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ジョージア様、聞いてください!
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「ジョージア様、聞いてください!」
「う……うん、聞くから、少し、落ち着こうか?」
宿屋に帰ってきた私は前のめりになって、ジョージアに詰め寄る。今日見てきたものを話したくて仕方がない私に引き気味にしているのにどんどん押していく。
いつの間にかソファに座っていたジョージアを押し倒していた。
見かねたノクトがジョージアから引きはがし、ニコライは笑い、デリアはため息をついている。
興奮した私の声で、お昼寝をしていたアンジェラが起きたようで、アンジェラもジョージアに寝ぼけながら抱きつく。
「母娘で熱烈に押し倒されるのは、すごく嬉しいんだけど……」
みながいる前でソファに押し倒されてしまったジョージアは、何とも言い難い苦笑いを浮かべる。アンジェラを抱き直して、自分も座る位置を変えた。
まだ、眠かったのか、アンジェラは、ジョージアに抱きつきながら眠ってしまったようだ。
「それで、そんなに興奮して、何があったの?視察に出てたんだよね?」
「えぇ、行ってきました!」
私は、ニコライに連れて行ってもらった川べりの水車の様子を話していく。ただ、見たこともないらしい、ジョージアたちにとって、何故、そんなに興奮できるのかという疑問が浮かぶだけで、私との温度差が激しい。
「アンナリーゼ様、ものを見ないと、やはり反応はそういうものです」
「そうなの?」
「えぇ、私が水車を見つけたとき、アンナリーゼ様に話すと興奮して父にも話したときもそうでした
から……昔から、この地域には、ある施設のようですけど、他の領地では見かけないものです。
余程、目を皿のようにして見ていないと、気付きにくいものですしね。この地域は、他と比べて川の
支流が多く、水が多すぎず少なすぎず一定量流れていることから水車が発展していったようですね」
「それって、どんなものなの?アンナの説明だと、やっぱりわからなくて……」
ノクトとデリアも疑問に思っていたようで、ジョージアが代表して聞いてくる。
どんなものって言われても円状の物が回っていて、それが、どうなるのかわからないけど、小麦粉を挽いていたというだけである。他に説明のしようがなくて、ニコライの方を見る。
設計図を持ってきてくれたようで、それを広げてくれた。
それを見ながら、話すことにし、みなが座って設計図を覗き込むと、ニコライが冷静に説明をしてくれる。
「私も技術者ではないので、あまり詳しくはお話できませんが、こういった構図になっています。
ノクト様なら、もしかしたら、わかるかもしれませんね!」
「んーこれは、なかなかおもしろい発明だな。俺も見たことがないけど……作れるのか?こんな複雑な
ものが……実物があるから、できるのか……」
設計図を覗き込みひとつひとつ見ていくと、唸りながら何事か言っていた。完全に作る側の目になっているノクトは置いといて、まだ、興奮が覚めない私はこれを両領地に設置したいと願望だけをいうと、ノクトが、立ち上がった。
「ノクト?」
「ふっ、そこまで、アンナが目を輝かせているんだ。今から、これを見に行ってくる!」
「えっ?こんな時間から?」
時計は、5時前であったため、ジョージアは止めようとしたが、ノクトはニッと笑う。
私には見覚えのある顔であるので、止めても無駄ですよとジョージアに進言する。
すると、ニコライに声をかけて、ノクトは部屋を出て行った。
「もぅ、アンナ様が二人もい……三人もいたら、私一人では面倒を見きれませんわ……」
ノクトの背中を見送ったデリアはため息をついた。
それを聞いたジョージアは、デリアに苦笑いをし、すまないねと謝る。
「私が三人って……?」
当の本人である私はきょとんとしているが、デリアに言わせれば、私、アンジェラ、ノクトが揃うと、だいたい大惨事につながると苦笑いであった。
それに大いに頷いているジョージア。そう肯定的に頷いているけど……ジョージアの妻と娘がその三人の内に入っているからねとは言わないでおく。
言わないだけで、ジョージアは、たぶん、ちゃんと気づいてはいるだろう。
「それで、アンナは、領地にも作りたいって話だけど、作ってどうするつもりなの?」
「今、小麦粉ってどうやって作っているか知っていますか?」
「……勉強不足だ。ごめん、わからない」
「石臼でみなが挽いているのですよ。時間を見つけては、少しずつ。手間もかかるし、粉だらけに
なって片付けるのも大変だし。さっき見せたのなら、例えば、晴れた日に一定数を準備して置けば、
後は川の水が自動的に挽いてくれるのです。代わりに挽いてくれるものがあるなら、その間に冬場の
手仕事を夏場でもできるので、どうかと思って。
領民の生活を豊かにすれば、自ずと領地も豊かになります。私たちの生活を豊かにするものではなく、
領民の利便性も考えるとなかなかいいものではないかと思ったのです」
夢物語なら任せてくれと、口から出てくる話を真剣に聞いてくれるジョージアにいうと、夢で終わらないからなとからかわれる。
たしかに、夢で終わらせるには勿体ないので、公都に帰ったら、まず、セバスに話をしてイチアと協議の上、リアノやアルカあたりと作るにはと話を繋げていくことだろう。
「協議した上でだけど、ひとつの仕事にしてしまうのもありじゃないかな?1つだけ設備を作るんじゃ
なくて、川沿いに5つ程作って、5人程でそれらを効率よく回って小麦粉を作る。自然の力を借りて
だから、多少天候に左右されることもあるだろうけど……」
ジョージアの話をメモを取りながら、うんうんと頷く。私にはない発想は、とても貴重だ。
私はニコニコとしながら、ジョージアが語る話を聞いていると、ノクトたちが帰ってくる。
目を見たらわかる。
同じように興奮しているようで、設計図を前に、先程から話をしていることをノクトたちにも話、その晩は、たくさん話し合いができ、有意義な夜となった。
「う……うん、聞くから、少し、落ち着こうか?」
宿屋に帰ってきた私は前のめりになって、ジョージアに詰め寄る。今日見てきたものを話したくて仕方がない私に引き気味にしているのにどんどん押していく。
いつの間にかソファに座っていたジョージアを押し倒していた。
見かねたノクトがジョージアから引きはがし、ニコライは笑い、デリアはため息をついている。
興奮した私の声で、お昼寝をしていたアンジェラが起きたようで、アンジェラもジョージアに寝ぼけながら抱きつく。
「母娘で熱烈に押し倒されるのは、すごく嬉しいんだけど……」
みながいる前でソファに押し倒されてしまったジョージアは、何とも言い難い苦笑いを浮かべる。アンジェラを抱き直して、自分も座る位置を変えた。
まだ、眠かったのか、アンジェラは、ジョージアに抱きつきながら眠ってしまったようだ。
「それで、そんなに興奮して、何があったの?視察に出てたんだよね?」
「えぇ、行ってきました!」
私は、ニコライに連れて行ってもらった川べりの水車の様子を話していく。ただ、見たこともないらしい、ジョージアたちにとって、何故、そんなに興奮できるのかという疑問が浮かぶだけで、私との温度差が激しい。
「アンナリーゼ様、ものを見ないと、やはり反応はそういうものです」
「そうなの?」
「えぇ、私が水車を見つけたとき、アンナリーゼ様に話すと興奮して父にも話したときもそうでした
から……昔から、この地域には、ある施設のようですけど、他の領地では見かけないものです。
余程、目を皿のようにして見ていないと、気付きにくいものですしね。この地域は、他と比べて川の
支流が多く、水が多すぎず少なすぎず一定量流れていることから水車が発展していったようですね」
「それって、どんなものなの?アンナの説明だと、やっぱりわからなくて……」
ノクトとデリアも疑問に思っていたようで、ジョージアが代表して聞いてくる。
どんなものって言われても円状の物が回っていて、それが、どうなるのかわからないけど、小麦粉を挽いていたというだけである。他に説明のしようがなくて、ニコライの方を見る。
設計図を持ってきてくれたようで、それを広げてくれた。
それを見ながら、話すことにし、みなが座って設計図を覗き込むと、ニコライが冷静に説明をしてくれる。
「私も技術者ではないので、あまり詳しくはお話できませんが、こういった構図になっています。
ノクト様なら、もしかしたら、わかるかもしれませんね!」
「んーこれは、なかなかおもしろい発明だな。俺も見たことがないけど……作れるのか?こんな複雑な
ものが……実物があるから、できるのか……」
設計図を覗き込みひとつひとつ見ていくと、唸りながら何事か言っていた。完全に作る側の目になっているノクトは置いといて、まだ、興奮が覚めない私はこれを両領地に設置したいと願望だけをいうと、ノクトが、立ち上がった。
「ノクト?」
「ふっ、そこまで、アンナが目を輝かせているんだ。今から、これを見に行ってくる!」
「えっ?こんな時間から?」
時計は、5時前であったため、ジョージアは止めようとしたが、ノクトはニッと笑う。
私には見覚えのある顔であるので、止めても無駄ですよとジョージアに進言する。
すると、ニコライに声をかけて、ノクトは部屋を出て行った。
「もぅ、アンナ様が二人もい……三人もいたら、私一人では面倒を見きれませんわ……」
ノクトの背中を見送ったデリアはため息をついた。
それを聞いたジョージアは、デリアに苦笑いをし、すまないねと謝る。
「私が三人って……?」
当の本人である私はきょとんとしているが、デリアに言わせれば、私、アンジェラ、ノクトが揃うと、だいたい大惨事につながると苦笑いであった。
それに大いに頷いているジョージア。そう肯定的に頷いているけど……ジョージアの妻と娘がその三人の内に入っているからねとは言わないでおく。
言わないだけで、ジョージアは、たぶん、ちゃんと気づいてはいるだろう。
「それで、アンナは、領地にも作りたいって話だけど、作ってどうするつもりなの?」
「今、小麦粉ってどうやって作っているか知っていますか?」
「……勉強不足だ。ごめん、わからない」
「石臼でみなが挽いているのですよ。時間を見つけては、少しずつ。手間もかかるし、粉だらけに
なって片付けるのも大変だし。さっき見せたのなら、例えば、晴れた日に一定数を準備して置けば、
後は川の水が自動的に挽いてくれるのです。代わりに挽いてくれるものがあるなら、その間に冬場の
手仕事を夏場でもできるので、どうかと思って。
領民の生活を豊かにすれば、自ずと領地も豊かになります。私たちの生活を豊かにするものではなく、
領民の利便性も考えるとなかなかいいものではないかと思ったのです」
夢物語なら任せてくれと、口から出てくる話を真剣に聞いてくれるジョージアにいうと、夢で終わらないからなとからかわれる。
たしかに、夢で終わらせるには勿体ないので、公都に帰ったら、まず、セバスに話をしてイチアと協議の上、リアノやアルカあたりと作るにはと話を繋げていくことだろう。
「協議した上でだけど、ひとつの仕事にしてしまうのもありじゃないかな?1つだけ設備を作るんじゃ
なくて、川沿いに5つ程作って、5人程でそれらを効率よく回って小麦粉を作る。自然の力を借りて
だから、多少天候に左右されることもあるだろうけど……」
ジョージアの話をメモを取りながら、うんうんと頷く。私にはない発想は、とても貴重だ。
私はニコニコとしながら、ジョージアが語る話を聞いていると、ノクトたちが帰ってくる。
目を見たらわかる。
同じように興奮しているようで、設計図を前に、先程から話をしていることをノクトたちにも話、その晩は、たくさん話し合いができ、有意義な夜となった。
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