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いかほどになりますかね?

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 コホンと咳をして、その場をおさめた。
 ウィルとセバスのおかげで、まだ、頬が熱いが、あの日のことは、忘れたことはなかった。特別な日なのだから……


「他にもこちらは、オレンジですか?」
「爽やかな香りがするわよね!夏場とかの寝苦しい日に枕に一滴たらすとぐっすり眠れそうな感じがするわ!」
「なるほど、そういう使い方もあるのですね!」
「香りには、安眠効果のあるものもあるわよ!」
「ジョージア様で、確認済みっと……」
「ウィル、もう茶化さないでくれるかしら?」
「えぇーだって、だって……ジョージア様が一晩帰ってこなかったとかで、近衛の訓練場で百人少々に八つ当たりしてぶちのめしたの、どこの誰でしたっけね?」


 私は、茶化すウィルを睨みつけるだけにしたが、他はそうはちょっと引いていた。


「もしかして……死屍累々の中をワンピースの裾を翻して笑いながら立っていたいう噂は、アンナリーゼ様でしたか?」
「失礼ね!殺してないし、そのあと、ウィルにもぶちのめされていたわよ?ねぇ?」
「そうだっけ?記憶にないなぁ……」
「それより、話が、また脱線したじゃない!」
「そういうこともあるよねぇ?」
「ないから!ちょっと、黙っててくれるかしら?」


 へいへいと返事をして、お口にチャックしてくれたウィル。後で、玄関前に呼びつけてやる!と硬く誓った。


「ところで、香水の売り上げは、いかほどになりそうですか?」
「どれくらいを売るかにもよるわね!あと、限定商品にするのか、通年商品にするのか……」
「限定商品にしたらどうですか?」
「いいわね!そうするわ……ただし、香りが広がらないと、買ってくれる人がいない。ならいっそ、何か仕掛けましょう」
「例えばなのですが、違う香りを3本から5本の小瓶にし、化粧箱に入れて売るというのはどうでしょう?ちょうど、これくらいの量を」
「それで、気に入ったら、大きいものを買ってくれって感じ?」
「そうです、そうです。さらに、売り出した最初の1ヶ月は全商品を取り扱いますが、後は、季節ごとの限定商品としましょう。例えば、薔薇が咲く季節には薔薇を、夏の暑い季節には爽やかなオレンジを。あと、男性向けの香りも欲しいですね!」
「それは、どうしてだろう?ビルさん」
「貴族の紳士たちは、とてもオシャレな人が多い。ジョージア様もそのうちの一人ですが、そういう人をねらい目にするのです。ロイドさんも香水を使っていらっしゃるでしょ?」
「まぁ、たしかに」
「今、作られたのは、女性のものばかりですが、できることなら、男性の香水を2,3作ってください。あと、そのどれかは、女性がつけてもおかしくないものがいい」
「女性が?」


 ビルが頷き、ユービスも頷いた。訳知り顔であるのだから、理由があるのだろう。


「夜遊び上手な紳士たちが、こっそり渡すのにいい香りが欲しいんです」
「あぁ、なるほど。おもてだって、何かを贈り物をすると目立つが、香りなら……」
「ふんわり香るだけだから、わからないって?女性を甘くみすぎじゃない?」
「まぁ、そこも含めて駆け引きってことでしょう」
「……私、シバキあげそうですけどね!」
「ジョージア様はともかく……黒の貴族は、御用達になってくれそうですね!」


 笑いごとではないが……そういう遊びと考えているエールなら、あり得るだろう。楽しんでいるので、何も言わないが……うちにも被害者がいることを忘れないでほしい。


「まぁ、それは、姫さんとジョージア様とで、してもいいわけだよな?」
「そうですね!それにしたら、香水の種類が圧倒的に少なすぎますが……」
「流行りをつくればいいのよね?それなら、私が、ジョージア様の使っている香水をつければいいのでなくて?男性の香水をつける女性を演出すればいいのでしょ?流行の先端にしましょう!まずは、トワイス国の王太子夫婦に一役買ってもらいましょう!お兄様に連絡しておくわ!」
「あぁ、そういうことが、できるのですね!さすが、アンナリーゼ様」
「普通じゃないかしら?大口取引は、自分の家格の上から攻めないと!」
「……そんなことできるのは、姫さんだけだと思うけど」
「流行は、上からすれば、目立つし、みなが真似をしたくなるものよ!」


 頷きあう商人たちにそういうものなのかと、みなが顔を見合わせる。


「ロイド、悪いんだけど……」
「早急に作ってみます。材料はあるので、男性が好む香水で、女性がつけてもいい香りですね!そういえば、リアノもそろそろ帰ってくるのか……」
「協同開発っていうのは、できるかしらね?」
「そうですね、そうした方がいいかもしれない。声をかけてみます」


 お願いね!と微笑むと、頷いてくれた。メモを書いていたようだが、紙ぎっしりにかかれていた。


「値段なんだけど……どうする?まとめ売りするんだよね?」
「最初だけです。例えばですが、最初の1ヶ月は小瓶のまとめ売り。その次の2ヶ月で大きな製品を売る。3ヶ月後には、季節限定品にして売る」
「方針は、それで行きましょう。ナタリーが居てくれると……いいのだけど」
「こういうときは、そうだな」
「ナタリーの発想は、おもしろいからなぁ……」
「もう少ししたら、ナタリーもこっちに一旦戻ってくるから、待ちましょうか!」
「それまでに、ラズベリーに容器の注文と価格設定。あとは、売るための化粧箱の見本が必要ですね!」
「さてさて、やることは、出来たわね!資金集めのはずなんだけど……それまでに、資金が結構かかりそうよ……お店の利益の一部を使いましょう!こういうときのためのものだから」
「あるんですか?」
「もちろんよ!利益は右肩上がりで順調だもの。冷えたときようにとってあるけど、あるところから少し切り崩します」


 ハニーアンバー店については、基本的に従業員の給料や仕入れに対する支払い、あと領地の入用にしか使っていない。余剰金は、別に取ってあるのだが、そのお金も実のところ、結構な額を貯めていた。収支を見ているニコライやビルたち三商人は知っているが、予算として、セバスやイチアが上げてくる以上の額は領地に回していないので、知らない人の方が多いのだ。
 ただ、他にも養豚場の整備も考えると、新しい商品の商品棚へ並べることで、収入源確保は必要なことであったのでちょうどいい時期だったのだろう。
 あとは、ラズたちガラス職人と木材細工の職人たちとの話し合いが待つばかりとなった。
 明日は、ラズの工房へ向かうことにしたのである。
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