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大合唱と想い出
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公都に帰る馬車の中は、子どもたちの大合唱でごきげんな旅路になった。
「……あの、煩くないですか?」
申し訳なさそうにしているリアンが、ぐずっていたネイトに歌を歌ってあげていたのがきっかけで、アンジェラが興味を持ち、レオやミアが教えた。珍しくジョージも気に入ったようで、その中に混ざっている。
「大丈夫よ!子どもたちには長い旅ですもの。何か、気のまぎれることがあった方がいいわ!特に……」
「アンジーには!」
ジョージアも今回の長旅はどうするか、ずっと考えていたらしい。3歳になった娘は、とにかく大人しくしていない。私も同じなのでなんとも言えないが、どうにかしないとと両親に相談していたらしい。
ただ、ジョージアは大人しい子どもだったということもあり、お手上げだったようだ。
そこにきて、この大合唱。一番年上で面倒見のいいレオがアンジェラを上手に興味を持った方へと誘導してくれたおかげで、楽しい旅路になっている。
「それにしても、みんな歌がうまいのね?特にレオなんて、ビックリ!」
「いつもの訓練のおかげで、肺が鍛えられているんじゃないか?」
馬車の外から、孫たちの合唱に満足そうにしているノクトが頬を緩ませながら私の疑問に答えてくれる。
「なるほどね。じゃあ、アンナもうまいってこと?」
「……そこは、ジョージア様、触れないでください!」
「ヘタなの?」
「……そういうわけじゃないですけど!ジョージア様ことどうなのですか?」
質問に質問で返すとニンマリ笑うジョージア。
「僭越ながら……」
そう言って、1曲歌を歌う。聞き覚えのある故郷を想う歌に、幼馴染たちと悪さをして王都を駆けまわっていたことを思い出した。
「……懐かしいな」
「ん?」
「ジョージア様の歌った曲、故郷を想う歌ですよね?私、子どものころによく母が歌っていたのを思い出しました。それと同時に……」
「ヘンリー殿たちと王都を走り回っていたことでも思い出した?」
「えっ?なんで?」
「……適当に言ったのに、当たるって……」
はぁ……とため息をつくジョージアと馬車の外で話を聞いていたノクトの笑い声が聞こえる。
「アンジェラより少し大きくなった5歳ごろですね。それまで、兄とこそっり王都に出かけていたんですけど、ジルベスター殿下のご学友としてハリーとイリアとを紹介されたのです」
「それで、ヘンリー殿を連れまわしていたのかい?」
「えぇ、そうですよ!」
「……アンジーもそうなるとか、言わないよね?」
ご機嫌に歌っているアンジェラに向け、心配そうに視線を向けると、コテンと首を傾げている。
「あれは、アンナ顔負けだな」
「それは、誰か連れて……どこかの男の子を連れて……アンナみたいに公都を歩くってこと?」
「ジョージア様、馬車から乗り出したら危ないですよ!」
「いや、だって、アンナ!」
「ノクトに言っても仕方のないことでしょ?」
「じゃあ、アンナに言えば……」
「私は前科持ちですから、なんとも……」
ジョージアの服を引っ張りながら、視線を逸らすと、がっくり項垂れる。申し訳ないような気はするが、仕方がない。これは、血が……させることだろう。
私だって、我が家の女王様がそうだったのだもの。私は自然な流れだろう。我が子にもその血は流れているわけで……きっとあと何年もしないうちに、公都だろうと領地だろうと、知らない間に出かけてしまうような気がする。
「アンナは、いいの?どこの誰とも知らない男の手をとって、出歩くアンジーなんて」
「そこまでいうなら、レオに面倒を見てもらえばいいじゃないですか?」
「レオにですか?」
「そう、レオに」
「……僕が何か?」
「でも、アンナリーゼ様、それは……ちょっと、荷が」
「大丈夫。ディルの子猫がそっと見守っていてくれるから、本当に危ないことになることはないわ!」
「……ディルの」
「強いわよ!子猫と言っても。エマもそのうちの一人だし、アデルよりずっとか強いわ!それに……」
レオの頭を撫でる。急なことで、驚いてしまったが、嬉しそうに目を細める。
「レオも、強くなるものね!」
「うん!アンナ様に教えてもらって、もっと強くなる!」
「ということで、アンジェラの騎士はレオね!これからも、アンジェラのこと、よろしくね!レオ」
「……よくわからないけど。アンジェラ様のこと好きだからいいよ!」
「って、いうことなので、まとまりましたね!ジョージア様」
「……ちょっと待って?今、聞きづてならない言葉が出てきたんだけど?」
「何ですか?聞きづてならないって」
「……好きって、好きって早すぎない?レオはまだ、デビュタントも」
肩にポンと手を置き、慌てるジョージアを落ち着かせる。
「何を焦っているのか知りませんけど……レオに任せて置けば大丈夫ですから!」
「いや、そういうことじゃなくてだよ?」
「好きの一つや二つ」
「二つもあったらダメだろう?アンジー一筋くらいじゃないと、そこは困る!」
「……ジョージア様?」
「なんだい?」
「何を考えているのか知りませんけど……アンジェラはまだ3歳になったばかりですよ?」
「いや、だって、こんなに可愛いアンジーのことだし、アンナと一緒で誑し込みそうだし、レオもそろそろ初恋とか……」
最後の方は言葉にならず、ごにょごにょと濁してしまった。
「大丈夫ですよ。レオなら」
「……何か知っているの?」
「さぁ?知りませんけど」
私は知らないと誤魔化すと、余計に焦るジョージア。
アンジェラには、自分が想う人を選んでほしい。だから、私たちが、先に誰とどうというのは避けたかった。
私は未来を知っているけども、アンジェラの望む人の手をとればいいんだと、未だ取り乱しているジョージアの手を握った。
「……あの、煩くないですか?」
申し訳なさそうにしているリアンが、ぐずっていたネイトに歌を歌ってあげていたのがきっかけで、アンジェラが興味を持ち、レオやミアが教えた。珍しくジョージも気に入ったようで、その中に混ざっている。
「大丈夫よ!子どもたちには長い旅ですもの。何か、気のまぎれることがあった方がいいわ!特に……」
「アンジーには!」
ジョージアも今回の長旅はどうするか、ずっと考えていたらしい。3歳になった娘は、とにかく大人しくしていない。私も同じなのでなんとも言えないが、どうにかしないとと両親に相談していたらしい。
ただ、ジョージアは大人しい子どもだったということもあり、お手上げだったようだ。
そこにきて、この大合唱。一番年上で面倒見のいいレオがアンジェラを上手に興味を持った方へと誘導してくれたおかげで、楽しい旅路になっている。
「それにしても、みんな歌がうまいのね?特にレオなんて、ビックリ!」
「いつもの訓練のおかげで、肺が鍛えられているんじゃないか?」
馬車の外から、孫たちの合唱に満足そうにしているノクトが頬を緩ませながら私の疑問に答えてくれる。
「なるほどね。じゃあ、アンナもうまいってこと?」
「……そこは、ジョージア様、触れないでください!」
「ヘタなの?」
「……そういうわけじゃないですけど!ジョージア様ことどうなのですか?」
質問に質問で返すとニンマリ笑うジョージア。
「僭越ながら……」
そう言って、1曲歌を歌う。聞き覚えのある故郷を想う歌に、幼馴染たちと悪さをして王都を駆けまわっていたことを思い出した。
「……懐かしいな」
「ん?」
「ジョージア様の歌った曲、故郷を想う歌ですよね?私、子どものころによく母が歌っていたのを思い出しました。それと同時に……」
「ヘンリー殿たちと王都を走り回っていたことでも思い出した?」
「えっ?なんで?」
「……適当に言ったのに、当たるって……」
はぁ……とため息をつくジョージアと馬車の外で話を聞いていたノクトの笑い声が聞こえる。
「アンジェラより少し大きくなった5歳ごろですね。それまで、兄とこそっり王都に出かけていたんですけど、ジルベスター殿下のご学友としてハリーとイリアとを紹介されたのです」
「それで、ヘンリー殿を連れまわしていたのかい?」
「えぇ、そうですよ!」
「……アンジーもそうなるとか、言わないよね?」
ご機嫌に歌っているアンジェラに向け、心配そうに視線を向けると、コテンと首を傾げている。
「あれは、アンナ顔負けだな」
「それは、誰か連れて……どこかの男の子を連れて……アンナみたいに公都を歩くってこと?」
「ジョージア様、馬車から乗り出したら危ないですよ!」
「いや、だって、アンナ!」
「ノクトに言っても仕方のないことでしょ?」
「じゃあ、アンナに言えば……」
「私は前科持ちですから、なんとも……」
ジョージアの服を引っ張りながら、視線を逸らすと、がっくり項垂れる。申し訳ないような気はするが、仕方がない。これは、血が……させることだろう。
私だって、我が家の女王様がそうだったのだもの。私は自然な流れだろう。我が子にもその血は流れているわけで……きっとあと何年もしないうちに、公都だろうと領地だろうと、知らない間に出かけてしまうような気がする。
「アンナは、いいの?どこの誰とも知らない男の手をとって、出歩くアンジーなんて」
「そこまでいうなら、レオに面倒を見てもらえばいいじゃないですか?」
「レオにですか?」
「そう、レオに」
「……僕が何か?」
「でも、アンナリーゼ様、それは……ちょっと、荷が」
「大丈夫。ディルの子猫がそっと見守っていてくれるから、本当に危ないことになることはないわ!」
「……ディルの」
「強いわよ!子猫と言っても。エマもそのうちの一人だし、アデルよりずっとか強いわ!それに……」
レオの頭を撫でる。急なことで、驚いてしまったが、嬉しそうに目を細める。
「レオも、強くなるものね!」
「うん!アンナ様に教えてもらって、もっと強くなる!」
「ということで、アンジェラの騎士はレオね!これからも、アンジェラのこと、よろしくね!レオ」
「……よくわからないけど。アンジェラ様のこと好きだからいいよ!」
「って、いうことなので、まとまりましたね!ジョージア様」
「……ちょっと待って?今、聞きづてならない言葉が出てきたんだけど?」
「何ですか?聞きづてならないって」
「……好きって、好きって早すぎない?レオはまだ、デビュタントも」
肩にポンと手を置き、慌てるジョージアを落ち着かせる。
「何を焦っているのか知りませんけど……レオに任せて置けば大丈夫ですから!」
「いや、そういうことじゃなくてだよ?」
「好きの一つや二つ」
「二つもあったらダメだろう?アンジー一筋くらいじゃないと、そこは困る!」
「……ジョージア様?」
「なんだい?」
「何を考えているのか知りませんけど……アンジェラはまだ3歳になったばかりですよ?」
「いや、だって、こんなに可愛いアンジーのことだし、アンナと一緒で誑し込みそうだし、レオもそろそろ初恋とか……」
最後の方は言葉にならず、ごにょごにょと濁してしまった。
「大丈夫ですよ。レオなら」
「……何か知っているの?」
「さぁ?知りませんけど」
私は知らないと誤魔化すと、余計に焦るジョージア。
アンジェラには、自分が想う人を選んでほしい。だから、私たちが、先に誰とどうというのは避けたかった。
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