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領地の変わりようⅦ
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「イチアくんは、何故この領地へこようと思ったんだい?」
義父が当たり前のようにジョージアが座るはずの場所に座り、私にもいつもの席にと指示を出し、イチアが義父の対面に座った。
「大きな理由としては、ノクト様が、公爵位を捨ててもアンナリーゼ様にお仕えしたいと言われたからです。ただ、私もローズディアとインゼロとの小競り合いで、文官の身でありながら、敵軍の、それも大将の前に来たウィル様やセバスにとても興味が湧いていたのです」
「なるほど……それから?」
「何故若い二人が、女性であるアンナリーゼ様のために、領地改革なるものをしたいという我儘に付き合うのか尽くしたいと思えるのか……疑問に思っていたのです。その後、ウィル様からの連絡で、アンナリーゼ様にお会いして、ノクト様も私も、アンナリーゼ様の虜になりました。女性ならではの発想というのもあるのですが、次から次とやりたいことを行っていく。先見の明があるのでしょう。そのすべてが時代にあっていくものであったり、領地の繁栄に繋がるものだったりと、正直驚かされました」
「それは、私も同じだよ。実はアンナリーゼと始めて会ったのは、まだ、この子が17歳のとき。ジョージアの卒業式のパートナーとして出会ったんだ。友人の妹だということもあって、何も考えずにジョージアには、アンナリーゼとの卒業式参加に許可を出した。ただ、小耳に挟んだある事件があってね?もしかしたら、イチアくんは知っているかもしれないが……」
少し考える素振りをするイチアが思い至ったようだ。むしろ、私はいろいろと事件を起こしすぎて、何のことか見当もついてなかった。
「バクラー侯爵家とワイズ子爵の話ですね?ワイズは確かインゼロに亡命していたはずですよ?」
「そうだったね。あれは、衝撃だった」
「それでしたか……」
ボソッと呟くと、二人で盛り上がっていた義父とイチアがこちらを見る。
「えっと……何か?」
「あれは、本当にアンナリーゼが起こしたことなのかい?」
「……正確には、指示をしたのは私ですけど、実行犯はデリアですよ。デリアは本当に優秀な侍女ですよね」
「デリアが?」
「まぁ……昔の話なので……そろそろ、そのお話は闇に葬ってください。どうしても、ワイズ子爵には、渡せないものがあっただけですから」
ニコリと笑いかければ、噂の真相が聞けたと義父は頷いた。なかなか、噂になっていたらしいことをここでも知ることになった。私の代名詞の事件として伝わっているらしい。それほどのことをしたとは、思ってはいないのだが……
「そんな事件を内密のうちに解決できる令嬢なんて、この世に二人といないわけだが……噂に聞いていたお嬢さんとは、随分違う印象を受けたものだ」
「どういうことですか?」
「完璧な淑女という言葉がぴったりだよ。まさに王妃の貫禄。そんな令嬢がうちの頼りなさそうなジョージアを選ぶとは思いもしていなかったよ。ジョージアは、アンナリーゼに会った瞬間には、心は奪われていたわけだが……内向的なあのジョージアがなと屋敷で話したものだ」
「社交の場でのアンナリーゼ様は存じませんので、いつも元気に領地を飛び跳ねている印象が私にはありますね」
「確かに」
クスクスと笑う義父にどう反応していいか苦笑いをしていると、ジョージアも執務室へ入ってきた。
「内向的にで申し訳ありませんね?父上」
「悪いとは言ってない。一歩踏み出せたジョージアを誇りにおもっているさ。我が家にとってももちろん、領地や領民、この国にとっても、アンナリーゼとの婚姻は、出来すぎなくらいなんだから」
「お義父様、それは……あの……私もジョージア様のことを好きでしたから、そんな大層なことではなく、自身の幸せのための婚姻ですよ!」
「辛い思いをさせていた時期もあったと聞いているが……」
「それは、今、とても幸せですから気にしていませんよ。物覚えも悪いのでもの忘れも早いのです。昔のことはもう覚えていません!」
「……アンナリーゼ」
ニコリと義父に笑いかけると、ありがとうと微笑み返してくれた。
「ご挨拶はこれくらいにして、視察の話をしてもいいかな?」
「えぇ、お願いします。お義父様から見たアンバー領はどうでしたか?私、ジョージア様から領主という役目を奪ってしまいました。それに似合うだけの成果が出ている……その評価は、お義父様がしてくださるのではないかと思っていたのです」
「アンナリーゼ、評価は私ではなく、領民がするものだ。今日、回らせてもらった町や村で、アンナリーゼのことを悪く言う領民は誰もいなかったよ。それどころか、アンナリーゼがこの領地を守ってくれていることにみなが感謝していると、笑顔で教えてくれた。それが、どれほどのものか……アンナリーゼならわかっているだろう?」
「……はい。でも、お義父様からも、聞きたいのです。領民が支持してくれている評価と領主だったお義父様の評価は違いますから……」
私の左手を手に取り、ギュっと両手で握ってくれる。
「私も領民と同じ評価をアンナリーゼに送るよ。本当に、短期間のうちに見違えるような領地改革、運営に驚かされてばかりだ!まだ、道半ばのものもあるが、どれも評価するに値するものばかり……領地を代表して言わせて欲しい。本当に領地を領民を蘇らせてくれてありがとう」
深々と頭を下げてくれる義父に私は慌てた。ジョージアはそんな光景をみて微笑んでいるだけで何も言わないし、イチアもその表情から余裕が見受けられた。
「お義父様、顔を上げてください。私もアンバー公爵家の一員となったのです。領地や領民のための努力は惜しみません。お義父様やジョージア様の頑張りも知っています。こんな我儘な私をアンバー公爵家の一員として迎え入れてくださったことが、何よりです」
顔をあげた義父。領地の変わりように本当に驚いたのだろう。変わってしまったアンバー領は、義父にとって、どのように見えたのだろうか?
義父が当たり前のようにジョージアが座るはずの場所に座り、私にもいつもの席にと指示を出し、イチアが義父の対面に座った。
「大きな理由としては、ノクト様が、公爵位を捨ててもアンナリーゼ様にお仕えしたいと言われたからです。ただ、私もローズディアとインゼロとの小競り合いで、文官の身でありながら、敵軍の、それも大将の前に来たウィル様やセバスにとても興味が湧いていたのです」
「なるほど……それから?」
「何故若い二人が、女性であるアンナリーゼ様のために、領地改革なるものをしたいという我儘に付き合うのか尽くしたいと思えるのか……疑問に思っていたのです。その後、ウィル様からの連絡で、アンナリーゼ様にお会いして、ノクト様も私も、アンナリーゼ様の虜になりました。女性ならではの発想というのもあるのですが、次から次とやりたいことを行っていく。先見の明があるのでしょう。そのすべてが時代にあっていくものであったり、領地の繁栄に繋がるものだったりと、正直驚かされました」
「それは、私も同じだよ。実はアンナリーゼと始めて会ったのは、まだ、この子が17歳のとき。ジョージアの卒業式のパートナーとして出会ったんだ。友人の妹だということもあって、何も考えずにジョージアには、アンナリーゼとの卒業式参加に許可を出した。ただ、小耳に挟んだある事件があってね?もしかしたら、イチアくんは知っているかもしれないが……」
少し考える素振りをするイチアが思い至ったようだ。むしろ、私はいろいろと事件を起こしすぎて、何のことか見当もついてなかった。
「バクラー侯爵家とワイズ子爵の話ですね?ワイズは確かインゼロに亡命していたはずですよ?」
「そうだったね。あれは、衝撃だった」
「それでしたか……」
ボソッと呟くと、二人で盛り上がっていた義父とイチアがこちらを見る。
「えっと……何か?」
「あれは、本当にアンナリーゼが起こしたことなのかい?」
「……正確には、指示をしたのは私ですけど、実行犯はデリアですよ。デリアは本当に優秀な侍女ですよね」
「デリアが?」
「まぁ……昔の話なので……そろそろ、そのお話は闇に葬ってください。どうしても、ワイズ子爵には、渡せないものがあっただけですから」
ニコリと笑いかければ、噂の真相が聞けたと義父は頷いた。なかなか、噂になっていたらしいことをここでも知ることになった。私の代名詞の事件として伝わっているらしい。それほどのことをしたとは、思ってはいないのだが……
「そんな事件を内密のうちに解決できる令嬢なんて、この世に二人といないわけだが……噂に聞いていたお嬢さんとは、随分違う印象を受けたものだ」
「どういうことですか?」
「完璧な淑女という言葉がぴったりだよ。まさに王妃の貫禄。そんな令嬢がうちの頼りなさそうなジョージアを選ぶとは思いもしていなかったよ。ジョージアは、アンナリーゼに会った瞬間には、心は奪われていたわけだが……内向的なあのジョージアがなと屋敷で話したものだ」
「社交の場でのアンナリーゼ様は存じませんので、いつも元気に領地を飛び跳ねている印象が私にはありますね」
「確かに」
クスクスと笑う義父にどう反応していいか苦笑いをしていると、ジョージアも執務室へ入ってきた。
「内向的にで申し訳ありませんね?父上」
「悪いとは言ってない。一歩踏み出せたジョージアを誇りにおもっているさ。我が家にとってももちろん、領地や領民、この国にとっても、アンナリーゼとの婚姻は、出来すぎなくらいなんだから」
「お義父様、それは……あの……私もジョージア様のことを好きでしたから、そんな大層なことではなく、自身の幸せのための婚姻ですよ!」
「辛い思いをさせていた時期もあったと聞いているが……」
「それは、今、とても幸せですから気にしていませんよ。物覚えも悪いのでもの忘れも早いのです。昔のことはもう覚えていません!」
「……アンナリーゼ」
ニコリと義父に笑いかけると、ありがとうと微笑み返してくれた。
「ご挨拶はこれくらいにして、視察の話をしてもいいかな?」
「えぇ、お願いします。お義父様から見たアンバー領はどうでしたか?私、ジョージア様から領主という役目を奪ってしまいました。それに似合うだけの成果が出ている……その評価は、お義父様がしてくださるのではないかと思っていたのです」
「アンナリーゼ、評価は私ではなく、領民がするものだ。今日、回らせてもらった町や村で、アンナリーゼのことを悪く言う領民は誰もいなかったよ。それどころか、アンナリーゼがこの領地を守ってくれていることにみなが感謝していると、笑顔で教えてくれた。それが、どれほどのものか……アンナリーゼならわかっているだろう?」
「……はい。でも、お義父様からも、聞きたいのです。領民が支持してくれている評価と領主だったお義父様の評価は違いますから……」
私の左手を手に取り、ギュっと両手で握ってくれる。
「私も領民と同じ評価をアンナリーゼに送るよ。本当に、短期間のうちに見違えるような領地改革、運営に驚かされてばかりだ!まだ、道半ばのものもあるが、どれも評価するに値するものばかり……領地を代表して言わせて欲しい。本当に領地を領民を蘇らせてくれてありがとう」
深々と頭を下げてくれる義父に私は慌てた。ジョージアはそんな光景をみて微笑んでいるだけで何も言わないし、イチアもその表情から余裕が見受けられた。
「お義父様、顔を上げてください。私もアンバー公爵家の一員となったのです。領地や領民のための努力は惜しみません。お義父様やジョージア様の頑張りも知っています。こんな我儘な私をアンバー公爵家の一員として迎え入れてくださったことが、何よりです」
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