742 / 1,480
さて、次なるは……
しおりを挟む
「人にはわからない特技があるものね?」
「ジニーの絵か?」
「そうそう。すごくよく描けてると思わない?それも、一晩のことでしょ?」
「一晩……どころか、数時間くらいじゃないの?」
「……そこは、もう、一晩ってことにしておきましょう」
ジニーの絵を見ながら、魅力的よね?と呟く。
「絵だけではわからないけど、紫の瞳に見つめられると姫さんに見つめられているみたいだな……貴族がこぞって買ってしまいたくなる気持ちがわかるような」
「わかるの?」
「えっ?」
「ウィルが言ったんだよ?」
「……あぁ、そうだな。ストロベリーピンクの髪なんだろ?」
「それは、きっと、染めたんだと思いますけど。元の髪は違いますから」
自分の髪を触りながらヨハンが呟いた。
「さて、ルチル坊ちゃんの情報を元に、動くことになるけど……私たちには南へ向かうという使命もあるのよね……」
「医師と薬を取り返すってやつね。こればっかりは、姫さんの権力を振りかざしてくれないと困るやつだからな。どうする?」
「キースに追跡……は、難しいよね。病になったことがないって言ってたし」
「今、強制的になることはできますが?」
「それじゃ、数日寝込むことになるでしょ?身動き取れないのは……まずいのよね。かといって、他に誰か……もいないのよね」
「じゃあ、助手に向かわせましょう!」
「「はい?」」
ウィルの声と重なる。思うことは同じだったようで思わず声が出てしまった。
「さすがにそれは、なくないか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと、訓練されているんで!」
「訓練って誰から?」
「フレイゼン侯爵ですよ!いやですね。アンナリーゼ様を溺愛しすぎているので……アンバーへ向かう人選は、もちろん侯爵自らが夫人と共にしていますよ。いろいろな教育は受けさせられていますから、近衛より強いって言うのは、さすがにどうかと思うんで言いませんけど……アンバーの警備隊より、アンバーへ来た者たちのほうが強いですよ。なんせ、夫人仕込みですからね!」
「……お父様、……お母様」
「私よりあとに来ている10人については、サシャ様直伝の経済学から処世術を叩き込まれているらしいですけどね。先に来ていてよかった。サシャ様と話をしていたら、いつまでたっても時間が足りませんからね」
「……お兄様まで」
ヨハンが心底安心した顔をしている横で、困惑顔を作っていた。家族が、私のために、手をかけてくれ、送り出してくれた魔法使いたち。
家族には、感謝しかなかった。
「本当に、姫さんのお父さんって、溺愛だよね……」
「サーラー様も同じではございませんか?」
「はっ?」
「ミレディア様ですよ。お二人を見ていれば、あのくらいのころのアンナリーゼ様とフレイゼン侯爵を思い出します」
「だ、そうよ?親ばかね?」
クスクス笑うと、まいったなぁ……とウィルは満更でもない顔と困惑顔をまぜこぜにする。付き合いの長い私にはわかる。嬉しいのだろう。あえて言わず、微笑んでおいた。
「それじゃあ、お願いできるかしら?」
「かまいませんよ。ここの助手を使いましょう。最南端へ向かったものをここに戻し、そちらへ向かいます」
「ヨハンが、1番患者の多い場所へ向かってくれるってこと?」
「そうなりますね」
「大丈夫なの?」
「かまいませんよ。妹がしたことなら……その償いを。死者も多いと聞きます。病で苦しんでいるひとも多い。それが、償いになるのかは、わかりませんが……少しでも苦しんでいる人を助けに向かいます。しばらくの間、ここは、助手がいない状態となりますが……」
「町医者を集めるわ!それと、南に向かうなら、ウィルを連れて行って!危ない場所に変わっているって聞いているから!」
「それは、かまいませんが……護衛は、どうするのですか?」
「元々、単身で駆け回ろうとしていたから、必要はないのだけど……たまたま、いい人材を拾ったから、そのまま拾い上げしてみようかと思って」
おっっとウィルが反応を示した。キースが私の護衛をしたいと申し出ているのだから、そのように働かせみるのもいいだろう。
「じゃあ、姫さんは、このまま西に向かうのか?」
「そうね。そのつもりよ!ウィルたちが南へ最速で行けたとして、どれくらいでつくかしら?」
「三日だな。向こうの助手の移動準備もあるから、1週間はここをあけることになるだろう」
「わかった。ノクトがいれば、助手の護衛もできるんだけど……」
「大丈夫だろ?その助手も、一般の領民よりかは強いってことだろ?」
意味ありげにヨハンを見るウィルに頷く。それなら、護衛はいらないのかもしれない。ただ、用心はした方がいい。
「一人、護衛をこの領地から出すわ!その人をつけて、向かってくれるかしら?」
「わかった。強行だ。ついてこれるのか?姫さんのあてにしてるヤツは」
「さぁ、ウィルのほうがよく知っているのでなくて?」
「俺?」
「元近衛ですもの。ねぇ?」
そう言って後ろを向くと、そこに立っていたのはウィルの隊に初めからいたレイスだった。
「ご無沙汰しています。サーラー中隊長」
「レイスか?」
「えぇ、そうです。覚えてくださいましたか?」
レイスは、家族に不幸があり跡取りの補佐として呼び戻された子爵家二男であった。家系はゴールド公爵家よりではあるが、信頼できる人物ではある。
「あぁ、覚えている。それより、どうして?領主の補佐をしているのだろ?」
「はい。隣の領地の補佐をしておりますが、アンナリーゼ様がおみえだと、風の噂で聞きつけたので、ご挨拶にまいりました。何か、私が手伝えることがあるなら、なんなりと。私は、サーラー中隊長へ生涯の忠誠を誓ったと思っておりますから」
「でも、領地が……」
「1週間程度でどうにかなることは、ありません。先日から、アンナリーゼ様が動いてくださっているおかげで、我が領地内にも動きがあり、落ち着いてきたのです。サーラー中隊長、どうぞ、ご命令を」
ウィルは私を睨むが、私が手をうったわけではないので知らん顔しておく。これで、人数は、揃ったので、貴族の屋敷……ナルド子爵のところへ向かうことにした。
「ジニーの絵か?」
「そうそう。すごくよく描けてると思わない?それも、一晩のことでしょ?」
「一晩……どころか、数時間くらいじゃないの?」
「……そこは、もう、一晩ってことにしておきましょう」
ジニーの絵を見ながら、魅力的よね?と呟く。
「絵だけではわからないけど、紫の瞳に見つめられると姫さんに見つめられているみたいだな……貴族がこぞって買ってしまいたくなる気持ちがわかるような」
「わかるの?」
「えっ?」
「ウィルが言ったんだよ?」
「……あぁ、そうだな。ストロベリーピンクの髪なんだろ?」
「それは、きっと、染めたんだと思いますけど。元の髪は違いますから」
自分の髪を触りながらヨハンが呟いた。
「さて、ルチル坊ちゃんの情報を元に、動くことになるけど……私たちには南へ向かうという使命もあるのよね……」
「医師と薬を取り返すってやつね。こればっかりは、姫さんの権力を振りかざしてくれないと困るやつだからな。どうする?」
「キースに追跡……は、難しいよね。病になったことがないって言ってたし」
「今、強制的になることはできますが?」
「それじゃ、数日寝込むことになるでしょ?身動き取れないのは……まずいのよね。かといって、他に誰か……もいないのよね」
「じゃあ、助手に向かわせましょう!」
「「はい?」」
ウィルの声と重なる。思うことは同じだったようで思わず声が出てしまった。
「さすがにそれは、なくないか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと、訓練されているんで!」
「訓練って誰から?」
「フレイゼン侯爵ですよ!いやですね。アンナリーゼ様を溺愛しすぎているので……アンバーへ向かう人選は、もちろん侯爵自らが夫人と共にしていますよ。いろいろな教育は受けさせられていますから、近衛より強いって言うのは、さすがにどうかと思うんで言いませんけど……アンバーの警備隊より、アンバーへ来た者たちのほうが強いですよ。なんせ、夫人仕込みですからね!」
「……お父様、……お母様」
「私よりあとに来ている10人については、サシャ様直伝の経済学から処世術を叩き込まれているらしいですけどね。先に来ていてよかった。サシャ様と話をしていたら、いつまでたっても時間が足りませんからね」
「……お兄様まで」
ヨハンが心底安心した顔をしている横で、困惑顔を作っていた。家族が、私のために、手をかけてくれ、送り出してくれた魔法使いたち。
家族には、感謝しかなかった。
「本当に、姫さんのお父さんって、溺愛だよね……」
「サーラー様も同じではございませんか?」
「はっ?」
「ミレディア様ですよ。お二人を見ていれば、あのくらいのころのアンナリーゼ様とフレイゼン侯爵を思い出します」
「だ、そうよ?親ばかね?」
クスクス笑うと、まいったなぁ……とウィルは満更でもない顔と困惑顔をまぜこぜにする。付き合いの長い私にはわかる。嬉しいのだろう。あえて言わず、微笑んでおいた。
「それじゃあ、お願いできるかしら?」
「かまいませんよ。ここの助手を使いましょう。最南端へ向かったものをここに戻し、そちらへ向かいます」
「ヨハンが、1番患者の多い場所へ向かってくれるってこと?」
「そうなりますね」
「大丈夫なの?」
「かまいませんよ。妹がしたことなら……その償いを。死者も多いと聞きます。病で苦しんでいるひとも多い。それが、償いになるのかは、わかりませんが……少しでも苦しんでいる人を助けに向かいます。しばらくの間、ここは、助手がいない状態となりますが……」
「町医者を集めるわ!それと、南に向かうなら、ウィルを連れて行って!危ない場所に変わっているって聞いているから!」
「それは、かまいませんが……護衛は、どうするのですか?」
「元々、単身で駆け回ろうとしていたから、必要はないのだけど……たまたま、いい人材を拾ったから、そのまま拾い上げしてみようかと思って」
おっっとウィルが反応を示した。キースが私の護衛をしたいと申し出ているのだから、そのように働かせみるのもいいだろう。
「じゃあ、姫さんは、このまま西に向かうのか?」
「そうね。そのつもりよ!ウィルたちが南へ最速で行けたとして、どれくらいでつくかしら?」
「三日だな。向こうの助手の移動準備もあるから、1週間はここをあけることになるだろう」
「わかった。ノクトがいれば、助手の護衛もできるんだけど……」
「大丈夫だろ?その助手も、一般の領民よりかは強いってことだろ?」
意味ありげにヨハンを見るウィルに頷く。それなら、護衛はいらないのかもしれない。ただ、用心はした方がいい。
「一人、護衛をこの領地から出すわ!その人をつけて、向かってくれるかしら?」
「わかった。強行だ。ついてこれるのか?姫さんのあてにしてるヤツは」
「さぁ、ウィルのほうがよく知っているのでなくて?」
「俺?」
「元近衛ですもの。ねぇ?」
そう言って後ろを向くと、そこに立っていたのはウィルの隊に初めからいたレイスだった。
「ご無沙汰しています。サーラー中隊長」
「レイスか?」
「えぇ、そうです。覚えてくださいましたか?」
レイスは、家族に不幸があり跡取りの補佐として呼び戻された子爵家二男であった。家系はゴールド公爵家よりではあるが、信頼できる人物ではある。
「あぁ、覚えている。それより、どうして?領主の補佐をしているのだろ?」
「はい。隣の領地の補佐をしておりますが、アンナリーゼ様がおみえだと、風の噂で聞きつけたので、ご挨拶にまいりました。何か、私が手伝えることがあるなら、なんなりと。私は、サーラー中隊長へ生涯の忠誠を誓ったと思っておりますから」
「でも、領地が……」
「1週間程度でどうにかなることは、ありません。先日から、アンナリーゼ様が動いてくださっているおかげで、我が領地内にも動きがあり、落ち着いてきたのです。サーラー中隊長、どうぞ、ご命令を」
ウィルは私を睨むが、私が手をうったわけではないので知らん顔しておく。これで、人数は、揃ったので、貴族の屋敷……ナルド子爵のところへ向かうことにした。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる