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セシリアへのお願い
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セシリアから、ウィルの大隊の話を聞けば、なんとなくこの隊のがどうなっているのか、想像が出来た。だいたい、隊長であるウィルは、もう何年もその席には座っておらず、空席のままである。
「ウィルがいなくても大丈夫なの?この隊は」
「概ね何事もないですよ。半数以上が、アンバー領にいますから」
「なるほど……見知った顔も結構いるなと思っていたのよね……」
「選考をしたとき、ほとんどが、うちの隊からでしたから……隊長が向こうにいるならと、ほとんどが選考を通してもらいました。第二陣も同じくです」
「確かに……ウィルの隊にいるだろう隊員の働きは、コーコナではとても目立っていたわ!」
「コーコナでですか?」
「えぇ、みな、私と剣を交えるためだけに志願したようだったから、まさか、土木工事要員として、領地に貸し出されただなんて思っていなかったようなのよね」
「それは……何といいますかって感じますね。確かにうちの隊には、隊長からどんな仕事内容なのか伝えられていましたし、そのうえで志願するようにと連絡がありました。他の隊にも伝えてはあったのですけど……きちんと、伝わっていなかったようですね。申し訳ないです」
「うん、でも、最後の方は、きちんと手伝ってくれていたし、何より、災害が起こった後、人命救助の手助けは、泥まみれになりながら、みなが一丸で手伝ってくれていたから。それだけでも十分ありがたいわ!」
「災害のこと、聞きました。領民が亡くなったのだと。未然に防げていたところが多かったことで、多くの命が、領地の産業が守られたとも。その場に立ち会った隊員たちは、きっと、不真面目に働いていたこと、不満を言ってしまったことにたいして、恥じたでしょうね。もしかしたら……」
「セシリア、それ以上は。こればかりは、自然が起こすことですもの。人の手で、守れた命があったことを喜ぶべきなのよ」
申し訳ございませんと謝るセシリアに首を横に振り、微笑んだ。話を切り替えるにはいい機会だろう。
私は、セシリアに向きなおる。
「セシリア」
「なんでございましょう?改まって……」
「そりゃ、改まるわ。今から、私、個人的なお願いをしようとしているのですもの!」
「本当ですか?それは、とても嬉しいですわ!」
「そういってられるのは、今のうちかもしれないわよ?」
クスクス笑うと、望むところですと返ってくる。実に頼もしい。
「では、単刀直入に」
「……はい。何なりと」
「このお城に、私の息がかかった文官が一人いたのだけど、今回のエルドアとの協議について行ってしまったの」
「トライドさんですか?」
「いいえ、セバスは優秀な文官ではあったけど、アンバーにこもりきりだったから、違うわ!セバスの補佐としてついて行ったパルマという文官がそうなの」
「なるほど、確かに、優秀だと聞きおよんでいます」
「でしょうね。セシリアの弟も優秀だと聞いているわ」
「……だいたいわかりました。宰相の元にいる私の弟に情報を流してくれということですね?」
「そう、話が早くて助かる。ただでとは、言わないから」
「わかりました。何か……」
「麦をあなたのご実家の領地へ半年分寄贈でどうかしら?」
「半年もですか?」
「昨年、不作だったと聞いているの。余剰分でよければ、お渡しすることは出来る。とりあえず、パルマが戻るまで間でってことで」
「半年も長引きますか?」
そうね……と考えるふりをすると、アンナリーゼ様の意見をと求めてくるのでニコリと笑う。
「セバスなら、長くても3ヶ月でかたをつけてくると思う」
「それでは、半年はもらいすぎです!」
「手付金と情報提供分だとそれが妥当だと思うわ!」
「……父に連絡をとってみます。父も兄も食糧については、悩んでいましたから」
「領地は近いですもの、返事はいつでもいいわ!それに、困ったときにはお互い様ですもの」
「……そうですね」
どうかして?と微笑むと、苦笑いをするセシリア。父や兄がしてきたことを知っているのだろう。
「セシリアが気にすることではないから、大丈夫よ」
「そういうわけには……半年分は、セシリアへの報酬分よ。そのあとは、妥当な金額で購入してもらうわ。今までの分、取り返させてもらうとは思ってないけど、よき隣人になってくれると助かるわね。困ったときに、手を取りあえる関係……それが、アンバー領には必要なことなのよ」
「……はい。必ず父と兄に伝えます。私は、もう、出てしまっている身ですから」
「ふふっ、私もよ!でも、家族はいつまでたっても、私の味方でいてくれるし、心配もしてくれる。そうやって、お互いを今でも大切にしているの。セシリアのところも同じでしょ?」
微笑めば、はいと返事が返ってきた。そして、表情が切り替わる。
「頼まれた件については、こちらでできうる限り手を尽くします。私も近衛の方で情報が入るのなら、そちらも」
「ありがとう!セシリアに頼んでよかったわ!あと、まだ、これは内緒なのかもしれないけど……」
何かありましたか?と尋ねたのでニッコリほ笑いかけた。
「ウィルがいなくても大丈夫なの?この隊は」
「概ね何事もないですよ。半数以上が、アンバー領にいますから」
「なるほど……見知った顔も結構いるなと思っていたのよね……」
「選考をしたとき、ほとんどが、うちの隊からでしたから……隊長が向こうにいるならと、ほとんどが選考を通してもらいました。第二陣も同じくです」
「確かに……ウィルの隊にいるだろう隊員の働きは、コーコナではとても目立っていたわ!」
「コーコナでですか?」
「えぇ、みな、私と剣を交えるためだけに志願したようだったから、まさか、土木工事要員として、領地に貸し出されただなんて思っていなかったようなのよね」
「それは……何といいますかって感じますね。確かにうちの隊には、隊長からどんな仕事内容なのか伝えられていましたし、そのうえで志願するようにと連絡がありました。他の隊にも伝えてはあったのですけど……きちんと、伝わっていなかったようですね。申し訳ないです」
「うん、でも、最後の方は、きちんと手伝ってくれていたし、何より、災害が起こった後、人命救助の手助けは、泥まみれになりながら、みなが一丸で手伝ってくれていたから。それだけでも十分ありがたいわ!」
「災害のこと、聞きました。領民が亡くなったのだと。未然に防げていたところが多かったことで、多くの命が、領地の産業が守られたとも。その場に立ち会った隊員たちは、きっと、不真面目に働いていたこと、不満を言ってしまったことにたいして、恥じたでしょうね。もしかしたら……」
「セシリア、それ以上は。こればかりは、自然が起こすことですもの。人の手で、守れた命があったことを喜ぶべきなのよ」
申し訳ございませんと謝るセシリアに首を横に振り、微笑んだ。話を切り替えるにはいい機会だろう。
私は、セシリアに向きなおる。
「セシリア」
「なんでございましょう?改まって……」
「そりゃ、改まるわ。今から、私、個人的なお願いをしようとしているのですもの!」
「本当ですか?それは、とても嬉しいですわ!」
「そういってられるのは、今のうちかもしれないわよ?」
クスクス笑うと、望むところですと返ってくる。実に頼もしい。
「では、単刀直入に」
「……はい。何なりと」
「このお城に、私の息がかかった文官が一人いたのだけど、今回のエルドアとの協議について行ってしまったの」
「トライドさんですか?」
「いいえ、セバスは優秀な文官ではあったけど、アンバーにこもりきりだったから、違うわ!セバスの補佐としてついて行ったパルマという文官がそうなの」
「なるほど、確かに、優秀だと聞きおよんでいます」
「でしょうね。セシリアの弟も優秀だと聞いているわ」
「……だいたいわかりました。宰相の元にいる私の弟に情報を流してくれということですね?」
「そう、話が早くて助かる。ただでとは、言わないから」
「わかりました。何か……」
「麦をあなたのご実家の領地へ半年分寄贈でどうかしら?」
「半年もですか?」
「昨年、不作だったと聞いているの。余剰分でよければ、お渡しすることは出来る。とりあえず、パルマが戻るまで間でってことで」
「半年も長引きますか?」
そうね……と考えるふりをすると、アンナリーゼ様の意見をと求めてくるのでニコリと笑う。
「セバスなら、長くても3ヶ月でかたをつけてくると思う」
「それでは、半年はもらいすぎです!」
「手付金と情報提供分だとそれが妥当だと思うわ!」
「……父に連絡をとってみます。父も兄も食糧については、悩んでいましたから」
「領地は近いですもの、返事はいつでもいいわ!それに、困ったときにはお互い様ですもの」
「……そうですね」
どうかして?と微笑むと、苦笑いをするセシリア。父や兄がしてきたことを知っているのだろう。
「セシリアが気にすることではないから、大丈夫よ」
「そういうわけには……半年分は、セシリアへの報酬分よ。そのあとは、妥当な金額で購入してもらうわ。今までの分、取り返させてもらうとは思ってないけど、よき隣人になってくれると助かるわね。困ったときに、手を取りあえる関係……それが、アンバー領には必要なことなのよ」
「……はい。必ず父と兄に伝えます。私は、もう、出てしまっている身ですから」
「ふふっ、私もよ!でも、家族はいつまでたっても、私の味方でいてくれるし、心配もしてくれる。そうやって、お互いを今でも大切にしているの。セシリアのところも同じでしょ?」
微笑めば、はいと返事が返ってきた。そして、表情が切り替わる。
「頼まれた件については、こちらでできうる限り手を尽くします。私も近衛の方で情報が入るのなら、そちらも」
「ありがとう!セシリアに頼んでよかったわ!あと、まだ、これは内緒なのかもしれないけど……」
何かありましたか?と尋ねたのでニッコリほ笑いかけた。
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