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サトウの奥さん
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ラズベリーと話終えたあと、しばらく、工房や店の方でガラス細工を見せてもらった。キラキラ光るガラスにアンジェラは感動したのか、いちいち仕草が可愛らしい。
目をキラッキラさせて、ラズベリーに見せてもらっていた。
帰りに、ひとつづつお土産をもらう。アンジェラはうさぎ、ジョージはクマ、レオは丸いブローチみたいなもの、ミアは薔薇をもらっていた。
たくさん並んでいる中で、それぞれが選んでいるのがおもしろい。
好みで選ぶのだろうが、違っていていいなと思える。
「次は、何処かへいかれるのですか?」
「うん、次は、テクトのお店がある当たりに向かおうかなって!」
「反対側ですよ?」
「うん、途中でユービスのところにも寄るつもりで出てきたから、どこかで1泊かな?」
「……姫さん?」
「何かしら?」
「俺、聞いてないよ?」
「そうだっけ?」
「準備してないけど……」
「準備は、出来ていますからご安心ください、ウィル様」
「あっ、そうなの?リアンがしてくれたんだ?って、俺のも?」
「それは、ミアがしてました。ミアにも何かと教える時期でもありますから……」
男爵と平民の子であるレオとミアは、男爵が貴族の一員としてみなさなければ、平民として育つことになる。だから、ミアにはリアンが侍女としての仕事も教えているようだが、ミアはもう、サーラー伯爵の養女として、社交界へ出すと決めている。そういう仕事は覚えなくてもいい。
「リアン?」
「なんでしょうか?アンナリーゼ様」
「ミアは、伯爵の養女となったんだから、別にいいのよ?」
「いえ、それでも、してもらって当たり前にはなってほしくはないのです。ウィル様に大切にされていることは知っていますが、私の主人が侍女なしでも何でもできる方ですから、そういうふうに育ってほしくて!」
「リアン、それは……姫さんのこと?」
「えぇ、そうですが?」
「や、やめて……ミアには、このまま深窓の令嬢として育って欲しくて、決して姫さんみたいに周りを振り回したり、近衛より強くなったりと、まぁ、そういうふうになってほしいわけじゃないから!」
「いいえ、ウィル様。アンナリーゼ様ほどになってしまうと私も困りますが、ある程度、できることは、ミアにとっても悪いことではありませんから!」
胸を張って困ると言われると、当人の私は困るのだが……ミアが望むのであれば、それ相応の教えを与えても毒にはならないと思う……が、みんなして酷い話ではあった。
「あの……ウィルくん?リアンさん?」
「ん?」
「はい」
「本人前にして、そういうことは言わないで欲しいな……」
小さくなりながら、上目遣いに言うと、姫さんいたんだ?と悪びれることなく言われてしまった。
ずっと、いましたよ?むしろ、この視察?は、私が言い出したわけで……いるよね?
小さくため息をつき、次へ向かいましょうと声をかけた。
気の毒そうにラズベリーは私たちを見送ってくれ、私たちは馬車に揺られ始める。
気まずい馬車の中、子どもたちだけはガラス細工をもらって、ご機嫌だった。
「次は、ユービスさんのお店がある町だと聞いていますが……」
「砂糖の方でも水車が使えないか、工場長に聞こうかと思って」
「水車ですか?」
「えぇ、今、全部手仕事でしてくれているから、少しでも楽になるような提案が出来たらなって」
「なるほど……町に行くと言うよりかは、砂糖を作っている工場へ向かうのですね?」
「うーん、棟梁のおじいちゃんにも話を聞きたいから、町にはいくわよ!たぶん、そこで1泊ね!」
「わかりました。宿の方は、こちらで整えておきましょうか?」
「お願いできる?アンジェラは連れていくからエマをつけて。あとは、ウィルを護衛に宿を取ってくれたら……屋敷にいるユービスに相談してくれたらいいわ!そのあと、迎えに来てくれる?」
かしこまりましたと予定を確認して、私たちは砂糖工場で降ろしてもらった。ジョージが少々ごねたが、リアンが宥めて連れて行ってくれた。
「さぁ、アンジェラ。今からお砂糖を作っているところへ行くんだよ!」
「お砂糖?」
「好きだよね!」
コクンと頷くアンジェラの手を握り、工場の入口へと向かった。
そこで少々お待ちくださいと止められてしまい、椅子にかけて待っている。
「アンジェラは、お砂糖の工場は初めてだよね?今日は、いろんなものをたくさん見れてよかったね!」
そんなふうに話していると、サトウと申しますと工場長がでてきた。
「あっ、サトウさんの奥さん?」
「えっ?そうの、何故それを?」
「あれ、聞いてない?公都へ向かう前の畑へ見に行ったの!そのときに出会って」
「そうでしたか……うちの人口下手で、あまり、家では話をしないので……いつだったか、嬉しそうな顔をしていた日は、もしかしたら領主様が来られた日だったのかもしれませんね」
ニコリと笑うサトウに私も笑いかけた。
「あら、小さなお友達ね!お名前は?」
「アン!」
「ふふっ、アンジェラですよ!」
「アン?」
「まだ、アンでいいわよ!」
頭を撫でると目を細める。
「可愛らしい、お嬢さんですね!」
「ありがとう!」
「ところで、今日は何を?」
「うん、サトウを作るのに水車を利用できないかと思って、その相談にきたの」
「水車ですか?それは……」
「アンバーに新しく取り入れたものなの」
「是非、話を聞かせてください!私、新しいものが大好きなのです!」
そうと微笑む。私も大好きなのだから……気が合うのかもしれない。こちらにと通された応接室でじっくり話し合うのであった。
目をキラッキラさせて、ラズベリーに見せてもらっていた。
帰りに、ひとつづつお土産をもらう。アンジェラはうさぎ、ジョージはクマ、レオは丸いブローチみたいなもの、ミアは薔薇をもらっていた。
たくさん並んでいる中で、それぞれが選んでいるのがおもしろい。
好みで選ぶのだろうが、違っていていいなと思える。
「次は、何処かへいかれるのですか?」
「うん、次は、テクトのお店がある当たりに向かおうかなって!」
「反対側ですよ?」
「うん、途中でユービスのところにも寄るつもりで出てきたから、どこかで1泊かな?」
「……姫さん?」
「何かしら?」
「俺、聞いてないよ?」
「そうだっけ?」
「準備してないけど……」
「準備は、出来ていますからご安心ください、ウィル様」
「あっ、そうなの?リアンがしてくれたんだ?って、俺のも?」
「それは、ミアがしてました。ミアにも何かと教える時期でもありますから……」
男爵と平民の子であるレオとミアは、男爵が貴族の一員としてみなさなければ、平民として育つことになる。だから、ミアにはリアンが侍女としての仕事も教えているようだが、ミアはもう、サーラー伯爵の養女として、社交界へ出すと決めている。そういう仕事は覚えなくてもいい。
「リアン?」
「なんでしょうか?アンナリーゼ様」
「ミアは、伯爵の養女となったんだから、別にいいのよ?」
「いえ、それでも、してもらって当たり前にはなってほしくはないのです。ウィル様に大切にされていることは知っていますが、私の主人が侍女なしでも何でもできる方ですから、そういうふうに育ってほしくて!」
「リアン、それは……姫さんのこと?」
「えぇ、そうですが?」
「や、やめて……ミアには、このまま深窓の令嬢として育って欲しくて、決して姫さんみたいに周りを振り回したり、近衛より強くなったりと、まぁ、そういうふうになってほしいわけじゃないから!」
「いいえ、ウィル様。アンナリーゼ様ほどになってしまうと私も困りますが、ある程度、できることは、ミアにとっても悪いことではありませんから!」
胸を張って困ると言われると、当人の私は困るのだが……ミアが望むのであれば、それ相応の教えを与えても毒にはならないと思う……が、みんなして酷い話ではあった。
「あの……ウィルくん?リアンさん?」
「ん?」
「はい」
「本人前にして、そういうことは言わないで欲しいな……」
小さくなりながら、上目遣いに言うと、姫さんいたんだ?と悪びれることなく言われてしまった。
ずっと、いましたよ?むしろ、この視察?は、私が言い出したわけで……いるよね?
小さくため息をつき、次へ向かいましょうと声をかけた。
気の毒そうにラズベリーは私たちを見送ってくれ、私たちは馬車に揺られ始める。
気まずい馬車の中、子どもたちだけはガラス細工をもらって、ご機嫌だった。
「次は、ユービスさんのお店がある町だと聞いていますが……」
「砂糖の方でも水車が使えないか、工場長に聞こうかと思って」
「水車ですか?」
「えぇ、今、全部手仕事でしてくれているから、少しでも楽になるような提案が出来たらなって」
「なるほど……町に行くと言うよりかは、砂糖を作っている工場へ向かうのですね?」
「うーん、棟梁のおじいちゃんにも話を聞きたいから、町にはいくわよ!たぶん、そこで1泊ね!」
「わかりました。宿の方は、こちらで整えておきましょうか?」
「お願いできる?アンジェラは連れていくからエマをつけて。あとは、ウィルを護衛に宿を取ってくれたら……屋敷にいるユービスに相談してくれたらいいわ!そのあと、迎えに来てくれる?」
かしこまりましたと予定を確認して、私たちは砂糖工場で降ろしてもらった。ジョージが少々ごねたが、リアンが宥めて連れて行ってくれた。
「さぁ、アンジェラ。今からお砂糖を作っているところへ行くんだよ!」
「お砂糖?」
「好きだよね!」
コクンと頷くアンジェラの手を握り、工場の入口へと向かった。
そこで少々お待ちくださいと止められてしまい、椅子にかけて待っている。
「アンジェラは、お砂糖の工場は初めてだよね?今日は、いろんなものをたくさん見れてよかったね!」
そんなふうに話していると、サトウと申しますと工場長がでてきた。
「あっ、サトウさんの奥さん?」
「えっ?そうの、何故それを?」
「あれ、聞いてない?公都へ向かう前の畑へ見に行ったの!そのときに出会って」
「そうでしたか……うちの人口下手で、あまり、家では話をしないので……いつだったか、嬉しそうな顔をしていた日は、もしかしたら領主様が来られた日だったのかもしれませんね」
ニコリと笑うサトウに私も笑いかけた。
「あら、小さなお友達ね!お名前は?」
「アン!」
「ふふっ、アンジェラですよ!」
「アン?」
「まだ、アンでいいわよ!」
頭を撫でると目を細める。
「可愛らしい、お嬢さんですね!」
「ありがとう!」
「ところで、今日は何を?」
「うん、サトウを作るのに水車を利用できないかと思って、その相談にきたの」
「水車ですか?それは……」
「アンバーに新しく取り入れたものなの」
「是非、話を聞かせてください!私、新しいものが大好きなのです!」
そうと微笑む。私も大好きなのだから……気が合うのかもしれない。こちらにと通された応接室でじっくり話し合うのであった。
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