545 / 1,480
あーん
しおりを挟む
お待たせしましたと、机の上に置かれたのは……生クリームが山のように乗せられたケーキであった。
それをキラキラした目で見つめていたかと思うと、うっとりし始め、フォークを生クリームの中に埋もれさせたっぷり掬う。
それを無遠慮に大きな口を開けてパクっとほおりこみ、空いている手を頬にあてながら、んん-っと悶えている母娘を目の前にし、ジョージアもジョージも呆気に取られていた。
妻と2歳の娘が全く同じような動きをし、同じように目を輝かせ、同じように喜びを表している。
これは、容姿こそ違うが、母娘と疑う余地がない程、同じであったとジョージアは、公へ最近驚いた話として話したそうだ。
「……パパ、ママとアンが……」
「ジョージ、見ちゃいけないよ。ほら、クッキーをあげるからね!」
「はぁ……生クリーム最高!」
「さいこう?」
「とっても、おいしいってことよ!」
「最高!」
私はアンジェラに生クリーム美味しいねと言うと、満面の笑みでもう一回生クリームを口に運ぼうとしていた。
たくさん掬って口に入れたのだろう。アンジェラの鼻の頭にクリームがついているので、紙ナプキンで拭いてやるとくすぐったかのか、くしゅくしゅすると鼻の頭を撫でている。
「アンナとアンジェラは、そんなに生クリームが好き?」
「クリーム好き!」
フォークを軽く振り回しながら、ジョージアにクリームがおいしいとアンジェラは興奮して話している。
そんな姿を見ると、昔、兄に同じようなことをしていたことを思い出し、思わずクスっと笑ってしまった。
「アンナは、何笑っているの?」
「いえ、アンジェラを見ていたら、昔、お兄様に生クリームのおいしさを語ったなと思いだして……」
「サシャも生クリーム大好きだよね?甘いもの全般が好きな感じだけど」
「お兄様が生クリーム好きなのは、私の影響ですよ!甘いものは、元々から好きでしたけど、今は、
優しい甘さのものしか食べていないらしいですよ?この前来ていた手紙に書いてありました」
「優しい甘さ?それは、何故?」
私はふふっと笑い、大好きな生クリームをたくさん食べられなくなった兄を想った。生クリームはたくさん食べられなくても、愛情たっぷりの優しい甘さのお菓子は子どもたちも含めたくさん食べているようだ。
「お兄様、生クリームより甘いものが見つかったから、なるべく絶ったそうです」
「生クリームより甘いもの?砂糖とか?」
「それは、そのままではないですか……答えは、エリザベスの作るお菓子です。子どもたちも大好き
なんだそうですよ!」
「それはそれは……何より甘いお菓子なわけだ」
「そうですね。エリザベスがお兄様を想って、甘さ控えめだけどとっても美味しいものを作ってくれる
らしいですから、私のようにこんなたっぷりの生クリームに頬を染め、大口開ける日は無くなった
のです。ちょっと、わかちあえなくなったので残念ですね……」
「……まぁ、いいんじゃないかなぁ?さすがに、母娘二人で、生クリームをそんなに食べられたら、
こっちが胸やけしそうだ」
そうですか?と言いながら、私もまた生クリームを口に運ぶ。アンジェラは、3回目を口に運ぶところであった。
さすがに、この量をアンジェラが食べるのは多すぎる。お腹を壊したらダメなので、私は仕方なく自分の大事な生クリームを軽く一口掬い、小さくため息をついた。
「アンジェラ、そんなに食べたらお腹を壊すから、ジョージに少しあげましょうか?」
えっ?ありえない!という顔をアンジェラはこちらに向けてきたが、後でお腹いたいと騒がないといけない方が大変なので見本を見せる。
「ジョージア様、あーんしてください!あーん!」
「えっ?くれるの?」
「早くしてください!私も、食べたいんですから!」
「はいはい」
「あーん」
ジョージアの口にフォークですくった生クリームを入れてあげると、甘さ控えめだね?といい、これならいけるかも!と言っている。
「アンジェラとジョージも交換したら、どう?」
私はジョージアから少し苦めのクッキーをもらい、それにケーキを乗せてパクリと食べた。それを見たアンジェラは、同じことをしてみたくて仕方なかったようだ。
私と違い、しっかりフォークに生クリームを掬ってジョージにあーんしている。ジョージは、大量の生クリームに戸惑いながら私を見てきたので、頷くと目を瞑ってアンジェラが差し出した生クリームを大きな口を開けて食べた。アンジェラもジョージも初めてしたあーんに若干の戸惑いを隠しきれていないが、二人共なんだかほわほわしている。
「ジョー、クッキーちょうだい!」
食べることを思い出したようで、アンジェラがジョージにクッキーをとせがんでいると、おずおずとアンジェラにクッキーを渡しているジョージ。
アンジェラに大盛りの生クリームをジョージは雑に口に入れられたため、口の周りにベッタリついてしまっているので、私は腰を少し浮かせ、ジョージの口元を紙ナプキンで拭き、その後ハンカチで再度拭き直す。綺麗になったところで、こっちを見てニコッと笑うジョージにジョージアが頭をくしゅっとした。
「ママ、ありがとう!」
ちゃんとお礼を言えるジョージに成長を感じたと同時に驚いた。
それにしても、この子たち、いつの間にかアンとジョーと呼び合っていて、姉弟として自分たちの立ち位置をつくっているようである。
このまま仲良く成長してくれると嬉しいのだがと、私は二人の成長をただただこれからも見守っていくだけだなと二人の頭をクシャッと撫でるのであった。
それをキラキラした目で見つめていたかと思うと、うっとりし始め、フォークを生クリームの中に埋もれさせたっぷり掬う。
それを無遠慮に大きな口を開けてパクっとほおりこみ、空いている手を頬にあてながら、んん-っと悶えている母娘を目の前にし、ジョージアもジョージも呆気に取られていた。
妻と2歳の娘が全く同じような動きをし、同じように目を輝かせ、同じように喜びを表している。
これは、容姿こそ違うが、母娘と疑う余地がない程、同じであったとジョージアは、公へ最近驚いた話として話したそうだ。
「……パパ、ママとアンが……」
「ジョージ、見ちゃいけないよ。ほら、クッキーをあげるからね!」
「はぁ……生クリーム最高!」
「さいこう?」
「とっても、おいしいってことよ!」
「最高!」
私はアンジェラに生クリーム美味しいねと言うと、満面の笑みでもう一回生クリームを口に運ぼうとしていた。
たくさん掬って口に入れたのだろう。アンジェラの鼻の頭にクリームがついているので、紙ナプキンで拭いてやるとくすぐったかのか、くしゅくしゅすると鼻の頭を撫でている。
「アンナとアンジェラは、そんなに生クリームが好き?」
「クリーム好き!」
フォークを軽く振り回しながら、ジョージアにクリームがおいしいとアンジェラは興奮して話している。
そんな姿を見ると、昔、兄に同じようなことをしていたことを思い出し、思わずクスっと笑ってしまった。
「アンナは、何笑っているの?」
「いえ、アンジェラを見ていたら、昔、お兄様に生クリームのおいしさを語ったなと思いだして……」
「サシャも生クリーム大好きだよね?甘いもの全般が好きな感じだけど」
「お兄様が生クリーム好きなのは、私の影響ですよ!甘いものは、元々から好きでしたけど、今は、
優しい甘さのものしか食べていないらしいですよ?この前来ていた手紙に書いてありました」
「優しい甘さ?それは、何故?」
私はふふっと笑い、大好きな生クリームをたくさん食べられなくなった兄を想った。生クリームはたくさん食べられなくても、愛情たっぷりの優しい甘さのお菓子は子どもたちも含めたくさん食べているようだ。
「お兄様、生クリームより甘いものが見つかったから、なるべく絶ったそうです」
「生クリームより甘いもの?砂糖とか?」
「それは、そのままではないですか……答えは、エリザベスの作るお菓子です。子どもたちも大好き
なんだそうですよ!」
「それはそれは……何より甘いお菓子なわけだ」
「そうですね。エリザベスがお兄様を想って、甘さ控えめだけどとっても美味しいものを作ってくれる
らしいですから、私のようにこんなたっぷりの生クリームに頬を染め、大口開ける日は無くなった
のです。ちょっと、わかちあえなくなったので残念ですね……」
「……まぁ、いいんじゃないかなぁ?さすがに、母娘二人で、生クリームをそんなに食べられたら、
こっちが胸やけしそうだ」
そうですか?と言いながら、私もまた生クリームを口に運ぶ。アンジェラは、3回目を口に運ぶところであった。
さすがに、この量をアンジェラが食べるのは多すぎる。お腹を壊したらダメなので、私は仕方なく自分の大事な生クリームを軽く一口掬い、小さくため息をついた。
「アンジェラ、そんなに食べたらお腹を壊すから、ジョージに少しあげましょうか?」
えっ?ありえない!という顔をアンジェラはこちらに向けてきたが、後でお腹いたいと騒がないといけない方が大変なので見本を見せる。
「ジョージア様、あーんしてください!あーん!」
「えっ?くれるの?」
「早くしてください!私も、食べたいんですから!」
「はいはい」
「あーん」
ジョージアの口にフォークですくった生クリームを入れてあげると、甘さ控えめだね?といい、これならいけるかも!と言っている。
「アンジェラとジョージも交換したら、どう?」
私はジョージアから少し苦めのクッキーをもらい、それにケーキを乗せてパクリと食べた。それを見たアンジェラは、同じことをしてみたくて仕方なかったようだ。
私と違い、しっかりフォークに生クリームを掬ってジョージにあーんしている。ジョージは、大量の生クリームに戸惑いながら私を見てきたので、頷くと目を瞑ってアンジェラが差し出した生クリームを大きな口を開けて食べた。アンジェラもジョージも初めてしたあーんに若干の戸惑いを隠しきれていないが、二人共なんだかほわほわしている。
「ジョー、クッキーちょうだい!」
食べることを思い出したようで、アンジェラがジョージにクッキーをとせがんでいると、おずおずとアンジェラにクッキーを渡しているジョージ。
アンジェラに大盛りの生クリームをジョージは雑に口に入れられたため、口の周りにベッタリついてしまっているので、私は腰を少し浮かせ、ジョージの口元を紙ナプキンで拭き、その後ハンカチで再度拭き直す。綺麗になったところで、こっちを見てニコッと笑うジョージにジョージアが頭をくしゅっとした。
「ママ、ありがとう!」
ちゃんとお礼を言えるジョージに成長を感じたと同時に驚いた。
それにしても、この子たち、いつの間にかアンとジョーと呼び合っていて、姉弟として自分たちの立ち位置をつくっているようである。
このまま仲良く成長してくれると嬉しいのだがと、私は二人の成長をただただこれからも見守っていくだけだなと二人の頭をクシャッと撫でるのであった。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる