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いざ、ジニー探しのたび!寄り道ごぅごぅ!Ⅲ
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私の前に座らされ、キースが見張っていた。縄で縛ってはあるが、いつ逃げ出すかわからない代物ではある。
ジーっと見ると、目を逸らすどころか、挑戦的に私を睨みつけてきた。
「どこの子かしらね?」
「心当たりでも?」
キースは、見下ろす少女に見覚えは?と言ってくるが、正直、たくさんいすぎて、どこのどなたまでは、わからない。
「私、命を狙われるのは、しょっちゅうだから、どこの子飼いかわからないわ!」
「それほど、狙われるのですか?」
「そうね……常に十人くらいは、私のことを見守ってくれているわよ!ただ、この子は、私を見守る隊の一人ではないわね……領主の屋敷を襲ったところの監視かしら?」
「何故、そのように?」
「みんな、牽制し合っているのよ。私の首は、高いから!なかなか、とれるものでもないでしょ?」
「……仮にも公爵ですよね?そんなに狙われているのに、護衛がこんなに少ないのは、問題なのではないですか?」
「だから、みなが、見守ってくれているって言っているじゃない!だから、むしろ安全というか……見守る隊も、十人くらいじゃ私に勝てないから、本当に見守る隊なのよね」
ふふんと笑うと、ため息をつくキース。
「知っているんですか?護衛をしてくれている人たちは」
「えぇ、知っているわよ!ディルから通達が回っているはずだし……私より、ディルの方が詳しいんじゃないかしら?あまりに危険そうなのは、本当に排除していってくれてるっぽいし」
「……何者ですか?そのディルっていう方は」
「アンバー公爵家の筆頭執事。かなり優秀なのよ!ディルがいれば、そういう後ろ側は、まかせて置けるから、みんなあんまり、気にしていないと思うわ!たぶん、ここにも子猫ちゃんが紛れているはずよ!」
「子猫?」
「アンバー公爵家の子飼い」
「アンバー公爵家って……その……」
「うちだけじゃないでしょ?歴史のあるような貴族は、多かれ少なかれそういう機関を持っているわ!もちろんゴールド公爵家なんて、一大組織よね!」
ニッコリ笑うと、引きつった顔をしているキースが愕然として項垂れる。傍系には知らされないこともたくさんある。ましてや、キースの家は、本家筋からかなり離れているのだから……
「さて、この子なんだけど……手練れよね……かなりの」
「わかるんですか?」
「んー剣を握るものとして、相手がどれくらいの力量かは、さすがに判断できないと……危ない橋しかわたれないよ?」
「……面目ないです」
「訓練あるのみだけどね。私なんて、ふだん、ぼんやりしてるから……」
「いや、アンナリーゼ様は、貫禄ありすぎますよ?立っているだけで、なんというか……強そうな雰囲気ありますから」
ありがとうと微笑み、少女に向き合う。どうしようかしら……と、見つめる。
「領地なら、ディルに任せられるのになぁ……」
「ここは、敵地のど真ん中みたいなものですからね?アンナリーゼ様にとって」
「そうなのよ!ゴールド公爵のお膝元というか、資金源だものね……うーん。困ったな。連れて歩く?でも、縛ってたら目立つし……面倒よね?やっちゃう?」
「!!」
「冗談よ、冗談」
「冗談には、聞こえなかったですけど……」
「うーううううううう!」
「殺せって言われても……それはそれで、面倒なのよ……強いから、ここでは預けられないし……あぁ、ノークートーっ!」
面倒ごとは丸投げしたいとノクトの名を読んだとき、ひょっこあらわれるおじさん。
逆に面食らってしまった私は飛びのいた。
「ひでぇ扱い。で、そのお嬢ちゃんのことを調べてるのか?」
「たぶん、領主の屋敷を襲った一団の一人だと思うんだけど……」
どれどれ?と服の襟ぐりを見ているノクト。そこに何があるの?と私も覗き込んだ。
「こりゃ、インゼロから流れこんでいるな」
「わかるの?あぁ、このマーク。髑髏と蛇があるだろ?」
「うん、これって……」
「あぁ、お察しの通りだ。こいつらが、ここらへんに出張ってきているのか……面倒なことになってるな?」
「だよね……大きな組織が動くと困るな……」
「この印がどうかしたのですか?」
「うーん。通称戦争仕掛け屋さんの印なのよね。常に国の何処かにはいるんだけど……今回の騒動で、結構な数がローズディアに入ってきている可能性が高いなって……」
「えっと……それは、どうなるんです?」
「戦争の火種になるような厄介な案件を次々と乱立していくわよ!それも狡猾に水面下で進められるから、煙が立つまでわからないことも多いって……ノクトなら、わかるでしょ?」
「まぁ、煙が立った場所へ向かうのが、仕事だったからな……煙が立たないようにするのは、相当骨が折れるぞ?」
はぁ……とため息をついた。これは、私が考える案件ではない。だから、公に丸投げすることしたのだが、結局、回ってくる案件にはなりそうだ。
ジニーの件といい、インゼロ帝国は、国内を固めているところではないのかとため息をつきたくなった。
「情報が欲しいわ!ノクト、夫人から情報を得られないかしら?」
「あぁ、それは、構わないが……どうする?今からだと、だいたい3ヶ月以内にことがなるぞ?」
「それは、一公爵の私が考えることじゃないから、公に任せるわ!何かあれば、手を貸しましょう。お兄様にも連絡を入れて、トワイス国でも気を付けてもらうことにするわ!あとは、エルドアね……インゼロと1番国境があるから……この騒動に乗じて流れてきたのでしょうけど……面倒だわ……」
「で、このお嬢ちゃんは、そうだな。ちょっくら、あずかるわ!」
ノクトがひょいっと抱きかかえ、連れて行こうとする。キースが、それを見てオロオロとした。
「連れていくのはいいけど……キースも連れて行ってね!」
「あぁ……この坊ちゃん……な」
そう言って、ノクトはキースを伴って出て行った。私は机に向かい、何十枚もの手紙をあちこちに出すことになった。
ひとつひとつ印を押す。家紋入りのものなら、すぐに見てくれるだろう。朝になったら、一斉に出せるよう、準備を整えて、今日は眠りにつくのだった。
ジーっと見ると、目を逸らすどころか、挑戦的に私を睨みつけてきた。
「どこの子かしらね?」
「心当たりでも?」
キースは、見下ろす少女に見覚えは?と言ってくるが、正直、たくさんいすぎて、どこのどなたまでは、わからない。
「私、命を狙われるのは、しょっちゅうだから、どこの子飼いかわからないわ!」
「それほど、狙われるのですか?」
「そうね……常に十人くらいは、私のことを見守ってくれているわよ!ただ、この子は、私を見守る隊の一人ではないわね……領主の屋敷を襲ったところの監視かしら?」
「何故、そのように?」
「みんな、牽制し合っているのよ。私の首は、高いから!なかなか、とれるものでもないでしょ?」
「……仮にも公爵ですよね?そんなに狙われているのに、護衛がこんなに少ないのは、問題なのではないですか?」
「だから、みなが、見守ってくれているって言っているじゃない!だから、むしろ安全というか……見守る隊も、十人くらいじゃ私に勝てないから、本当に見守る隊なのよね」
ふふんと笑うと、ため息をつくキース。
「知っているんですか?護衛をしてくれている人たちは」
「えぇ、知っているわよ!ディルから通達が回っているはずだし……私より、ディルの方が詳しいんじゃないかしら?あまりに危険そうなのは、本当に排除していってくれてるっぽいし」
「……何者ですか?そのディルっていう方は」
「アンバー公爵家の筆頭執事。かなり優秀なのよ!ディルがいれば、そういう後ろ側は、まかせて置けるから、みんなあんまり、気にしていないと思うわ!たぶん、ここにも子猫ちゃんが紛れているはずよ!」
「子猫?」
「アンバー公爵家の子飼い」
「アンバー公爵家って……その……」
「うちだけじゃないでしょ?歴史のあるような貴族は、多かれ少なかれそういう機関を持っているわ!もちろんゴールド公爵家なんて、一大組織よね!」
ニッコリ笑うと、引きつった顔をしているキースが愕然として項垂れる。傍系には知らされないこともたくさんある。ましてや、キースの家は、本家筋からかなり離れているのだから……
「さて、この子なんだけど……手練れよね……かなりの」
「わかるんですか?」
「んー剣を握るものとして、相手がどれくらいの力量かは、さすがに判断できないと……危ない橋しかわたれないよ?」
「……面目ないです」
「訓練あるのみだけどね。私なんて、ふだん、ぼんやりしてるから……」
「いや、アンナリーゼ様は、貫禄ありすぎますよ?立っているだけで、なんというか……強そうな雰囲気ありますから」
ありがとうと微笑み、少女に向き合う。どうしようかしら……と、見つめる。
「領地なら、ディルに任せられるのになぁ……」
「ここは、敵地のど真ん中みたいなものですからね?アンナリーゼ様にとって」
「そうなのよ!ゴールド公爵のお膝元というか、資金源だものね……うーん。困ったな。連れて歩く?でも、縛ってたら目立つし……面倒よね?やっちゃう?」
「!!」
「冗談よ、冗談」
「冗談には、聞こえなかったですけど……」
「うーううううううう!」
「殺せって言われても……それはそれで、面倒なのよ……強いから、ここでは預けられないし……あぁ、ノークートーっ!」
面倒ごとは丸投げしたいとノクトの名を読んだとき、ひょっこあらわれるおじさん。
逆に面食らってしまった私は飛びのいた。
「ひでぇ扱い。で、そのお嬢ちゃんのことを調べてるのか?」
「たぶん、領主の屋敷を襲った一団の一人だと思うんだけど……」
どれどれ?と服の襟ぐりを見ているノクト。そこに何があるの?と私も覗き込んだ。
「こりゃ、インゼロから流れこんでいるな」
「わかるの?あぁ、このマーク。髑髏と蛇があるだろ?」
「うん、これって……」
「あぁ、お察しの通りだ。こいつらが、ここらへんに出張ってきているのか……面倒なことになってるな?」
「だよね……大きな組織が動くと困るな……」
「この印がどうかしたのですか?」
「うーん。通称戦争仕掛け屋さんの印なのよね。常に国の何処かにはいるんだけど……今回の騒動で、結構な数がローズディアに入ってきている可能性が高いなって……」
「えっと……それは、どうなるんです?」
「戦争の火種になるような厄介な案件を次々と乱立していくわよ!それも狡猾に水面下で進められるから、煙が立つまでわからないことも多いって……ノクトなら、わかるでしょ?」
「まぁ、煙が立った場所へ向かうのが、仕事だったからな……煙が立たないようにするのは、相当骨が折れるぞ?」
はぁ……とため息をついた。これは、私が考える案件ではない。だから、公に丸投げすることしたのだが、結局、回ってくる案件にはなりそうだ。
ジニーの件といい、インゼロ帝国は、国内を固めているところではないのかとため息をつきたくなった。
「情報が欲しいわ!ノクト、夫人から情報を得られないかしら?」
「あぁ、それは、構わないが……どうする?今からだと、だいたい3ヶ月以内にことがなるぞ?」
「それは、一公爵の私が考えることじゃないから、公に任せるわ!何かあれば、手を貸しましょう。お兄様にも連絡を入れて、トワイス国でも気を付けてもらうことにするわ!あとは、エルドアね……インゼロと1番国境があるから……この騒動に乗じて流れてきたのでしょうけど……面倒だわ……」
「で、このお嬢ちゃんは、そうだな。ちょっくら、あずかるわ!」
ノクトがひょいっと抱きかかえ、連れて行こうとする。キースが、それを見てオロオロとした。
「連れていくのはいいけど……キースも連れて行ってね!」
「あぁ……この坊ちゃん……な」
そう言って、ノクトはキースを伴って出て行った。私は机に向かい、何十枚もの手紙をあちこちに出すことになった。
ひとつひとつ印を押す。家紋入りのものなら、すぐに見てくれるだろう。朝になったら、一斉に出せるよう、準備を整えて、今日は眠りにつくのだった。
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