923 / 1,493
子どもたちⅩ
しおりを挟む
「では、1週間後にコーコナ領を出ることになります。向かう先は、アンバー公爵家よ」
「アンバー公爵家って、俺でも知ってる。この国でえらい貴族だって」
「えらいかどうかは、わからないけど……この国が出来たときに、当時の公の妹のために作られた公爵家よ。歴史は、長いわ!」
「……そんなえらい貴族様のところに、私たちも?」
不安そうにするシシリーに微笑んだ。ダンが手を繋いで会えると少しだけ落ち着いたのか、オロオロとしていた雰囲気が、多少消える。
「……そのえらい貴族様は、目の前にいるのだけどね?」
子どもたちに向かって言ったつもりが、その場にいたアデルとディルが笑ってしまった。
「お貴族様の奥さんっていうのじゃないの?」
「私は、この国の貴族代表をしているアンナリーゼよ!アンバー公爵は私のこと。まぁ、アンバー公爵は、本物がもう一人いるのだけど……」
「とってもえらい貴族だ!」
「そのえらい貴族が、私たちを人攫いから助けてくれたの?貴族って、たくさんの兵に守られているものだと思っていたけど……」
四人が顔を見合わせたあと、こちらを胡散臭そうに見てくる。そんな目で見られても本物には変わりがないので、微笑んでおくしかない。
「普通はそうだけど、私は、少し違うかな?アンバー公爵っていうのが抵抗ある人は、青紫薔薇の君とか言ってくれるわ」
「青紫?」
「ディル、見せてあげて!」
結婚指輪を子どもたちに見せる。そこには、銀に輝く指輪。真ん中にアメジストの薔薇が咲いていた。ティアが作ったもので、デリアの分と世界に2つしかないものだ。
「紫青薔薇?」
席をたち、ディルに集まっている子どもたちのもとへと向かう。じっくり覗き込んで見ているので近くにいたマリアとダンの頭を撫でる。
「この宝石はアメジスト。私が信頼している人に、こうして渡しているのよ。アンバー領へ戻れば、このアメジストをつけている人がいるわ。何かあれば、その人たちに聞いてみて、必要な話は答えてくれるわ!」
「……下賜品っていうんだろ?」
「カイルはよく知っているわね?下賜品は、えらい人から爵位や身分の低いものへ、褒美としてあげる人が多いわね?」
「たくさん、お金がもらえるとか」
「お金はもらえるけど、私が渡す下賜品は、忠誠の証だったり、信頼しているとかの意味で贈っているわ」
「……信頼の証?」
「そう。この人に任せられるって言う人に渡すのよ。アデルも耳にピアスがついているけど、わかる?私の護衛として、信頼していますと言う意味で贈っているのよ」
アデルを手招きすれば、苦笑いをしながらこちらに来て、ピアスを見せてくれていた。
「あなたたち四人に目指してもらいたい目標があるの」
「……目標?」
「そう。これから、それぞれの適正を見ていくわ!その適正に応じて、今後、してもらう仕事を決めるわ」
『仕事』と言う言葉に、目の色が変わる。真剣な目をしてこちらをしっかり見つめ返してくる。
「そんなに緊張した表情はしないで?あなたたちも、これから、証を目指して勉強してもらうんだから。色はアメジストじゃなく、青薔薇をもらえるように、頑張ってほしいの」
私の提案に、間髪いれずに、マリアが無理だと項垂れた。
「マリアなら、青薔薇を狙えるわよ!もちろん、それに似合った努力は必要だから、大変だけど、きっと、持ち前の明るさでなんとかなるわ!他の三人も自身をしっかり磨いてちょうだい」
四人がお互いを見合わせるのは、何回目だろう。こうやって、お互いを高め合い、励まし合いながら研鑽し、アンジェラを支える青薔薇になるのだろう。小さな子どもたちの成長がとても楽しみになった。
「今、みながいることですし、少し、適性を見ていきましょうか。まずは、カイルから」
「アンナはどんなふうに考えているので?」
「そうね、基本的には、アンジェラの護衛を考えているわ。リーダーとして育てたい……それが私の要望よ!」
「それは、領地の警備兵にということですか?」
「領地に囚われないわ。アンジェラという存在そのものが、もっと、守られるべきなのだもの」
「今までが、手薄過ぎましたね……」
「そうね。できれば、リリーのような存在になれば、私は嬉しい。領地と私たち貴族の架け橋になるような、そんなリーダーね!」
「それなら、ウィル様を目指しては?」
「それも、そうなんだけど……ウィルは、近衛。やはり、少し役目が違うのよ。この役目は、レオができるようになると思うわ!」
私は、カイルに向き直った。少し触るわよ?といい、体をペタペタとすると、くすぐったそうだ。子どもの体ということと、栄養状態を考えても、なかなかの体つきだ。レオと変わらない年ではあるが、大人になれば、カイルの方が大きくなるだろう。どちらかといえば、ノクトのような屈強な体を手に入れるだろう。目指して欲しいのは、将軍ではなく、アンジェラを守るために指示をする隊長。しっかりした兄貴分のカイルなら、問題ないだろうと頷いた。
「アンバー公爵家って、俺でも知ってる。この国でえらい貴族だって」
「えらいかどうかは、わからないけど……この国が出来たときに、当時の公の妹のために作られた公爵家よ。歴史は、長いわ!」
「……そんなえらい貴族様のところに、私たちも?」
不安そうにするシシリーに微笑んだ。ダンが手を繋いで会えると少しだけ落ち着いたのか、オロオロとしていた雰囲気が、多少消える。
「……そのえらい貴族様は、目の前にいるのだけどね?」
子どもたちに向かって言ったつもりが、その場にいたアデルとディルが笑ってしまった。
「お貴族様の奥さんっていうのじゃないの?」
「私は、この国の貴族代表をしているアンナリーゼよ!アンバー公爵は私のこと。まぁ、アンバー公爵は、本物がもう一人いるのだけど……」
「とってもえらい貴族だ!」
「そのえらい貴族が、私たちを人攫いから助けてくれたの?貴族って、たくさんの兵に守られているものだと思っていたけど……」
四人が顔を見合わせたあと、こちらを胡散臭そうに見てくる。そんな目で見られても本物には変わりがないので、微笑んでおくしかない。
「普通はそうだけど、私は、少し違うかな?アンバー公爵っていうのが抵抗ある人は、青紫薔薇の君とか言ってくれるわ」
「青紫?」
「ディル、見せてあげて!」
結婚指輪を子どもたちに見せる。そこには、銀に輝く指輪。真ん中にアメジストの薔薇が咲いていた。ティアが作ったもので、デリアの分と世界に2つしかないものだ。
「紫青薔薇?」
席をたち、ディルに集まっている子どもたちのもとへと向かう。じっくり覗き込んで見ているので近くにいたマリアとダンの頭を撫でる。
「この宝石はアメジスト。私が信頼している人に、こうして渡しているのよ。アンバー領へ戻れば、このアメジストをつけている人がいるわ。何かあれば、その人たちに聞いてみて、必要な話は答えてくれるわ!」
「……下賜品っていうんだろ?」
「カイルはよく知っているわね?下賜品は、えらい人から爵位や身分の低いものへ、褒美としてあげる人が多いわね?」
「たくさん、お金がもらえるとか」
「お金はもらえるけど、私が渡す下賜品は、忠誠の証だったり、信頼しているとかの意味で贈っているわ」
「……信頼の証?」
「そう。この人に任せられるって言う人に渡すのよ。アデルも耳にピアスがついているけど、わかる?私の護衛として、信頼していますと言う意味で贈っているのよ」
アデルを手招きすれば、苦笑いをしながらこちらに来て、ピアスを見せてくれていた。
「あなたたち四人に目指してもらいたい目標があるの」
「……目標?」
「そう。これから、それぞれの適正を見ていくわ!その適正に応じて、今後、してもらう仕事を決めるわ」
『仕事』と言う言葉に、目の色が変わる。真剣な目をしてこちらをしっかり見つめ返してくる。
「そんなに緊張した表情はしないで?あなたたちも、これから、証を目指して勉強してもらうんだから。色はアメジストじゃなく、青薔薇をもらえるように、頑張ってほしいの」
私の提案に、間髪いれずに、マリアが無理だと項垂れた。
「マリアなら、青薔薇を狙えるわよ!もちろん、それに似合った努力は必要だから、大変だけど、きっと、持ち前の明るさでなんとかなるわ!他の三人も自身をしっかり磨いてちょうだい」
四人がお互いを見合わせるのは、何回目だろう。こうやって、お互いを高め合い、励まし合いながら研鑽し、アンジェラを支える青薔薇になるのだろう。小さな子どもたちの成長がとても楽しみになった。
「今、みながいることですし、少し、適性を見ていきましょうか。まずは、カイルから」
「アンナはどんなふうに考えているので?」
「そうね、基本的には、アンジェラの護衛を考えているわ。リーダーとして育てたい……それが私の要望よ!」
「それは、領地の警備兵にということですか?」
「領地に囚われないわ。アンジェラという存在そのものが、もっと、守られるべきなのだもの」
「今までが、手薄過ぎましたね……」
「そうね。できれば、リリーのような存在になれば、私は嬉しい。領地と私たち貴族の架け橋になるような、そんなリーダーね!」
「それなら、ウィル様を目指しては?」
「それも、そうなんだけど……ウィルは、近衛。やはり、少し役目が違うのよ。この役目は、レオができるようになると思うわ!」
私は、カイルに向き直った。少し触るわよ?といい、体をペタペタとすると、くすぐったそうだ。子どもの体ということと、栄養状態を考えても、なかなかの体つきだ。レオと変わらない年ではあるが、大人になれば、カイルの方が大きくなるだろう。どちらかといえば、ノクトのような屈強な体を手に入れるだろう。目指して欲しいのは、将軍ではなく、アンジェラを守るために指示をする隊長。しっかりした兄貴分のカイルなら、問題ないだろうと頷いた。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
真実の愛の言い分
豆狸
恋愛
「仕方がないだろう。私とリューゲは真実の愛なのだ。幼いころから想い合って来た。そこに割り込んできたのは君だろう!」
私と殿下の結婚式を半年後に控えた時期におっしゃることではありませんわね。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる