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エルドアへの返答
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パルマが呼ばれたことで、エルドアへの返事に関しては、パルマが書くことになった。お役御免になった私は、席を立つ。
「アンナリーゼ」
「どうかされましたか?」
「エルドアへの返事についてだが、少し考える。各方面への打診もしないといけないから、また、しばらくしたら呼び出すから」
「……私も暇ではないのですけど?」
「ハニーアンバー店、在庫一掃を手伝うと言ってもか?」
「そうですね。店のもの全て売りたいわけではないので、こちらもリストを作ってどのくらいのものなら売れるかと検討してきます。次回呼ばれるのであれば、そのときにでも」
「あぁ、わかった。それでいいだろう。主に何を売ろうとしている?」
「そうですね……どれもこれもいいんですけど、少し前から塩にも手を出してみたんですよね?」
「塩?」
「そうです。塩」
「アンバー領は、海はなかったはずだが?」
「あるんですよ!アンバー領にも海が。誰も知らなかったんですけどね……セバスにどこの領地のものか、きちんと公都にある地図で確認してもらっているので、確かです」
「……アンナリーゼは、本当に何から何まで手を出すな?」
「……公の女癖みたいなふうに言わないでもらえます?お金になることなら、何でもしますよ。人が働くための働き口の確保も必要ですから、新しい事業は少しずつ取り入れています。今は、とにもかくにも農家の支援が1番です。食べられないと、仕事どころではありませんからね」
「そういえば、識字率の話もあったな。その話は、また後程。今日は、疲れました」
「あぁ、すまなかったな。昨日、ジョージアが襲われたばかりなのに」
「いえ、どこにいるより、公都の屋敷にいるのが1番安全ですから」
それではと部屋を出ると、小さく息を吐いた。
……私の『予知夢』にこの話はない。未来が少し変わっているのか、私の興味がないからしらないだけなのか……どっちかしら?公世子となる第一公子。この公子の後ろ盾は、言わずもがなゴールド公爵。その後ろに、エルドアがつくということかしら?
「わからないわ!」
城の廊下で思わず声に出してしまったせいで、周りを歩いている文官や警護の近衛たちがこちらを向く。おほほほと苦笑いをして誤魔化しておくと、興味を失せたのか、それぞれの業務へ戻って行った。
「エルドア国の内情は、どうなっているのかしら?探りを入れてみた方がいいのかもしれないわ。ちゅんちゅんに頼むより、ここはエレーナの出番ね。深く探ってくれるよう連絡しましょう」
馬車に乗り込み、屋敷へとついた。さっそく、執務室へと向かおうとして、玄関先でディルに捕まる。
「おかえりなさいませ、アンナリーゼ様」
「ただいまもどりました。どうかしましたか?」
「セバスチャン様がお待ちですので、執務室へ向かっていただけると」
「わかったわ!あとで、ニコライを呼んでほしいの。お願いできるかしら?」
「お安い御用です。公都にいると連絡をいただいているので、すぐに連絡を入れましょう」「ありがとう!」
そういって執務室へと急ぐ。
扉を開けると、セバスが応接用の椅子に座り、難しい顔をしていた。何かあったのだかろうか?と、声をかける。
「どうかしたの?」
「アンナリーゼ様、お早いお帰りで」
「私ももう少し拘束されるものだと思っていたけど、わりと早く抜け出せたわ!パルマのおかげで」
「それは、よかった。パルマが役に立てたならよかったです」
「優秀よね。今はゆっくり休めているようでよかった」
「こちらにも、そのように連絡はきていましたけど、安心しました」
「明日、会うのでしょ?」
「えぇ、一応、国の文官ですからね……報告も兼ねて城へ」
「そう。それで、どうかしたの?」
「いえ、城に呼ばれたという情報が入ってきたので、伺ったまでです。アンバー領の事業は、やはり、アンナリーゼ様の主導のものが多いですから、また拘束されると困るなと思いまして」
なるほどねと頷くと、セバスは苦笑いをしている。
「それで、お城に呼ばれるほどの話とは、昨日のことですか?」
「うぅん、昨日のことで呼び出しをかけられはしたけど、別件だった」
「それは、伺ってもいいものですか?」
「隠しても仕方がないからいうわ。たぶん、セバスに出向の打診が来るんじゃないかって、思っているから」
「出向ですか?それは……」
「うまくまとめられれば、出世の機会が巡ってくるわ」
「爵位が上がるということですね」
「そういうこと。話の内容は、3つ」
先程、城での話をセバスに聞かせる。やはり、突然の申し出だったことをかなり訝しみながらも、頷く。
「私から推薦はしていないけど、公か宰相から交渉の席に着くよう言われる可能性は高いわ。そのときは、借りの役職を作るのでしょうけど、権限は全権与えられるはず」
「見落としや騙されたは通らない話し合いですね」
「そうね。真面目に取り合わなくてもいいわ!セバスが有利になるような話し合いをすればいいだけよ。イチアとある程度の月日は過ごしている。交渉術に関しても問題ないと思っている。声がかかれば思いっきり、セバスらしく戦ってきなさい」
「僕らしくですか?」
「えぇ、セバスらしく。援護が必要なら、いくらでも送るわよ!物資という名の情報を」
「……それは、何より心強い。一人で向かっても、一人じゃないんですね!」
「当たり前よ!私は、セバスを見捨てないわ!今から、エルドアへ手紙を書くの。滞在場所の話ももしでれば、エレーナの……クロック侯爵の屋敷へ滞在させてもらえるよう、手配するわね!」
ありがとうございます!と笑いかけてくれるセバス。危ない道へ向かうことには変わりないので、色々と手配しようとこっそり考えていた。
「アンナリーゼ」
「どうかされましたか?」
「エルドアへの返事についてだが、少し考える。各方面への打診もしないといけないから、また、しばらくしたら呼び出すから」
「……私も暇ではないのですけど?」
「ハニーアンバー店、在庫一掃を手伝うと言ってもか?」
「そうですね。店のもの全て売りたいわけではないので、こちらもリストを作ってどのくらいのものなら売れるかと検討してきます。次回呼ばれるのであれば、そのときにでも」
「あぁ、わかった。それでいいだろう。主に何を売ろうとしている?」
「そうですね……どれもこれもいいんですけど、少し前から塩にも手を出してみたんですよね?」
「塩?」
「そうです。塩」
「アンバー領は、海はなかったはずだが?」
「あるんですよ!アンバー領にも海が。誰も知らなかったんですけどね……セバスにどこの領地のものか、きちんと公都にある地図で確認してもらっているので、確かです」
「……アンナリーゼは、本当に何から何まで手を出すな?」
「……公の女癖みたいなふうに言わないでもらえます?お金になることなら、何でもしますよ。人が働くための働き口の確保も必要ですから、新しい事業は少しずつ取り入れています。今は、とにもかくにも農家の支援が1番です。食べられないと、仕事どころではありませんからね」
「そういえば、識字率の話もあったな。その話は、また後程。今日は、疲れました」
「あぁ、すまなかったな。昨日、ジョージアが襲われたばかりなのに」
「いえ、どこにいるより、公都の屋敷にいるのが1番安全ですから」
それではと部屋を出ると、小さく息を吐いた。
……私の『予知夢』にこの話はない。未来が少し変わっているのか、私の興味がないからしらないだけなのか……どっちかしら?公世子となる第一公子。この公子の後ろ盾は、言わずもがなゴールド公爵。その後ろに、エルドアがつくということかしら?
「わからないわ!」
城の廊下で思わず声に出してしまったせいで、周りを歩いている文官や警護の近衛たちがこちらを向く。おほほほと苦笑いをして誤魔化しておくと、興味を失せたのか、それぞれの業務へ戻って行った。
「エルドア国の内情は、どうなっているのかしら?探りを入れてみた方がいいのかもしれないわ。ちゅんちゅんに頼むより、ここはエレーナの出番ね。深く探ってくれるよう連絡しましょう」
馬車に乗り込み、屋敷へとついた。さっそく、執務室へと向かおうとして、玄関先でディルに捕まる。
「おかえりなさいませ、アンナリーゼ様」
「ただいまもどりました。どうかしましたか?」
「セバスチャン様がお待ちですので、執務室へ向かっていただけると」
「わかったわ!あとで、ニコライを呼んでほしいの。お願いできるかしら?」
「お安い御用です。公都にいると連絡をいただいているので、すぐに連絡を入れましょう」「ありがとう!」
そういって執務室へと急ぐ。
扉を開けると、セバスが応接用の椅子に座り、難しい顔をしていた。何かあったのだかろうか?と、声をかける。
「どうかしたの?」
「アンナリーゼ様、お早いお帰りで」
「私ももう少し拘束されるものだと思っていたけど、わりと早く抜け出せたわ!パルマのおかげで」
「それは、よかった。パルマが役に立てたならよかったです」
「優秀よね。今はゆっくり休めているようでよかった」
「こちらにも、そのように連絡はきていましたけど、安心しました」
「明日、会うのでしょ?」
「えぇ、一応、国の文官ですからね……報告も兼ねて城へ」
「そう。それで、どうかしたの?」
「いえ、城に呼ばれたという情報が入ってきたので、伺ったまでです。アンバー領の事業は、やはり、アンナリーゼ様の主導のものが多いですから、また拘束されると困るなと思いまして」
なるほどねと頷くと、セバスは苦笑いをしている。
「それで、お城に呼ばれるほどの話とは、昨日のことですか?」
「うぅん、昨日のことで呼び出しをかけられはしたけど、別件だった」
「それは、伺ってもいいものですか?」
「隠しても仕方がないからいうわ。たぶん、セバスに出向の打診が来るんじゃないかって、思っているから」
「出向ですか?それは……」
「うまくまとめられれば、出世の機会が巡ってくるわ」
「爵位が上がるということですね」
「そういうこと。話の内容は、3つ」
先程、城での話をセバスに聞かせる。やはり、突然の申し出だったことをかなり訝しみながらも、頷く。
「私から推薦はしていないけど、公か宰相から交渉の席に着くよう言われる可能性は高いわ。そのときは、借りの役職を作るのでしょうけど、権限は全権与えられるはず」
「見落としや騙されたは通らない話し合いですね」
「そうね。真面目に取り合わなくてもいいわ!セバスが有利になるような話し合いをすればいいだけよ。イチアとある程度の月日は過ごしている。交渉術に関しても問題ないと思っている。声がかかれば思いっきり、セバスらしく戦ってきなさい」
「僕らしくですか?」
「えぇ、セバスらしく。援護が必要なら、いくらでも送るわよ!物資という名の情報を」
「……それは、何より心強い。一人で向かっても、一人じゃないんですね!」
「当たり前よ!私は、セバスを見捨てないわ!今から、エルドアへ手紙を書くの。滞在場所の話ももしでれば、エレーナの……クロック侯爵の屋敷へ滞在させてもらえるよう、手配するわね!」
ありがとうございます!と笑いかけてくれるセバス。危ない道へ向かうことには変わりないので、色々と手配しようとこっそり考えていた。
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