、人探しも嫌よね?綺麗な隊服が汚れちゃうもの!」
「お貴族様が、よく言うぜ?あんたらは、上から命令して、はい終わりなんだろ?俺らにも仕事を選ぶ権利くらいあるだろ?」
「そう思うのなら、警備隊を辞めたらいいわ。他の領地へ移動することね?」
売り言葉に買い言葉。無駄な言い合いの応酬に後ろでアデルはため息をつき、スピアはオロオロとしてしまっている。誰も止めに入れない状況で、気になって様子を見に来たコットンが、訓練場を見てただ事では亡くなっていることに驚いて駆け込んできた。
「アンナリーゼ様、外は一体何が!それと、今のは……」
少々顔色の悪いコットン。二人の副隊長を睨みつけていた。
「あぁ、綿花農家のコットンか。何か用か?」
「……あんたらに、用なんてこれっぽっちもないさ」
「じゃあ、何をしに来たんだ?」
「もちろん、アンナリーゼ様がこの領地にがっかりなさっていないか心配になって、様子を見に来たんだ。案の定ってところだな?」
コットンの言葉に、二人がムッとして表情をきつくする。
「言っておくが、去年の災害のとき、雨の中、動き回ってくれていた方に対して、失礼なものいいもいい加減にしろ!いなかったお前らは知らないが、土砂崩れが起きたあと、アンナリーゼ様が、生き埋めになった領民たちのために泥だらけになりながら探し回っていたんだ。縁も所縁もないこの領地のために、動いてくださっている領主のことを警備隊は知らなさすぎないか?」
コットンの言葉にスピアは驚き、副隊長の二人は嘘をと怒鳴り声をあげたのである。
「こちらです……」
「おぅ、戻ったか?」
「……その後ろの人、だぁれぇ?」
いかつい青年と、少々だらけた格好の青年が、スピアを迎え、その後ろにいる私たちに目を向けた。
「こちらは、アンバー公爵です」
「アンバー公爵って、男じゃないのか?」
「……そうだっけ?去年、隊員を貸し出したとき、なんか言ってなかった?」
「そうだったか?」
一応、貴族の前ではあるのだが、あけすけな言葉になんとも言えない気持ちになった。
……アンバー領も結構だな?って思っていたけど、どこも領地の警備ってこんな人材が多いのかしら?
首を傾げながら、二人の副隊長をみていた。
「それで、何人か連れていったよね?他のやつらは?」
「……全員、訓練場で伸びてます」
「伸びてるって、なんで?」
「領主に刃を向けたのです。それ相応の罰を受けてもらいました」
「って言っても、スピアちゃんじゃ何にもできないよね?」
小馬鹿にしたような口調でスピアを嘲る。後ろに立っているので、表情は見えないが少しだけ肩が揺れたのが見えた。
「はい、領主様自ら、手を加えていただきました。何か、問題でもありますか?」
「領主様がなら、俺らには、何も言えないわな」
ケラケラ笑う二人と温度差のあるスピア。私は、スピアの隣に並び立った。
「何でもいいんだけど?領主が来ているんだから、それなりの挨拶ってできないのかしら?」
何で俺らが?という表情をしたので、ツカツカと近寄っていく。一人は椅子を斜めにしていたので、簡単にひっくり返すことができた。ガタイのいい青年は、椅子ごと床に倒れることになり、背中を打ち付けたようだ。
「椅子は、そうやって座るものじゃないわよ?正しく座らないから、そういうことになるの。うちの3歳の子どもでも知っていることだわ!」
「くっそ女!」
「くそ女じゃありませんけどね?痛い目みる?」
もう一人の方を見ると、睨むばかりで私に何かをしてくることはなかった。歯向かったくらいで首を切り落としたりはしないのにななんて思いながら、どうするか観察する。そうすると、何故か怯えた表情になり、膝をついて私へ頭を垂れる。
「クビにしちゃう?」
スピアに問うと、とんでもない!と慌てていた。この二人、態度は悪いが、うでもいいらしい。地方へ視察へ行ったりすると、若い女性たちに特に人気もあるらしく、天狗になっているようだ。
「確認したいことがあったんだけど?」
「……何でございましょう?」
「スピアのこと、私、雇うって報告、受けていないのだけど?」
「えっ?それは、隊長が忘れていたのだと思います。私たちには、人事権がないので」
「そう。それなら、それで、スピアはこちらで雇うからと隊長に伝えておいて。返してほしかったら、屋敷に来てと言ってくれればいいわ」
「スピアを連れていかれるのですか?」
「不都合でも?私、欲しいのだけど……問題でも?」
貴族特有の少々圧力をかけてみると、二人とも焦っていた。
「……あ、あの。俺らにはなんの権限もないんで直接言ってくれません?」
「んーいいけど……」
ほっとしたような表情をしたので、追い打ちをかけてみた。
「私が隊長に報告をするのよね?私、一応領主なのだけど?」
「……そうですけど?何か問題でも?」
「あ、あ、あの!」
「何かしら?スピア」
「報告は、自身でしますので、どうか、二人の罷免だけは……」
「腕がたつのでしょ?この田舎では。私に勝てる人なら、罷免はありえないけど……そうじゃないなら、ただの給料泥棒でしょ?」
「そんなことは……ありません!」
「私、昨年の災害に対して警備隊も工事へ参加するように言っていたはずなのですけどね?相当な日数、私も現場にはいたけど、そこの二人は見ていないわ!」
「……それは!」
「雨の中、泥だらけになっての作業も、土砂崩れの中、人探しも嫌よね?綺麗な隊服が汚れちゃうもの!」
「お貴族様が、よく言うぜ?あんたらは、上から命令して、はい終わりなんだろ?俺らにも仕事を選ぶ権利くらいあるだろ?」
「そう思うのなら、警備隊を辞めたらいいわ。他の領地へ移動することね?」
売り言葉に買い言葉。無駄な言い合いの応酬に後ろでアデルはため息をつき、スピアはオロオロとしてしまっている。誰も止めに入れない状況で、気になって様子を見に来たコットンが、訓練場を見てただ事では亡くなっていることに驚いて駆け込んできた。
「アンナリーゼ様、外は一体何が!それと、今のは……」
少々顔色の悪いコットン。二人の副隊長を睨みつけていた。
「あぁ、綿花農家のコットンか。何か用か?」
「……あんたらに、用なんてこれっぽっちもないさ」
「じゃあ、何をしに来たんだ?」
「もちろん、アンナリーゼ様がこの領地にがっかりなさっていないか心配になって、様子を見に来たんだ。案の定ってところだな?」
コットンの言葉に、二人がムッとして表情をきつくする。
「言っておくが、去年の災害のとき、雨の中、動き回ってくれていた方に対して、失礼なものいいもいい加減にしろ!いなかったお前らは知らないが、土砂崩れが起きたあと、アンナリーゼ様が、生き埋めになった領民たちのために泥だらけになりながら探し回っていたんだ。縁も所縁もないこの領地のために、動いてくださっている領主のことを警備隊は知らなさすぎないか?」
コットンの言葉にスピアは驚き、副隊長の二人は嘘をと怒鳴り声をあげたのである。
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