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自由の身になった元公妃様とのお茶会Ⅴ

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「それで、何をしに来たのです?」
「あぁ、そうそう。アンナリーゼを連れに来たのです」
「なるほど、会いに来たのですね」
「あぁ、そういうことなのね。でも、アンナリーゼはうちの子ですからね?くれぐれも……」
「母上もおば上も、いい加減にしましょうか?公爵として知恵を借りたいので、呼びに来たまでですから」
「あら、それにしては……ねぇ?」
「そうよね?呼びに来るくらいなら、別に公が来なくてもいいでしょうに」


 含み笑いをする二人には、公も敵わないらしい。私の手を取り、また、後日でいいでしょうと連れ出された。


「ハンナ様、お義母様、先に失礼します!慌ただしくしてしまい、申し訳ございません。ゆっくりとお過ごしください!」


 公に引きずられながら、挨拶をすると、二人とも優しく手を振ってくれる。


「アンナリーゼ、あまり遅くならないでちょうだいね!公に拉致されたなんてことが分かったら、私がジョージアに叱られてしまいます」
「わかりました!全力で対応してきます!」


 よろしくねぇ~!と暢気に義母は、微笑む。ハンナと向き合ったのだ。これから、おおいに、公と私、そして、ジョージアのことで盛り上がるに違いない。自由になった二人は、案外、何をやらかすかわからない。


「お義母様たちを自由にすると、意外と私以上になるのではなくて?」
「はぁ?そんなことになったら、困るんだが?」
「そう言われましても、きっと、今頃、どこかへ出かける約束をしていると思いますよ。とても仲がよさそうですから」
「それは、俺もうすうす気が付いてはいた。いくら姉妹だからって、昔から頻繁に二人だけでお茶会をしていたし」
「二人だけのお茶会は、だいたい情報交換って相場が決まっていますけど?」
「違うだろ?二人だけのお茶会は、愛を語り合う……」
「それも一種の情報交換ですよね。公は公なりに考えられているのですね?」


 ニコッと笑うと、あぁ!と嘆いている。


「……また、いらないことを言わされた!いつになったら、俺は成長するんだ!」
「いつまでも、扱いやすい公でいてください。その方が、便利だし、使い勝手も最高だし、何より、おもしろいですから!」
「意味がわからん!特に最後の」
「……そのままの意味ですよ?伝わりませんでしたか?」
「……アンナリーゼ」
「はい?」
「もう少し、この国の公を敬う気にはなれないのか?」
「なれるかなれないのかで言われると……大勢の前や公式なところであれば、なれますけど……今は、どうでもいいでしょう?」
「……威厳という、」
「そういったもの、最初からないですよ?公もジョージア様も」
「うぐ……」
「二人とも、いいところの坊ちゃんなので、ガツガツしてなさ過ぎて……もっと、欲しいものは欲しいと言いましょう!」
「……俺が、それをすると、大変なことになるぞ?」
「……よっぽど変なことでなければ、何とでもなりますよ」


 引っ張られていた手を離し、馬車に乗り込む。


「ところで私を呼びに来たのは何かあったのですか?」
「あぁ、そうだ」
「とっても助かったんですけどね?さすがに、あの中にいるのは」
「あぁ、おもしろいことになっていたからなぁ。アンナリーゼも、苦手なものは……」
「苦手なわけではないですよ?ただ、お義母様たちの圧力と言うか……」
「負けたって言うわけだろ?普段見られない感じで、おもしろかった。今度、ジョージアと酒の肴にでもしよう」
「私のこと、なんだと思っているのですか?」
「ビックリ箱?」
「……ビックリ箱。それは、」
「言わなくてもわかるだろ?何が出てくるかわからない」
「……私も思いました。何が出てくるのか、わからない」
「そのうち、母上もアンバー領へ旅に出かけそうだな。そのときは、頼む」
「私、もう少ししたら、コーコナへ行くことになるので、ハンナ様がいらっしゃる予定を教えてくださらないと、いませんよ?」
「他に対応出来るものは?」
「いるにはいますけど……貴族はいませんね。アンバー領の領地改革で集まっているのって、奇人変人ですから」
「自分でいうな!」
「そういう人だからこそ、おもしろい発想が出てくるのですよ。ヨハンなんて、本当にビックリ箱。何が出てくるか、最後までわからないのは、ヨハンなんだろうと思いますけどね」
「……そういえば、薬の供給は途切れなく出来たのがすごいと思うんだが……大量の薬草を使うと思うが」
「公からもらったものもありますし、第一、薬草の量は少なくなっていますが、効果が出やすい薬を開発していたらしいので、十分足りているのですよ。従来のでしたら、足りなかったかもしれませんけどね。ヨハン曰く、その辺に生えているのを失敬してきたたとか……あとで、賠償問題とかならなければいいですけど……そのときは、お願いしますね?ヨハンなんて、鈴をつけておいても何をしでかすかわかりませんからね」
「……それは、アンナリーゼも同じだと思うが……」
「なんですか?」
「いや、何でもない。さぁ、着いた。母上たちの相手の後は、俺と宰相の相手を頼む」


 頼まれたくありませんと呟くと、聞こえてないぞとしっかり聞こえていたらしく返事が返ってきた。
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