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最後の1割は?
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「なんだかんだ、エリザベス様はサシャ様が好きすぎるよね……?」
「本当よね?羨ましいわね!私もそんなふうに想われて……」
「姫さんは、ジョージア様に想われているだろ?むしろ、姫さんのほうが、ジョージア様のこと蔑ろにしてない?」
「……言わないで。それは、私も思っているところなのよ。蔑ろにしているつもりはないけど……でも、そうよね……領地をはじめ、あっちこっちに飛び回ってるから、ジョージア様には、本当に迷惑かけている自覚もあるんだよ」
ふぅ……とため息をついた。それを見て、みなが苦笑いをする。
「そういえば、エリザベス様の手紙の残り1割は一体何なの?」
「雑談ね。例えば、王室のこととか、流行りとか……トワイスの実情を教えてくれるわ!出来れば、8割をそっちにさいてほしいのだけど、なかなかね」
「言えないのか?」
「そう……言えないの。お願いって……あんまり、お兄様のあれこれを嬉しそうに書かれていると、身内としては、言いにくいのよ」
「それでは、どこからトワイスの情報を取っているのですか?」
「殿下とお兄様、あとは……」
「姫さんの王子様か」
「私の王子様か……」
「それは、どなたなのですか?」
興味を持ったのか、テクトが口を挟んで来たが、慌てて口を手で塞いだ。
私は、苦笑いをして遠くを見た。たぶん、トワイスの方向だと思う方を。
「知りたい?」
「いえ……口を挟んでしまい、申し訳ありません」
「テクトも知っている人よ!たまに来る手紙には、あなたの話も書いてあるから」
「私のことですか?」
「えぇ、そうよ!行ったことないかしら?トワイスの宰相をしているサンストーン公爵家に」
「……あります!まさか?」
「そう、私の王子様は、サンストーン公爵家の……」
「そうだったのですか。トワイスでの商売に向かえば、必ずお話をする機会がありました。よくアンバーの、特にアンナリーゼ様のことを聞かれていたので、少々不思議に思っていたのです。そういうことだったのですね」
「まぁ、淡い初恋って思っておいて!」
「向こうは、そう思ってないんだろうけどね!姫さんのこ……おっと、口が……」
「シメるわよ?」
「口悪いよ、姫さん!」
ウィルを睨んで、この話は終わりにした。
ハリーを想えば、未だにチクリと痛むところがある。口には出さないが、懐かしむこともなかなかできずにいた。真紅の薔薇のチェーンピアスが、耳元で揺れる。
「それで、エリザベス様からの情報源は、誰なの?」
「さぁ?わからないわ!ただ、私やお母様、そして、お兄様とは違う視点だから、おもしろいことも多いわ!例えば、第二妃が、最近、いろいろと画策しているらしいとか、イリアとメアリー妃とお茶会をしたとかかしら?」
「メアリー妃って、あの公爵令嬢だっけ?」
「そう。寵姫となっているようね。シルキー様が、殿下をメアリー妃に押し付けているっていう話も聞こえてくるわよ?」
「で、王太子妃は、蔑ろになってない?それで、いいのかよ?」
「表向きはって感じらしいわね。殿下とシルキー様との仲はとても良好らしいわよ?私の話で毎日『赤い涙』を始め、アンバー産の果実酒で晩酌を楽しんでいるのだとか。ただ、国内の力加減を考えると、あまりシルキー様が出しゃばるとよくないらしいのよ。それで、メアリー妃を伴うことが多いって話なのよ」
「でも、殿下もさ、メアリー妃との間に、来年の夏前に二人目だっけ?」
「そうね。シルキー様は、正直ところ、ジルアート様を産んだことで、そっちの役目は終わったと言っているらしいわね。精力的なのは、第二妃かしらね?それを避けるために寵姫がいるわけなんだけど。まぁ、計画通りと言えば、計画通りよね」
私が微笑むと、また、なんか悪い顔しているという。
何も悪い顔はしていない。『予知夢』では、シルキーはすでに亡くなっているはずだったのだ。今も元気に飛び歩いていると兄から連絡があるのが、私にとって嬉しかった。
少しの間しか、一緒にはいられなかったけど、慕ってくれる人を見捨てなくてよかったと、心から思っている。
「いいじゃない。生まれてくる子も女の子なら、お兄様の子のお嫁さんになるかもしれないんだから!そのためには、お兄様にもっと頑張ってもらう必要があるけど……王室との繋がりがあるのは、いいわよね。クリスの代になったとき、その事実が、大きな花を開くときが来るかもしれないわ!」
「何、それ?」
「侯爵家にも、うま味がないとね!国へ貢献しているんだもの!」
「姫さんが、王室に入る方が、貢献度的にはよかったんじゃないの?」
「それは、ない!私が、王室になんて入ってみなさいよ!まず、王宮にいないわよ?」
「それって、ここにいても一緒だと思うけど……」
みなが頷く。
そんなに私って、出歩いている印象があるのだろうか?執務室で、大人しく事務処理をしているんだけど……
みなからしたら、そうは、思ってくれていないらしい。
「ところで、話がそれてしまったのだけど……テクト、そろそろ、本題をいいかしら?」
「ユービスから連絡をもらった件ですね?」
「そう、飾り箱を作っている職人を口説き落としに……」
「今日、呼び寄せていますから、もう少ししたら、屋敷に到着するかと」
「えっ?呼んだの?」
「えぇ、呼びましたというより、職人たちが恐縮してしまって、屋敷へ来ると申して聞かなかったので……」
「そう、なら仕方ないわね!現物は、持ってきてくれるのかしら?」
「そういうふうには言ってあります。噂をすれば……」
馬車の停まる音がした。
しばらくすると、私たちが通された応接間へ、前が見えないんじゃないかと言うほどの大量の荷物を持った大男と小男がノックの後、入ってきたのであった。
「本当よね?羨ましいわね!私もそんなふうに想われて……」
「姫さんは、ジョージア様に想われているだろ?むしろ、姫さんのほうが、ジョージア様のこと蔑ろにしてない?」
「……言わないで。それは、私も思っているところなのよ。蔑ろにしているつもりはないけど……でも、そうよね……領地をはじめ、あっちこっちに飛び回ってるから、ジョージア様には、本当に迷惑かけている自覚もあるんだよ」
ふぅ……とため息をついた。それを見て、みなが苦笑いをする。
「そういえば、エリザベス様の手紙の残り1割は一体何なの?」
「雑談ね。例えば、王室のこととか、流行りとか……トワイスの実情を教えてくれるわ!出来れば、8割をそっちにさいてほしいのだけど、なかなかね」
「言えないのか?」
「そう……言えないの。お願いって……あんまり、お兄様のあれこれを嬉しそうに書かれていると、身内としては、言いにくいのよ」
「それでは、どこからトワイスの情報を取っているのですか?」
「殿下とお兄様、あとは……」
「姫さんの王子様か」
「私の王子様か……」
「それは、どなたなのですか?」
興味を持ったのか、テクトが口を挟んで来たが、慌てて口を手で塞いだ。
私は、苦笑いをして遠くを見た。たぶん、トワイスの方向だと思う方を。
「知りたい?」
「いえ……口を挟んでしまい、申し訳ありません」
「テクトも知っている人よ!たまに来る手紙には、あなたの話も書いてあるから」
「私のことですか?」
「えぇ、そうよ!行ったことないかしら?トワイスの宰相をしているサンストーン公爵家に」
「……あります!まさか?」
「そう、私の王子様は、サンストーン公爵家の……」
「そうだったのですか。トワイスでの商売に向かえば、必ずお話をする機会がありました。よくアンバーの、特にアンナリーゼ様のことを聞かれていたので、少々不思議に思っていたのです。そういうことだったのですね」
「まぁ、淡い初恋って思っておいて!」
「向こうは、そう思ってないんだろうけどね!姫さんのこ……おっと、口が……」
「シメるわよ?」
「口悪いよ、姫さん!」
ウィルを睨んで、この話は終わりにした。
ハリーを想えば、未だにチクリと痛むところがある。口には出さないが、懐かしむこともなかなかできずにいた。真紅の薔薇のチェーンピアスが、耳元で揺れる。
「それで、エリザベス様からの情報源は、誰なの?」
「さぁ?わからないわ!ただ、私やお母様、そして、お兄様とは違う視点だから、おもしろいことも多いわ!例えば、第二妃が、最近、いろいろと画策しているらしいとか、イリアとメアリー妃とお茶会をしたとかかしら?」
「メアリー妃って、あの公爵令嬢だっけ?」
「そう。寵姫となっているようね。シルキー様が、殿下をメアリー妃に押し付けているっていう話も聞こえてくるわよ?」
「で、王太子妃は、蔑ろになってない?それで、いいのかよ?」
「表向きはって感じらしいわね。殿下とシルキー様との仲はとても良好らしいわよ?私の話で毎日『赤い涙』を始め、アンバー産の果実酒で晩酌を楽しんでいるのだとか。ただ、国内の力加減を考えると、あまりシルキー様が出しゃばるとよくないらしいのよ。それで、メアリー妃を伴うことが多いって話なのよ」
「でも、殿下もさ、メアリー妃との間に、来年の夏前に二人目だっけ?」
「そうね。シルキー様は、正直ところ、ジルアート様を産んだことで、そっちの役目は終わったと言っているらしいわね。精力的なのは、第二妃かしらね?それを避けるために寵姫がいるわけなんだけど。まぁ、計画通りと言えば、計画通りよね」
私が微笑むと、また、なんか悪い顔しているという。
何も悪い顔はしていない。『予知夢』では、シルキーはすでに亡くなっているはずだったのだ。今も元気に飛び歩いていると兄から連絡があるのが、私にとって嬉しかった。
少しの間しか、一緒にはいられなかったけど、慕ってくれる人を見捨てなくてよかったと、心から思っている。
「いいじゃない。生まれてくる子も女の子なら、お兄様の子のお嫁さんになるかもしれないんだから!そのためには、お兄様にもっと頑張ってもらう必要があるけど……王室との繋がりがあるのは、いいわよね。クリスの代になったとき、その事実が、大きな花を開くときが来るかもしれないわ!」
「何、それ?」
「侯爵家にも、うま味がないとね!国へ貢献しているんだもの!」
「姫さんが、王室に入る方が、貢献度的にはよかったんじゃないの?」
「それは、ない!私が、王室になんて入ってみなさいよ!まず、王宮にいないわよ?」
「それって、ここにいても一緒だと思うけど……」
みなが頷く。
そんなに私って、出歩いている印象があるのだろうか?執務室で、大人しく事務処理をしているんだけど……
みなからしたら、そうは、思ってくれていないらしい。
「ところで、話がそれてしまったのだけど……テクト、そろそろ、本題をいいかしら?」
「ユービスから連絡をもらった件ですね?」
「そう、飾り箱を作っている職人を口説き落としに……」
「今日、呼び寄せていますから、もう少ししたら、屋敷に到着するかと」
「えっ?呼んだの?」
「えぇ、呼びましたというより、職人たちが恐縮してしまって、屋敷へ来ると申して聞かなかったので……」
「そう、なら仕方ないわね!現物は、持ってきてくれるのかしら?」
「そういうふうには言ってあります。噂をすれば……」
馬車の停まる音がした。
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