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3歳になりました!

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「お誕生日おめでとう」
「おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう」


 自身の体ほどあるのではないかと思うほど、大きなぬいぐるみを抱きしめニッコリ笑っている。蜂蜜色した瞳をキラキラとさせ、とたとたとこちらに向かって走ってきた。


「ママ、おっきい!」
「よかったわね?大きなクマさん」


 よほど嬉しいのか、そのままジョージアのところへも向かって、同じようにしている。ジョージアは、アンジェラの頭とクマの頭を同時に撫でていた。


「喜んでもらえてよかったわ!私たち、何がいいかわからなくて」
「あの様子だと、しばらくは抱きしめたままでしょうね。身に覚えがあります」


 苦笑いしていると、義母がクスクス笑う。


「アンジェラを見ていると、アンナリーゼの幼いころを見ているようで、楽しいわ!たまにドキドキさせられることもあるけど……きっと、今のアンジェラのようだったのだろうなって。ジョージアは本当に大人しい子だったから、とっても新鮮よね!」
「……そうですね。私を育てるって、本当に尊敬します。大変だっただろうな……両親も」
「ふふ、そんなことないと思うわ!アンナリーゼは、あの子たちと一緒にいて、楽しいでしょ?」
「えぇ、すごく楽しいです。毎日、小さな発見をしては、教えてくれたり、子どもと一緒に成長している感じがしますし、一緒にいられない日は、どうしているかな?って、気になって仕方ないです」


 優しく微笑む義母は、ジョージアの子ども時代を思い出しているのかもしれない。


「ママっ!」
「どうしたの?ジョージ」
「これ、おじいちゃんにもらったの!」


 今度はジョージが、分厚い本を持ってきてくれる。重そうなそれ、私でも読めないんじゃ……と思いながら表紙を見ると、それはたくさんの物語がおさめられている本であった。


「今晩から、読んでもらうといい。ジョージアにも買ってあげたものだけど、何度も何度も読んで、もうボロボロだろうからね」
「これって……もしかして、いつも読んであげてる本かしら?」
「そうだよ!ママ、また、読んでくれる?」
「もちろん!アンジェラにも聞かせてあげてもいいかな?」
「いいよ!アンもネイトもレオもミアも!」
「お昼寝の前の時間にみんなで集まって読もうか?」


 うんと返事をするジョージ。その顔は、とても嬉しそうだ。


「パパにも見せてくる!」
「重いから、気を付けて」


 大きな本を抱え、フラフラしながらジョージアの元へ向かう。そこには、まだ、アンジェラがにっこにこで話をしている。


「こうやってみると、アンジェラがアンナリーゼの、ジョージがジョージアの子ども時代のように見えるな」
「本当ですね、旦那様。ジョージアもよくああやって大きな本を持って旦那様の後ろをついて歩いていましたもの」
「いやいや、それは私ではなく……」


 義両親の想い出と子どもたちの様子が、ジョージアの子どものころと重なったのか、二人で想い出に浸っていた。
 私は、その場からこっそり離れようとしていたら、どこに行くの?と義母に言われ、大人しく義両親の惚気を聞かされる羽目になった。


「ネイトにも贈り物があるから、また、後で渡すわね」
「ネイトにまでいただけるのですか?」
「えぇ、もちろんよ!ネイトの誕生日にもこれればいいのだけど、これないから……一緒にね」
「ありがとうございます!」
「あと、アンナリーゼにもあるのよ!ねぇ、旦那様」
「あぁ、そうだ。アンナリーゼへの贈り物をすることが1番肝心なんだ」


 義両親のいうことが、よくわからなかった。私への贈り物とはどういうことなのだろうか?と首を傾げた。


「アンジェラとネイトを生んでくれてありがとう。私たちにとって、アンナリーゼがアンバーに嫁いできてくれたこと、それと同等に嬉しいことだわ。あの子たちの成長を見守ることは、まかせっきりだけど、嬉しいのよ。ずっと、お礼をいえなくて……」
「遅くなってすまない。ジョージアは、アンナリーゼに言ったかどうかはわからないけど、生んでくれてありがとう。アンジェラの出産後は本当に大変だったこと、私たちは知っているんだ。すまないことをしたとも思っている。ジョージアに変わって、謝らせてくれ」
「お義父様、お義母様。頭をあげてください!私、アンジェラが生まれたときもネイトが生まれたあとも大変だったと思うことはありませんでした。お二人が目をかけてくれていた侍従たちが、本当に助かりましたし、今も助かっています」
「ありがとう」
「何を話しているの?」


 ぬいぐるみを抱っこしたアンジェラをさらに抱っこしているジョージアと後ろをついてきたジョージが私たちのもとへくる。


「アンナリーゼにお礼をね。ずっと言えてなかったから」


 義父が、アンジェラの頭を撫でると目を細めた。


「……それは、それは。至らぬ俺が悪いね。よくできた……出来すぎた奥様ですから」


 イタズラっぽく笑うジョージアをみれば、両親に子どもがいることで少々はしゃいでいるようだ。


「今日はアンジーとジョージの誕生日祭だからね。外にお見せも出てるから、父様たちも行かないかい?」
「あぁ、そういえば、昨日あたりから表が騒がしかったね」


 窓に近づく義両親の後ろをジョージアとアンジェラが、ジョージの手を引き私がついて行く。


「毎年、こんなお祭りを?」
「思いつきでアンジェラが1歳のときにしたら、いつの間に、春のお祭りになってしまったのです」
「アン、お祭り好き!」
「そうかそうか。じゃあ、一緒にいこうか?」


 義父のお誘いに嬉しそうに頷いている。そして、自身と変わらぬほど大きなぬいぐるみを連れていこうとするので、待ったをかけた。


「そのクマさんはお留守番ですよ!」
「いやっ!連れていくの!」
「ダメっ!もらったばかりのクマさん、リアンにお風呂に入れてもらわないといけなくなるよ?」
「お風呂?」
「そう。そうしたら、しばらくは一緒にねられないかなぁ?」


 どうする?と聞くと、しぶしぶ私に渡してくるので受取る。義父と手を繋ぎ部屋から出ていく後ろ姿を見ていると、まるでお父様と出かける前の小さな私のようで、笑わずにはいられなかった。
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